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3月1日、牧野の英徳大学卒業式。

この日は会社を休んでプロムナードが行われる会場に出向いた。
別に来て欲しいなんて言われた訳じゃないけど、多分牧野は誰にもパートナーなんて頼まないで、ドレスだって着ないでスーツのままそこに1人でいるだろうから。

少し前に聞いたら両親も仕事で東京まで来ないって言ってた。
今日みたいな日に牧野はずっと1人なんだろう・・・それだけはさせたくなかった。


卒業式が終わってプロム会場の中、案の定1番隅っこでスーツのまま、1人退屈そうに立っているのを見つけた。
誰かが俺を見てザワザワと声をあげるけど、牧野はそんなことにも気がつかないみたい。中央でワルツを踊る同級生をぼーっと見てるだけだった。


1年前を思い出してるの?
俺達全員あんたをパートナーにして交代で踊ったもんね。

総二郎が1番初めにあんたの手を取ってフロアに連れ出した時は少し頭にきてたよ。
それを横からあきらが奪って、あんた1番楽しそうに踊ったよね。あきらがダンス上手だからって・・・。

それなら最後に・・・って思ったのにあきらが俺に交代したから仕方なくそこで代わったんだ。でも全然話さなかったね・・・あんたも顔ひとつあげてくれなくて、俺もマトモに見ることもしなかった。
今だから言うけどドキドキし過ぎて何も頭に浮かばなかったんだよ・・・触れてる手の先が熱くてさ。


でも、1番嫌だったのは司に渡すとき・・・当然のようにあんたを引き寄せる司のこと、あの時だけは憎たらしかったな。
あんたも急に顔をあげて眉を寄せてたけど笑ってた。

俺もあの時、今の牧野みたいな顔して立ってたんだろうな。



「くすっ、なんて顔してんの?」

真横に行って初めて俺のことに気がついてすごく驚いてた。

「どうしたの?花沢類・・・会社は?」
「今日は休んだんだ。牧野、卒業おめでとう。今日は1人なの?」

「あ、ありがとう!うん、1人だよ。あはは!誘ってくれる人なんていないもん!」
「じゃあさ、俺が誘ってもいい?ここじゃなくてさ・・・もう外に出ない?」

「え?外に・・・?」
「だってここにいても楽しくないでしょ?」

戸惑ってる牧野の腕を掴んで、そこら辺にいる生徒の中を突っ切って会場の外に出た。



会場の反対側には英徳大学の豪壮な校舎と門がある。牧野と俺と・・・あいつらで過ごした場所。

今日、牧野が卒業したら完全に過去になる。
楽しくもあり、辛くもあった場所・・・でも、俺には牧野と知り合えた最高の場所だ。


「牧野、英徳、楽しかった?」
「ん?高校の時は辛かったよ。でも、大学は楽しかったかなぁ・・・ほら、道明寺とも友達に戻ったしね」

「何が1番楽しかった?俺、サボってた時間かも」
「あはは!それじゃ殆どじゃない?花沢類、大学の時だって高校の非常階段と同じような場所見つけて寝てたじゃん!」

「講義、楽しくない・・・眠たくなるじゃん?」
「だーかーら!花沢類は何処でも寝てたよ?それこそ、いつだったっけ・・・雪が降ってるのに寒いところで昼寝してたから私、凍死してると思って抱きかかえたことあったでしょ?」

「あったね・・・」


あの時、抱きかかえられたから抱き締めようとしたら司達も来たんだよ。
だから、1度出した手を引っ込めたんだ。


牧野とこんな会話をしながら車まで行って、助手席を俺が開けてあげる。
「さぁ、どうぞ」って手を差し出したら「お姫さま扱い?」ってクスクス笑って乗り込んだ。



****************



「花沢類、何処に行くの?」
「今日はね・・・空の上でご飯食べようと思って予約してるんだ」

「空の上?」

花沢類が車を向けたのは「東京スカイツリー」、この地上345メートルにある展望レストランだった。
そこの特別席・・・普通のスーツの私でいいのかと思うような綺麗にセッティングしてあるテーブルに案内されて、花沢類と向かい合わせで座った。

出てきたシャンパンも特別なもの。それを嘘みたいに輝いてるグラスに注いでもらって2人で乾杯した。


「牧野、改めて卒業おめでとう。社会人の仲間入りだね。頑張って!」
「うん、ありがとう。驚いちゃった!今日のお昼ご飯でさえスーパーのお弁当買おうと思ってたんだもん!」

「牧野らしい!遠慮せずに俺にエスコート頼んでくれればプロムぐらい付き合ったのに」


「・・・ううん、私にはあんなの似合わないよ。あっ、ここも似合ってないけどさ」


今のこの時間の方が全然いいよ。
花沢類とプロムになんか出たら、あなたはみんなの注目の的・・・私だけのものにならないんだもん。
こんな夢みたいな時間・・・花沢類を独り占めできる時間の方がいい。

言葉には出来ないんだけど。


お料理は創作フレンチでどれも最高に美味しかった。
前菜の彩りの綺麗なこと!食べちゃいけないような気さえする華やかさ。カナッペに小さめのキッシュ・・・大きなお皿にまるで絵のようにソースで模様が描かれてる。
「食べるの勿体ない!」って言ったら「食べなきゃもっと勿体ないよ?」って・・・だから残さず全部いただいた。

お昼なのに本格的なフルコース。
スープはポタージュが出てきて、真ん中にハート型のクルトンが浮かんでて可愛かった。

お魚料理はお目出度いからなのか真鯛のポアレ。
次に出たお肉は柔らかくて蕩けそう・・・花沢類のナイフの使い方を真似て一生懸命切って食べた。そして出された赤ワイン・・・大人すぎる味で少ししか飲めなかったらクスクス笑われた。

最後に出てきたデザートプレート・・・何か文字が書いてあった。


「Congratulations on your graduation.」(卒業、おめでとう)


「これ・・・」
「頼んでおいたんだよ。記念日だからね」


そして同時にお店の人が可愛らしい花束を持って傍までやってきた。

「花沢様からでございます。ご卒業、おめでとうございます」


このお店の店員さんが花沢類にその花束を渡して、それを彼が私に・・・突然の事で驚いて私はお礼さえ言えなかった。
ただ手にこの花束を持って呆然としてて「大丈夫?落ちちゃうよ?」って声をかけられるまで頭が真っ白だった。

「・・・なんか夢みたい。昨日の夜にはこんな事全然考えなかった。ただ学生が終わる日なんだってだけで、嬉しいのかどうかさえわかんなかったのに・・・。やっぱり嬉しいな、ありがと!」

「そう?俺なんかもっといろんなこと考えたけど時間が限られるでしょ?日本から飛び出そうかと思ったんだけどね」
「えぇっ?!そりゃ無茶だわ!」

「でしょ?パスポート用意してって言ったらバレちゃうからさ」



食事が終わったら近くのプラネタリウムに2人で行って三日月型の特別シートで星空を眺めた。
40分ある時間の半分以上、私の横で寝ちゃってる花沢類・・・その寝顔と星を交互に見ながら、ちょっとだけ触れてる指先にドキドキしてた。


「はぁ・・・よく寝た!」
「もうっ、ホントに後半ぐっすりだったね。お仕事忙しいの?」

「ボチボチかな・・・覚えなきゃいけないことが多いから。サボる時間ももらえないしね」
「あはは!何言ってんの、まだサボること考えてるの?」


覚えなきゃいけないこと・・・きっと1年先の準備がもう始まってるんだね。


今日の終わりはスカイツリーの天望回廊。
地上445メートルからスロープ状の回廊を歩けば、そこは本当に空の中・・・空中散歩って言うけどその通りだった。

どこまでも広がる煌びやかな光の絨毯・・・映画で見るような何処かの惑星の街みたいに見えて目が離せなかった。
ううん、そう思えばこのまま時間が止まって、ずっと2人でいられそうな気がしたから。だから、言葉も交わさずに花沢類と並んで閉館時刻ギリギリまで夢の世界にいた。


卒業式の夜、彼と2人で星の国へ遠回り・・・。





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2018/11/08 (Thu) 14:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

私もスカイツリー、って言うか東京に行ったのが相当前なので何にも知らないんですよね。
会社の旅行がディズニーってのもあったんですが、基本行かないので。

でも、行けたとしてもスカイツリーにもお台場の観覧車にも乗りません。
重度の高所恐怖症なのでテレビで高いビル見ただけで倒れそうになります。

たとえ類君が連れて行ってくれてもここだけは断わる(笑)
地面の上で祝っていただきたいと思います・・・。

2018/11/08 (Thu) 16:32 | EDIT | REPLY |   

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