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ほんの少しだけ転寝をして同時に目が覚めて・・・同時にお腹が鳴った!
それに久しぶりに大笑いしてベッドから起き上がった。

急いで服を着て台所で簡単なものを作って、久しぶりに小さなテーブルの上がお皿で埋め尽くされた。

「こっちに来てからはあんまり作ってないんだ・・・あはは!サボり癖ついちゃった。でも少しは覚えたんだよ、食べてみて?」

「うん、俺もちゃんと食べるのあの日の朝以来かも」

「一緒だね・・・」


出した物はゴーヤチャンプルーとクーブイリチーって言う昆布と豚肉を炒める沖縄料理。
それに類の苦手な人参を使ったニンジンシリシリ。これは沖縄家庭料理の代表的な食べ物らしく、人参の千切りをツナ缶と炒めて卵でとじるというもの。

「・・・・・・」
「あはは!類のその顔、久しぶりに見たわ。大丈夫だよ、これは類にも食べやすい味だから頑張って!」

「うん・・・頑張る」

何でもないものが2人だと美味しい・・・恐る恐る人参を口に入れて不思議な顔してる類だけど、すぐに笑顔になった。

しばらくサボっていたけど、もう頭の中では今晩のメニューを考えてる自分がいる。
類の好きなもの・・・卵焼きは絶対だね。


「あっ、忘れるとこだった。大学に戻らなきゃ」
「どうして?何か忘れたの?」

「うん!全部置いてきたの。お財布も教科書も、家の鍵だって大家さんから借りた予備の鍵なの」
「・・・ぷっ!」


取ってくるって言ったのに「1人はダメ!」って怒られて、結局類と大学まで行くことになった。
だから歩いて行く途中、これまでの出来事をもう1度・・・今度は詳しく話した。

お父様がアパートに来て私に話したこと、寮を出て行ったときのこと、空港までの出来事・・・沖縄に来てからの生活のこと。
大学でピアノを弾いたときのことを話すと類の顔が綻んだ。

「ブログでさ、牧野のきらきら星聞いたんだけど『まさかこのあと、止まっちゃう?』って思ったらホントに止まったから可笑しくて噴き出したよ。フランスでは弾けたのに・・・やっぱりあそこがダメなんだね」

「そうなの!途中でね、いけるかなって思ったらさ・・・嘘みたいに同じところで躓いたから、やっぱり私の腕は上がってないんだって思ったのよ!」

「・・・違うよ、俺がいないところで弾くからだよ」

今度は大学で言われたこと、お父様からメモをもらったことを話したらまた怒ったような顔になって眉を顰める・・・「すぐに丸めて捨てちゃったよ!」って付け加えたらその眉は元に戻ったけど。


それらをひとつひとつゆっくり話して、クリスさんと聡さんの恋物語から自分の間違いに気がついたと言えばクスクス笑っていた。
「人から聞いて気付くなんてホントに鈍感だよね?」、そう言って繋いでる指に力を入れられた。


「クリスさんが言ったの。『彼が残るんならそれに勝てるものなんてない』って・・・その時にね、類がそう思ってくれてるならもう1度会いたいって思って。それでそのままアパートに走って帰ったの。
スマホを見るのが辛かったから毎日持ち歩かなくてさ・・・さっき初めて類からのメッセージ読んだの。ごめんね・・・」

類が小さな声で呟いた・・・「置いて行かれる方は辛いんだよ。俺、子供の時からそうだから・・・」

それを聞いて類の顔を見上げたら、悲しそうに笑ってた。


何処にも行かないで・・・それは類が小さな時から周囲の大人に向けて発信していた心の叫び声だ。
それを聞いていながら同じことをしてしまった自分の行動を後悔した。


だから2度と彼の傍を離れまいと心に誓った。



************


<東京・花沢邸  花沢夫人>

類はもう牧野さんと会えたかしら・・・会ったとしたら、どんな顔して再会したのかしらね。
・・・そんなことを考えながら窓から秋が深まった庭を見ていた。

今まで私自身が色んなことに縛られていてあの子の幸せを1番に考えてやれなかった。
だから今度こそ・・・今度こそ類の想いを大事にしなきゃ。

愛する人が傍にいるだけで強くなれる・・・類はもうそれを知ってるんだもの。
あの2人を引き離してはいけない、それをあの人にもわかってもらわなきゃ・・・そう思ってスマホを手に持ったとき、同時にその電話が鳴った。


フランスからの国際電話・・・奇遇だわ、と半分笑いながら電話に出た。


「もしもし、あなた?」
『もしもしじゃない!どういう事だ・・・類が大学に退学を申し出たとこっちに学長から電話があった!類はどうした!』

「類なら牧野さんのところに行きましたわ。それは嬉しそうに・・・あんな類の明るい顔は初めてでしたわ」
『何だと!そんな馬鹿な・・・何処に行ったかわかったのか?!』

「類はいつまでも子供じゃありませんわ。必死に色んな手掛かりを集めて自分で彼女の居場所を見つけました。もう認めてやりましょう?あの子達はお互いに必要としてるの・・・一緒にいないと逆に何も出来ないのよ」

『・・・花沢には類しかおらんのだ!些細なことでも選択ミスは許されん・・・何かあったときに困るのは会社全体なのだ!』


この人は自分の子供が類以外望めないとわかった時から臆病になってしまったのね。
安定を求めるから慎重になり、慎重すぎて信用出来なくなり意固地になって・・・結果不安定なままなんだわ。


「あなた・・・私は確かに類しか残せなかったけど、類に沢山の子供が出来れば問題はないでしょう?そろそろ類1人に全てを押しつけるような考えは止めてその次の世代にまで目を向けませんか?
それまでに花沢が揺るがないような地盤作りをして行くのが私たちの役目じゃないかしら。今回のフランスの事業みたいに不慣れなことに挑戦するんじゃなくて、私たちがこれまでに築きあげたものを類に引き継いでもらって・・・土台がしっかりしていればそのうち類の子供達がまた新たな挑戦をするかもしれなくてよ?」

『・・・夢物語のようなことを言うな!そんなに甘い世界じゃない!』

「ローラン会長の言葉を思いだして?経営者家族が不安定で啀み合っていればそれこそ会社全体が揺らいでしまう・・・そう仰ったでしょう?今の花沢がまさにそうだわ。類があなたと距離を置くのはあの子のせいじゃなくて私たちのせいだと思うわ」

『それは・・・いや、類が・・・類の方が・・・』


「もっと信じてやりましょうよ。類はあなたが思っているより逞しい子・・・ちゃんと人を愛せる子に育っているのはお婆さまのおかげだと思うわ。あなたもお母様に愛されて育ったの・・・その事を忘れてない?」


この後、この人は黙ってしまった。
ふふ・・・すごく不器用で表現方法が間違っているけど類を愛してることに違いはないんですもの。

お爺さまもこの人も類も・・・花沢の男性達はみんな不器用だこと。



「あなた、今はご自分が誰からも愛されてないと思ってるでしょ?」

『な、なんだと?もう、この年でそのようなことなど考えたりするものか!馬鹿馬鹿しい!』

「あら!そうですか?私は今でもあなたのこと、この世で1番愛してますわ。だから、あなたの血を引く類に幸せになってもらいたいし、類の血を引く孫をこの手で抱きたいわ。
それを考えたら楽しくなりませんか?ね・・・もう意地を張るのは止めましょう?私も全部吐き出したら楽になりました。
あなたにもそうなっていただきたいの・・・類と啀み合うのではなくて手を取り合いましょう?」


『・・・好きにするがいい!ただし大学の中退だけは認められん・・・類にそう言っとけ!』


最後の方は照れて電話を切ってしまった。
やれやれ、ホントに素直じゃないから困ったものね。


「ふふっ・・・邪魔しちゃ悪いからメールでもしておこうかしらね」


あなたは見たこともないだろうから知らないでしょうけど、私のスマホの画面はあなたが小さな類を抱いて笑っている写真なのよ。 この世にたった1枚しかない、あなた達が一緒に笑っている写真・・・今度会ったときに見せてあげるわね。



私は類にメッセージを送った。

「えっと・・・”お父様から連絡ありました”・・・っと続きは・・・」





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長い間お付き合いいただきましてありがとうございました。
明日が最終話となります。
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2018/10/28 (Sun) 07:38 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/28 (Sun) 08:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あはは!そうですね。こういう人ほど孫にはベタベタなのかもしれませんね。
想像したら気持ち悪いのでやめますが・・・(笑)

いやいや、類君が子供をお爺さまに渡さないかも?そこでも喧嘩が始まりそうですね!

そういうお話も楽しいかも・・・あっ、書きませんけどね!えへへ。

2018/10/28 (Sun) 11:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

m・w様 こんにちは。

コメントありがとうございます。

どうですかねぇ・・・つくしちゃんが言えば意地を張りながら仲のいいフリぐらいはするんじゃないでしょうか?(笑)
でも、今回の事を根に持っていつまでもブチブチ言いそうですね。

類パパも自分のした事を、悪いと思いながら素直に謝らないでしょうし・・・ふふふ、困った花沢男子達ですね!

明日で終わりですが皆様の頭の中で続きを妄想していただけると嬉しいてす♥

2018/10/28 (Sun) 11:58 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/28 (Sun) 13:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

花沢ファミリーミニオーケストラ(笑)
類君の指導がめっちゃ厳しそう(笑)

「そこ・・・音、違う」のひと言で子供が凍り付く・・・つくしママ、いつも弾き間違える(笑)
ヴァイオリンだけプロ級。

それはいいんですが、類パパのところで「シンボル」と読んでしまい、一瞬ビビった私でした。

2018/10/28 (Sun) 13:26 | EDIT | REPLY |   
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2018/10/28 (Sun) 15:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・大変失礼しました。

そうします。

2018/10/28 (Sun) 15:35 | EDIT | REPLY |   

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