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つくしが卒業したと同時に、春の茶会が増えることと結婚式が近づくこと、つくしの体調も考えてマンションから本邸に戻ることにした。
当面は俺の部屋に住むことになったが、東側にある別棟を改築し、俺達の新居にする事になった。


その工事の音を耳にしながら今日もつくしの見送りで仕事に出掛ける。

「それじゃ行ってくるな。帰りは昼を少し回るけど何か要るものあるか?」
「ううん、何もないよ。お買い物なんかしないで早く帰ってくれた方がいい・・・お昼ご飯は帰ってから?それとも済ませてくる?」

「つくしの昼飯。遅くなってもここで食うから準備頼むわ」
「はーい!行ってらっしゃい」

ほんの少し出てきた腹に手を当てるけど、まだ胎動なんてものはないらしい。
玄関先でそんなことばかりするから、俺が出掛ける時にはつくし以外の誰も出てこなくなった。まぁ、その方がいいんだけど。



屋敷に来る連中が祝いの言葉を出すようになった。
毎日のように届く品物で更に部屋が狭くなった。
使用人の動きも気忙しくなって、客に振る舞う茶の数も今までと比べものにならない。

料理長は毎日のように当日のメニューを聞いてくる。
それでも全員の顔には笑顔があって、去年の春とは全然違う風が流れていた。



衣装部屋にはつくしの白無垢が仕上がって中央を陣取っていた。

少々気にはなるが司の送ってきた生地で仕立て、西門の紋を入れて・・・流石に特注の生地だけあって輝くように美しい。
所々に織り込まれた細い金糸が宝石のように光っていた。

その隣には色打ち掛け。寿閣正倉文じゅかくしょうそうもんと言う最高級品。
駒塩瀬羽二重の生地を漆黒に染め、日本最古の文様である高貴な正倉文を描き、そこに本金箔と本貝螺鈿の金彩工芸を重ねた格式高い最高級儀式衣。

誰もがこの部屋の前を通るときに溜息をつきながら眺めるほど、こいつを見ると婚儀が近い事を感じさせた。


それはつくしが一番だろう。
時々そこに入っては黙って座って見上げてる・・・その時の胸の内は喜びだけじゃないだろうからそっとしておいた。


**


3月29日になるとつくしの両親と弟が田舎から出てきた。

弟の進はこの屋敷は初めてだから門の前から動くことが出来ず、両親はあの日と同じように面白い格好・・・。
両親はここが初めてじゃないからそこまでビビってはなかったが、やはり廊下の端っこをお互いしがみつくようにオドオドと歩く姿には笑えた。


そして今日は西の離れに牧野家だけの夕食を準備した。
そこには俺も入らず親子水入らず・・・


「お父さん、お母さん、本日はお忙しいところ前日にお呼び致しまして申し訳ございません。本来ならつくしさんをご実家にお返しするところですが、体調のことも考えまして今夜はこちらで過ごしていただきたいと思います。
ですから当家の人間はこちらには参りません。どうぞご家族でごゆっくりしてください」

「西門さん、何から何まで本当にありがとうございます。親として何もつくしにはしてやれませんでしたので気にはなっておりましたがすっかり甘えてしまって・・・お恥ずかしいです」
「こんな立派なお屋敷の奥様になんて本当になれるのかどうか・・・何度も頼んでごめんなさいね。西門さん、つくしの事、宜しくお願い致します」


「ご心配はわかります。苦労もかけると思いますが、総てのことを2人で分け合って行きたいと思っております。苦しいことがおきましても私の総てでお守り致しますのでご安心ください」


自分の両親のために食事の支度をしながらつくしが笑っている。
そして1番奥からつくしによく似た弟が俺の前にやってきた。大学にも行かずにもう両親と一緒に働いてると言ったっけ?


「初めまして、西門さん。姉ちゃんのこと、本当に大事にしてくださいね!俺、子供の時は姉ちゃんにずっとご飯作ってもらって、虐められたときも助けてもらって、勉強もみてもらって・・・だから、あの・・・」

「進、何言ってるの?そんな古い話、やめなよ」


はっ・・・すげぇ怖い目で睨んでやがる。
姉の小さい時からの苦労を1番身近で見たからか・・・この先は楽にして欲しいってことだろうな。

「進・・・えっと、弟になるから呼び捨てでいいか?あのな・・・お前の姉ちゃんにはこれからも楽な毎日はねぇと思うわ。こんな家だからそれは仕方ねぇんだ。でもその代わり大事にする。約束しろっていうなら約束するけど、気になるならこの家にいつでも様子を見に来い。姉ちゃんが笑ってるところを見せてやるから」

「・・・はい!約束・・・ですよ?本当に見に来ますよ?」

「おぉ、来い来い!一緒に飲もうぜ!」


一晩だけ両親につくしを帰し、家族4人で遅くまで楽しそうに話してた。
その小さな笑い声を何度か廊下で確かめて、1人寝の自室に戻った。




**




30日・・・西門縁の神社での結婚式が行われる日。


衣装部屋で白無垢に身を包んだつくしは今まで見たことがないほど美しかった。
綿帽子から少しだけ見える顔・・・頬を紅潮させて志乃さんの手を取り、まずは牧野の両親と挨拶をした。

西門の人間は全員下がり、ここでも牧野家だけの世界。
俺は少し離れた所に正座し、つくしの声を聞いていた。


「お父さん、お母さん・・・長い間お世話になりました。心配かけてばかりでしたけど、私も自分の居場所をようやく見つけることが出来ました。西門の両親を総二郎さんと支えていくけど、2人だって私の大事なお父さんとお母さんに変わりはないの。
だからこれからも宜しくね」

「うんうん!つくし・・・幸せになるんだよ」
「泣いて帰ってきてもうちにはあんたを泊めてやれる部屋がないから我慢してここで頑張って!」

「・・・何よ、それ。
進、これからはあんたがお父さんとお母さんを支えてね。頼んだわよ」

「・・・大丈夫。姉ちゃんは心配せずに自分の事を頑張れよ。色々・・・大変だろうけど」

「ふふっ、生意気言って!・・・任せたからね」






「お時間でございます」

志乃さんの声で今度は俺がつくしの手を取って部屋を出る。
2人並んで廊下を進むと使用人と内弟子達がズラリと並んで拍手と笑顔を見せてくれた。つくしは既にここで号泣し、志乃さんを慌てさせた。

玄関まで行くと親父とお袋が満面の笑みで待っていて、牧野の両親と一緒にリムジンに乗り込んだ。


俺とつくしは別のリムジン。
両親の車が走り去った後、俺の手を握ったままそいつに乗り込んだ。


「それでは参ります」、運転手のひと言でつくしがスッと顔を上げた。
さっきまでの恥ずかしそうな顔じゃなく、凜とした潔い美しさ。


俺が惚れた女は度胸があるわ・・・そう思って自分も同じように顔を上げた。



早花咲月の終わる頃・・・俺達の結婚式が始まる。





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★早花咲月(さはなさつき・3月のことです)

StopMotionから3ヶ月間にわたりお届けしましたお話、明日が最終話でございます。

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Comments 4

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2018/11/19 (Mon) 12:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

抹茶と鶯様 コメントありがとうございます。

いつも応援していただいて嬉しかったです。
ふふふ、ここまで書けたのも皆様のおかげ・・・淋しいですがとっても満足しています。

そうですねぇ・・・白無垢なんてここでしか書けないですもんね。
圧倒的にドレスを書く事の方が多いですが意外と着物が好きなので楽しいんですよね。

おぉっ!調べたんですか?ははは!
なかなか古風で豪華な柄でしたでしょう?

私が見たものは800万ぐらいのお着物でした。帯を入れると1000万超え・・・怖いなぁ!


明日のラスト、明るく終わりますのでお楽しみにね♥
多分、泣かないと思いますよ♥

2018/11/19 (Mon) 15:56 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/19 (Mon) 19:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

うふふ、素敵に成長しましたかね?
良かった良かった♥

素敵になればいいんですが、神前式はなかなか難しくて・・・(笑)
感動せずに笑いの結婚式になっても許してくださいね。

いつも応援コメント、本当にありがとうございます。
まりぽん様のお言葉に何度も救われています。

どうぞラストストーリーをお楽しみくださいね♥

2018/11/19 (Mon) 20:53 | EDIT | REPLY |   

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