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plumeria

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「ご、ごめんなさい!答えなくていいから食事、続けていいよ。私、そういう経験がないから聞いてみたかったの。男の人の気持ちってよくわかんないし・・・だから、えっと・・・ホントにごめん、余計な事聞いて・・・」

「・・・別に気にしてない。言ったでしょ?好きだと思ってたけどそうじゃなかったって・・・だから失恋なんてしてないんだから」


類の表情は確かに変わってなかった。
怒ったような声でもないし、呆れたような素振りもないし、話したくないって風でもなかった。

ワイングラスをテーブルに戻したら両肘をついて指を組み、そこに顎を乗っけてほんの少し前を見つめてる・・・そのまま遠い昔を思い出してるかのようだった。


「名前は静って言うんだけどね・・・年上だけど幼馴染みだった人。なんて言うのかな・・・優しいんだけど、強くて頼りになるって言うか、俺が独りっ子だったからだろうけど、いつも傍にいたんだよね。
両親が日本にいないからその代わりにでもなった気分だったのかも。『類の事は私が決める』が口癖みたいになってたから」

「・・・仲良かったんだね」

「良かったと思うよ。俺の幼馴染みはあと男が3人いるんだけど全員と仲良かったよ。その中でも特に俺の横にいたから・・・何となく静が恋人なんだって思い込んだ時もあったよ」


チクン・・・類の口から他の人が恋人だって聞いたら、何故か針みたいなものが胸に刺さった。
痛い、って程じゃないけどむず痒い。喉に何かが詰まったような気がしたから私もひと口ワインを飲んだ。


「子供の時に旅行先で同じような年頃の女の子に会ったって話したことがあるんだけど、その時に凄く機嫌が悪くなってね。『知らない子の話はしないで』って言われたんだ。あれ、なんだったんだろう。ずっとわからなかった・・・どうしてそんな事言われるのか」

「自分以外の女の子のことを類が話すのが嫌だったのかしら・・・その人の方は類を好きだったんじゃないの?」


「・・・どうだろう。今の話は5歳とか6歳の頃の話だけど、俺が高等部に入って彼女と同じ学校に通っていた頃、俺の知らない男とキスしたり軽く抱き合ったりしてた。偶然それを見ちゃってね・・・でも、あぁ、そうなんだってぐらいで気にならなかった。
その頃から恋人だって思ってたのは違ったのかなって・・・可笑しいでしょ、自分の事なのによくわかんなかったんだ」

「類は怒ったりしなかったの?少しも嫌な気分にはならなかったの?」


自分で聞いておきながらその返事を予測する・・・『嫌な気分じゃなかったよ』って。
もし違ってたらどうしようってドキドキしていた。


「静が大学生になって少し離れた時に噂で聞いたんだ。誰かと別れたとしても私には類が残るからいいの・・・って言ってたって。つまり静にとっては、俺って人間は絶対に裏切らない忠実な恋人代わりにもなれる弟、って存在だったんじゃない?
前に話したでしょ?この後に彼女が外国に行くって言ったけど、空港で見送った時引き止めようなんて思わなかったって・・・だから恋なんてしてなかったんだと思う」


「ねぇ・・・キスって好きじゃない人とでも出来るの?」


ここで類がキョトンとして私の方を見た。

あれ?何か変な事を聞いたかな?
それすら未経験の私にはキスって好きな人としかしないって思い込んでたんだけど・・・もしかして誰とでも出来るものなの?



*************



そんなこと、考えてもみなかった。

だって総二郎やあきらなんて初対面の女性とも出来てたような気がするけど・・・?
ただ、そこに気持ちがあるのかどうかってだけで、キスって行為ならしようと思えば・・・って言いかけて言葉にしなかった。

ちょうどその時に加代がドアをノックして入ってきて「デザートをお持ちしても宜しいですか?」と尋ねてきた。


「ごめん、加代。話は終わったからもういいよ」

「さようでございますか。それでは牧野様の作られたケーキが今日のデザートですわ。リビングに珈琲と一緒にお持ちしますから、あちらでお待ち下さいませ」


そう言われて牧野が慌てて最後の野菜を口に入れてる。
小さな声で「ご馳走様でした」と皿に向かって話しかけ、急いで席を立って俺より早くリビングに走って行った。

自分で聞いたクセに最後の質問に照れたんだね?くすっ・・・ホントに面白い。


リビングに行くと暗くなった外を見ながら窓ガラスに映ってる俺を確認してる。
そこに映った自分の顔が凄く困ってることは気がついてないみたい。大きく肩で息をしてからくるっと向きを変え、リビングのテーブルにやってきた。

それと同時に加代がワゴンにケーキと珈琲を乗せて入ってきて、気分はすっかりそっちに行ったみたい。


「加代さん、もうこのケーキは全部食べちゃったんでしたっけ?」

「いいえ、旦那様と奥様のはちゃんと残しておりますよ。こんなに美味しく出来たんですもの、食べていただかないとねぇ!」

「えへへ!良かった!」


顔を真っ赤にして牧野が自分でケーキ皿を持って俺の前に置いた。
良かった・・・生クリームたっぷりのショートケーキだったらどうしようかと思ったけど、これは多分チーズケーキ・・・それなら5センチぐらいは食べられるかも。

とても素人が作ったとは思えない出来映えのような気がしたから、もしかしたらうちの菓子職人が手伝ったのかと思って加代に聞いたら凄い顔して怒られた。


「まぁっ!類様、それはあんまりでございますわ。牧野様は類様のために一生懸命作られたんですのよ?恋人のご好意に対して他人の手助けがあるのか、なんてご冗談はお止めください!それだから類様は今まで恋人が出来なかったのですよ?牧野様、お許しくださいね」

「いや、加代さん、私は別に怒っていませんから・・・」
「・・・牧野もそう言ってるじゃん」

「いいえ!せっかくこうして愛する方とご一緒に生活出来るようになってご両親様もとても喜んでおられるのです!牧野様に愛想を尽かされないように、私もお2人のことを温かく見守れと仰せつかってるのに・・・!
類様・・・宜しいですか?残したりなどしないのですよ?全部お食べください!何度も言うようですが、類様のことを想って作られたのですからね!」

「・・・わ、わかったから」

牧野の前にはニッコリ笑って珈琲を置いたのに、俺の前にはガシャン!と音を立てて・・・そんなに酷いことだったのかと牧野を見たら、もう美味しそうに食べてた。


加代がリビングを出て行ってから、ホッとして俺もケーキを口に入れてみた。


「あっ・・・美味しい。牧野、上手なんだね」
「え、ホント?ふふっ、私ずっと家の中にいたって言ったでしょう?だからお料理とかお菓子作りは得意なの。また今度作ってあげるね」

「うん、これなら食べられる。俺、ケーキは基本苦手なんだけど。甘いのが嫌いだから」
「そうなんだ!じゃあ今度も甘さ抑えめで作ってみるね!」


加代に言われたからじゃなく、気がついたら全部食べてた。
この時も牧野は俺の真横・・・流石に腕がくっつくほど近づいてなかったけど、少しだけ赤い顔して珈琲カップを持つ彼女を可愛いと思った。


ぽてっとした唇・・・急にそこに視線が向かった。
同時にさっきの牧野の質問・・・『ねぇ・・・キスって好きじゃない人とでも出来るの?』、この言葉が頭に浮かんできた。



「ね・・・キスしようか?」

「・・・は?」

「出来ると思う?」

「え、いや、だって私たちは嘘の恋人だよ?」



「・・・それでも出来るんじゃない?」
「類・・・?」

手の甲に挨拶のキスぐらいしかした事ないけど、好きだと思ってキスしたことなんてないけど・・・。
でも、この時は確かに牧野にキスしたかったんだ。

何故か・・・なんてわからないけど。


彼女に近づいて軽く髪に触れてから引き寄せる・・・そして戸惑ってる牧野の唇を塞いだ。
ホントに数秒間だけ・・・。


なんでもない行為だって思ったのに、自分でも驚くほどドキドキしていた。






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2018/11/19 (Mon) 06:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

そうそう!初恋はつくしちゃんですけど、好きだったかもしれないって人は彼女です。
出るか出ないか・・・言葉だけなのか・・・(笑)

私の苦手な人ですので少し気が重たいのですが。あはは!

今回の行動でどう変わるのか・・・何も変わらなかったらどうしよう💦
って事にならないように少しずつ変化を起こしていきます。

ふふふ、お楽しみに♥

2018/11/19 (Mon) 11:43 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/19 (Mon) 22:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは。

九州のことを話すのはいつになりますかねぇ(笑)
2人ともそんな昔のことはあまり頭にないのかもしれませんよ?

加代さんの激怒(笑)
多分類君がまた無愛想な言い方をしたんじゃないかしら?

「これ、本当に牧野が作ったの?うちの誰かが手伝って仕上げだけ牧野とかじゃないの?」

こんな感じですよ(笑)


え?キスしちゃいましたよ(笑)
めっちゃ軽いヤツ・・・わかりにくかったですかね?ごめんなさいね💦



2018/11/19 (Mon) 23:40 | EDIT | REPLY |   

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