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「花沢類!お待たせ~!」
「ううん、俺も今来たところ。休みの日まで仕事、お疲れ!」

久しぶりに会う花沢類は温かそうなコートにやっぱりカシミヤのマフラーしてる。足元を見たらジーンズじゃなくてスーツみたいだったから少し驚いた。
だって支度は気にするなって言ったから普通のお店に行くんだと思ってた・・・それとも違うのかな?

「どうかした?」
「あ、ううん・・・何でもない。寒いなぁって思って。当たり前か!」

「早く食事に行きたいんでしょ?でもせっかくだから見に行こうよ」


ここの名物、バカラシャンデリアを眺めて「綺麗だねぇ~!」って・・・周りにいる2人連れはみんな恋人なんだろうけど、その中に混じって花沢類と煌びやかな光を見上げていた。
隣の人が私たちを・・・花沢類を見てる。その向こうの人も・・・その向こうの人も、反対側の人も。
もう慣れてしまった光景だけど今日は特別嫌な気分だった。

そして10メートルにもなるクリスマスツリーも見に行った。


シャンパンゴールドの光に包まれる幻想的な空間・・・ヨーロッパ各地で開催されるクリスマスマーケットをイメージしたマルシェも開催されてイベント感満載。何処を見ても幸せそうな笑顔が溢れていた。
手を繋いでる人、肩を抱かれてる人、恥かしそうにプレゼントをこんな所で渡してる人・・・愛されてるんだなぁ、みんな。

クリスマスケーキの箱を抱えたお父さん・・・この人は愛する家族がいる場所に急いで帰ろうとしてるんだね。
大きなプレゼントの包みを抱えた子供・・・その両脇にはお爺さんとお婆さん。孫と楽しいクリスマスなんだ?きっと幸せな人生を歩んできたんだろうなぁ。

「女同士で盛り上がるわよ!」「良かったぁ!クリぼっちにならなくて!」なんて声も聞こえた。
あはは・・・2人とも派手な格好してバッチリメイクで、勇ましく何処かに繰り出していった。ある意味、羨ましい・・・。


私は大好きな人の隣に居るのに、きっとあんな顔はしていない。
この作り笑いは通りすがりの人には気が付かれないだろうか、そんなことを思いながらツリーを見上げた。


何処から聞こえてくるのかクリスマスソングばっかり・・・それを聞いていたらだんだん切なくなって、楽しくしなきゃ!って思うのに涙が出てきた。


「・・・牧野?」

花沢類に気がつかれて顔を覗き込まれた。
今までならどうにかして誤魔化したんだろうけど、今日はもう・・・我慢出来なかった。


「・・・ごめんね、泣いたりして。これが花沢類と見る最後のクリスマスツリーかと思うと悲しくなっちゃったの。もう随分前からこの日が来るのが嫌で・・・誘われても断わろうかとか、もう会わないようにしようとか・・・そんなことを色々考えて・・・」

「・・・そっか。ごめんね」

彼のごめんね、を聞いて、それがお別れの挨拶のように思えて堪らなく辛かった。


だから両手で顔を覆って流れる涙を止めたら・・・ふわっと正面から抱き締められた。


「・・・え?あ、あの花沢類、ここ・・・外だしみんなが見てるし!ちょ、ちょっと!」
「いいじゃん。誰が見てても・・・それに牧野が泣いてる方が嫌だから」

「な、泣かない!泣かないから離して・・・そんなことされたら私、勘違いするから!」
「勘違いなんてしてないよ。俺・・・牧野に伝えたいことがあるんだ」


私は彼のコートに埋もれてる・・・彼の顔は私の髪に埋もれてる。
抱き締められてる背中にある手がほんの少し強くなって、私もそれまでだらんと下げていた手を彼の身体に回した。

どうしよう・・・もう引き返せないかも。このまま私の気持ちを全部話して・・・



「牧野、一緒にフランスに行こう?」

「・・・え?」

「俺、あんたがいないとダメなんだ。何も出来なくなるから一緒にフランスに来て欲しい。牧野のことが好きだから・・・」



自分の気持ちを全部話そうって思ったと同時に頭の上から聞こえてきた言葉・・・『一緒にフランスへ行こう』

瞬間・・・何が起こったのかわからなくて掴んだ手が止まって、呼吸も止まった。瞬きも止まって私の全身か固まった。


マキノノコトガスキダカラ・・・その言葉が何度も何度も頭の中で繰り返される。
こんな時に冗談はやめて、って言いそうになるけど自分の口からは何1つ言葉が出なかった。


「あんたのことが大好きなんだ。誰にも渡せない・・・ずっと傍にいて欲しい」
「・・・・・・」

「返事してくれないの?牧野・・・何か言ってよ」
「・・・・・・」


だって・・・言葉が見つからないんだもん。
「これが花沢類と見る最後のクリスマスツリーだって思うと」・・・そう言ったばかりなのに、今度は「大好き」って・・・そんなの信じられない。
自分の気持ちをきちんと伝えたら、マフラー渡して1人で帰るつもりだったんだよ?


「何か言ってくれないとこの腕、離さないけど」

「・・・ホントに?私、お嬢様じゃないよ?普通の家の、何も出来ない子だよ?」

「俺が欲しいのはお嬢様でも家でもない、牧野つくしっていう女性だけ・・・それが総てで他には何も要らない」

「・・・だって今まで何も言ってくれなかったじゃん。どうして今頃になってそんなこと言うの?」


「ごめんね。不安にさせたよね・・・ちゃんと説明するから」



今、流れてる涙はさっきのものとは全然違う。
嬉しくて嬉しくて・・・何が何だかわかんないぐらい嬉しくて身体が震えた。
彼のコートをぐちゃぐちゃに握り締めて、胸に縋り付いてわんわん泣いて、周りの人が振り向くぐらい泣いたけど花沢類は笑いながら抱き締めてくれていた。



**



「どうしよう・・・こんな格好だからご飯、どうしたらいいの?花沢類、スーツ着てるよね?」

「うん、実は今から牧野にクリスマスプレゼントするために店を予約してるんだよね。そこに先に行ってもいい?食事はあそこのホテルのレストランを予約してるから」

「えっ!あのホテルの?だからこんな格好じゃ入れないって!」
「だから先に買い物だよ」


花沢類が予約してるからって連れて行ってくれたのはガーデンプレイスの近くにあるドレスショップ。
そこで既に何枚か用意されていたドレスを着せられて、その中から好きなものを選べと・・・慌てて断わったけど「俺の我儘だから」って、結局彼が選んだサーモンピンクのドレスに決めた。

靴もバッグもそこで用意されてパールのネックレスにピアス。毛皮のコートまで用意されて僅か30分でお嬢様っぽいメイクまでしてもらった。


「うん、凄く可愛い・・・他の誰にも見せたくないぐらい」
「えぇ?!そ、そんな事ないよ、似合わないもん。何だか恥ずかしいんだけど」

「ううん、よく似合ってる。自信持って歩いて?俺が隣に居るからさ」


私より嬉しそうな花沢類がそっと腕を出してくれる。
だからその腕に自分の手を絡ませてこのお店を出た。


そして目の前に見える大きなホテル・・・そこまで続いてるイルミネーションを眺めながら慣れないヒールで歩いてた。

またみんなが振り返って見てる。
今度は私も幸せそうな笑顔に見えるかしら・・・さっきまで見ていた人達と同じように楽しそうに笑えてるかしら。
隣を歩く彼に似合う女の子になってるかな?そう思ってショーウインドウをチラッと見たら・・・そこには私じゃないみたいな幸せな顔をした「女の子」が映ってた。

くすっ・・・変なの。私、こんなに笑ってるじゃん。


「どうかした?牧野」

「ううん、何でもない。コート、温かいなって思って」

「そお?俺がいるからでしょ?」


今度は花沢類が頬を染めて私にそんな言葉をかける・・・「うん、そうだね!」って答えたらまた少しだけ引き寄せられた。



レストランに着いたら夜景が綺麗に見える特別席でクリスマスディナー。

豪華なお料理が綺麗に並べられて、テーブルには真っ赤な薔薇。
そこの窓に映る私は、見た目だけちゃっかりお嬢様になってて、それを話したらクスクス笑ってた。

今日のシャンパンはローランペリエ アレクサンドラ ロゼ。
グラスを掲げて乾杯したけど、これまでのことで胸が一杯だった私はひと口飲んだだけでふらふらだった。


聞きたいことが沢山あるのに。
話したいことが沢山あるのに・・・あとどのぐらいここにいるんだろうって考えていたら彼がそっと囁いた。



「今日はここのエグゼクティブスイート取ってるから帰らない・・・一緒に過ごそう」





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Comments 4

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2018/11/30 (Fri) 11:56 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/30 (Fri) 13:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あはは!お待たせしました。
類君が待たせた理由は最終話でお話しします。

でも、これでやっと・・・ですね♥
楽しいクリスマスを迎えることが出来てよかったです!

次回、2日で終わりです・・・お楽しみに♥

2018/11/30 (Fri) 16:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんにちは。

泣かなくても・・・(笑)

うふふ、類君、やっと言えましたねぇ!よかった、よかった!!

で・・・(笑)やだわ!さゆ様、ホテルって言ってもそんなのは書きませんよっ♥
短編ですもの、そういうシーンは1行描写で終わりですよ(笑)

そこはほら!妄想、妄想!!寝られなくなりますよ?


その後、どうですか?痛くないですか?
新しい傷を作らないように気をつけて下さいね!

いつも、ありがとうございます♥

2018/11/30 (Fri) 16:05 | EDIT | REPLY |   

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