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類がお屋敷を出て行ったあと、加代さんに教えてもらって庭の隅にある犬舎に向かった。
そこには大きな犬が2匹・・・黒い方がフラットコーテッドレトリーバーで白い方がボルゾイ・・・だよね?

そこに近寄ろうとしたら加代さんが飛んで来て慌てて私に「下がるように」と声をかけてきた。


「牧野様、いけません!少しお待ち下さいませ。その子達は類様にしか懐いていないので急に近寄るのは危険です!」

「でも類はこの子達は大人しいから大丈夫だって言いましたよ?噛んだりしないって」

「はい、噛んだりはしないのですが、なんと言いましてもこの大きさの犬ですからね、飛びかかってきたりすることはあるんです。押し倒されたりしたら大変!私なら少しは馴れてるから餌は私があげますから!」

「・・・でも、頼まれたんですもの。私がやります。えっと、餌ってどれですか?」


加代さんはオドオドしながら可愛らしい容器を持ってきてくれた。

「こっちの白い容器が黒い犬の方で、黒い容器が白い犬の餌ですわ」
「・・・なんで合わせないんでしょうね」

「類様ですから」


まぁ、いいか。食べられるんならそんなこと考えなくても。

その2匹は私を見ても近寄ろうともしない。でも怖がってる風でもないし、怒ってるわけでもなさそう・・・『誰、こいつ』、そんな声が聞こえてきそうな感じがしたから笑って見せた。

「おはよう!今日は類がもう会社に行ったから私が餌を持ってきたの。さぁ、お腹空いたでしょ?こっちにおいで、えっと・・・」


・・・名前はなんだろう。
犬の種類は聞いたけど、そう言えば類、名前を教えてくれなかった。


「加代さん、この子達の名前はなんですか?」

「え?名前・・・えっと、名前?」

「だって名前がないと呼べないんですもの。名前ありますよね?」

「・・・・・・そう言えばなんて言うのかしら」


私には馴れていると言った加代さんまで頭を捻った・・・あれ?類ってもしかしたら名前をつけてなかったのかしら?
その時、玄関からお父様とお母様が会社に向かうために出てきたから走って名前を聞きに行った。


「あのー!すみませーん!」

私の大声に気がついてくれたのはお母様。
にこやかに手を振って車に乗り込むのを待ってくれた。


「どうしたの?つくしちゃん、そんなに慌てて・・・何かあったの?」
「あのっ、類に頼まれて犬に餌をあげたいんですけど、犬の名前を聞かなかったんです!あの2匹、名前はなんて言うんですか?」

「・・・名前?」


・・・あれ?お母様まで固まってしまった。
もしかして、この家の人達はあの子たちに名前をつけてないのかしら・・・それって可哀想なんじゃないの?
しばらく私とお母様が顔を見合わせていたけど、振り向いて「ねぇ、類の犬、名前なんて言うの?」ってお父様に確認していた。

勿論返事は「・・・名前?」だったけど。


「いつも類ったら『お前』とか『おい』とか『ねぇ』とかしか言わないから忘れたわ。ごめんなさいねぇ、類に聞いてみて?」

「あはは!はい、わかりました。引き留めてごめんなさい。行ってらっしゃーい!」
「はーい、行ってきます~!」


・・・長い間暮らしてる夫婦じゃないんだから。「お前」とか「おい」とかが名前じゃないでしょうよ。


また犬舎の前に行ったら加代さんはもういなくて餌だけが置いてあった。
2匹はお利口さんみたいで餌を見ても暴れるわけでも、急かすわけでもなく座ってるから入り口の鍵を外して出してやった。

ゆっくりと出て来たけど、それでも私に警戒してるみたい・・・あんまり傍に来ようとしないから、餌の容器を置いたら少し遠ざかってみた。そしたら自分の容器に近づいていって食べ始めた。


ふふふ、可愛いなぁ・・・犬、飼ってみたかったんだよね。


「ねぇ、あんた達名前がないみたいだよね。私が名前つけてあげようか?」

白い犬が?って顔して私の方を見て、黒い犬は必死に餌を食べてる・・・でも、時々目がこっちを見てる。
全部食べ終わったら犬舎の前の芝生で2匹がじゃれ合って遊び始めた。大型犬だから大迫力!転げ回って遊んでる姿を見たら私もそこに入りたくなって2匹に近づいた。

黒い方が先に私に鼻をくっつけてくる・・・白い方は少し警戒心が強いみたい。

「やっぱり名前がないと遊びにくいよね。そうだなぁ、黒い君は『菊次郎』、白い君は『桃太郎』でいい?ね?呼びやすくて可愛いよね?!」

そしたら菊次郎が「ワン!」って吠えて私に飛びついて来た!
その重さにびっくりして後ろにひっくり返ったら、今度は桃太郎が傍まで来て私の鼻の頭をクンクンしてる。
犬にしては綺麗な顔がすぐ傍まで来て驚いたけど、噛む気はなさそうだったからジッと舐められたまま・・・そのうちくすぐったくて「クシュン!」ってくしゃみをしたら桃太郎が走って逃げた。


「あははは!桃太郎が舐めるからでしょ?くすぐったかったんだよ、ごめんね!」
「ワンワン!」
「ワン!」

「菊次郎もおいで!一緒に遊ぼう!」



***************



「おはようございます。専務・・・いいことあったんですか?」

「なんで?」


朝一番、会社のロビーで秘書の藤本がそう言った。
いいことがあった?・・・むしろ可笑しなことがあっただけで、それがいいことなのかどうかわかんないんだけど?

それに何処を見てそんな風に感じたんだろうって、ロビーの窓ガラスに映った自分を見て確認した・・・全然わかんない。


「いつもよりお顔の色が宜しいようですよ。ツンケンした目付きも今日は穏やかですし、朝から楽しいことでも?」
「楽しいことなんてなかったけど、強制的に朝食を胃の中に入れられただけ」

「は?強制的に胃の中に?・・・どういう事ですか?」
「気にしないで」


でも、確かに朝から仕事が捗ってるかもしれない。
何となくだけどパソコンに出てる文字が頭に入って来るし、キーボードの打ち間違いもない・・・サインの文字も掠れてないし印鑑も丸く押せてるかも・・・。

藤本が嬉しそうにどんどん書類を持って来るけどそこまでムカつかない・・・まさか朝食だけで?

「11時からは避難訓練ですけど参加しますか?」
「うん、大丈夫」

「昼食は佐々木建設の社長と中華料理ですけど宜しいですか?ご希望ならフレンチに変えますが社長が中華好きらしいので」
「任せる。なんでもいいよ」

「3時からはアメリカ支部から帰った遠藤課長が報告したいことがあるそうですがお時間取れますか?」
「いいんじゃない?」

「4時半になりましたら中国支部とのテレビ会議です。1時間ほどですが」
「定時に帰れるならそれでいいよ」


「・・・・・・」
「なに?」


このあと「ホントに大丈夫ですか?」って念押しされたけど、俺・・・日頃はそんなに文句言ってるんだろうか。



定時になって何故か自宅に向かうのに気分がソワソワしてる・・・牧野、まだいるんだろうか。
もしかして行くところが決まったからって出て行ってないだろうか。

そればっかり考えて車を走らせ、屋敷に着いたらそこで驚くような光景を見てしまった。
ショコラとクレムが元気よく芝生の上を走ってる?もう薄暗いこんな時間になんで2匹が外に出て遊んでるの?

それにこの笑い声・・・2匹の声と同時に聞こえたのは楽しそうな牧野の声だった。


「あははは!桃太郎!やめて、やめてってばぁ!」
「ワンワン!」

「うわあっ!菊次郎、ダメダメ!そこに乗ったら重たいんだってば・・・きゃああぁーっ!あっははは!」
「ワンワンワン!」



「・・・・・・」


桃太郎と菊次郎って誰っ?!!




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ボルゾイのクレム・・・桃太郎です。
フラットコーテッドレトリーバーのショコラ・・・菊次郎です。


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2018/11/11 (Sun) 00:17 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

桜姫様、こんばんは🎵

あはは!
実はあるのですよ。第1話で類君が説明しています(笑)

後日改名されるなんて思わないから、覚えてない方もいると思います♥️

確かにフランスのお菓子の名前ですから、おしゃれかも?

ふふふ、つくしちゃん、渋いでしょ(笑)
類君、驚きますよね💦


いつも素早く読んでくださるのですね、ありがとうございます🎵

2018/11/11 (Sun) 00:26 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/11 (Sun) 00:46 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/11 (Sun) 00:48 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/11 (Sun) 00:50 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは!

あっはは!なかなかいい名前でしょう?
実は改名されることが決まっていたので、1話目でも類君は2匹の名前を呼んでないんです(笑)

誰も知らない空気を作りたかったので。
でも類君なら「おい」「お前」「あんた」「ねぇ」とかで終わりそうでしょ?

類君のドン引きした顔を想像してください。ははは!


今回はご両親が楽しいので書きやすいですが、この流れが急展開するのはいつですかねぇ。
しばらくはつくしちゃんに振り回される類君で楽しんでください♥

2018/11/11 (Sun) 01:08 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

まりぽん様、あはは!

ご丁寧にありがとうございます♥

2018/11/11 (Sun) 01:09 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ルチノー様、こんばんは。

この時に出そうと思っていたんですよ。

あら、その人のお父さんですか?それは知らなかった(笑)
そんな名前の映画がありましたね!それは知っていたんですが、元々他の理由があるんです♥

ふふふ、始まったばかりだけど後書きの時にお話ししようと思います。


このあとの類君の反応がどうかしら。
私もいきなりオカメの名前が夕方変わってたら驚くわ!(笑)
私なら順応出来ないけど・・・。


皆さんに笑っていただけて良かった♥



2018/11/11 (Sun) 01:17 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/11 (Sun) 07:57 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます♥

インパクトあるでしょう?(笑)
類が呼んだときに笑えるような名前がいいと思って選んだんです。

そうか!桃ちゃんと菊ちゃんって略しても可愛いですね♥

私の家のインコも「ムサシ」って言うのが昔いたんですが、手乗りだったので室内を飛ぶでしょう?
その時に「ムサシー!」って呼ぶのは恥ずかしかったです(笑)

この2匹も類君が名前を呼んでくれなかったので、今頃になって「あっ!自分は桃太郎か!」って思ったんじゃないかな?
ふふふ、楽しい花沢家になってきました♥




2018/11/11 (Sun) 08:21 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/11 (Sun) 18:56 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは。

そうなんですよ。格好いい名前があったんです。
ふふふ、どうなるんでしょうね?

あるけど呼んでもらえないから犬も覚えなかったんでしょうね(笑)

つくしちゃんが何をしていたかは次話でわかりますよ♥


12話も終わったのにまだ2日しか経ってない・・・ははは。

2018/11/11 (Sun) 22:06 | EDIT | REPLY |   

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