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バスに揺られていた時に目の前にあった広告・・・吊革にぶら下がりながらそれから目が離せなかった。


夏祭りの花火大会・・・今度の日曜なんだ。
彼と一緒に行きたくて、行きたくて、でも1回も行こうって言えなかったなぁ・・・。


2年前に買った浴衣、まだそのまま持ってるもんね。
朝顔の花の水色の浴衣。大学のイベントで誰かが着てるのを見て「あの浴衣が可愛い」って指さしたのが水色だったから。


フランスでも花火大会ってあるのかしら。でも浴衣は着ないよね・・・流石に。

もうこれが最後になるかもしれない。
そう思ったら思い切って誘ってみようかと思った。友達として・・・浴衣なんかじゃなくていいから。


バスが急停車して思いっきり身体は斜めに倒れ込んだのに目だけはその広告を見つめていた。
気持ちが変わらないように…勇気が萎まないように。



バスを降りたら急いでアパートまで走った。
まだ明るくて暑いから汗まみれになるのに足が止まらなくて、日焼けしちゃうからって今年から始めた日傘も差さないで、とにかくアパートまで急いだら・・・その前に彼の車が停まってた。

はぁはぁと息を整えて、急いでハンカチで顔を拭いて車に近づいたら花沢類が私に気がついて車から降りてきた。


「お帰り。迎えに行ったら帰ったって言われてさ。ほんのちょっとの差で牧野、バスに乗ったみたいだね」
「そうなの?知らせてくれれば良かったのに・・・あっ、変な意味じゃないけど」

「驚かせようかと思っただけ。それにお土産渡そうと思ったからさ」
「お土産?」

「うん、昨日までオーストラリアに行ってたから。現地視察だけだったから3日で戻って来たけど」

そんなところに行ってたのも知らなかった。
そうだよね・・・恋人じゃないんだから何処に行こうが言う必要なんてないもんね。


ちょっと悲しくなった気持ちを抑えこんで花沢類が出してくれた紙袋を受け取った。
中に入ってたのはヘーグズ・チョコレートの詰め合わせと、オパールアクセサリー。ネックレスとピアスがお揃いのちょっと大人っぽいものだった。

「うわっ、綺麗・・・ありがとう、花沢類」
「どういたしまして。そのチョコは結構美味しかったよ。沢山あるから会社に持って行って食べたらいいよ。そのオパールはせっかくピアスホールあけたんだからと思って。夏っぽくない?」

「うん、素敵!これつけて何処かに行きたいなぁ・・・ねぇ、今度の日曜日、花火大会に行かない?」

「今度の日曜日?」


咄嗟に誘っちゃった。
おかしくなかったよね?アクセサリーつけて行きたいって言っただけだもんね?

ドキドキしながら花沢類を見たらニコッと笑って「了解!」って言ってくれた!

「ホント?無理してない?」
「無理なんてしてないよ。花火大会って何処でやるの?車で行ける?」

「えっとね・・・」

場所と時間を言ったら車じゃない方がいいね・・・って小さな声で言って、タクシーで迎えに来る事に決まった。この場の雰囲気で晩ご飯まで一緒に、なんて無理かなって考え込んでたら「それじゃあね」って車に乗っちゃった。

実は空港から直接私のところに来たらしく、今から会社に戻らなくちゃいけないらしい。
「じゃあ、日曜日にね!」って手を振って彼の車を見送った。




日曜日になった。

私の目の前には水色の浴衣と白いワンピースがある。
昨日から悩んでるけどどっちにするかが決められない。アクセサリーをつけるならワンピース?でも、浴衣も見てもらいたい。浴衣にピアスなんて変?
浴衣にするなら早く美容院に行って髪を結ってもらわなきゃ・・・それに浴衣も1人じゃ着られない。

朝ご飯もそこそこで、昼ご飯なんか全然喉を通らなくて・・・とうとう3時になって浴衣を抱えて美容院に走った。


もらったアクセサリー・・・似合わないだろうけどピアスだけつけてみようと思って。



『7時にアパートの下にタクシーで行くね』

花沢類からのメール。
どうして花沢の車じゃなくてタクシーなんだろう?

初めに聞いたときはあまり考えなかったけど、彼がタクシーを使うことにほんの少し違和感を感じたのは当日・・・アパートの前に派手なタクシーが停まった時だった。

下駄を履いてカンカンと階段に音を立てながら降りて行ったら、花沢類が凄い勢いでタクシーから出てきた。
そして浴衣姿の私を見て・・・ちょっと照れたように笑ってた。

どうして花沢類が赤くなるのよって・・・それを見て私も赤くなる。


「びっくりした。浴衣なんだ・・・可愛いね」
「そ、そお?もらったピアス、これでも可笑しくないかなって思って。ゆ、浴衣なんて着る機会、こんな時しかないんだもん」

「うん・・・すごく綺麗。さ、乗って」

着物の場合車に乗るのはひと苦労・・・花沢類が手を貸してくれて頭をぶつけないようにタクシーに乗り込んだ。



花火大会の会場はすごい人混み・・・花沢類は迷子にならないようにって私の手を握ってくれていた。

通り過ぎる人が彼の事を振り返って見てる。
「なにあれ、彼女?」なんて言葉が聞こえてくる・・・わざわざ「違うよ」なんて答えないけど。
黙ってスマホを向ける人もいる。何だか腹が立つから、その時は彼に話しかけて顔を横に向けさせる意地悪をする。

「どうしたの?お腹空いた?」なんてクスクス笑うから、話しを合わせて「うん!」って言うと小さなリンゴ飴を買ってくれて、それを食べながら隣を歩いてた。


ヒュ~~~・・・ドドーーーン!!


「あっ!花火があがった!類、花火があがったよ!」
「・・・うん、綺麗だね」

「うん!凄い凄い!!私1回でいいからこの会場で見たかったんだよねぇ!あっ、これも綺麗・・・すごーい・・・」




**************



夜空に花火が打ち上がって、牧野の顔を七色に輝かせた。

俺より少しだけ前に出て、それでも手だけは離さないで、牧野は真上を見上げて嬉しそうに声をあげていた。
「綺麗だね」「凄いね」って・・・何度も、何度も。


あんた、さっき俺のことを『類』って呼んだんだよ。花沢類じゃなくて『類』って・・・もう、そんな風に呼んでくれないの?
本当はフルネームで呼ばれることが好きじゃないって、あんたは知らないもんね。

どうしても俺達の距離を感じさせてしまうその呼び方・・・早く変えたいって思ってる。
お互いに名前で呼び合う日がいつか来るって信じてるよ。



最後の花火があがって辺りは凄い歓声に包まれた。
牧野も俺の手を握ったまま拍手して、カラフルな色に染まっていた牧野の顔は元に戻った。

「楽しかったねぇ!花沢類、楽しめた?」
「くすっ、あんたを見てたら面白かったよ」

「え?ダメじゃん!空を見とかなきゃ!花火なんだから」
「ちゃんと見てたよ。綺麗だったね」


俺はあんたの顔に映る花火を見てたよ。
凄く綺麗だった・・・俺の「綺麗」は全部あんたのことだったのに気がついてないよね。


「ねぇ、花沢類。凄い人混みで道路が・・・これじゃタクシー拾えないね。時間がかかりそう・・・どうしよう」

「この海浜公園の向こう側まで歩こうか。牧野、下駄大丈夫?」
「うん、私は大丈夫だけど。歩くの?何処まで?」

「・・・ん?歩けるところまで・・・くすっ、足が痛くなったら抱っこしてあげるね」
「えぇっ?!やだよぉ!」


2人でなら何処までも歩きたいよ。
誰にも邪魔されずに、誰にも反対されずに・・・あんたと2人なら苦しくないと思うから。


ねぇ、牧野・・・この道、ずっと続けばいいのにね。






仕事だと言われてオーストラリアに向かったら出迎えたのは婚約者という女性だった。
名前も忘れたけど美しい人。でも・・・それだけで心は何も揺さぶられなかった。


「オーストラリアは今、冬ですけど私は大好きですの。いずれはこちらに別荘でも持ちませんこと?」

「どうぞご実家に頼んで下さい。大変申し訳ないがあなたの事を愛することは出来ない。ですからそちらから婚約を破棄して下さい。男性側から断わられるのはお嫌でしょう?」

「・・・私は類様のことを愛してますわ」

「私のことを何も知らないのに?親に決められた相手を愛するようにと教育を受けられましたか?そうだとしたら・・・あなたは可哀想な人ですね」


彼女はその場で泣き出した。
それでもその人の背中すら支えてあげられなかった。


酷い男だと思う・・・でも、愛せるのは1人だけだから。





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2018/11/18 (Sun) 12:59 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/18 (Sun) 13:01 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/18 (Sun) 13:05 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ルチノー様、こんにちは。

花火大会・・・総ちゃんのお誕生日には秩父で花火大会があるんですって!
冬の花火も良さそうだけど寒そう・・・。

私は金色一色の大玉が好きです♥


出た!ブリザード類!
これは結構寒いですよ・・・見ず知らずの人には特別無愛想で冷たそう(笑)

酷い男・・・そういう類も好き♡

2018/11/18 (Sun) 14:07 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

こっちはハイスピードで季節が変わっておりますね(笑)
こうしてみると秋ってあんまり行く所がない・・・って思いました。

カウントダウン。
そうですね・・・つくしちゃんは焦ってるかも?
でも、本当に焦ってるのは類君ですよね。

もう少し・・・頑張れ!類君(笑)←切ない話で遊んでいる私。

2018/11/18 (Sun) 14:11 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

あはは!とんでもないです。
書いた本人もよく忘れてしまいます!

気にしないでくださいね♡

2018/11/18 (Sun) 14:12 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/18 (Sun) 17:02 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/18 (Sun) 20:45 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

さゆ様、こんばんは。

あはは!ここは妄想の世界ですからいいんですよ(笑)

「もう歩けん」・・・可愛いっ!
私の住んでるところも「歩けない」じゃなくて「歩けん」です♡

おんぶしてもいいんですけど、浴衣ですもの。おんぶしたら足が・・・(笑)
そう思って抱っこにしました。
(実は最初はおんぶでした)

切ないのもそろそろ・・・もう少し待っててくださいね♡

2018/11/18 (Sun) 22:26 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは。

そうですねぇ・・・つくしちゃんの気持ちは遠慮と言うより恐怖心でしょうか。
類君が何故言わないのかはそのうちわかるかな?

って、もうそこまでお話は残ってないんですけどね(笑)

残るイベントは・・・あれしかないですよね♡

焦れったくて申し訳ありませんがもう少し待ってやってくださいね。

2018/11/18 (Sun) 22:33 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/19 (Mon) 00:23 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

まりぽん様 こんにちは。

切なさお届けしちゃいました♡
何かと大変な類君ですが、揺るぎなく闘っておりますよ!

うんうん、仕方のないことなんです・・・。
でも気持ちはわかる(笑)
知らなくても顔だけ見たら惚れるかもっ!!(相手のお嬢様・・・あんたの気持ちはわからんでもない!)

ただ、ここは退いていただきたい・・ってところですね。

もうすぐ終わる話なので、ホッコリまであと少し!頑張れ、つくしちゃん♥

2018/11/19 (Mon) 10:01 | EDIT | REPLY |   

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