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plumeria

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「いいじゃん、そんなに泣かなくても。何もつけてなかったわけじゃないんだから」
「そういう問題じゃないわよっ!だからバスローブなんてイヤだったのよ!」

「そんなこと言わなかったじゃん。パジャマが良かったなら今度からパジャマを用意させるよ」
「・・・そっちのがいい」

朝っぱらから類にクリームイエローのフリル付きブラを披露して、しかもそれを真顔で見られても彼には動揺の色すら感じられず・・・昨日から自分に自信が持てないっての!
あ、いやいや・・・そうじゃなくて。


あんまりにもその前の日が寝不足だったから昨日は動くこともなく爆睡して、それでも慣れないバスローブをどうやら自分で寝てる間に紐を解いて楽にしてたみたい。
起き上がった時、上半身だけ布団を剥いだだけで良かったわ・・・全部バサッと剥いでたらパンツまで披露するところだった。



「寝相は悪くないんだね。くすっ、蹴られたらどうしようかと思ってたから」

「蹴ったりはしないわよ。でも田舎では抱き枕してたから抱きつくかも・・・って、なんてこと言わせるのよ!」
「自分で言い出したんでしょ?それよりよく寝られた?」

「うん!気持ち良かった!」


この会話は類の部屋からダイニングに向かう途中。人の気配を感じて振り向いたら、若いお手伝いさんが真っ赤な顔して「申し訳ございません!」って走り去った。
・・・まさか「気持ち良かった」だけ聞いて変な想像してないでしょうね?



ダイニングに入ったらもう類のご両親が並んで座っていた。
大きなテーブルなのにぴったりとくっついて・・・仲がいいなぁ!って微笑ましくなって私まで笑顔になったのに類は知らん顔。むしろ機嫌悪そうに向いの席に座った。

私は・・・と思ったら類の真横に椅子がある。
また彼に「ここ」って指で合図されたから急いでそこに座った。


「おはようございます!お父様、お母様」

「おはよう、牧野さん・・・そうねぇ、つくしちゃんでもいいかしら?家の中ではつくしちゃんにしましょう?」
「そうだな、その方が打ち解けて話せそうだし。おはよう、つくしちゃん」

「あははは・・・はい、なんでも大丈夫です」

私が挨拶しても類は何も言わなかったから、つい横を向いて「挨拶は?」だなんて言ってしまった。そしたら少しだけ横目で睨まれて、でも負けずに睨み返したら面倒臭そうに蚊の鳴くような声で挨拶をしてた。


「・・・おはよう」

「おはよう、類。まぁ、なんなの?朝からご機嫌が悪いのねぇ!そんな事じゃ1日元気よくお仕事できなくてよ?」

「会社に行けば五月蠅い秘書もいるから仕事なんて機嫌に関係なく進んでくって」

「・・・可愛くない子だこと!つくしちゃん、類のこういうところ、直してあげてね?」


「頑張ります!」

・・・って元気よく答えたわりにはどうやって直すのかわかんないけど。


花沢家の朝食は焼きたてのクロワッサンにホカホカのオムレツ。その横にはグリーンサラダにエッグスラット。
フルーツの盛り合わせにヨーグルト・・・香り高い珈琲に私の前にはオレンジジュース。

瀧野瀬では完全な和食だったから、ホテルみたいなメニューに大興奮して類にブラを見られたことなんてすっかり忘れた。
「いただきまーす!」と元気よくオムレツにフォークを入れるとキノコのソテーが入ってて美味しい!
エッグスラットは初めてだったから類に食べ方を聞こうとしたら・・・

「あれ?類・・・何も食べないの?」
「ん・・・朝は欲しくない」

「何言ってんの!ちゃんと食べなきゃダメでしょう?作ってくれた人が泣くわよ?!」
「・・・は?泣かないでしょ」

「泣くわよ!類の見てないところで泣いてんのよ!はい、フォーク持ってひと口でもいいから食べて!」


「・・・・・・」


**************



高校生ぐらいから朝なんて珈琲一杯で終わらせてるから、今更どれだけ並べられても食べる気なんてしなかった。
俺1人が食べなくてもこれって誰かが後で食べてると思うし、ましてや調理人が泣くだなんて考えたこともなかった。

それなのに牧野がすごく真剣な顔して「食べろ食べろ!」って五月蠅いから・・・仕方なくフォークを持ってオムレツを食べた。
まぁ・・・不味くはない。美味しい・・・と思う。


「はい、クロワッサンも温かいから1つは食べてね」
「・・・もう食べられないって」

「そんなわけないでしょ?食べなきゃ脳が働かないわよ。朝ご飯食べないとそのうち太っちゃったり心疾患になる可能性があるって研究報告があるんだから!」

「太ってないし・・・」

「今はね!たとえば朝食べないで午後からドカンと食べるとお腹が空いてるから余計に栄養摂っちゃうのよ。そしたらLDLコレステロールが高くて、インスリン感受性が低くなるの。ちゃんと裏付けがあるんだからね?それに朝ご飯抜きだと血糖値が低下して脳の働きが悪くなるでしょ?仕事の効率が落ちるし空腹でイライラしちゃうよ?ずーっとそれを続けると脳への栄養不足から痴呆になりやすいんだから・・・はっ!」


自分でかなり喋ったクセに慌てて口を押さえて父さんと母さんを見た。
「よく知ってるのねぇ!」なんて母さんは喜んでたけど、インスリン感受性って言葉・・・普通の子が知ってるんだろうか。

こんな調子でクロワッサン1つとフルーツ少しと、ヨーグルト、それにオムレツを半分ちょっと・・・俺にしては最大級の努力で食べて、最後の珈琲を口に運んでた。
牧野はまだ物足りなさそうに俺の皿を見てはブツブツ言ってる・・・「もう無理」って言うと口を尖らせた。

「・・・オムレツぐらい完食して欲しかったなぁ。作ってくれた人、悔しいと思うもん」
「じゃ、牧野が食べてよ。まだ食べられるでしょ?」

「・・・ホント?もらっていい?」
「ここは自宅だからいいよ。はい、あげる」

「うわーーーいっ!」

さっきの蘊蓄なんて何処へやら、今度は途端に子供みたいな声を出して俺の皿を自分に寄せた。


「・・・仲がいいのねぇ、あなた達」


急に母さんがニコニコしてそんな言葉を出してきた。
隣の父さんまで嬉しそうに・・・そして自分たちも負けじと母さんが父さんのクロワッサンにエッグスラットを塗り始めた。

もしかしてこれから毎朝こうなんだろうか?ちょっと目眩がしそうだけど。

「つくしちゃん、私たちもお腹が出ちゃった類なんて見たくないからこれからも朝は宜しくね?私たちが何度言っても食べなかったのに、さっすが彼女ねぇ!こんなに素直に言うこと聞く類なんて初めてだわ」

「は?はぁ・・・朝ご飯、食べさせたらいいんですね?」

また余計な事を・・・って目線を外したら母さんが急に声色を変えて牧野に話しかけた。


「それでねぇ・・・うふふ、つくしちゃんは具合悪くはないの?」
「・・・は、具合ですか?だ、大丈夫ですけど?」

「気分が優れなかったらすぐに言うんだよ?ママも経験者だし加代でもいいし、何なら経験者の使用人を傍に付けてもいいんだし。大事にしないと何かがあったら大問題だからね」

「経験者・・・?」


何のことだと視線を戻したら一段と嬉しそうに笑ってる。母さんが経験者で牧野の具合・・・まさか?


「ねぇ・・・言っとくけど牧野にそんなの出来てないよ」
「「えっ・・・!」」


やっぱりね・・・。
父さんはエッグスラット乗っけたクロワッサンを床に落として、母さんは飲もうとして持ち上げた珈琲カップを派手な音立てて元に戻した。そして突然父さんが母さんを引っ張って部屋の隅に・・・2人とも口に手を当てて小さい声で話してたけど全部聞こえた。


「母さんが間違いないって言うからフランスにベビーベッドの注文をかけてしまったよ!早とちりだったのかい?!」
「だって類が一緒に住むって言うんだもん!それしか考えられないでしょ!私だって主治医に検診申し込んだのよ?!」

「今なら産まれるのは来年の夏だって言うから長期休暇を取ろうと思ったのに!」
「私なんてもう名前を決めたのよ?!」



牧野には何のことだかわかんなかったのか、突然すぎて真っ白になったのかポカンとしていた。

「・・・ご馳走様」


お腹が出た俺とかお腹が出る牧野とか・・・そんなことよりホントにお腹が出始めた父さんの心配したらどうなのさ!
気分が悪くなって1番初めに席を立ち、牧野が慌てて「ご馳走様でした!」って言ってる最中に、それを待たずにダイニングを出た。


そしてスーツに着替えて会社に行く支度をする。
牧野はどうしていいかわからないから黙って俺の部屋のソファーに座っていたけど、支度が完了してチラッと見ると急いで立ち上がり俺の横までやってきた。


「えっと・・・会社に行くんだよね?私はホントにここにいていいの?」
「別に構わないよ。あぁ、暇だろうから犬に餌あげといてくれる?俺以外には馴れてないけど噛んだりはしないから。後は適当にゆっくりしとけばいいよ」

「犬がいるの?類の犬?」
「うん、フラットコーテッドレトリーバーとボルゾイ。大型犬だけどこいつらは大人しいから近づいても大丈夫」


「嘘をつかせてごめんね。行き先が決まったら出て行くからそれまでお世話になります!」

「ん、わかった」


恋人らしく・・・って言う意味じゃないんだろうけど牧野は玄関まで一緒に来てくれて、加代達と並んで見送ってくれた。


「行ってきます・・・」
「うん!行ってらっしゃーい!お仕事頑張ってね!」


行ってきますって言って出掛けるのって何年ぶりだろう?
お仕事頑張ってね・・・そう言われたら頑張らないといけないような気になるのは何故だ?


言ったあとで車に乗ったら・・・顔が少し火照ってた。





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★エッグスラット★
ハーブやスパイスなどで味付けをしたマッシュポテトを瓶に入れ、その上に生卵をのせて、湯せんするという料理。
とろとろの半熟状になった卵とふわふわのマッシュポテトを瓶の中でかき混ぜて、パンにのせて食べるそうです。


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2018/11/10 (Sat) 00:44 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/10 (Sat) 06:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

桜姫様 こんにちは。

おぉっ!作ってみてください♥
ネットで作り方が出てましたよ。私には・・・無理ですけど(笑)

私、マッシュポテトが苦手なんですよね~💦

あはは!犬に遊ばれるのか、犬が遊ばれるのか(笑)
類君と犬の闘いかもしれません。あっはは!

2018/11/10 (Sat) 11:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

そうなんです。
類君の言葉足らずのせいなのか、猛スピードで勘違いしたのか(笑)
寛容な両親ですね♥

私、今から「隣の部屋の彼」の番外編書くんですけど、どうもご両親のキャラが違いすぎて纏まりません。ははは・・・。

つくしちゃん、この状態でそうなるだろうか(笑)
この類君が甘々状態にならないと辿り着きそうにないですけどねぇ・・・そんな日が来るのかな?

あんまり長編は考えてないけど、長くなりそう・・・💦

2018/11/10 (Sat) 11:08 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/10 (Sat) 13:38 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/10 (Sat) 17:09 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/10 (Sat) 17:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんにちは。

はい!類君、犬飼ってるんですよ。1話目に名前が出てますので読んでおいてくださいね(笑)
何かが起きますから。

花沢邸にあとから鳥類を持ち込んだことはありますが、初めから動物を飼ってる設定は初めてかな?
特に私は犬が苦手なので書きにくいんですが・・・ははは。

花沢邸、広いけど退屈しそうですよね(笑)

2018/11/10 (Sat) 18:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

あっはは!お腹の出た類!!
お腹の出た総ちゃんはどう?やっぱりダメですか?

何となく将来あきらは出そうじゃない?(ごめん、あおさん)


類パパはもうベビーベッド注文済み・・・届いたら何処に置くんでしょうか?
類君の部屋ですかね?

とんでもない花沢夫妻になりました(笑)書いてて楽しいです♥
「喧嘩」の家元夫人みたい(笑)

この先も暴走していただきたいと思います!

2018/11/10 (Sat) 20:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ルチノー様、こんばんは。

私も食べてみたいけど・・・マッシュポテトがダメだから無理かも。
でもパンに塗るんですよね・・・どんな感じなんでしょ?

興味はありますけどね♥


なんかご飯食べてるシーンが多いと思ったら今日のお話が全部そうだった!(笑)

2018/11/10 (Sat) 20:18 | EDIT | REPLY |   

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