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「はい?なんと仰いました?」

「だから今日の昼食は社員食堂に行くって話。今日の昼食に誰かと予定があった?あるんならそれを社員食堂にしておいて」


朝、会社に行ってすぐに藤本に頼んだら昼間は何も予定がないと。
それなら牧野の働きたい場所を確認しておかないと、そう思って外食をせずに社内で済ませることにした。

「しかし、何故ですか?そんなところで専務が食事をしたら・・・って言うか食べられるんですか?」
「どういう意味?」

「たとえばですが『豚肉の中華風きんぴら』とか『さばの南蛮漬け』とかなんですよ?『ちくわいんげん炒め煮』とか『焼きうどん』とかって専務のお口に入ったことはあるんですか?」

「・・・焼きうどん?」


藤本が何言ってるのかさっぱり・・・それって料理名なんだろうか?
真顔で藤本を見てたら「やめた方がいいですよ?」って言われた。


「それよりも昨日の入社書類は書けましたか?まったく・・・専務はこんな事しないと思ってたのに」
「あぁ、それが社員食堂で働きたいんだって」

「・・・はい?!」
「そうだった!それを聞きたかったんだけどうちの社員食堂は委託なの?それともうちの社員なの?」

「花沢物産社員食堂は独立した会社が入っております。キュイジーヌ(cuisine)・花沢という食品関連の子会社になりますが?」
「子会社・・・そこに1名入れたいんだけど」

「総務では不満なのですか?専務の彼女!」
「言ったでしょ?不満じゃなくて身体を動かして働きたいそうだ」


「・・・確認して参ります」

昨日に続いて今日まで・・・そう言いたそうな藤本が嫌そうな顔で俺の机に数枚の書類を置いて専務執務室を出て行った。

自分で読んどけって事だよね?
その藤本が置いていった書類を捲りながら今日のスケジュール確認・・・何枚か捲ったところに新年パーティーの出席名簿があった。

これは花沢グループのニューイヤーパーティーだから外部取引先は来ない。
子会社と関連会社の幹部が揃うものだ。


「花沢フィナンシャル、花沢ロジスティックス・・・HSテクノロジーに花沢物産バイオファーマね。HHファッションに、花沢プラントシステムズ。あぁ・・・五十嵐物産も九州から来るんだ。へぇ、久しぶりだな」


書類をひと通り見終えたらロビー奥にある携帯会社の出向店舗に向かった。
働くならスマホを持たせないと、また何か事件に巻き込まれたらいけないからね。


**


藤本が戻ってきてキュイジーヌは人手が足りないぐらいだから受け入れ可能だと言われ、昼になったら藤本を連れて社員食堂に向かった。

そこは初めて行く場所だったけど、だだっ広いレストランみたい・・・凄い数のテーブルと椅子が並んでいて、でも観葉植物もあって雰囲気は悪くはない。
思ったより開放的で綺麗な社員食堂だった。


「きゃああぁーっ!専務?あれ、専務じゃないの?!」
「ホント!いやぁーっ、今日ここ選んでよかったぁ!」
「なになに?!女性連れ?あぁ・・・男性か、よかった!」

「・・・なんで専務がこんな所に?何かあるのか?」
「まさかこんな所で呼び出しとかないよな?」

何故か女子社員が1歩前に出てて、男性社員は俺からかなり離れた所に・・・もしかして社員食堂もレディファースト?チラッと振り向いたら最前列の女性がポーチを床に落として泣き出してしまった。
「専務が私を見てくれた~!」って・・・1番前に居たからでしょ?


「・・・・・・」
「だから言ったでしょう?専務が来ると、ただでさえ混雑するのにパニックが起きるんですよ。こんなの朝だけで充分です!」

今度は藤本が俺の後ろに回って、キッと振り向いたら「邪魔!」って怒鳴られてた。



お昼時だから凄い人数がワイワイガヤガヤしていて確かに凄く慌ただしいし、騒々しい。
こんな所であののんびりした牧野が働けるの?

ほんの少しだけ見える厨房の中はフロア以上にドタバタしていて、動き回るスタッフを見てるだけで目が回りそう・・・。


「藤本、説明してくれる?」
「専務、その前に並びましょうか。ここは激戦区ですから専務とは言え簡単に順番飛ばしは出来ませんよ」

「・・・は?」
「まずは食券を買うんです。社員証を出してください」

「持ってない」
「社員証不携帯ですか!・・・わかりました、私がやりましょう。専務、このメニューの中から本日の昼食を選んでください」


「・・・えっ!俺が選ぶの?」
「誰のご飯ですか!」


洋風チキンカツ、高菜ご飯とだご汁、切干チャプチェ?ポテトサラダ・・・既に何のことだかわからないけど。
大根菜ひじき炒め、冷奴、白身魚の明太マヨソース?牛肉ともやしのピリ辛たれ・・・和食なんだろうか?

鶏飯、蒸し鶏の和風サラダ、青梗菜油揚げ浸し、牛肉の甘辛炒め、唐揚げ丼 温玉のせ・・・温玉?
けんちん味噌煮、和風カリカリチキン、さんま塩焼、手作りもちもちハンバーグ・・・もちもち?

ブロッコリーサラダ、鶏と玉葱のチリソース、手作り卯の花・・・花、食べるの?ど、どんな花?
カキフライ、ぶり照焼、名古屋風どて煮?焼きうどん・・・あっ!焼きうどん・・・あった!


「藤本・・・洋食セットにする」
「散々悩んでセットですか!」

正直想像ができない。唯一わかったのは珈琲だった。



藤本がやり方を見せてくれたけど、ここでは社員証を専用の機械に翳したら給料で精算されるシステムらしい。
社員以外も利用できるからその人達だけが現金を支払うそうだ。

窓際の見晴らしのいい席、2人掛けの席、円形のテーブル席、大人数で座れる席、お一人様の淋しい席なんてものが色々別れていて、中央には大きな本物の木が植えられてたり、パーティションで仕切られていたり。

これだけの大人数が1度に食事することが出来るだけあって、ここの厨房は大忙し。フロアスタッフや料理師が長続きせず、慢性的な人手不足らしい。


「専務、食券を購入しましたので今度はこちらで受け取るんですよ」
「受け取る?運んで来ないの?」

「ここでは自分でするんです!」
「お金払ってるのに?」

「払ったのは私ですけどね」


今日の洋食セットは仔羊肉のハンバーグのデミグラスソースとご飯とスープとサラダと珈琲。
藤本は和食セットだったからサンマの塩焼きにご飯に味噌汁、卵焼きに漬物・・・でも、最後は珈琲なんだ?


厨房から責任者みたいな男が慌てたように飛び出てきて、窓際の2人席を特別に作ってくれて、一般社員から隠れるように仕切りまで作られた。

凄く変な気分・・・回りは殆ど男女で座ってんのに俺の目の前、藤本なんだけど。


その責任者に「明日から1名宜しく」と声をかけてハンバーグを食べた。


「専務、美味しいですか?」
「うん、意外と美味しい・・・あぁ、藤本。さっき置いてった資料の中にニューイヤーパーティーの名簿があったでしょ?」

「はい。社長から回ってきましたので」
「父さんのチェック済み?五十嵐物産、なんで今年は入ってるんだろう・・・」

「私もよくは知らないのですが花沢の子会社の中では業績がいいそうですよ。それでだと思いますが・・・何かありましたか?」
「いや、何でもない。今度自分で調べるから忘れて」


確かあそこの息子は俺の3歳上だっけ?
そいつが来るのかな・・・まぁ、来たとしても話なんてしないけど。最後に会ったのは俺が5歳の時だから顔も殆ど思い出せないし。



「専務、珈琲にミルク入れませんよね?」
「うん、ブラック」

「いただいてもいいですか?実はミルクたっぷりが好きなんです」
「・・・似合わないね、藤本」





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Comments 4

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2018/11/28 (Wed) 05:47 | EDIT | REPLY |   
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2018/11/28 (Wed) 08:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

はい。ボチボチ動かないと(笑)
これからはあの人も、この人も、あの3人も出てきます♥

私、社食のある会社で働いたことがないのでどういうものなのか全然わからなくて。
色んな有名企業さんの社食を調べてみましたが凄いんですねぇ!

ホテルみたいなのもあって驚きました。
何となく給食のおばちゃん風に考えていたけど(笑)花沢物産ですものね・・・。


動き出しますがまだスローですので、のんびりお待ち下さいませ。

2018/11/28 (Wed) 19:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんばんは。

爆笑!!浮世離れ・・・あっはは!その通りですね!
この藤本さんとの会話はいつ書いても楽しいです。ふふふ、「花沢専務」を書きたくなってくる(笑)

その後、どうですか?結構痛いんですよね・・・。
次から怖くなるでしょ?でも作らなきゃいけないし・・・主婦って大変ですよね💦

私はアキレス腱切ってるんで、退院後2週間ぐらいは這って移動してました。
台所は1分ぐらい立てるけど(片足で)すぐに椅子に座ってって感じで大変だったなぁ・・・。

それでも作らなきゃいけなかったので(泣)子供が居たのでね・・・。


ご無理せずに旦那様に甘えてくださいね?
お大事に~!

2018/11/28 (Wed) 19:23 | EDIT | REPLY |   

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