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今年の大晦日は西門で過ごした。

総二郎は牧野家での最後の大晦日になるかもしれないから実家に戻れって言ったけど、パパとママに言ったら食べるものがギリギリだから帰ってくるなって・・・そんなことは内緒だけど、西門に残ると言えば凄く喜んでた。

ちょっと・・・複雑だけど。


「大晦日は家元自らが家族に茶を点てる除夜釜ってので始まるんだ。これに参加するのは身内と内弟子の数人だけ。今日の夕方には兄貴も帰ってくるんだってさ。弟もいるし、つくし、両方初めてだよな?」

「うん。えっと祥一郎さんと孝三郎君・・・だよね?」

祥一郎さん・・・竹本さんと付き合ってた人と今度結婚するんだよね?真由美さん・・・だったっけ?
それを思いだして何となくアメリカに行った竹本さんの事を考えていたら、総二郎に後ろ頭を小突かれた!

「な、何すんのよ!」
「・・・お前が考えてる事なんてお見通しなんだよ!あの男の事なんて思い出すな!」

「うわっ・・・もう何ヶ月も経ってるのに・・・」
「お前の腹を見たんだから一生許さねぇっての!」

「その言い方やめなさいよ、手術じゃないの!」



そして夕方になって、今日も総二郎が着物を着せてくれた。
家元夫人が若いときに来ていたものらしく、お目出度い柄の着物。志乃さんも髪結いさんも田舎に帰っていたから髪はそのままで、サイドをあげて館長がくれた髪飾りで留めただけ。

総二郎は第一礼装の黒じゃなくて、紺色の紋付き袴だったけど、やっぱり格好良くて近くで見るとドキドキしちゃう。
私の着物が紅碧べにあおい(うすい青紫)という色だったから合わせたんだと言っていた。


「総二郎さん、みんなが揃ったわよ。牧野さんと一緒に広間にいらっしゃいな」

今日は殆どのお手伝いさんが帰省してるから家元夫人が呼びに来てくれた。
「はぁ、面倒くせ・・・」って嫌そうな顔をした総二郎の後について、この人の兄弟と初めての顔合わせ・・・なんだかすごく緊張しながらその部屋に向かった。


中に入ると中央には家元、その隣には家元夫人・・・そして私たちが座る席の向かい側にイケメンが2人並んで座っていた。


「久しぶりだな、総二郎」
「あぁ、祥兄も元気そうだな・・・ってか今日、彼女は?」

「真由美は自分の家族と温泉旅行に行ってるよ。だから俺はこの正月当番医で出勤申し出たんだ。1人でいてもつまらないしな」
「・・・そうか。あ、こっちは牧野つくし。この初釜でみんなに紹介するけど俺の婚約者だから」

サラリとそんな事言って・・・!
そ、総二郎の声で婚約者だなんて言われたら緊張するし、今更だけどめっちゃ照れる!


「ま、牧野つくしと申します。宜しくお願い致します」

「こちらこそ。俺はこの家を捨てた長男で総二郎に迷惑かけたヤツだけど、こうしてまた出入り出来るようになったから宜しくね。今度俺の婚約者も連れてくるから仲良くしてやって?」

「はい。看護師さんでしたよね?会えるの楽しみにしてます」

「あはは、もう色々聞かされてるんだね?開業したら一緒に頑張ろうと思ってるんだ。近いうちに総二郎も入れて4人で飲もうか?」

「是非!」
「・・・酒、飲めねぇクセに」


すごい爽やか・・・総二郎に似てるけどほんの少しお兄さんの方が優しい顔で、思いっきり穏やかで大人の雰囲気!
ニコッと笑われたら総二郎よりも可愛いんじゃないの?


「おい、いつまで祥兄を見てるんだよ。お前の相手はそいつじゃねぇけど」
「・・・はっ!ご、ごめん!」

彼の超低めの機嫌の悪い声が聞こえたから慌てて視線を総二郎に戻したら、今度は違う所から笑い声が聞こえてきた。


「あはは!総兄、噂通り嫉妬深いんだな!祥兄にまでそんなにムキになっちゃって!」
「喧しい!いつこの屋敷に戻ったんだ、孝三郎!」

「俺?さっきかなぁ・・・マンションでずっと寝てたから」


もう1人のイケメンが軽く頭を下げたから私もつられてペコッと・・・今度は総二郎よりもやんちゃな感じのイケメン!
暗めな感じだけど茶髪で、紋付き袴なのに左側に小さなピアスがひとつ。

体格はとにかくひょろひょろで着物がぶかぶか・・・この人もお茶を点てるのかしら?って思うような見た目だった。

「相変わらずだな、孝三郎。そんなのでちゃんと稽古はしてんのか?この屋敷で見掛けることが殆どないけど」

「もちろんちゃんと稽古はしてるよ。横浜の茶室で古弟子の太田さん、あの人が師匠で見てくれてるから心配すんなよ。月に1度は家元にも飲んでもらってるし、そこそこ頑張ってんの、これでも!」


チラッとお家元の方を見たら額に手を当ててる・・・彼の言う通り、そこそこ頑張ってるんだろうな。



****************



この6人で夕食も済ませ、その後は屋敷に残ってる内弟子の数人を交えて酒を飲んでいた。
それも午後9時頃まで・・・1度各自が部屋に戻り、11時になったら家元の茶室に集まる。


そこでは家元が炭をおこし、今年最後の茶を点てる「除夜釜」が始まる。

1番古い内弟子の2人を入れて8人。家元が点てる茶を家元夫人が1番初めにいただく。
その後は一応長男の祥一郎、その次に俺、そして孝三郎・・・つくしはその次に茶をいただき、最後に内弟子の2人。


「大きな災いもなく・・・まぁ、1人怪我はしたが無事に1年が終わることを嬉しく思う。また新たな年、健やかで良き年となるようにな」


家元の低い声で言葉があると一同頭を下げて礼をする・・・それと同時に除夜の鐘が何処からか聞こえてくる。


この炉の中の火は埋み火うずみびと言い、年を越すまで火を繋ぐために炭に灰をかけておく。
そしてこの火を年が改まった翌朝、初炭で釜を掛け直し、その年初めての茶をまた家元が家族に点てることを「大福茶」と呼ぶ。

長くこの世界に伝わる正月の伝統行事だ。



その大福茶も終わってから世間一般の正月らしい雰囲気に戻る。
初日から来てくれた使用人の女性2人とつくしとお袋しか女がいないから大忙し。

「さぁ、牧野さん、やりましょうか!」
「はい!家元夫人、お任せください!体力だけはありますから!」

料理長が山ほど作っておいてくれた正月料理をつくしとお袋が厨房からどんどん運んできて、俺達は酒の用意。
これまではそんなに賑やかじゃなかったのに、何故かつくし1人が増えたことでお袋も親父も浮かれて大騒ぎになった。


「おいっ!つくし、そんなに飲むな!また悪酔いするんだから!」
「大丈夫だって!そこまで飲んでないもん、まだ2杯目だもん!」

「あら、酔っ払ったのなら今日もここに泊ればいいじゃない?そんなにマンションに帰りたいの?いやぁねぇ!」
「そうだな、どうせ来年からは牧野さんもここに住むんだし、我が家の正月に慣れればいいじゃないか」

止めてる俺の横で孝三郎がつくしに酒を注ぐし、つくしは真っ赤な顔してそれを受けるし!
それが済んだら今度は祥一郎が・・・とうとうつくしは7杯目ぐらいで完全に酔い潰れた。

せっかく着てる着物の袖を肘まで捲ってテーブルの上に突っ伏して、その横からお袋が「牧野さん、ほらお水よ!」って言ってるけどもう遅い。

こうなったら1回爆睡しないと酒が抜けねぇんだから。



「・・・ったく!だから言っただろう、こいつは2杯ぐらいでやめないと後が困るんだって!」

「確かにな。女性の方がアルコールの影響を受けやすいんだよ。一般的に女性は男に比べてアルコールの代謝が遅いんだ。肝臓が小さくて体重も少ないし酵素活性も弱いためなんだけど、女性ホルモンがアルコールの代謝を抑制するんだよなぁ。
だから男よりも少量のアルコールで肝障害が進展しやすい危険性がある。俺、真由美にはあんまり飲ませないからな」

「馬鹿野郎!知ってるんならつくしにも飲ませんなっ!」

「たまになら問題ないよ。妊娠してないんだろ?」


「・・・・・・ん?」

それは俺にはわかんねぇから黙り込んだらお袋から滅茶苦茶怒られた。


まぁ、こんな感じで正月が過ぎ、次の日曜日には初釜だ。




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2018/11/13 (Tue) 13:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

抹茶と鶯様・・・本当ですか?


こちらはこちらで衝撃の事実です。
マジで?ホントに?

確かにその言葉・・・書きましたよね?マジかぁ・・・やばっ!


ヤバい、ヤバすぎる・・汗が出る・・・。



そうそう、茶道の宗家の年末行事です。

ヤバっ・・・(まだ言う)

2018/11/13 (Tue) 15:26 | EDIT | REPLY |   

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