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つくしの両親との顔合わせを済ませ、月代の大伯母様とも上手くやれそうだ。

次は後援会の連中につくしを紹介していくという話になり、それは年が明けてからすぐに行われる初釜の時期にする事にした。

その時には地方の各支部長や後援会幹部が一同に集まる。
つくしの紹介には持って来いだが、その前に後援会の九頭竜会長の了解を得る必要があると親父に言われ、こともあろうか俺の誕生日にそのための茶会を開くことになった。


「だから、なんでわざわざその日なんだ?初釜まであと2ヶ月間もあるってのになんでその60日間の中でその日を選ぶ?もしかして嫌がらせしてんのか?」

「そんなわけないだろう!九頭竜様の都合と私とお前のスケジュールを考えたらその日しかなかったのだ。あまり年の瀬にやるわけにもいかんだろう。我儘を言うんじゃない!誕生日なんぞ毎年来るだろうが」

「俺達が恋人になって初めての誕生日だぞ?こんな古臭い家で過ごしたくねぇじゃん」

「なんと罰当たりな・・・私と母さんはこの家で祝ったぞ?!」
「大昔と一緒にすんな!」


親父と言い争ったが勝てるはずもなく、つくしの茶会は予定通り12月3日に決まった。
それまでは今までよりも細かいところまで指導して、会長に粗探しさせないようにしないと。


今度も正式な茶事ではなく薄茶点前運びのみ。

顔合わせの時は俺と交代したから既に道具が揃った時点で始めたが、今度は道具の運び出しから客の前で行うわけだ。
この道具の運び出しが中々難しい。運ぶ時の持ち方、順番、置き場所は畳の目数で細かく決められているからその場で数えるわけにもいかない。何度も稽古してその感覚を覚えていくしかない。

入室から見送りまでの一連の流れを本格的な茶室でしたことのないつくしは、場所が変わっただけで緊張して、棗は倒すわ湯は溢すわ抹茶は溢すわ・・・そのための初日の稽古は悲惨なものだった。

思ったより出来なくてガクンと落とされたこいつの小さな肩・・・そいつをポンと叩いて「まぁ、気楽に行こうぜ」と笑うと逆に泣き出した。


「どうしよう・・・こんなんじゃ認めてもらえないよ!頭じゃわかってるのに手が動かないし、手が動いたら頭が真っ白になっちゃう。このままだと本番も同じようになるかもしれない・・・総二郎、どうしたらいい?」

「そん時はそん時だろ?今回認められなかったら2度とチャンスがねぇ訳じゃない。2回目の方がプレッシャーがかかるだけで何度だって挑めばいい。茶会ってのは勝負じゃねぇんだから、その時の空気が大事・・・だから少々のミスなら気にしない。
どれだけ完璧な所作で茶を点てても心がなきゃ最悪な席になるんだ。総てが揃って最高の茶席になるんだけど、それは家元でも俺でも簡単には出来ねぇよ。そういう世界だから会長もそこを重視すると思うぞ」

「・・・心」

「そう、大事なのはその茶席を楽しむこと・・・それが1番難しいってわけだ」


つくしの可能性を見てもらえればそれでいい・・・その言葉でやっと笑顔になったつくしは「もう1度お願いします!」と俺に両手をついた。


**


12月3日

前日から西門に泊まり込んで最終稽古を終えたつくしはその日の朝、俺の部屋のベッドで目を覚ました。

緊張しまくってるから昨日の夜もリラックスさせるつもりが本気になって、とうとう明け方まで抱き潰してしまったから目を覚ましても中々立てない。
それに噴き出したら「失敗したら総二郎のせいだからね!」と叫ばれた。


「ははっ!俺のせいにしとけばいいじゃん。でも、お前がそれを説明すんのか?なんで足腰がふらふらしてるかって?」

「それも総二郎が説明・・・ダメじゃん!そんなのみんなの前で言えるわけないでしょ!」

「だろ?じゃあ意地でもその腰で踏ん張らなきゃな!」
「意地悪!」


今日は志乃さんじゃなくて俺が着物を着せてやる。
つくしの歳に合わせた色留袖で柄は寒椿・・・でもこの季節だから色合いは抑え気味。茶会だから着物の小物は一切着けずに簪もひとつだけ。

それでも特注の着物に身を包んだつくしは凜とした美しさがあった。


少しだけ震えてる。
抱き締めてやりたいけど着崩れしちゃいけないから、額をコツンと合わせてほんの少しだけそのままにしていた。

「よし・・・じゃ、茶室の準備に行こうか」
「・・・はい。宜しくお願いします」

「その前に裏庭に行こう。今日の茶花はお前が切り取れ。亭主の仕事だからな」
「はい。でも、どれがいいか教えてね」


女性の茶席らしく茶花はピンク色の山茶花に山ぼうしの照り葉を使い、花入れには染付の徳利型を選んだ。
それを生けて床の間に飾り、掛け物をかけ茶席を作る。

準備が出来たら一度自室に戻って精神統一・・・目を閉じて小さな声で何度も手順を唱えながら微かに動く指先。自分が初めて亭主をした時の緊張感を思い出しながらそれを見つめていた。
今はつくしの世界を見守ることしか出来ない・・・この時間に出す言葉はむしろこいつの邪魔になるだけだ。


「九頭竜会長がお見えでございますよ」

志乃さんの声が廊下から聞こえるとつくしの肩がビクッと上がった。


そして大きく息を吸ってから自室を出て、今日の茶室に向かった。
俺は隣の水屋でつくしの気配だけ感じてじっと待つ・・・もしかしたら俺の方が緊張してんじゃねぇのかと思うぐらいドキドキしていた。



***************



「中々良い茶でございました。若宗匠のご指導が宜しいのでしょう。私としては反対はございません。初釜の日にはよい報告が皆に出来ますな」

九頭竜会長の言葉で家元、家元夫人、それに俺とつくし、全員で頭を下げ、この場は家元ではなく俺の方から礼を述べた。


「ありがとうございます。これからも精進して参りますのでどうぞ宜しくお願い致します」

「何かと小五月蠅い連中もおりましょうから何かあれば九頭竜の名前をお出しなさい。そうすれば大抵の者は鎮まりましょう。つくしさん、と仰ったかな?これからもお稽古を重ねなさい。そして若宗匠を支えておやりなさい。この子はたまに羽目を外しますからな・・・ははは」

「会長・・・お言葉ですが今はそのようなことは・・・」
「九頭竜会長様、またいつか私のお茶を飲んで下さい。それまでにもっと心を磨いておきます」

「楽しみにしておりますよ」


会長の車が門前から見えなくなるまでつくしはその車に向かって頭を下げていた。
そして身体を起こそうとしてガクン!と前に倒れそうになり、慌てて支えると「腰が痛い・・・!」とすげぇ小さい声で呟いた。


「ははっ!部屋まで抱きかかえてやろうか?本邸の廊下・・・みんなが驚くぞ?」
「やだぁ!頑張って歩くよぉ!も、もう少し待って・・・あたたた、ホントに腰が立たない・・・!」

「・・・今日、なんの日か知ってるよな?」
「なんの日だっけ?知らない、忘れた、思い出せない!」


「忘れてもいいけど逃げられねぇぜ?」
「・・・・・・!」


マンションに戻った途端、俺はつくしをベッドルームに運んだ。
そしてやっぱり手加減なんてしてやれなくて、疲れてるってわかってるのにつくしを離すことが出来なかった。


欲しいものが何かって聞かれたら間違いなくつくしの総てだと答える・・・俺の24歳の誕生日はつくしを抱き締めたまま過ぎていった。




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2018/11/09 (Fri) 20:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんばんは

meimei様、こんばんは🎵

コメント、ありがとうございます。
はい、落ち着いてきましたね♥️

ははは、やっぱりいけませんかね?
もう総ちゃんですから仕方ないんですよ(笑)


今月には終わります。
最後まで宜しくお願い致します。


2018/11/09 (Fri) 21:08 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/10 (Sat) 17:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

チュン太郎様、こんばんは。

ふふふ、おでこコツンはお好きでしょ?私も好きなんですよ♥
今回はもうお茶会のシーンもすっ飛ばし(笑)前後の緊張感だけにしてみました。

腰砕けまくりですがそこもすっ飛ばしました。


えぇ!エロplu食堂終了ーーーーーーーーっ!!!ですからね♥


文句を言わないチュン太郎様が逆に怖いです(笑)

2018/11/10 (Sat) 20:08 | EDIT | REPLY |   

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