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「うわぁ!寒い~!!今日は特に寒くない?」

私の大声に温かい格好をした学生達が変な顔して振り返る。
あっ、そうか!私の着てるものが安物だからか!って今更のように気がついて慌ててその場から走って逃げた。


それは1月の終わり、遅くなった卒論を提出してから大学を出ようとした時だった。
いきなり鳴ったスマホに驚いて画面を見たら、類からのメッセージ・・・『今日、半休なんだよね。何処かいかない?』

半休・・・午後からお休みなんだ!?
私は急いで返事を出した。


『今、卒論出しに大学に来てるの。今から帰るとこ。待ち合わせどうする?』

『じゃあ、そのまま大学のカフェで待ってて?お昼ご飯は食べないでね』


お昼は食べないで?じゃあ何処かランチに連れてってくれるのかな?
今は11時30分。お昼からお休みなら何時にここに来るんだろう・・・そんなことを考えながら大学のカフェで温かいカフェオレだけ飲んでた。


4年生はもう殆ど来てはいない。
ここにいるのは下級生ばかりだけど、みんな私より大人っぽいなぁ・・・。

私なんて急に花沢類に誘われても厚手のニットパーカーにマフラーだけ。今日もジーンズで可愛くも何ともない。
鞄だって1980円のバーゲン品・・・こんなんじゃ何処でランチするんだろう。
まさか予約なんてしてないよね?せっかく連れて行ってくれるって言っても着てる服でお店、変更されちゃうんじゃないかなぁ・・・急な誘いはホントに困るわ。

そう言いながらも口元は笑ってるけど。


12時45分のランチタイム、ここはカップルでいっぱいになる。
そんな中、1人で2人掛け用のテーブルを使ってるのも気が引けるから席を立った。

そしたら奥の方から悲鳴が聞こえてきて、顔を上げたらもう普段着に着替えた花沢類が片手で合図しながら入ってきた。


「お待たせ、牧野。お腹空いたでしょ?」
「うん、でも大丈夫。カフェオレだけ飲んじゃった」

「そう?じゃ、食べに行こうか」


「きゃああぁーっ!いやぁ、花沢先輩~!」って黄色い声が凄い凄い。
まるで私が犯罪者みたいな気分になるほど下級生に睨まれながら花沢類の少し後ろをくっついて歩いた。

大丈夫だよ・・・この人とは友達だよ?私、何にも言われてないんだから。言葉には出さないけど心の中ではそんなことを呟きながら完全アウェイなカフェを出て行った。



花沢類の車に乗って「運転上手くなったねぇ!」って言うと珍しくムッとしたから大笑い。

「今日、ランチって予約とかしてるの?私さ・・・」
「予約なんてしてないよ。どうしよう・・・新しく出来たイタリアン行く?すぐそこの公園前で見つけたんだよね」

「・・・うん!」

あはは、私の悩みなんてお見通し。流石花沢類だね!


彼が連れて行ってくれたお店は小さくて庶民的で、メニューだって悩むほどもない。
私は平気だけど花沢類は選べるんだろうかってチラッと顔を見たら真剣に悩んでる。

「ほうれん草とベーコン、明太子とイカ・・・どっちにしよう。牧野、なんにした?」
「私は山の幸パスタ!でもこれも美味しそう・・・海賊風だって!トマトベースであさりとエビとイカと・・・」

「じゃ、俺がそれにする」
「え?いいの?」

「うん、なんでもいい」

テーブルの上に置かれたパスタは横にサラダがくっついてて、子供用みたいなフルーツヨーグルトがついてて、花沢類とは全然似合わなかった。でも凄く美味しかった。

2人だったから・・・かもしれないけど。



食べ終わってもまだ2時・・・「どうしたい?」って言われたから「海が見たい」って答えた。本当は海なんてどうでもよかったんだけど、私のアパートと反対方向が海だったから。


東京湾アクアラインに乗って花沢類が向かったのは「海ほたる」・・・そこの5階の展望デッキに行った。

「牧野、今日は晴れてるから富士山が見えるよ」
「どこどこ?あっ・・・あれ?凄い、本当に見えるんだ!」

「あれ、スカイツリーね」
「うわぁ!小さいねぇ・・・本当に東京湾の真ん中なんだねぇ」

まるで東京に住んでる人じゃないみたいなはしゃぎよう・・・何処を見てもキャアキャア騒ぐ私をクスクス笑いながら後ろをついてきてくれた。


今度は4階へ・・・そこでタイムカプセルポストを見つけた。

「うわ、ホントにあった!大学の子が話してたの。彼氏と行ってここで手紙出したんだって。1年後に届くんでしょ?出してみようかなぁ・・・」

「止めときなよ。1年後なんてわかんないよ」


・・・そうか。1年後なんてわかんない・・・花沢類はあと1年と少しで日本からいなくなるから。
それなのにここで出した手紙が届いたって自分が苦しいだけだもんね。「うん、そうだね」って頑張って笑顔を作って、また海を見に行った。

そこには「倖せの鐘」があって恋人らしき2人が楽しそうに鳴らしていた。それを見ないように顔を逸らした。


流石、冬の海・・・風が冷たい。
顔に当たる風が痛いほど。だけどまだ帰りたくなくて震えながら海を見ていた。

「寒くない?俺のコート貸そうか?」
「ううん、寒いの平気だから。ふふっ、貧乏人は寒いのに強いのよ?言ってるでしょ!」

「我慢しても風邪引くだけだよ?牧野はそこまで強くないでしょ?」
「・・・大丈夫だよぉ!寒くないもん!」


本当はすっごく寒いけど。でも・・・少しでも長く、少しでも・・・。


「牧野、1度中に入って温かいもの飲もうよ」
「・・・うん」

彼がそう言って私の隣から移動した瞬間、強い風が私の顔に向かって吹いてきた!
今まで全然吹かなかったのに・・・そう思った時、花沢類が風を防いでくれてたんだって気がついた。


彼の方を向いたらニコッと笑って片手を出した・・・「牧野、おいで」って。



************



牧野がタイムカプセルポストに手紙なんて出そうとしたから止めてしまった。
だって1年後でしょ?きっとその頃はあんた、忙しいと思うよ?

くすっ・・・理由はまだ言えないけどさ。

それに全然海を見てるときは楽しそうじゃなくて、後ろ側で鐘を鳴らす2人組の声に耳を澄ませてる・・・羨ましいの?


あんまり寒いから中に入って温かい珈琲飲んでずっとお喋りを聞いていた。

大学の卒論、何度もデータを消したから時間がかかったとか、電気代が先月より凄く高かったとか。
美味しいケーキ屋さんを見つけたけど1個の値段が普通の店の倍だとか、せっかく買った野菜を腐らせたとか。
友達が卒業と同時に結婚するんだよ・・・その時だけ嬉しいんだか悲しいんだかわかんない顔して。

入社が決まってる会社が不安だって言うから「おいでよ、うちに」、そう言うとやっぱり首を横に振った。


とうとう外が暗くなって、ここの海鮮料理の店で晩ご飯。
やっと「帰ろうか」って言葉が出たときには泣きそうな顔になった。


「牧野、今なら誰もいないよ」
「ん?何が?」

「ほら・・・鐘のとこ。行こうか」

「・・・うん!」


海ほたるでの最後は2人で鳴らした鐘・・・ちょっと遠慮がちに、ちょっと恥ずかしそうに牧野は鐘を鳴らしてた。



「楽しかったぁ!花沢類、ありがとう。遅くなっちゃったね」
「まだ全然平気。じゃ、木更津経由で帰ろうか」


真っ直ぐなんて帰らない・・・今日も2人で遠回り。





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2018/11/04 (Sun) 13:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんにちは。

今日はまた随分と・・・(笑)

わかりましたか?早いなぁ・・・そうなんですよ、そういうお話です。
糖度高めで切なさ高め♥

ふふふ、そんな2人のお話です。でも類君の愛はいつでも変わらないんですよ♥
気を楽にして読んで下さいね(笑)

2018/11/04 (Sun) 13:57 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/04 (Sun) 16:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは。

そうそう!一緒に鳴らしたのよ(笑)

「牧野、鳴らしなよ。待っててあげるから」
「え?!1人で鳴らすの?虚しくない?」

「ヤだよ、恥ずかしいもん。早くしてよ、寒いじゃん」

・・・流石に類君がこれはないでしょう(笑)


いや、面白いかも?・・・ブラック類君♥


「好き」と言わない・・・あぁっ!切ないし、もどかしいよね!うんうん・・・わかる。

2018/11/04 (Sun) 16:54 | EDIT | REPLY |   

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