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記者会見の前日になった。

つくしは妊娠がわかってから休養をしっかり取り、気分が落ち着いたからなのか少しは体調が良くなったようだ。
それでも早くに始まった”つわり”の症状が出る事もあって、記者会見に俺1人が出るかどうかで家族会議中・・・つくしは申し訳なさそうにチョコンと端っこに座っていた。

子供が出来たことでこれからは仕事以外では親父の事を「お義父さん」、お袋のことを「お義母さん」と呼ぶことにして、つくしの事も「牧野さん」から「つくしさん」に変わっていた。


「どうしても俺1人は不味いのか?別につくしは喋る予定がないからいいんじゃねぇか?」

「そういうわけにもいかん。各支部でもこの記者会見は見るだろうからつくしさんの事を知らせる意味もある」

「じゃあ振袖をやめて服でいいんじゃね?こんな時に着物は苦しいだろう」

「でもねぇ・・・西門流の記者会見でお着物以外だったことが今までにはないし、それこそこの婚姻を心良く思ってない人が何を言い出すやら。その意味もあってあれだけの大振袖を準備したのよ。見栄と言うより本気を見せないとねぇ」


「着物で締め付けて腹の中の子供が苦しがったらどうすんだよ!」

「総二郎、本気で言ってるの?まだ苦しがるほどの大きさじゃないわよ。大丈夫、私が体調整えて頑張るから!数時間の事でしょう?多分何とかなるわよ」


そう言いながら口元押さえて吐きそうになってる・・・説得力ゼロのつくしの姿に溜息が出た。


ホテルの会場を貸し切って行うはずだったが急遽それをこの西門本邸の隣の茶道会館に変え、少し狭いがそこのホールを会見場にセッティングした。
それなら会見寸前に慣れた本邸で着替えればいい。身体への負担が1番少ないだろうと判断して、弟子やら使用人やら総出でその準備に取り掛かって本邸内は騒々しいってもんじゃなかった。


「あぁ、総二郎、つくしさん。結納の事だけど月代家のご都合で2月の末になったからな」
「2月末?28日って事?」

「あぁ、そうだ。つくしさん、こちらで勝手に決めて申し訳ないが牧野のご両親に伝えてもらえるかな?」
「はい。わかりました」


会見が司の誕生日で結納があきらの誕生日・・・なんか嫌な予感がする。


「それで結婚披露宴なんだけど、出産後と言うことではやはり体裁が悪いのですぐに行おうと思うのよ。つくしさんの安定期を待つとほら・・・お腹がねぇ?ドレスも着たいと思うから早めの方がいいと思って。
3月30日なら月代家もうちも九頭竜様も大丈夫だって言われたから、お式はその日にしますからね」

「・・・マジで?」「・・・うそっ!」

「あら、都合が悪いかしら?あなた達は我慢しなくちゃ!お目出度いこととは言え『デキ婚』ですからねぇ」


そうじゃなくて結婚式が類の誕生日ってところが・・・ここが1番怖い気がするのはなんでだ?!



**



会見の日の朝、西門に泊まっていた私たちは随分早くに目を覚ました。

朝起きた時が1番吐き気が酷くて目が覚めてもしばらくはベッドの中・・・総二郎が厨房まで朝ご飯を取りに行ってくれて、卵雑炊と少しのおかず、小さな器にお吸い物もあったけど香りは控えめにしてあった。

「自分で作ってると匂いで気分が悪くなるんだけど、人が作ってくれると食べられるって我儘だよね・・・」
「ははっ!今だけだから甘えとけ。会見は昼からだから午前中は何もせずにゆっくりしとけよ」

「うん・・・ありがとう。総二郎」
「色んな準備があるから本邸にいるからな。何かあったら呼んでくれ」


総二郎が部屋を出て行ったら1人きり。


今日はお目出度い日なのに私は逆にすごく不安定だった。

総二郎が嬉しそうに私の世話をしてくれるのが心苦しいような、この子が女の子だったらがっかりされるんだろうかとか、本当に私で務まるんだろうかとか・・・。
会見なんて出たこともないから怖くて堪らないし、気分が悪くなって倒れたらどうしよう。

元気な子が生まれてくればいいけど、もしかして何かあったら・・・それに彼に似てなくても可愛いって言ってもらえるんだろうかとか・・・次から次へと不安が溢れ出て、とうとう涙になってこぼれ落ちた。

その時、ノックと同時に総二郎の部屋のドアが開いて誰かが入ってきた。
それに驚いて慌ててパジャマの袖で目元を拭いた。


「つくしさん、あのね、これが今日の・・・あら、どうしたの?」

「あっ・・・ごめんなさい。お義母様、なんでもないんです」

「・・・あらあら、不安になっちゃったの?」

顔を出してくれたのはお義母様・・・今日の会見の時につける髪飾りを選んでくれって内容だったけど、私が泣いていたから傍に来て背中をさすってくれた。

何も言わずに・・・何も聞かずに、忙しい日なのに私の背中をずっとさすってくれた。


「すみません・・・どうしちゃったんだろ、私ったら今日みたいな日に・・・」

「いいのよ、いいのよ!それが普通の反応なんだから。うちみたいな古い家に入るのに、何処かのご令嬢だって震えちゃうわよ。だから気にしなくていいのよ・・・それに今は特に不安が強くなって当たり前よ。実感があるようでないでしょう?
それもいいの・・・あと8ヶ月ぐらいあるんだからその間に強くなるものなのよ」

お義母様の声は優しくて温かくて・・・私は泣き止もうとしてるのにどんどん涙が出てきて止まらなくなった。
それでも「大丈夫よ、いつでも私を呼んでちょうだい」って笑いながらポンポンと、まるで赤ちゃんをあやすみたいに・・・。


「総二郎さんなんか面白いのよ?つくしさんのこと、色んな人に自慢してるの。自分が人として成長するのに絶対必要な存在だって。つくしさんが居るとね、自分の重っ苦しい世界も明るくて楽しく思えるんですって。そりゃもうニコニコしてね・・・。
あの子があんなに嬉しそうに笑うだなんて少し前まで想像できなかったわ・・・ありがとう、つくしさん」

「お義母様・・・でも何にも出来ません。まだ小筆文字も漫画字ですもん・・・」

「ほほほ、それも少しずつです。何度も書けば綺麗になるわよ。私だって先代に怒られっぱなしだったわ」


今、私が抱えてる悩みは30年前に自分が抱えたものだとお義母様は話してくれた。
でも今はすごく幸せで楽しいと・・・この子が初孫で「おばあちゃま」になるのが嬉しいと・・・。気を遣ってくれたのか「女の子がいいわ。可愛い服を買いに行くのが夢だったの」って。


随分時間が経って涙も止まって気分も良くなった時、総二郎が部屋に戻って来た。


「あれ?お袋何してんだよ。向こうで志乃さんが探してたぜ?今日来る記者達に何か手渡すものがあるんじゃないのかって」

「あぁ!お目出度い席だからお菓子があるのよ!いっけない・・・忘れてたわ!」
「こんな所で遊んでんじゃねぇっての!・・・ったく!」


お義母様は私にペロッと舌を出して、急いで本邸に戻っていった。


「どうかしたのか?目が赤いけど・・・泣いてたのか?お袋に何か言われたのか?」

「ううん、違うよ。少し不安になったからお義母様がお話聞いてくれてたの。それだけだよ」


そう言うと私の横に座って、ちょっと怒ったような顔して肩を抱き寄せてくれた。
くすっ・・・自分じゃなくて親に相談したからヤキモチ焼いてる?


「お前の不安は俺にぶつけろよ・・・なんでお袋?」
「だって女同士だもん。総二郎じゃわかんない事もあるんだよ」

「それでも1番目は俺だろう。つくしの不安を俺が知らないってのは腹が立つ・・・何の話だったんだ?」
「・・・ふふ、総二郎の扱い方について・・・だったらどうする?」

「なんだ、そりゃ!」


クスクス笑いながら・・・そっと唇を重ねた。
さっきまでの震えはもうなくなった。こんなにも大事にしてくれる人達に囲まれてるから・・・。



先日作っていただいた深紅の大振袖を着て総二郎の横に立ち、この日、私は正式に総二郎の婚約者として世間に公表された。
気分が悪くなる暇もなく、緊張しまくってカメラのフラッシュを浴び、話したのは1度だけ。


「総二郎さんを信じて生涯共に歩み、西門の両親を支えられるように努力する事・・・それだけでございます」





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2018/11/17 (Sat) 15:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

抹茶と鶯様、こんばんは。

ここまで来たらギャグで締めてもいいかなってことで♥
類君・・・ははは!怒るでしょうねぇ。


私のところは旦那が長男なのに、産まれたのが娘だったから言われましたよ(笑)

「女の子なの?じゃあまた産まなきゃいけないじゃない」BY義理の姉


産んですぐに言われたので悲しかったですねぇ・・・。
私、最後まで性別聞かなかったので、本当に産まれてから知ったんですけどね。

でも、私は娘でよかったのでとっとと忘れることにしました。
そして男の子は産まれず・・・今でも時々言われますが無視してます(笑)


だからつくしちゃんにもこの一言で♥
どっちが産まれても元気が一番ですもんね!

2018/11/17 (Sat) 22:51 | EDIT | REPLY |   

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