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plumeria

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桔梗の間・・・控え室とはいえ一般家庭の和室に比べたら極上の部屋。

12畳しかないけど広縁があって西門の日本庭園が見えるし、2畳分ほどの幅のある床の間には国宝級の花器と掛け軸・・・天然杢黒檀の座卓にまで陶器のお皿に水を入れてお花を浮かばせてる。

パパもママもよくまぁ顔が動くこと・・・隅から隅まで見回して落ち着きがない。
これで本当に総二郎のお茶をいただくの?それが想像できなくて私の方がその場に倒れそうだった。いや、倒れる前にこの2人の見た目をどうにかしなくちゃ!


「それよりどうしよう。パパもママもお家元に会うだけの支度をしてないのよ」

「俺は構わねえけど、そうだな・・・」

総二郎もチラッとうちの両親を見て苦笑い。
少し頭を搔いたけど「ちょっと待っててくれ」と言い残して部屋を出て行った。


「ねぇ、つくし!すっごい格好いい人ねぇ!ママ、ドキドキして心臓が止まるかと思ったわ~!」
「はっ、今更?道明寺だって見たことあるじゃん」

「いやいや、道明寺様は怖すぎてお顔を見ることが出来なかったけど西門さんは優しそうだねぇ!パパ、安心したよ!」
「・・・優しい?まぁ、優しいところもあるけど・・・」


夜の彼を見たら驚くわよ。
優しさの欠片も無くなるんだから・・・どれだけ許してって叫んでも止めない男なんだけど。


「それに気品に満ち溢れてて優雅で上品で・・・あんた、よく毎日西門さんを見てられるわね、気絶しないの?」
「何度も気絶してるわよ!あっ、そうじゃなくて・・・いいじゃないの、放っておいてよ!どうせ私より綺麗ですよ」

「パパにもあの色気を分けてもらいたいなぁ・・・そうしたらママも嬉しいよね!」
「・・・基本中の基本だけど、土台が違うのよ、パパ」


「酷いっ、つくし!」ってパパが大騒ぎするけど鏡見てごらんなさいっての!
万が一総二郎が色気を分けてくれても、彼と同じ台詞をパパが言ってもただのギャグでしょうが!

あれは総二郎だからいいのよっ!



こんな馬鹿な会話をしているうちに総二郎が戻ってきて、私たちに奥の部屋に行くようにと言い出した。


「どうするの?総二郎」

「親父の着物はお父さんには長すぎるだろうから古弟子の太田さんの着物を借りようと思って。それとお母さんには志乃さんに頼んでこの季節にあった訪問着を準備してもらったから急いで着替えてもらおう」

「ごめんね・・・何もかも」

「ははっ、俺にとっても親になるんだから大事にさせてもらうわ。まぁ、この家には馴染めそうにないけど、司の母ちゃんみたいなんじゃねぇから可愛いもんだ」


このあと急いでパパとママを引っ張って奥の部屋に行き、着付師のおじさんにパパを、志乃さんにはママ引き渡して着物を着せてもらった。
はぁっ、と廊下で溜息をついたら総二郎が私を後ろから抱き締めて「もう疲れたのか?」ってクスクス笑う。
だから彼に縋って斜めに顔を上げて「クタクタだよ~」って言うとチュッとおでこにキスを・・・!

「うわっ、なんてことすんの!誰が見てるかわかんないのにっ!」
「ははっ!仲がいいってことで許してもらえんじゃねぇの?」


その時「コホン!」と後ろから咳払いが・・・!



***************



「あら、久しぶりに総二郎を見るけど随分と雰囲気が変わったわねぇ!」

咳払いの後に聞こえたのは月代の大伯母様の声だった。
お袋の実家の現当主の奥方で、俺の祖母の姉に当たる人物。もういい歳だったが姿勢も顔の色艶も良くて、実年齢より相当若く見える。

うちのお袋はこの人と性格が似てて名家出身の割に気さくで大らかで面白い、子供の時から可愛がってもらった人だった。


「ご無沙汰してます、大伯母様。もうこちらにいらしてたんですね?」

「ほほほ、たった今よ。これから家元にご挨拶を、と思ってきたら仲良しさんを見掛けてしまって。いやぁねぇ、こんな廊下で!もっと人目につかないところでおやりなさいな、総二郎ったら」

「申し訳ありません。丁度良かった、それならここでご紹介しましょう。大伯母様に後見人としてお世話になるのが彼女、牧野つくしなんですよ。私より1つ下で後輩になります。
牧野、こちらがお前の後ろ盾としてついてくださる月代の大伯母様、月代和枝様だ」

牧野に大伯母様を紹介すると教え込んだ通りに姿勢を正し、「立礼の敬礼」でお辞儀をした。
「敬礼」は立ったままする最も正式なお辞儀で、頭は30度ほどの角度で下げる。歓迎を意味し、また初対面の相手に対しても行われる基本中の基本の挨拶。

簡単そうでなかなか出来ないのがこれだ。
ただ、頭を下げればいいというものでもなく、この時の一連の動きで品位がわかるというもの・・・牧野のように一般家庭の人間がこの世界の大御所達に認めてもらうには完璧に身に付けないといけないと志乃さんに仕込まれていた。


「初めてお目にかかります。牧野つくしと申します。お会い出来ましたこと、とても嬉しく存じます。この先も月代様には色々とお世話になることが多いと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します」

「・・・初めまして、月代でございます。家元夫人から聞いてはおりましたけどちゃんとご挨拶出来ますこと。それが出来れば大丈夫ですわ。つくしさん、これからは私もあなたの身内の1人ですからどうぞ宜しくね。総二郎の操縦は任せましたよ。暴れん坊ですからしっかりと繋ぎ止めないとねぇ・・・ほほほ!」


「・・・は?」

「大伯母様、明るいうちからはしたないお話はお止めください・・・それも奥の間でひっそりと、がいいのでは?」
「あら、そうね、総二郎。今夜は2人の話でも聞こうかしら?」

「ははっ!大叔母様の経験談でも牧野に話していただけると助かりますよ」
「ほほほ、一晩じゃあ無理だわねぇ!」


なんの話だかわかってないつくしは眉根に皺なんて寄せて俺達のことを見ていた。


繋ぎ止めるもなにも・・・俺はもうつくし以外は無理だけどな!



この後、着物に着替えた・・・と言うか完全に着物に負けてるつくしの両親と家元夫妻、月代の大伯母様、それに俺達での顔合わせが行われた。


「当家の次男、総二郎が牧野様のお嬢様、つくしさんとの婚儀を是非にと望んでおります故、西門にお迎えしたいと思っております。総二郎は私の跡目を継ぐ者でございますのでつくしさんにも大変なご苦労はお掛けするとは思いますが、宗家全員でお守りすることお誓い申し上げます」

「・・・は、はは、ははは、はい!!」
「こここ、こんな出来の悪い子で・・・こ、こちらそ申し訳ございません!!」


「お父様、お母様、総二郎の母でございます。こちらはつくしさんの後見人として西門流の中で里親のような役割をしていただく月代様ですわ。このような古い家ですのでそのような方をつくしさんにはお付けしますけど、決してお二人からお嬢様を奪うような意味ではございませんの。何かと煩く言う人がおりましたら私たち同様守っていただく方ですわ」

「月代と申します。どうぞ宜しく・・・」


「・・・・・・はい」
「・・・・・・宜しくでございます」


「仲人には後援会長の九頭竜虎之助様にお願いしようかと考えております。こちらで決めさせていただいて宜しいかな?」
「九頭竜様は信州のご出身ですけど当家と同じぐらい続いているお家柄ですの。現在は関東経済連の会長もされていて書道をご趣味とされている方ですわ」


「・・・・・・はぁ」
「・・・畏まりましてござります」

「パパ!ママ・・・ちょっと、しっかりして!」


牧野の両親の固まりようにうちの両親が慌てまくり、月代の大伯母様は大笑い、つくしは絶句・・・マジで笑えた。
お茶を出せば口に運ぶ前に溢すわ、見事に3分もしないうちに足は痺れるわで、つくしは真っ赤になりながら「申し訳ありません!」を繰り返してた。


「ははは、慣れない方には正座は辛いでしょうな。それでは本日の茶は総二郎が亭主を務めますが、お堀のある茶室がございますのでそちらで行いましょう。それだとお楽に飲めますよ」

「それが宜しいわね。ほほほ、お気になさらずにね、牧野様」



さて、それじゃつくしの両親に俺の茶を飲んでもらおうか。

まさか・・・抹茶を噴き出さねぇよな?




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Comments 4

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2018/11/07 (Wed) 12:25 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/07 (Wed) 16:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

チュン太郎様 こんばんは。

大丈夫です。来ていませんよ。


あっはは!牧野家・・・(笑)
娘を差し出す感じですよね!「こんな娘で良かったらどうぞーーっ!!」みたいな。

総ちゃんの色気をもらった牧野晴男(笑)
それを見て喜ぶ牧野千恵子・・・どんな夜になるんでしょうかね(笑)


いよいよお式に向けて動き出します♥

2018/11/07 (Wed) 22:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

あはは!確かに自分の両親がそんなんだったら胃が痛くなりますね(笑)
私の時にも父がテンパってすっごいアホなことして母が怒鳴ってました(笑)

それで結婚式当日にも親族紹介って言うのがあったんですが、父が緊張のあまり兄の名前がわかんなくなって

「お前、誰だっけ?」

って自分の息子なのに全員の前で言ったんですよ!(爆)
白無垢姿の私が「○○だよ!」って言って爆笑になりました。

ありゃ恥ずかしかったわーーーっ!


あはは・・・お茶会ね(笑)
すんなり終わるといいですけどね。

2018/11/07 (Wed) 22:25 | EDIT | REPLY |   

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