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plumeria

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「あのさ、知ってると思うんだけど、ここ俺の部屋でしょ?誰にも断わらずに着替えるでしょ、普通」
「で、でも!女性の前でいきなり脱ぐなんて・・・ひと言言ってくれてもいいじゃない?」

「着替えるよーって?そんなの言わないよ。男の着替えなんて隠さなくても問題ないと思うんだけど。牧野のお父さん達、隠れてたの?」
「ううん、突然脱いでた・・・いや!家族と他の人は違うし!」


この会話の最中も俺の着替えは進んでる。
牧野は取り敢えず背中を向けて壁に向かって怒っていたけど、これって俺が悪いんじゃないよね?



「もういいよ」って言えば恐る恐る俺の方に顔を向けたけど、やっぱりまだ眉をハの字に歪めてた。

軽くとは言え夕食を済ませていた俺は正直言えば食べたくない。だけど牧野に1人で食べろって言うのも可哀想な気がして一緒にダイニングに向かった。
当然のようにテーブルには2人分の夕食が準備されてて、それを見たら牧野の口がポカンと・・・

「どうかした?まだ食べられるでしょ?」
「う、うん・・・そうじゃなくて・・・」

「なに?多分そこまで不味くはないと思うけど」
「味の事じゃなくて・・・る、類と遠い・・・」

「俺と遠い?」

広いテーブルの向かい合わせ・・・言われてみれば幅は2メートルぐらいあって離れてると言えば離れてる。
これを「遠い」と表現したのかな。


牧野が不安がるから加代に頼んで俺の隣に椅子を移動するように頼んだ。
確か今朝、父さんと母さんに「なんでそんなにくっついてんの?」って聞いたような気もするけど、夜になったら俺がそうしてるなんて。世の中、何が起こるかわかんないよね、って思いながら席についた。

牧野は俺の後にくっついてきて隣の席に・・・わざわざ移動させて置いた位置からもっと椅子を寄せてきた。


「・・・そんなに隣がいいの?」
「その方が安心するんだもの。だめ?」

「・・・ううん、いいけど」


いや、どうだろう・・・少し動かしたら腕が当たりそうなぐらい近寄ってるんだけど。
そんなに近くで食事をした事がないから超気になる・・・横目で見たら牧野は凄く嬉しそうに自分の皿を全部手前に寄せていた。

「いただきまーす!」

こっちがびっくりするぐらい元気よく手を合わせてナイフとフォークを持った。
ただ、ここでもっと驚いたのは彼女がテーブルマナーを知っていたこと・・・教えなくても食器や道具の使い方は勿論、魚料理の難しいナイフ捌きも問題なくやってのけた。

食べるときの顔は美味しそうに、大きな口を開けて頬張るんだけど、それとこの指の動き方のギャップ。
何故か凄く不思議だった。


ふと何処かからの視線に気が付いて顔を上げたら、父さんと母さんが揃ってダイニングを覗いてる。
ほんの少しドアを開けて・・・それで隠れたつもりなんだろうかと溜息をついて1度フォークを置いて声をかけた。


「あのさ、そんな所から見るんなら入ってくれば?気になるんだけど」

そのひと言に牧野が「ん?」って言いながら、俺が視線を向けた方に目をやった。

1度はバタンと閉めたもののすぐにまたドアが開いて、2人がニコニコしながら入って来て俺達の向かい側に座り、同時に加代が珈琲を持ってきた。
牧野はそれを見てキョトンとして、両親と俺を交互に見てた。

「・・・俺の両親」
「えっ?!類の・・・ご両親?!」

凄く短い紹介だけど、そう言うと今度は牧野がナイフとフォークを置いて、急いでナフキンで口元を拭った。


「あ、あらら!気にしなくていいのよ?私たちこそお食事中にごめんなさいね。類の母の花沢遙香です、宜しくね!」
「ははは、ホントにすまなかったねぇ、気にせずにお食べなさい。類の父の花沢聖(さとし)、宜しく」

「初めまして、た・・・牧野つくしと申します。突然お邪魔して申し訳ございません」

「・・・・・・」


俺が聞いたときも1番初めに「た」って言ったような気がするけど・・・気のせいかな。



***************



類のご両親がダイニングに現れて私の正面に座った。
凄くダンディーな格好いいお父様にモデルみたいな・・・えっとネットで見た美魔女っての?そんな感じのお母様。

はぁ・・・こんな2人だからこんな格好いい子供が生まれるのね?って類を見たけど無表情で黙々と食事してる。しかも男性なのに凄く綺麗に姿勢良く。
ナイフの使い方やグラスの持ち方まで、品があってうっとりしちゃう。


「・・・え、なに?」

「あっ、ごめん!類の食べ方ってテーブルマナーの先生みたいだなって思って」
「・・・先生?」

「そうそう!学校で見るビデオの人みたい。こうやって使うんですよ~っていう先生は大抵格好いいもん」

私がそう言うと「・・・は?」って変な顔したけど、それを聞いていたお母様がクスクス笑いながら質問をしてきた。


「牧野さんは類とお食事をあんまりしたことがないの?この子、家ではいつもこうやって無言で美味しくなさそうに食べるの。あなたといるときは違うのかしら?」

「えっ?!あぁ、そ、そうですね。まだあんまり食事は・・・ねぇ、る、類」
「・・・そうだね。食事は車でするぐらい?簡単なものをちょっとだけだね」

「まぁっ!車で?女の子に車で食事をさせるような男性に育てた覚えはなくってよ、類!どうしてそんな事をするの!」

「あぁっ、お母様、私が・・・私がそれでいいって言うんです!あの、緊張・・・緊張しちゃうから!ねっ、類!」
「・・・そうだね。毎回牧野が店に入るのを嫌がるから・・・かも」

「ダメよ!そんなことしちゃ。今度からちゃんとレストランでお食事しなさい!牧野さんに失礼だわ」

「は、はいっ!今度からですね、今度はちゃんとお店に行きますから・・・そうしよう、類!」
「・・・わかった。今度からね」


なんで私、こんなにドキドキしながら嘘ついてんの?隣の人はこんなに涼しい顔してるのにっ!
慌ててお肉を切ろうとしたから手が滑ってカシャ!っとお皿の音を立ててしまった!驚いて周りを見たけど・・・誰も睨んでないからホッとした。

瀧野瀬だとこんな作法1つ失敗してもお説教が始まったから。
将来五十嵐家に行っても恥をかかないようにって・・・そんな所だけ厳しくされて嫌だったっけ・・・。



「それで?類・・・牧野さんとはいつからなの?今朝はそんな素振り1つも見せなかったじゃない?」

お母様の次の質問には飲もうとしたお水を噴き出しそうになった!
急いでグラスを置いて噎せ返り、また隣を見たけどやっぱり無表情・・・この人、何処に感情全部、置き忘れたのかしら?


「教えてくれれば良かったのに!急に連れてくるからパパと驚いちゃったわ。ふふふ・・・ね、いつから?」
「類、まるで興味のないようなことを言ってたのに、こんな可愛らしい人を見つけてたなんてなぁ!ママ、楽しみが増えたな」


そりゃ急でしょうよ。さっき出会ったばかりだし。
興味があったかどうかは知らないけど、私のことが楽しみ・・・それってどういう意味かしら?

それより、この人はどう答えるんだろう・・・それが気になった。


「・・・牧野とは最近だから。それよりさ、彼女、ちょっと理由があってしばらくここに住まわせようと思うんだよね。部屋、使ってもいい?期間はまだわからないんだけど」

「・・・・・・類、ここに牧野さんが住むの?」
「・・・・・・類、お前・・・」


「なに?そんなに驚くこと?別にいいよね、部屋はいくらでもあるんだし」


うわっ!!なに?このご両親の反応!すっごく大きな目見開いて・・・いや、そりゃ驚くわよね!
いきなり来てそんなこと言っちゃ不味いよね?うんうん、いくら私が田舎者でもわかるわよ!

やっぱりここはしばらく公園で・・・それしかないよね?!


「あの、私、やっぱり・・・」
「わかったわっ!!類、すぐにあなたのお部屋の隣に準備しますっ!」


「・・・・・・はっ?!あの、ちょっとお母様?」

「いいのよ、牧野さんっ!あなたは気にせずにお食事続けて?パパ、急いで行くわよ!」
「お、おぉ!そうだな、すぐに準備をさせねば!」


驚いて私の方が席を立ったけど、その時にはもう2人はダイニングを飛び出て何処かに消えて行った。
そして相変わらず隣の人は黙々と食事中・・・「あんたも食べれば?」、とボソッと言われて放心状態でまた席についた。


このあと類のお部屋に戻ったら、加代さんって人に言われたひと言。


「本日は牧野様のお部屋のご準備が完全には出来ませんでしたので、類様のお部屋でご一緒にお過ごし下さいませ」



嘘でしょ・・・。




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隣の部屋の牧野・・・(笑)
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Comments 8

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2018/11/07 (Wed) 00:23 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/07 (Wed) 00:24 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

いや、ここ書いてたときにはまだ「隣の部屋の彼」の連載中でね(笑)
何となく「あれ?こっちもじゃん!」って気分になったんですよ。

この両親、可愛いでしょ?
だからね、これ書きながら「隣」の類パパも同時進行だったから可笑しくて。
確かに親がゆるキャラだと話は書きやすいですね♥


あはは!流石だなぁ!
何処に何しに行ったのか・・・ご想像にお任せします!

2018/11/07 (Wed) 00:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

桜姫様、こんばんは。

今回はこんな感じでお話が進みますので笑えるような日もあると思います♥

ふふふ、可愛いですか?でもこれは家の中限定で会社では威厳ある社長と副社長なのですよ。
類君は何処でも変わんないんだけど。

甘々類君も好きですが、こんなクールな類君も好きなんです。
いつ頃から甘々にしようかなぁ・・・なんて思いながら進めています~♥

2018/11/07 (Wed) 01:00 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/07 (Wed) 06:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

そうかもしれませんね。毎日こんな2人を見てたら恋愛恐怖症になるかも?(笑)
だんだん感情が豊かになる類君を楽しんでくださいね♥

先に恋に落ちるのがどっちかな?(笑)

クールな類君を書くのは好きです♥ボソッとしたひと言が堪んないですよね!(私だけかな?)

2018/11/07 (Wed) 10:17 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/07 (Wed) 10:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんばんは。

後悔はしてないかもしれませんよ?(笑)出て行きたくて仕方なかったんですから。
新しい世界で自分の恋を探し始めると思います。

ふふふ、類君はこんな感じで(笑)


類君の両親については「たまにはこんなのも~」って言うぐらいのノリで書いただけなので
笑っていただけると嬉しいです。

2人がどうなるか・・・まだまだ序盤なのでつくしちゃんに振り回される類君をお楽しみください。

2018/11/07 (Wed) 22:09 | EDIT | REPLY |   

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