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「お爺さん、どうもありがとう。珈琲、本格的に煎れるんだね」

「・・・あんた、見たところどっかのお嬢さんみたいだけど感心しないねぇ・・・そんな若い子が公園なんかで寝泊まりして。家出かい?もしそうなら早いうちに帰りな。帰れるうちに帰った方がいい・・・時間が経つと帰りにくくなるからな」

ホームレスのお爺さんと公園のベンチに座って珈琲を飲んでいた。

お爺さんの家(?)にも食べるものは何もなかったみたいだけど、この後に日雇いの仕事に行って1日分のお給料をもらったら食料品を買うんだって言ってた。
お金は持ってるのか?なんて聞かないから黙っていたけど、実は私もお財布の中にあったお金を交通費で使い果たして持っていたのは数百円。このままだと今晩もここに来なきゃいけないかも・・・って溜息が出た。


「お爺さんはいつからここにいるの?もうすぐ寒くなるよ?家には帰らないの?」

「・・・帰る家が無くなったんでな。女房には逃げられるし会社は追い出されるしで、気がついたらこんな所に住みついたってわけだ。雪が降りゃ寒かろうなぁ・・・」

「そうだよ、死んじゃうよ!何処かちゃんと住むとこ探さないと!」

「ははっ、儂の心配より自分の事だろう?念のため段ボールは儂が持っておいてやるけど、あんたは明るいうちに決心して家に帰ることだな。どうしてもの時は儂はここにいるからな・・・」


見た目はホントに汚れてて、髪の毛もボーボーに伸びてるお爺さんだったけど、昔っからこんな生活をしていたわけじゃなさそうだった。
お風呂にも入ってないだろうから肌は汚れていたけど、時々見せる瞳にはまだ光があるように感じた。
もしかしたらここで寝泊まりする前は、スーツ着て颯爽と大都会のビルの中を歩いていた・・・とか?


「お爺さんはお仕事は何してたの?」

「儂か?・・・ははは、こう見えて大きな会社の役員じゃったよ。それが会社の不正の汚名を着せられてなぁ・・・気がついたら会社に籍がなかったよ。無理矢理辞職させられたようなもんかなぁ・・・。その時は闘おうと思ったのに、それが発覚したときには今度女房が儂の部下と浮気しておって家から姿を消してな。ははっ・・・大笑いしたよ、何にも知らずに働いてたんだな、とな」

「・・・大変だったんじゃん!笑ってる場合じゃないよ、お爺ちゃん!」

「・・・そうだよなぁ。でも、持っていた物は全部女房が持って行ったし、見栄を張って大きな家を買っていたもんだから僅かな退職金は全部それに充てても足らなかったし、気力が無くなってな・・・全部捨てて儂もこの有様よ」


いい人そうなのに・・・私はお爺ちゃんの話を聞いていたら涙が出てきて止まらなくなった。
それを見て「なんであんたが泣くんだい?」ってニコニコと・・・私にちょっと汚れたタオルを貸してくれた。


「だからな、儂のようにならないためにもあんたは帰れる家があるんだろうからさ。一晩だけなら寂しくは無いだろうが何日もこんな事はするもんじゃない。さて、今日の仕事に行こうかな。あんたも早く公園から出てお行き」

「うん・・・お爺ちゃん、ありがとう。あの・・・お名前は?」

「儂か?はは、聞いてもどうしようも無いだろうが儂は川本竜之介ってんだ。まぁ、あんたの野宿の記念に覚えときな」


川本のお爺ちゃんにお礼を言って、私は公園のベンチから立ち上がった。



**



「帰れるところがあればねぇ・・・あるっちゃあるけど恋を探しに都会まで出てきたんだもん。探さないと帰れないよね。その前に私もバイトしなくちゃ!取り敢えず今日泊まるホテル代ぐらいはどうにかして稼がないとね~」

そんな独り言を言いながら東京の街をブラブラ歩いていたけど、どうやって仕事を探していいのかわからなかった。


この年まで普通の会社で働いたこともないし、自宅でパソコンを使って頼まれた調べ物をしたり、プログラミングしてただけ・・・自分でバイトを探しに行ったこともないし、この手でお給料というものを稼いだことは1度もない。

何度か働きに行きたいと頼んだけど、お父様もお母様もお爺さまが反対だからと私の意見なんか聞いてくれないし、宮崎の山奥から出してもくれない。
かろうじてネットで世間の事を知ることは出来るけど、こうやって街の中に出てくるのは初めてだった。


「それにしてもすごい人・・・ネットで見てるのって本当だったのねぇ!何処からこんなに人が出てくるんだろ?何処に住んでるのかしら、この人達。はぁ・・・人に酔いそうだわ!」



どのぐらい歩いていただろう。

コンビニに入って、僅かに残っていたお金でお昼ご飯を買って、また知らない小さな公園のブランコで食べた。その後もブラブラと歩いて、何処かに「アルバイト募集中」の張り紙でもないかといろんなお店を眺めていた。


目に入るものがみんな珍しくて時間が過ぎることに無頓着だった。
可愛いものを見ては立ち止まり、面白いものを見れば手を伸ばし、ワクワクしながら街の中を彷徨いてばかり。


アルバイトって意外とないのねぇ、って思いながらもう夕方・・・随分暗くなって仕事探しなんて出来そうにない。
こりゃまた川本さんのところに戻る羽目になりそうだって考えたけど、実はこの時点でまた迷子になっていた。

「どうしよう・・・ここなんて言う所なのかしら。やっぱりスマホは持ってた方が良かったなぁ・・・」


昨日泊まった公園の場所なんてもう全然わからない。
その公園名すら覚えていなかったから人にも聞けなかった。


「お嬢さん、お仕事探してるの?」
「・・・え?」

急に声をかけられて振り向いたら格好いい男の人がニッコリ笑って立っていた。背が高くてカジュアルな服装だったけど、兎に角笑顔が素敵で一瞬ドキッとした。
もしかしたら恋ってこうやって始まるのかしら・・・そんなことを考えさせてくれるような人!

「あっ、はい!そうなんです。お金がなくてすぐに働けるところを探してました」
「そうなんだ!奇遇だね、俺はすぐに働いてくれる人を探してたんだよね」

「そうなんですか?えっと、どういうお仕事ですか?」
「簡単だよ。接客業でお客様に飲み物出したりする感じ?君みたいに愛想がよくて可愛かったらすぐに人気者になれるよ」

「えっ!そんな・・・あはは!」
「話だけでも聞いてみない?働くかどうかはその後で決めてもいいし」


都会って自分で探さなくてもこうやって仕事の方から来てくれるだなんて!
私はこの格好いい男の人に誘われるまま、近くに停めてあった車に乗せられて、どこかの地下駐車場に入って行った。



「ここは何処ですか?ここが働く場所?」
「あぁ、ちょっとここで人と待ち合わせなんだ。少し待っててね」

「はーい!」


しばらくしたら1台の車がこの車の真横に付けられて、男の人は車を降りていった。そして今来た車の運転手さんと何かを話してげらげら笑って・・・東京の人は陽気なのねぇ、と感心していた。

「お嬢さん、こっちの車に乗り換えて?今から仕事先に連れてってくれるから」
「あ!そうなんですね、わかりました」

「頑張ってね。君ならすぐにお金持ちになれると思うよ?お客さんウケしそうだから」
「・・・?そうなんですか?はい、頑張ります!」


車を乗り換えて運転手さんを見たら・・・今度は助手席にも1人座ってて2人ともすごく怖い感じの人だった。


「・・・え?な、なに?」

「何って・・・働きたいんだろう?仕事を持ってきてやったんだよ」
「まぁまぁの顔だけど、痩せてるなぁ・・・これじゃ客もあんまり喜ばないか?」

「いや、こういう田舎の子ってのはそれだけでウケるからいいんだろうさ」
「ははっ!そうか!」


痩せてるからお客さんが喜ばない?・・・それって、まさか?

隣を見たらここまで連れてくた人がニコニコ手を振りながら車で走り去っていった。
そしてまた運転席を見たら・・・強面の男の人がニヤッと笑った!!


「あ、あの・・・私、やっぱりお仕事やめます・・・あんまり接客業とかした事なかったし、あの・・・無理かも?」

「何言ってんだ。さっきの男にあんたの金は払ったんだからその分働いてもらわねぇとこっちが大損なんだよ。もう逃げられねぇよ!」
「まぁ、逃げたくてもこっから先は無理だな。諦めな、お嬢ちゃん・・・」


冗談じゃないわ!
これって絶対ヤバいヤツじゃん!・・・って今まで見抜けなかった自分が1番馬鹿だけど、そんなことを言ってられない。この人達はスマホを見ながらほんの一瞬揃って私から目を離したから、そっとドアの取っ手を引いてみた。

ガチャって小さな音がして、1人が振り向いたと同時に急いで車のドアを全開して真っ暗な駐車場の中に飛び出した!

「おい!逃げたぞ!」
「なんだと?!お前がグズグズして車出さねぇからだろうが!早く掴まえろ!!」


そんな声が聞こえてきたけど、とにかく僅かな灯りを頼りに猛スピードで走って「待ちやがれ!」って叫び声を振り切って外まで逃げた!


出てすぐに辺りを見回したら、ここは高層ビルが建ち並んでるオフィス街!どっちに逃げていいのかわからないけど思いついた方向に足を向けた!
でもすぐにあいつらに気がつかれて、通行人が沢山いる歩道なのにもの凄いスピードで追いかけてくる!

幸い山育ちで足腰は強いのよ・・・っそんなこと言ってる場合じゃないけど私も全速力で逃げた!


「助けてぇ!誰か、誰か助けてぇ!!」
「待てぇ!このガキ、逃げるんじゃねぇよ!」

待てと言われて待つわけないじゃん!!このままだと私、恋する前にズタズタになるじゃないのーっ!!


「ヤだぁ!来ないでぇ!!誰か助けてぇーっ!!」


これだけ叫んで逃げてるのに誰も助けてくれない・・・って言うか、逆にみんな避けていくんだけど、なんでーっ?!
誰でもいい、誰でもいからこの人達を止めてぇっ!!


その時、前方でこっちを見て止まってる人が見えた!
あの人なら助けてくれるかも・・・何故かそう思ってその人に向かって叫んだ!!


「きゃああぁーっ!そこの人・・・そこの人お願い!!助けてっ!!」
「・・・え?俺の事?」

「いいからお願い!この人達をどうにかしてぇ!!」
「えぇっ?!」


「待てーっ!待たねぇか、この野郎ーっ!!」


名前も知らない背の高いイケメンの彼に思いっきり飛びついたら、彼は両手で抱き留めてくれた!


あっ、いい香りがする・・・!
こんな状態なのに抱き留めてくれた彼の香りにグラッとした。




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2018/11/03 (Sat) 00:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

そうそう!本は必要ですもんね!
ふふふ、つけたと言う事は・・・ここだけでは終わらないかも?

でも、相当先かも?


やっと出会えたので同じ場面で書けるから助かる(笑)
(誰がそんな設定したんだっつーの!)


え?類君、今から変身するんでしょ?
きっと勝ってくれると思う・・・んだけど?(笑)

2018/11/03 (Sat) 01:07 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/03 (Sat) 08:21 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/03 (Sat) 08:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

はい!今から類君が闘ってくれると思いますが・・・ははは、どうでしょうかねぇ、この類君ですから。
口喧嘩にはなりそうにないし、取っ組み合いにもなりそうにないし、つくし抱えて逃げたりして(笑)

インフル・・・このブログはインフルエンザで会社休んでるときにオープンしたんですよ。
38度ぐらいあってふらふらしながら「初めまして」の記事を公開したのを覚えてます。

今年は類誕のイベント中にインフルになって、それをネタにりお様にお話書かれました(笑)

来年はどうなんだろう。
今の所3年連続かかってます・・・ヤバい!(笑)

2018/11/03 (Sat) 10:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんにちは!

ふふふ、類君の香りですか?
でもね、実際に柑橘系の香りつけてる男性っています?あれ、類君だから似合うけど普通の男からそんな匂いが漂ったら怖くないですか?(笑)
偏見ですかねぇ・・・。

会社の男性はよく自分にファブリーズかけてましたけど(笑)

類くん・・・汗かくんですかね。え?あの時だけ・・・やだ、さゆ様ったら♥

2018/11/03 (Sat) 11:12 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/03 (Sat) 18:40 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは。

え?回し蹴り・・・(笑)あはは!
いや、まぁ、助けますけどね💦格好いいかどうかはわかりません!

まだつくしちゃんは彼女じゃないのでっ(笑)


ふふふ、お話が始まったばかりなので皆様も妄想が膨らんでいらっしゃる・・・。
どんな風に変わって行くか、気長にお付き合いくださいませ。

コメントありがとうございました♥

2018/11/03 (Sat) 23:08 | EDIT | REPLY |   

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