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ある年の大晦日・・・花沢類にメールをした。ドキドキしながらメールをした。

『初詣、一緒に行かない?もう予定ある?』

返事はすぐに来た。素っ気ない返事・・・くすっ、いつものことだけど。

『何にもない。行こうか』


**


私の大学最後の年の冬・・・彼は花沢物産に入社して9ヶ月め。2年間だけ日本勤務、その後はフランスに行くって言ってた。
だからあと1年と少しだけ一緒にいられる。


告白はしないつもり。
したって別れるのがわかってるから・・・あとが悲しいだけだもん。

だから日本にいる間の友達期間、出来るだけ長く一緒にいて沢山の思い出を作るんだ・・・そう思っていた。


一緒に行けばいいじゃありません?なんて桜子は言うけど、そんな勇気はないんだもん。
類なら全部任せても守ってくれんじゃね?なんて西門さんは言うけど、それって迷惑かけるんじゃない?
男なんて単純だから上手に甘えりゃ大事にしてくれるってって美作さんは言うけど、そこが下手くそだから仕方ない。

お前の事は類に任せたからなって道明寺は言うけど・・・実は花沢類から何も言われてないんだもん。


いつも傍にいてくれて
私のしたいこと、全部付き合ってくれる。

いつもニコッと笑って横に立ってて
私が泣いてると黙って肩だけ抱いてくれる。

いつも同じ速さで歩いてくれるけど
私が暴走するとそっと手を取って止めてくれる。


大好きで大好きで・・・それに気がついたのはもう随分前。
気がついた時には彼は社会人になって、私の傍から離れてしまったときだった。


**


「花沢類、なんて願い事したの?」
「願い事?ん~・・・願い事ってあんまりないかも。願い・・・叶ってるから」

「えっ?!叶ってるの?」

初詣の帰り道、人混みを抜けて誰もいない道を歩いていた。
夜中の1時すぎ・・・ほんの少し雪が降ってる1月1日。

振袖なんて持ってないから短いコートにグルグルマフラー巻いて、バイト代奮発して買ったブーツを履いて。

花沢類は今日も格好良くロングのコート・・・寒いのは平気みたいだから平然とした顔で温かそうなマフラーだけ巻いてた。
両手はコートのポケットに突っ込んでて、2人で白い息を吐きながら暗い道を歩いてた。

「願い事が叶ってるなんて凄いなぁ!じゃあさ、おみくじ引いたでしょ?なんだった?」
「見てない・・・何処かに何か書いてあった?」

「えぇっ!見てないの?ダメじゃん・・・ってかおみくじに左右されそうにないもんねぇ、花沢類」

「・・・どういう意味さ」

「あっはは!私は末吉だったよ。まぁ、そんなもんかなぁ。凶じゃなかったからいいかって思っとこ!」


したい会話はこんなんじゃないけど。
叶ったっていう願い事・・・それがなんだったのか知りたいけど聞けない。彼女・・・じゃないもんね。


「凄い人混みだったのにこっちに来たら誰もいなくて静かだね」
「そうだね・・・正月じゃないみたい。みんなもう寝てるのかな」

「花沢類はいつも新年はパーティーじゃないの?家とかあいつらとか」
「みんな忙しいからね。うちは5日に新年会。それまではフリーだけど自宅には色々人が来るみたい。休みじゃないよね」

「大変だねぇ。私は卒論出したらあとはのんびりだよ」


「会社・・・自分で決めたんだね」
「うん!小さいところだけどね」


道明寺も美作さんも花沢類も、ついでに西門さんまで私の就職を世話しようとしたけど結局自分で選んだ会社に決めた。
だって・・・立場の違いを見るのもイヤだし、外国に行くときに社員として見送るの悲しいんだもん。

たったそれだけの理由でいいお給料を諦めて別の会社を選んだ。自分でも馬鹿だと思うけど。



次の交差点を右に曲がったら大通りに出て花沢類はお迎えを呼ぶ・・・その道まで来たら私の足は遅くなった。


もう初詣の時間も終わりかな。
11時に待ち合わせてたったの2時間ちょっと・・・短かったなぁ、なんて思いながら交差点の左側を見た。

その奥には公園があってこの時間だから誰もいない。
そして公園も通り過ぎて真っ直ぐ行ったら別の大通りになる・・・こっちを選んだらあとどのぐらい一緒にいられる?
凍えた手に息を吹き掛けながら仕方なく右側に行こうとしたら、花沢類がその手を取って「こっちから帰ろ?」って笑った。


彼が指さしたのは左側・・・雪がまた降ってきた。



****************



俺ね・・・あんたが考えてることだけはすぐにわかるんだよね。

右に曲がったらすぐに家に帰らなきゃいけないって思ったでしょ?すごく悲しそうにそっちを見たの、自分でわかってないの?
だから右側に行こうとしたのを止めて左側を指さした。

真っ暗で寒くて雪も降ってるけど・・・まだ2人でいたいから。


少し歩いたところに公園があって牧野を手招きしてそこに入った。
誰もいない公園の子供用のブランコに乗って、牧野は漕げるけど俺には無理・・・足が地面に当たっちゃうから。

それを「嫌みだなぁ!」って笑いながらほんの少し漕いでたけど、風が冷たいからってすぐに止めた。


「あのさ・・・さっきのおみくじだけど」
「・・・ん?」

「京都の伏見稲荷神社って沢山種類があるんだけど、『凶』って言うのはないんだって知ってた?」
「え?凶がないの?なんで?」

「正確にいうと凶とか大凶って文字だけで終わらなくて『小凶後吉』って言ってね、凶でも後には吉に転ずるって意味の縁起のいいおみくじなんだって」
「へぇっ!じゃあ凹まなくていいんだね!」

「そうだね。それに大吉には大を1つ多くつけて『大大吉』ってあるんだよ」
「あはは!それ引いたらラッキーだね」


くすっ、俺・・・さっきのおみくじで見たところって2つだけだったよ。
『待ち人:おそくとも来る』、『恋愛:愛を捧げよ倖せあり』・・・それ以外は覚えてないや。


そして願い事は・・・


「牧野、向こうの通りまで歩ける?少し遠回りだけど」
「・・・うん!歩ける!」

「じゃあ手を出して?」
「・・・手?・・・はい」


牧野の冷たくなった手を握って俺のコートのポケットへ・・・片手だけだけど温かいかな?


真っ赤になって俯いた牧野と並んでいつもより少し遠回り・・・。






koi28.jpg

類君の短編です。
2人のドキドキの1年間をお届けします。

更新は11月の偶数日を予定していますが変更の可能性もあります。
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Comments 6

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2018/11/02 (Fri) 14:11 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/02 (Fri) 15:39 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/02 (Fri) 15:43 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

類君が言わない理由・・・そのうちわかります♥

こんな言いそうで言わない焦れったい類君が好きなんです(笑)
言って欲しいつくしちゃんには悪いんだけど・・・。

これ、完全に恋人じゃんねー・・・って言わないでくださいね(笑)


そうそう、そのおみくじ、全部類君に言わせようかと思ったけど無理でした。
凄く多くて意味がわかんないんだもん!

でも「凶」の一文字じゃないのはいいかも♥

何回かあるんですよ・・・「凶」って・・・。めっちゃテンション下がって中身読めませんもんね。

2018/11/02 (Fri) 20:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様・・・どうしたんですか?(笑)

気に入ってくれた?
こんな感じで多分12話だけど進んでいきます♥

ニヤニヤしていただければ嬉しいですが、後半は切ないかも?(笑)
でもラブストーリーです♥

2018/11/03 (Sat) 00:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様(笑)類君には伝えておきました。

メッセージ来てますよ(笑)


『さゆ、怪我したんだって?ダメだろ・・・綺麗な手に傷なんて。
ホントに絆創膏貼ってる?あとでうちに来てくれたら貼り直してあげるよ?待ってるからね』
by類

2018/11/03 (Sat) 00:07 | EDIT | REPLY |   

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