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立礼式ってのは机と椅子を使って茶を喫する方法で、これを屋外で行うと野点という形になる。
高齢の客や外国人など正座しにくい人の場合はよく使われるものだ。

今日はその中でも亭主は通常通りの畳の座で、客座だけが掘られて座れるようになっている腰掛け式という茶室を使って茶を点てる。
つくしの両親には俺が、月代の大叔母様とうちの両親にはつくしが点てることにして皆を茶室に案内した。

本来は茶懐石を伴う「茶事」がよかったがつくしの両親にはむしろ酷ってもんだろうから薄茶点前のみ。
茶花も掛け物もきちんと準備はしていたがそれを質問するなんてこともないだろうから、亭主挨拶だけして早速茶を点てた。


・・・すげぇ真剣な目で見てる。ってか、不思議そうな目で見てる。
おそらく俺がしてる帛紗捌きがわかんないんだろう・・・もしかしたら布で遊んでると思ってないだろうな?

「つくし、これは今何をしてるんだい?」
「パ、パパっ!しーっ・・・今は喋っちゃダメ!亭主のお点前を見る時間なのよ!」

「亭主?つくし、もう籍入れたの?」
「そ、そんなわけないでしょ!お茶を点ててくださる方を亭主って呼ぶのよっ」


「・・・つくし、いいから説明してあげてくれないか?お父さんもお母さんも初めてだろうからわからなくて当然だ」
「・・・はい、わかりました」


そうでもしないと可笑しくて俺の方が噴き出す!
今でも笑いたいのを必死に堪えて茶筅通しをしていたが・・・俺としたことが手が震える!

この後つくしが両親に茶の点て方を小さな声で説明し、俺の動きも何のためにしているかを教えていた。その度にわかってるのかわかんねぇのか「へぇ」「ほう」を繰り返して、俺は笑いを堪えるのに必死。

「パパ、ママ、この時間にお茶菓子をいただくのよ。どうぞ、柿の形をしてるけど外郎なの」
「あら?お茶は?」

「・・・お茶の前にいただくのよ!そのあとで出されるから」


マズい・・・手が震えすぎて湯を畳に溢すかと思った。誰か菓子食うために水でも持ってきてくれたらいいのに・・・なんてことを考えながら茶碗の中に入れた湯を静かに回していた。

「・・・ブホッ!つ、つくし・・・の、喉に・・・!!」
「死ぬ気で飲み込んで!」


ヤバい・・・早く出さないと倒れるかもしれない!それに俺も限界だ・・・!


「それでは・・・どうぞ」

普段なら無言で差し出しても場は進んで行くが、この2人には何かを言わないと固まったままだろうから、ひと言添えるとつくしが茶碗の持ち方から教えていた。
家元達にも月代の大伯母様にも下話をしているからこの光景を微笑ましく見てもらえるけど、後援会の爺さん達が見たら一発で反対されそうなほど悲惨な茶会だった。

「ゴホッ!ゴホ・・・あっ、すみません。ま、まったりしたお味で・・・」
「違うわよ、パパ!結構なお点前でって言うのよ!」

「あっそれそれ!」

「・・・ありがとうございます。本格的に飲まれたのは初めてですか?かなり苦かったでしょう・・・これも回数を重ねて参りますと良さがわかってきます。楽しんで飲めるようになりますので、これに懲りずにまた私の茶を飲みにお越し下さいませ」


腹が痛い・・・!!
つくしの真っ青な表情が超ヤバい・・・こいつ、こんなので次に茶が点てられんのか?
そうは思ったが、家元達はともかく月代の大伯母様には是非、つくしの茶を・・・と思っていたから亭主座を交代した。


「お父さん、お母さん。これよりつくしさんが茶を点てますのでお楽にしてご覧になって下さい。私がつくしさんに稽古をつけ始めたのは5年前ですが、本格的に指導し始めたのは2ヶ月ほど前になります。
茶道以外にも華道や作法、書道など毎日稽古をしてくれています。まだまだこの先も同じことをしていくわけですが、これを引き受けて下さったことは感謝しております」

「つくしが・・・お茶を?」

「はい。なかなかいい茶を点てますよ。それでは・・・」


今度は正客に月代の大伯母様、次いで家元、家元夫人が客座について、つくしが亭主座で挨拶を交わした。


そして稽古通りに美しい所作で茶を点てる。
先日より更に落ち着いて流れも良く、凜とした表情は大伯母様の目を潤ませた。

「結構なお点前でございました。つくしさん、大変美味しゅうございましたよ」
「月代様、ありがとうございます。今以上に精進して参りますので今後とも宜しくお願い致します」


つくしの両親はどんな想いで娘の姿を見て、何を感じたのだろう。
最後の方は涙を流しながらつくしの背中を見ていた。




今日最後の行事は全員での食事会。
改まった宴席ではなく足も崩しての大宴会。顔合わせってのは本来もう少し緊張感あるものだと思っていたが、これもつくしの両親に合わせて庶民的に行われた。

何本酒の瓶が開いたんだ?
さっきまでここにいたお袋は今度は向こう側で飲んでるし、月代の大伯母様の歌が始まった。
親父とつくしのお父さんは腕相撲をしてるし、志乃さんも事務長も来て大騒ぎになった。


「総二郎、ど、どうしよう?みんながおかしくなっちゃったよ?ごめんね、うちのせいで!」
「いいんじゃね?たまにはこうやって親父達も固っ苦しい宴会から解放されたいんだろ。ははっ、つくしも飲んだか?」

「飲めないよ~!ヤバいって、お家元にあんなこと!」
「いいっていいって!ほら・・・来い、つくし」

もう着物を脱いで普段着に戻っていたから、つくしのセーターを引っ張って俺の横に座らせた。
つくしは俺よりも両親の方が気になるから困った顔して宴会場を見回してる・・・そんなこいつの耳元に唇を寄せてキスしたらそれをお袋に見られてた。

「きゃああぁーっ!総二郎さん、親の前でなんですかっ!お部屋でやりなさい、お部屋で!」

「お?部屋ならいいのか?」
「そっ、総二郎ったら!」

「いいじゃん!許しが出たんだから部屋に行こうぜ、つくし!」
「いやぁあーっ!どうしてそうなるのーっ?!」



当然この後はつくしを部屋に連れて行って、1回軽めにいただいた。
「なんてコトすんのよ!」ってエラい怒られたけど仕方ねぇよな、嬉しかったんだから。

「これでまたひとつ前に進んだんだな」・・・そう言うと怒っていたつくしも途端にニコニコ笑って「そうだね・・・」と返事をした。



************



「それじゃ、つくし、頑張るんだよ?西門さんにご迷惑かけちゃいけないよ」
「あんたの取り柄は笑顔だけだから、いつも笑っといたらいいことがあると思うから・・・つくし、身体に気をつけてね」

「うん、ありがとう。パパもママも元気でね。また暇になったらそっちにも行くから」


もう真っ暗になってから、また西門の車で田舎に帰っていく。
その車の窓ガラスまで顔をくっつけて2人と言葉を交わした。

「西門さん、何も出来ない子ですけどどうか宜しく・・・こんなお屋敷に相応しくもない子ですけど守ってやって下さいね」

ママが総二郎の顔を見上げてそんなことを言うから慌てて「何よ、それ!」って怒鳴ってしまった。
そんなの、今更だよって・・・でも、総二郎は泣きそうなママの手を持って答えてくれた。


「ご心配はわかります。これから先、つくしさんの笑顔が絶えないように私が頑張ります。お母さん、お任せ下さい」

「はっ、はは、はいっ!!任せますっ!!」
「ママ!総二郎の手を離しなさいよっ!なんで今度はママが握ってんのっ!」


ドタバタの顔合わせだったけど、最後には泣きながら手を振って両親を見送った。
そんな私の肩を総二郎がずっと抱いてくれていた。





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Comments 6

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2018/11/08 (Thu) 14:56 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/08 (Thu) 16:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

チュン太郎様、こんにちは。

あっはは!お茶会、笑ってもらえた?

お菓子を先にいただくのは抹茶が濃いのでそのあとには食べにくいからだそうです。
そして食べながら飲むというものでもありません。

薄茶は何杯もいただけるので、お菓子を食べた後にお茶を飲むでしょ。そのあともう1回お菓子を食べてもいいんです。
濃茶の時は一度だけですけどね。

亭主は客がお菓子を食べ終わったのを確認してからまた薄茶を点てるんだそうです。

薄茶は茶事の一番最後、もう気分を楽にしていい時間なので会話も許されています。


笑いあり、涙ありのお話でした(笑)


え?ダメだった?
自分のお部屋なんだから大丈夫でしょ?軽めだし(笑)着衣でってヤツですよ(笑)

2018/11/08 (Thu) 16:39 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/08 (Thu) 17:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様 こんばんは。

あはは!笑っていただけて良かったです。
こういうのは書くの好きなんですよ(笑)

色気ばっかり続いたのでたまにはギャグを入れないと・・・(関係ないですけどね)

牧野家が受け入れられる所を書くのはいいですよね~。
何だかホッとします。

はい!ラストに向けて頑張りますよ♥
こちらにはもう事件はありませんから!


応援宜しくお願い致します。
いつもコメント、ありがとうございます♥

2018/11/08 (Thu) 20:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

はい!大宴会で終了しました。
個人的には晴男と家元の腕相撲が好きです(笑)
やる前から勝負が決まってそうですし、国宝級の家元の腕を・・・(笑)恐ろしい場面ですね。

総ちゃん、我慢のお茶(笑)
顔だけは必死に作ってたんでしょうねぇ。

腰掛け茶室の場合はお客様の前にはちゃんと足つきのお膳が出されて、そこにお菓子とお茶を置くんですって。

正座じゃないから楽ちんだろうなぁ・・・。


実はまた後日、牧野家登場です(笑)お楽しみに~!

2018/11/08 (Thu) 20:18 | EDIT | REPLY |   

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