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結納の次の日は私の卒業式だった。
でも大勢の人の中に入るのを総二郎が嫌がって、最後まで許してもらえなかった。

そんなに沢山のお友達もいないけど一緒に卒業したいと思ったのに・・・前日の夜、せっかくの結納直後だったのにマンションで小さな喧嘩になった。


「ダメだって!誰が風邪菌持ってるかわかんねぇのにそんな中に行かせられねぇって!」
「絶対に風邪引くとか決まってないじゃん。もしもの時は病院に行けばいいんでしょ?卒業式は1回しかないんだよ?」

「今日の疲れもあるからゆっくろしろって!卒業の祝いなら俺がしてやるから!」
「そうじゃないの!みんなと一緒に卒業したいんだもん・・・そりゃ、いいことばっかりあった大学じゃないけどさ・・・」


「お前が無理したら俺だって困るだろ?」
「・・・でも・・・」


英徳のアカデミックドレス、もうハンガーに掛けてそこに出してるのに。
あれを最後に着るの、楽しみにしてたのに・・・1枚でもいいから校門で写真撮りたかったんだもん。それの何処が無理なのかわかんない!


「これから沢山色んなことを我慢しなくちゃいけないって言ったじゃない・・・まだ西門に入ってないのにそこまで縛らなくても良くない?1時間の卒業式に出たいってそんなに無茶なこと?世間の妊婦さんだって街の中にお買い物しに行くじゃん・・・」

「・・・そりゃそうだが俺はイヤなの!」

「分からず屋!」
「なんだと?!」



結局、久しぶりに総二郎と部屋を分けた。

私がここに来た時に使っていたゲストルーム・・・総二郎と同じ部屋を使うようになってからは一度もここで寝てなくて、ベッドのお布団もまだ夏のもの。
それに1枚分厚い毛布を重ねて頭から潜り込んで寝ていた。

それなりに暖房はついてるのに、お布団だって重ねたのに凄く寒い・・・1人で寝るのってこんなに寒かったっけ?って身体を丸め込んで首の前で毛布を握り締めてた。


ちょっと思った・・・こうすれば総二郎の方が折れて、明日は卒業式に出てもいいって言ってくれるかと。


でも甘かった!総二郎は私が布団に潜り込んだあとも、何分経ってもゲストルームには来てくれなかった。

本当に反対してるんだ?って呆れてしまって、少し前まで泣きそうだったのに今度はムカムカして・・・「もう知らない!」って布団の中で独り言を叫んで眠った。


**


朝、目が覚めたのは8時前。寝付くのがいつもより遅かったから寝坊してしまって、慌ててベッドから飛び降りた!
総二郎はとっくに西門に向かったはず・・・朝の味噌汁、作れなかった。

もういないだろうと思ってキッチンに向かったらカチャカチャと音がする。
あれ?と覗いて見たら・・・総二郎がまだそこに居て、珈琲を煎れていた。


「総二郎・・・お仕事は?もうここを出なきゃいけないんじゃないの?」
「・・・今日は仕事、休んだんだよ。だからいい・・・」

「休んだ?具合悪いの?風邪引いた?熱があるの?」
「そんな風に見えるか?・・・お前の卒業式だからだよ」

「・・・・・・え?」


顔は凄く怒ってる・・・でも、珈琲に温めたミルクを注いでカフェオレにして私の前にスッと出した。
そして昨日のお夕飯の後に料理長が作って持たせてくれたお料理をテーブルに並べて、総二郎も向かい合わせに座って珍しく横を向いてふて腐れて食べてた。

肘ついて足組んで、そんな風に行儀悪く食べたことなんてないのに・・・。


「何時からだっけ、式典」
「・・・11時」

「終わったら速効帰るからな!俺は招待席にいるから」
「総二郎も来るの?」

「・・・お前の監視だ!・・・傍で誰か咳したら引き離してやるからな!」


そんな顔で卒業式に出るのかしら・・・凄く怖いんだけど。
でも、少しだけ恥ずかしそうにしてる総二郎が・・・可愛らしくて可笑しかった。


**


10時15分・・・スーツに着替えた総二郎が相変わらず怖い顔して私を呼びに来た。

「温かい格好しとけよ。どうせアカデミックドレス脱がないんだから。背中に貼るなんとかってのも貼っとけ」
「貼るカイロのこと?そこまでしなくても大丈夫だよ」

「いいから!言うこと聞いとけ。行くぞ!早く行って早く帰るんだから」
「そんな事言っても式典の時間は早まらないよ」

「・・・ったく!」


言葉ではそんな感じだけど私のアカデミックドレスは総二郎が持ってるし、履いていく靴はヒールの低いのが出されてるし、玄関を出る時には私の髪がはねてたからって直してくれた。

「お待たせ」って玄関を出たら無愛想に背中に手を回す・・・素直じゃないなぁってクスクス笑ったらエレベーターを待ってる間中睨まれた。


そして車で大学の中に入ったらすぐに私の手を引っ張って正門に向かった。

もう何人かが来て、校門の前で写真撮ってる。

「きゃああぁーっ!西門様よ、西門様が式典に出席されるの?」「馬鹿ね、ほら・・・あの人よ、あの人!」・・・そんな声が聞こえてきたけど知らん顔。
総二郎は私にも「そこに立っとけ」って無愛想に言ってスマホで数枚、写真を撮ってくれた。


私がここで写真撮りたかったの・・・なんで知ってるんだろう。


その後に回りで赤面してる人にいつもの罪作りな笑顔で「悪いけど撮ってくれる?」って頼んで、ちゃっかり2人でも撮ってもらった。後で確認したら総二郎が中心で私が端っこだったけど。



11時になって学位授与式・・・所謂卒業式が始まった。

「卒業生入場!」

その言葉を講堂の外で聞き、クラスメイトと一緒に並んで会場に入った。
総二郎は教授達の席とは反対側の招待席・・・そこの最前列で思いっきり私の方に視線を送ってた!

どうか両隣の人が咳をしませんように・・・そう祈りながら自分の席に座り、彼を見ないようにして正面に集中した。

開会の言葉の後、セレモニーは続き、卒業証書授与が始まった。
1人1人名前が呼ばれると壇上に上がり学長から証書をもらう。私は比較的後ろの方だったからドキドキしながらその順番を待った。

そして・・・

「牧野つくし」

「はい!」


私の名前で少しだけ会場がざわつく。でも、それを気にせず前に進んでしっかりと卒業証書を手に持った。

壇上を降りて今度は招待席の前・・・つまり総二郎の前を通って自分の席に戻るって順路だったから、そっちの方に緊張して歩いて行った。
何気に視線を逸らせたけど、総二郎がまだ怖い顔して私のことを睨んでるのがわかる・・・そう思った瞬間、総二郎の前を通り過ぎてから躓いてしまった!

「あっ・・・!」

彼の声がきこえたから急いで姿勢を戻して知らん顔して席に戻った。


学長式辞、来賓祝辞、祝電披露も終わり、在校生送辞を泣きながら聞いて、卒業生答辞も終わった。
閉式の言葉の後に「卒業生、退場!」と言われた瞬間、立ち上がった総二郎は誰よりも早く講堂を出て行った。


外に出たら同級生達は仲良し同士が抱き合ったり写真を撮ったり、泣いたり笑ったりで大賑わい。だけど私にはそんな人はいなかったからポツンと立っていた。

慣れてるはずだけど流石にこういう時は淋しいなぁ、なんて思って車に向かおうとしたら・・・


「つくし!」


大きな声が横の方から聞こえてきて、驚いてそっちを見たら・・・もの凄い悲鳴と共にあの人達が・・・!


黄色い薔薇の花束を持った美作さん、ピンク色の薔薇の花束は花沢類、何故か真っ赤な薔薇も持ってたけど。それに今日も怪しい紫色の花束を持った桜子。
そして真っ白な薔薇の花を持った総二郎・・・その4人の姿に驚いてもう少しで卒業証書、落とすところだった。


「おめでとう、牧野。はい、友情の黄色い薔薇」
「ありがとう、美作さん」

「おめでとう。これ、俺からの愛と、こっちの赤・・・司からね。今日は日本に戻れなかったんだって」
「くすっ、ありがとう、花沢類」

「先輩ったら私のこと忘れてたでしょ?はい!これ♥」
「うわっ!なに?この匂い・・・あんた、これに何か振りかけたでしょ?!」

「殿方を虜にする香りですわよ?寝室に置いてくださいな!」
「・・・バカじゃないの?でも、ありがとう、桜子」

口ではそんな事言うけど桜子の方が先に泣き出して抱きついてきた。
それに便乗して花沢類も美作さんも抱きついて来て、「花束が潰れるから離れてっ!」って嬉し涙を流しながら叫んだ。


「・・・こいつらがどうしても祝いたいって言うから5人だけで卒業式しようと思ってたんだよ」
「総二郎・・・ごめんね。でも、ありがとう」

「無事に終わったからもういいって。帰るぞ」


総二郎にもらった白い薔薇の花束・・・まるでウエディングブーケみたい。

花束で顔が隠れて前が見えない。
嬉しくて嬉しくて、涙が溢れて止まらなくなった。でも両手が塞がってるからハンカチも出せなくて、今度はそれを誰が拭くかで喧嘩になってた。



最後に撮った写真は5人で・・・それを後で道明寺に送ったけど、返事はいつものようになかった。



『ちゃんと卒業したよ!ありがとう、道明寺』






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2018/11/18 (Sun) 16:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

抹茶と鶯様、こんばんは。

あっ!・・・良かったですか?ふふふ、そういう総ちゃん好きですよね♡

そうそう、結局総ちゃんの方が負けるんですよね(笑)
不機嫌になろうが、言葉が乱暴だろうが、支えてくれる手は優しいのよ。

当日、どうやって招待席・・・来賓席ですかね、入り込んだんでしょうか。
学長を脅したんですかね?

「入れなかったら寄付止めるぞ!」とか言って。

私は子供の中学の卒業式で子供と大喧嘩して最後のHRの途中で帰りました(笑)
懐かしいなぁ・・・なんで喧嘩したんだろ?それは忘れた。ははは!


・・・それ、実現したら怖いから。恐れ多くて寝られません・・・。

2018/11/18 (Sun) 22:23 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/19 (Mon) 00:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様 こんにちは!

あはは!心配性&過保護&愛情過多&天邪鬼な総ちゃんです。
これで子供が生まれたらどんなパパになるんでしょ(笑)

当然卒業式には無理矢理参加した総ちゃん・・・(笑)

私の子供が中学の時は代表しか卒業証書を受け取らなかったのですが
教室で担任の先生が(40歳ぐらいの男性)号泣して1人1人にくれたのでその時に貰い泣きしました。
当の本人はニコニコしてましたけど。

小学校の時は1人ずつ壇上に上がったのですが、風邪を引いていて声が出ず、「はい!」が聞こえなかったので残念だったなぁ。


こういうシーンを書いてると自分の子供の事を思い出します。
懐かしいなぁ・・・。

2018/11/19 (Mon) 10:12 | EDIT | REPLY |   

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