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「おはよう!桃太郎に菊次郎、あっはは、今日も元気ねぇ!」
「ワンワン!」「ワン!」


何故か俺の飼い犬なのに先に牧野に飛び付いたショコラと・・・いや、桃太郎と菊次郎。
小さな牧野の肩近くまで足を乗っけて顔まで舐めてる。
たった1日で飼い主を変更出来るってどういう事?もう何年も飼ってるのにそんなに犬って薄情だったっけ?牧野だから別にいいけど・・・。

じゃれ合う1人と2匹を横目で見ながら自分の車に向かった。


「行ってらっしゃい、類」
「「ワンワン!ワン!」」

「・・・行ってきます。牧野、ちゃんと医者に診てもらってね」
「はーい!でも、もう痛くないから大丈夫だよ。類もお仕事頑張ってね!」

「・・・うん」


昨日も言われた『お仕事頑張ってね』・・・そうか、やっぱり頑張らなきゃいけないのか。
今まで仕事はしなきゃいけないから当たり前のように出勤してたけど、そんな風に張り切ったことはないかも。


会社に着いたらいつもより女子社員の数が少ない・・・これはこれで結構すっきりしていいもんだなとロビーを通過して専用エレベーターに1人で乗り込んだ。
そして着いたらエレベーターを待っていた藤本と鉢合わせ、俺の顔を見てすごく驚いてた。


「なに?何かついてる?」
「・・・は?、あ、いえ何でもないです。専務、おはようございます」

「おはよう、藤本」

どうしたんだろう・・・今日は役員室フロアの受付まで座ったまま驚いてるけど。
「何かあったの?」って藤本に聞いても「別に何も・・・」と、黒縁眼鏡の端を指で直しながら逆に俺の顔を覗き込んでた。


専務執務室に入ったらすぐにデスクについてパソコンの電源を入れメールの確認。
毎日数十件来るヤツを順に読んで、返事をカタカタ打ってたら藤本が珈琲を持ってきた。

「専務・・・どうしたんですか?具合でも悪いんですか?」
「どうしてさ」

「2日も連続してご機嫌良く、しかも今日は10分も早く出勤されて・・・女子社員のほうが慌ててましたけど。今日はロビーに少なかったでしょう?」
「・・・さぁ?それより今日のスケジュール読み上げて」

「・・・は?!」
「何してるの?今日のスケジュールだよ。藤本、ボケッとしないで。メールの返信しながらでも聞けるから」

「は、はいっ!」


頑張ってねってこういうことだよね。
自分でもよくわからないけど牧野の笑顔が頭の何処かでチラチラして、サボったりしたら怒られそうな気がした。
いや、こんな所にいないから見られないってわかってるんだけど、それでも真面目にしないと・・・って当たり前の事を今更実行していた。


「藤本、この新しいホテルの事業計画書だけど少し工事予算に不明確な部分があるから精査して出し直させて。少しならオーバーしても仕方ないけど大幅な狂いだよね?それなのに上長に回すってどういう事なのか、観光事業部長に説明するように伝えて」

「わかりました、すぐに」

「水素製造装置と水素エネルギーシステムの研究施設の進み具合だけど遅れてない?」

「はい。実は予定より遅れ気味で」

「新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業だよね?遅れてどうするのさ。遅れているのならスタッフの増員をするようにエネルギー開発事業部に伝えて」

「申し訳ございません。すぐに手配させます」

「アフリカでの水道設備共同事業先のウィルソン会長の所に大至急祝電打っといて。孫の誕生日らしいから」

「・・・は、はい!」


なんだろう・・・ちょっと楽しいんだけど。
気がついたら今日の仕事も全部終わらせて定時になったからさっさと車のキーを持った。


「・・・お疲れ様でした、専務」
「お疲れ様。藤本、どうしたの?顔色悪いね」

「はぁ、いつもより多く動きましたので」
「そうなんだ?早く帰って休んだらいいよ。じゃあ、お先に」


そしてエレベーターの中で鳴ったメール音。急いで開いたら・・・なんだ、あきらじゃん。


『今日日本に戻ったんだ。明日にでも顔を見に行くから都合の悪い時間帯メールしといてくれよ』


・・・朝の9時から夕方5時まで、そう返信したら怒るんだろうな。
まぁ、いいか。牧野に会うわけじゃないし。



**************



「・・・そうですねぇ、このぐらいでしたら火傷の痕は残らないでしょう。まだ痛みますか?」

「動いた時に少しだけヒリヒリしますけどそこまでは・・・類がすぐに手当てしてくれましたので」

「それは良かったですね。類様が傍にいらっしゃる時だったのなら適切な処置をしていただいたのでしょう。冷やし方も手当の仕方も完璧です。このぐらいと思うかもしれませんが、放置していたら傷跡は残らなくても痛みが長引くこともありますからね」


お母様達もお仕事に行ってからの午前中、早速花沢家の主治医という先生がお屋敷まで来てくれて火傷したところを看てくれた。診察の結果はもう1日薬を塗って包帯するだけで、明日には何もしなくていいって話だった。

だから痛み止めもなくて診察時間も10分かかってない。
加代さんが付き添ってくれたけど「そんなところを火傷だなんて・・・」って赤い顔をしていた。

まぁね・・・太股内側ですもの。
類に包帯巻いてもらう時の格好ったら説明出来ないほどみっともなかったわよ。


お医者様にお礼を言ってお部屋に戻ろうとしたら今度はそっちが騒がしい。
何が起きたのかと思って加代さんに聞いたら、もう私の部屋と類の部屋を繋げるドアの工事が始まったのだと。

「ほ、本当にあの部屋の壁にドアを?そんなのすぐに出来るんですか?」

「当家専属の職人全員で取り掛かっておりますから大丈夫でしょう。夕方までには終わらせるようにと旦那様からも言われておりますので牧野様はそれまでリビングでごゆっくりされてくださいませ。
それはそうと、牧野様は普段は何をされていらっしゃったのですか?」

「えっ?わ、私ですか?あの・・・家事手伝い、ですね・・・ははは!」

「あら、それではお料理などもなさいますの?」

「はい!料理は得意なんです!それ以外にする事がなかったものですから」


だってお爺様に頼まれた時しかパソコンの前にいなかったんですもの。
お庭以外に行く所もないし、出してももらえなかったらする事って料理ぐらいなんだもん・・・覚えたくなくても覚えるし、特別好きじゃなくても得意になるのよ。

お母様も料理は出来なかったから、よく作ってあげたわよ・・・田舎料理だけどね。


「お菓子やケーキなども?」
「はい、作れますよ。加代さん、何か作ってあげましょうか?」

ケーキ好きなのか、加代さんがニコニコしたからキッチンを借りて一緒にケーキを焼くことにした。


そこはキッチンというより本格的はレストランの厨房みたい・・・料理長という渋いおじ様に材料があるか聞いてみたら、流石花沢家!全部あるって言うから「レモンのチーズケーキ」を作ることにした。

「すごいなぁ!ダイジェスティブビスケット(全粒粉ビスケット)がすぐに出てくる家なんてありませんよ?じゃあ、この端っこのスペース、お借りしますね」


「はぁ・・・加代さん、いいんですか?類様に何も言わずに厨房で働かせて」
「働く訳ではございませんからいいのでは?それに牧野様のケーキでしたら類様も喜んで召し上がるかもしれませんし」

「そうですね。お誕生日ですらケーキをお召し上がりになったことがありませんからね・・・」

加代さんと料理長がそんなことを言ってたけど、久しぶりのお菓子作りに夢中になって、夕方まで厨房の中で過ごした。
出来上がったケーキはカットして加代さんにも料理長にも試食してもらって、類には綺麗にセロファンで包んだものを準備した。


ふふふ、類……食べてくれるかなぁ?



もう日が沈んで暗くなってから、私は桃太郎と菊次郎の間に座って類の車が帰ってくる方向を見ていた。

何故だろう・・・嘘でなってもらってる恋人なのにソワソワしてる。
早くあの向こうに車のライトが・・・そう思っていたら類の車が帰ってきた!


スッと立ち上がって車が停まった方に身体を向けたら、ドアが開いて彼の姿が見えた!


「お帰りなさーい!類」
「「ワンワン!ワンワンワン!!」」


「ただいま、牧野」





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2018/11/17 (Sat) 07:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

ふふふ、そうですね、もう恋人みたいになってますが全然その意識はないみたいですよね。

鈍感と無感情・・・ある意味焦れったいというか、先が思いやられるというか。
もっと色んなことが起きないと気が付かないのかもしれませんよ?

もどかしいでしょうが(笑)待ってやってくださいね♥

2018/11/17 (Sat) 08:40 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/17 (Sat) 12:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんにちは。

あはは!そうそう、類君、やれば出来る子なんですよ。
ただ、やる気になるまでに人の数十倍時間がかかるだけで・・・。

類君のペースになるにはつくしちゃんの言葉も必要なので、何か事件が起きたらまた動かなくなるかもしれませんね(笑)
そんなので専務でいいんだろうか・・・。

私はケーキが苦手なんですが、かろうじて食べられるのがチーズケーキなんです。
なのでこれにしてみました♥

類君、食べてくれるかしら?
ふふふ、お楽しみに♥

2018/11/17 (Sat) 14:40 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/17 (Sat) 16:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

あはは~!新婚さん♥
間違いなく新婚さんですよねっ!

いやぁ、類君でコメディ書くのもなかなか楽しいですわ(笑)
このまま事件もなく楽しく終わりたいなっ(無理だけど)

あっ、そうそう!下にあるざくざくしたヤツですよ。
細かく砕いて下に敷くんです。類君、食べられるかしら・・・新婚さんだから頑張って食べてくれるかな?


めっちゃ働く類君。
その気にするのが大変だけど、動きだしたら止まらないのです。
(変な意味じゃないですよ?)

そそ、あきら君も来るから♥と、いうことはあの2人もそのうち?


待っててくださいねっ!

2018/11/17 (Sat) 22:57 | EDIT | REPLY |   

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