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plumeria

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1月末が近づいたある日、マンションで目が覚めたらいつもは起きて朝飯を作ってるはずのつくしがまだベッドの中にいた。
そんなことは今まで一度もなくて、具合が悪いのかと慌ててその顔に触れてみた。

別に熱はなさそう・・・それに昨日は俺が会食で遅かったからこいつは先に寝てて、起こしても相手にしてもらえなかったから何もしてないのに。


「おい・・・つくし、どうした?」
「・・・ん、あれ・・・朝?・・・いけない、朝ご飯!」

「いや、それはいいんだけど具合悪いのか?熱はなさそうだけど」
「・・・うん、なんともないよ。どうしたんだろ、お布団が温かかったからかなぁ・・・よく寝たつもりなんだけどまだ眠たいや・・・」

目を擦りながらベッドの中で俺の横にくっついてる。
何だか甘ったれたその仕草に朝から煽られて、つくしにキスしようとしたら「ヤだ!」ってそこは激しく拒否られた。


あれ?こんな時も今までは照れながらでも受け入れてくれたのに・・・?


まぁ、そんな日もあるかと俺が先にベッドから出て、今日は味噌汁じゃなくて珈琲とトースト。
俺がその準備をしていたらようやくボサボサのつくしが起きてきた。

「総二郎、ごめんね。明日はちゃんと起きれると思うから・・・」
「風邪引いたのか?今日は西門に行かずにここで寝てるか?」

「・・・うん、そうしようかなぁ。総二郎、今日どんな予定だっけ?」
「俺は千葉に行ってくる。どうせ本邸にも1日中居ないんだからお前はここでゆっくり寝とけ。もうすぐ記者会見だからその日に風邪拗らせてたらいけねぇから」

「・・・うん、ありがとう」

「・・・・・・」


へぇ、ホントに体調が悪いんだな。

俺が寝とけって言っても、そのひと言で納得することなんてなかったのに。
「このぐらい平気だよ!」って言葉は何度も聞いたけど、こんなに素直に休むって言うなんてな・・・珍しいこともあるもんだ。

いつもならブラックで飲む珈琲にも「ミルク多めで・・・」って言われて急遽カフェオレに変更。
大丈夫なのか?って顔を覗きこんだらまた目を閉じてた。


**


「・・・え?なんですって?」

「だからさ、今日は風邪っぽいからマンションで大人しくさせとくって話。あいつが寝坊なんで初めてだからよっぽど身体がダルいんじゃねぇの?俺が珈琲煎れるなんて今までそんなになかったし」

仕事のために本邸に向かったが俺が1人だったからお袋がつくしの事を聞いていた。
最近じゃお袋について仕事の手順や西門の事を勉強してたから、今日も何処かに連れて行く気だったのかもしれねぇけど。


「・・・牧野さん、眠たいの?」

「そうらしいぜ?珈琲飲みながら瞼が閉じてたから。ここに来る前にはベッドに押し込んできたから今頃また寝てるよ」

「・・・総二郎さん、それ・・・」
「は?どうした?」

今から千葉に行くって時間だったから玄関で靴を履いていたらいきなり襟元をグイッと引っ張られた!
どっからそんな力が出たんだってぐらい、俺は危うく後ろに転けるところだった!

「何すんだよ!この時期に怪我したくねぇんだからやめろっての!」
「そうじゃないわよ!!馬鹿息子っ!千葉なんて後藤さんに代わってもらってあんたはすぐに牧野さんを連れて病院に行きなさい!」

「はぁ?熱なんてなかったけど?」
「これだから男は困るのよっ!!鈍いわね!」


鈍い・・・?男だからって・・・まさか?


「今から病院に連絡入れておくからすぐに行きなさい。多分、間違いないわよ。総二郎さんも身に覚えがあるんでしょ?」
「・・・・・・ある」

「後藤さんならあなたの代わりにきちんと講演してくれるから大丈夫。そっちも私から連絡入れるからあなたはもうお帰りなさい。後で結果だけ教えてね」

お袋の話が終わるか終わらないかって時には、もう俺は自分の車に向かって走り出し、西門を飛び出てマンションに戻った!


マジで・・・マジで、ホントにそうなのか?
それなら、それなら・・・つくしをもう1人に出来ねぇじゃん!!

マンションに着いて猛ダッシュで自分の部屋に戻り、靴なんて放り投げて大声でつくしを呼んだ!


「つくし!・・・おい、つくし!!」


でも部屋のベッドにはつくしはいなくて布団が捲れ上がったまま・・・そこに走り寄ったらまだ温かかったからトイレかと思ってそこでも呼んだけど返事はない。
慌ててキッチンに行ったら・・・つくしはシンクの前で踞ったまま、口を手で覆っていた。


「つくし!大丈夫か!」

「・・・総二郎、ごめん、声が出なかったの。ちょっと貧血っぽくて・・・」
「そんなことはどうでもいいからすぐに病院に行くぞ!」

「・・・え?病院?・・・うわあぁっ!!」
「いいからしがみついとけ!抱えていくから!」

部屋着のままのつくしを抱きかかえてマンションを飛び出し、今度は西門の病院へ・・・何が起きたか判らねぇつくしは驚いてたけど、気分の悪い方が勝ってたんだろう。車でもシートを倒したまま顔を横に向けて身体を丸めていた。



病院に着いたらいつもの裏口から入り、お袋が連絡を入れていたからすぐに検査に回された。

そして30分後・・・俺は医者に呼ばれて診察室に入った。
そこには真っ赤な顔したつくしが寝ていて、ニコニコした担当医がいて、看護師に「おめでとうございます」と・・・。


「総二郎様、おめでとうございます。まだまだ初期ですがお話を聞いたところ6週目ぐらいではないかと思いますわ。安静にしないといけませんので今晩からお控え下さいね」

「・・・・・・6週目・・・」


「そうですわね、お生まれになるのは9月中頃じゃないかしら。ご本人様もまだ自覚がなかったようですから、ご気分が悪くなったのが自宅で良かったですわ。お大事になさいませ。今後の検診予定なども計画を立ててからお知らせ致しますわね」


医者の言葉なんて途中から耳に入ってこなかった。
そこに寝てるつくしが泣きそうになってて、不安そうな顔してて、でも凄く嬉しそうにも見えて・・・だから俺は傍まで行って、医者がそこに居るのに思いっきり抱き締めてやった。

「ごめん、総二郎・・・気がつかなくて」
「そんなのどうでもいいって・・・ヤバい、俺」

「どうしたの?ヤバいって・・・総二郎、いけなかった?」
「馬鹿言うな!・・・すげぇ嬉しい。マジ、みっともねぇけど・・・泣きてぇぐらい嬉しい・・・」


泣くわけにはいかねぇけど、まだつくしの顔も真面に見られない。
今、こいつの顔を見たら・・・どうなるかわかんねぇから。


そんな俺の事を気遣ってか医者達が席を外した。この診察室には俺とつくしだけ・・・そうしたらようやく身体を離してつくしの顔を見ることが出来た。
こいつ、もう泣いてやがる。目の周りが真っ赤じゃん・・・。


「馬鹿だな・・・ホントに泣くんじゃねぇよ。悪いことでも起きたみてぇじゃん」
「だって・・・びっくりしたんだもん。風邪かと思ってて、今度の記者会見のことばっかり考えてたから自分の事なんて・・・」

「・・・そっか。忙しかったもんな。これからは大事にしねぇとな」


そう言うと俺にしがみついてわんわん泣いて、その声に驚いて医者が飛び込んで来た。
「あまり興奮させないように!」って言われたけど「安定期に入ったらシテもいい?」ってその場で聞いたら全員に睨まれた。

いや・・・ただの照れ隠しだったのに。


病院を出たらそのまま西門へ・・・途中連絡をしていたから駐車場に車を入れた瞬間、親父とお袋がすげぇ顔して屋敷から飛び出してきた。


「牧野さん、大丈夫?今は苦しくない?車に揺られて大丈夫だったかしら?すぐに奥の暖かいお部屋に行くわよ!」
「は、はい、大丈夫です。ありがとうございます、家元夫人」

「総二郎、どうだって?いつ頃が予定だ?その頃には茶会なんぞ入れられんからな!」
「親父、落ち着けよ!まだはっきりわかんねぇけど9月中頃だってさ。それより性別の心配なんてあいつに言うなよ?」

「そんなのはどっちでもいいんだよ、元気が1番なんだから!」


すげぇな、すっかり爺さんと婆さん気分になってんだな?


本邸に入るとすれ違う奴らから「おめでとうございます!」の声が飛ぶ。
奥の間に床なんて準備されて、つくしはそこに入って真っ赤な顔でうちの両親に色んな説明してる。



俺は胸の奥がくすぐったくて幸せで・・・柄にもなく目の前の光景が滲んで見えた。





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2018/11/15 (Thu) 12:17 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/15 (Thu) 14:54 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは!

はい♥お目出度い♥

まぁ・・・今回はおめでたになってもおかしくない状況でしたので(笑)

ふふふ、総ちゃんの慌て方が可愛いでしょ?
明るい西門家で書いてて楽しいです♥

もうすぐラストです。
最後までどうぞ宜しくお願い致します。

2018/11/15 (Thu) 22:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

抹茶と鶯様、こんばんは。

あっはは!身に覚え・・・ないとは言わせませんよね(笑)
お子様が出来ない方が不思議・・・。

これはおそらく誰かが無理を言った時のお子様じゃないかと思うのです。
一応そのつもりで書いてます。

あの時の・・・あの時の・・・食堂の時のお子様です!!


うるうるしちゃった?
それは良かった♥

ふふふ、ご協力、ありがとうございました(笑)

2018/11/15 (Thu) 22:37 | EDIT | REPLY |   

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