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「はい?何と言われました?」
「・・・何処かに1人補充要員で配属できる部署はないかって言ったんだけど。コホッ」

「お風邪ですか?うつさないでくださいね」
「藤本は風邪引かない人種でしょ」


俺のデスクの前ですっごく冷たい視線を向けてる藤本・・・それに対抗して真顔で言い返したらすぐに何処かに行って、本社の社員名簿を持ってきた。

そして隅にある秘書デスクに座ってパラパラとページを捲ってる。
いや、そんなに真剣にならなくても隙間があるんなら牧野をそこに入れようと思ってるだけなんだけど・・・。


「何歳の方でどのような経歴の持ち主で何が出来るんでしょうか?それによって配属可能な部署が決まります。何カ国語か話せますか?」

「24歳の女性でとにかく元気」
「はい?」


「元気が良くて明るくて食べることが好きみたい。今までに企業に就職したことはなくて田舎で自営業の手伝いしてたみたい。日本語が話せるけどそれ以外はわかんない。でももしかしたら栄養学の知識があるのかも・・・それに投資に興味があるかもしれない。あとは動物にモテる・・・それと」

「専務、もう結構です」


聞かれたから答えたのに俺の言葉は完全無視された。おそらく24歳の女性だけ記憶したんだろうと思う。
藤本は笑顔ひとつ見せずに・・・むしろ怒ったような顔で黙々と人事資料を見ていた。

しばらくして資料をパタンと閉じて、俺の前に来ると自分で纏めたことを報告してくれた。


「専務のお話からしますと、まず24歳の女性で会社勤務の経験がないと言うことから営業本部、開発部、経営企画部、海外事業部、情報システム部は除外させていただきます。当然ながら監査部、役員室、秘書課も除外です。
投資に興味があるという時点で財務部も却下です」

「藤本・・・そこまで細かくなくてもいいんだけど」

「得意分野がないと言うことであれば差し当たって可能なのは総務部、品質管理部、物流資材課、あとは販売製造部のオペレータでしょうか。部長がお認めになれば経理部もありますがうちほどの規模になりますとそれなりに専門知識が必要です。
何処にしますか?専務からの依頼だと言えば1人ぐらいどうにかなりそうでしたけど」

「・・・総務にしようか」

「妥当ですね、下話しておきます。あぁ・・・それとお知らせしたいことがあります」


藤本がガンガン喋ったから頭の中が整理できなかったけど、ここで連絡事項があると言った彼の声の調子が変わった。
いつも抑揚のない淡々とした口調だけど、それに加えて少々面倒臭いと言いたそうな機嫌の悪い声。

あぁ・・・そういうことね、ってすぐにわかった。


「美作商事の美作あきら様があと30分ほどでこちらにいらっしゃるそうですよ」
「うん、昨日の夜にメールかあったよ。あと30分ね」

「それでは総務部に行ってきます。お越しになられても女子社員が連れてくるでしょうから、私がいなくても問題ないですよね?」
「くすっ。ホントに苦手なんだね」

「・・・派手な方は苦手ですね。それでは」


**


30分して廊下が賑やかになったかと思ったら秘書課の女子社員3名を引き連れてあきらが専務執務室にやってきた。
今日もいつものように全身コーディネイトはバッチリで髪まで艶々・・・役員なのにベビーピンクのシャツ着れるのってあきらぐらいじゃないの?って毎回思うんだけど。

入り口で女子社員には極上の笑顔を見せて手を振り、真っ赤な顔した彼女たちは「お帰りの時も寄ってくださいねぇ~」って・・・いつから花沢物産はバーになったんだ?


「よっ、類。相変わらず無愛想だな。元気か?」
「・・・そんな挨拶すんの、あきらだけだよ。無愛想で悪かったね、元気してるよ」

「でも、顔色良くなったじゃん?何かいいことでもあったのか?」
「そんなわけないでしょ。たった3日で顔色まで変わんないって」

「何が3日なんだ?」
「・・・・・・何でもない。コホッ!」


「変なヤツ!」って笑いながらあきらはこのあともイギリスでの話や今回の帰国の件について色々と喋っていた。
似たような企業の後継者同士、共通の話題には事欠かないから珈琲片手に長々と・・・その間、藤本が全然戻ってこないのには笑えたけど、その分のんびり気兼ねなく話し込んでた。


「あ、そう言えば聞いたか?静のこと」

「静の?いや・・・今度日本に帰るから会おうってメールは来たけど?」

「そうか・・・静、もしかしたら落ち込んでるかもしれないから、相談されたら慰めてやれよ?向こうじゃ結構話題になってたから」

「落ち込むって・・・何があったの?」
「知らないのか?静の婚約解消のこと」


婚約解消・・・婚約していたことも知らなかったけど。
そのぐらい彼女のことは知ろうとしなかった・・・って言うか興味がなかった。

藤堂商事の事業関連のニュースやなんかは把握してるけどプライベートな部分にまでは踏み込む必要がない。だからニュースとして出ていたのかもしれないけど、スキャンダル系のものはあえて見なかった。


「そう・・・解消したの?されたの?落ち込んでるんならされたのか・・・」

「そういうこと。しかも相手の浮気で・・・自分より年上だった静より、若い子の方がいいって言われたんだと。それに静は頭が良すぎて疲れるんだってさ」

「ふぅ~ん・・・そうなんだ」
「お前、昔は追いかけてたくせに気にならないのかよ!」


追いかけてた・・・そう見えてたんだ。
追いかけて来いって命令されてたんだけどな。子供の時は静に逆らっちゃいけないって思ってたからね。


「慰めるなんて静には似合わないでしょ。強い人だから自分で立ち直るだろうし、弟だと思ってる俺に弱いところなんて見せないと思うけど?」

「そうだといいけど、静、向こうで取り乱して病院に運ばれたりしたみたいだぞ?相当年下のあいつに惚れてたのかもな・・・そういや少し類に似てるような気がする。見た感じがな」

「やめてよ、あきら」
「ははっ!今度は類に静が迫って来るんじゃないのか?」

「ハ・・・ハックシュン!」
「類でも風邪引くのか?」

「どういう意味だよ」


想像できるから嫌なんだって。
いつまでも俺にことを自分の所有物みたいに・・・いや、それは言い過ぎか?



このあと社長、副社長にも会っていくって言うから内線であきらが行くことを伝え、父さんの秘書が迎えに来たらあきらは専務室を出て行った。
それと入れ替わりに戻って来たのは藤本。

何処で待機してたのか知らないけどあきらに会うことなく戻って来て、牧野の配属部門が決まったと報告してきた。


「専務が言われた女性ですけど、総務部で面倒みましょうってことでした。なのでこれが入社書類ですから記入してもらって、出社した時に総務部長に提出してください。日付はキリがいいので今月の15日から・・・」

藤本の話を聞きながら机に置かれた書類を見ていたら、いきなりバンッ!とドアが開いて、あきらが戻って来た。


「類!!おばさんから聞いたぞ?!おい、なんで何も言わなかったんだよ!」

「・・・・・・は?」
「美作部長、まだいらっしゃったので?」

「彼女が出来て同棲してるんだって!なんだ、お前やるじゃん!俺でさえ同棲はしたことないのに!!」


俺の手から書類が落ちて、藤本の鼻から眼鏡がずり落ちた。


「・・・・・・あっ」
「えっ!専務、彼女が出来たんですか?もしかしてこの総務部に入る人って彼女なんですか?!」

「えっ!花沢に入れるのか?もう花嫁修業かよ!くぅ~~っ、やるなぁっ!・・・あぁ、そうか!それで風邪引くんだ?」
「えっ!美作部長、彼女と風邪って何か関係あるんですか?」


「藤本、だからな?類が寝るときに・・・」
「はいはい・・・」



ヤバい・・・口止めするの、忘れてた。





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Comments 8

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2018/11/24 (Sat) 00:19 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/24 (Sat) 01:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

桜姫様 おはようございます。

あはは!それは良かった♥

そして彼女(笑)いやいや、そういう人は悪戯しに現れるんですよ(笑)
いいじゃないですか、類君は気にしてないですよ?

ふふふ、気持ちは同じですけどねっ!

2018/11/24 (Sat) 07:43 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、おはようございます。

うふふ、なかなか読めない展開でしょ?
つくしちゃんが何処に配属されるのかはすぐにわかります。

隠れた能力は隠したままかも?(笑)

あきら君……ははは!この人が知ったんですから当然……ですよね!
類君、風邪引いたせいでちょこっと失敗したようです。

なんたってお母様は喜んでるんですものね~!
嬉しそうに話したんでしょうね(*^o^*)きっと!

どうやって3人に会うのかしら……?お楽しみに♥

2018/11/24 (Sat) 07:49 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/24 (Sat) 08:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

あらら、それは申し訳ございません。より近づくために考えたことでございます♥
鈍感な2人には強力な爆弾がないと気がつかないと思います。

今からイチャイチャしてたらお話がすぐに終わりますのでね(笑)
まだ恋は始まっておりませんのでこれからですよ。

穏やかに進んでいるように見えますが、書いているのは悪のplumeriaでございます。
ふふふ・・・この先には色々ありますよ?(笑)

2018/11/24 (Sat) 09:26 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/24 (Sat) 19:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは。

あはは!そうですね。風邪のせいにしておきましょうか。

あきら君はどうにでも出来そうですが、藤本はどうでしょう?
ただでさえ類君に振り回されてるのでご機嫌悪くなるかも?

ますます頭が痛くなるのかもしれませんね。

類パパも類ママも既にお嫁さんのように思っていますからね(笑)

やっぱりお話のスピードアップをしなくてはっ!!

2018/11/24 (Sat) 23:24 | EDIT | REPLY |   

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