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「類ーっ!お疲れ様!」

類の姿が見えたから咄嗟に叫んだ直後、「ま、牧野さん、そのひと言はっ・・・」 って笹本さんが隣で慌ててた。

「えっ?ダメでした?」
「いや、前を見たらわかりますよ」

言われて前を見たら、入り口に並んでる社員さん達がシーンとして私の方を見てる。
あれ・・・どうしたんだろう?ってキョトンとしたら笹本さんが「お次の方、どうぞ~!」って声をかけて、また人は動き出した。

そして近くにいた人に受け渡しを替わってもらって少し奥まった所に連れて行かれた。
私はそこの壁に背中をつけるような体勢で、目の前には笹本さん・・・今まで穏やかだったのに少し怖い顔をして注意を受けた。


「あのですね、牧野さん。確かにあなたは花沢専務と仲がいいんでしょうが、ここではあの方は専務です。
決して類だなどど呼び捨ててはいけません!それじゃなくてもあの方は女子社員の憧れの的であって、あなたのように横に立ちたいと願う人は山ほどいるんですよ?」

「は・・・はぁ」

「専務には誰も文句言ったり呼びつけて暴言吐いたりしませんが、あなたはそんな目に遭うかもしれないんですよ?そしてそれがキュイジーヌの社員だったら私の方にも苦情が来るんです。あ、いや・・・私の方はいいんですが、牧野さんが嫌な思いをするのは上司としても困るんです。いいですね?ここではどの社員さんに対しても、食事以外のことで声をかけなくていいんです」

「わ、わかり・・・ました」

早口で言うからよくわからないけど、類に話しかけるなって言ってるのね?


「食堂内で皆さんがしている話にも聞き耳立てたり、それを誰かに喋ったりしてはいけません。就業規則にもそう書いてありますからよく読んで下さいね?」

「・・・ごめんなさい。つい類の顔が見えたので・・・」
「花沢専務です!類ではありません!」

「・・・はい。申し訳ございませんでした」


失敗しちゃった。

初めてこんな仕事をするから浮かれちゃって、働いてる姿を類に見てもらおうと思って大声出しちゃった。
「もういいですからしばらくトレイや食器の整理に行ってください」って、受け渡しの場所を交代させられた。

残念・・・類がどんなお昼ご飯にしたのか確認したかったのに。



****************



「藤本、もうお昼に行ってもいい?」
「お腹空いたんですか?専務、珍しいですね・・・あ!牧野さんですか?」

「行ってもいいよね?12時過ぎたからいいよね?」
「何かあってはいけませんので私も同行致します。あちらは仕事中ですから邪魔しちゃいけませんよ?ちゃんと社員証も持ってくださいね」

「うん、不要品入れの中で見つけたから」
「・・・・・・」


確かに牧野は仕事中・・・勝手に話かけるわけにもいかないけど、どんなことをしているのかだけでも見ることが出来たら・・・その程度の気分で社員食堂に向かった。

今日も当然人が多い。第1グループが11時30分からだから今が1番忙しい時間?
食事を終えて出てくる人間が俺を見てビクッとするのを無視して、列の後ろ側から様子を窺った。


あっ・・・牧野がいた!

オレンジ色のエプロンつけてもうあんなところで仕事をしてる。
隣に余計な男がいるのが何となく気に入らないけど。

「専務、ここで牧野さんに声をかけてはいけませんよ。これだけ色々な課の社員がいるんですからすぐに噂になってとんでもないことになりますから。それじゃなくても出勤の時に見られてて営業部では女子社員から仕事が手につかないと、私に事情説明を求めてきたんですからね?」

「わかってるって。手を振るぐらいでやめればいいんでしょ?」
「手も振ってはいけません!状況がわかってないんですか?さぁ、順番が来ましたよ。選びましょ、専務」


・・・マジで煩い。
そんなの噂になったって構わないのに。どうせ毎朝一緒に来て毎日一緒に帰るんだから。

それよりも笹本以外の男の接近はなさそう?
それが気になってつい、身を乗り出してしまった。そしたら・・・見つかった。


「類ーっ!お疲れ様!」

一斉に周りにいた連中が俺と牧野を交互に見る。
そして隣の藤本が固まる・・・すぐに手を上げて振ろうとしたらこいつが飛びついてそれを阻止された。


「なにすんのさ!牧野が声かけてきたんだから応えなきゃ」
「そんなことはしなくていいって話したばかりでしょ!いいから、ほら!今日はなんにするんですか?選ばないなら私が決めますよ?」

藤本に引っ張られて昨日と同じように食券の販売機の前に行って、そこで社員証を翳した。でも、牧野のことが気になって振り向いたら、笹本に引っ張られて奥の方に連れて行かれたところを見てしまった。


なんて乱暴な・・・今日入ったばかりの新人なのにそんな!

しかもあれって「壁ドン」ってヤツでしょ?
勤務中に女性に壁ドンするなんてどういう事?こんなに人目につくところで・・・牧野、凄く怯えた目をしてるじゃない!
一体何を言われてるんだろう・・・メニューなんて決められない、傍まで行って文句言ってやる!

そう思って列を抜け、カウンターに近づこうと1歩前に出たら藤本に片腕掴まえられて後ろに引き戻された!

「だから行ってはいけませんって!あちらはあちらで独立した会社です!専務、そんな事してたら激辛中華セットにしますよっ!」

「でも、牧野があの男に・・・」
「牧野さんが大声で叫んだから注意を受けてるんですよ。いちいちそんな事に反応していたら働けません!」

「あっ・・・今度は何処かに連れて行った!」
「大声出したから奥の作業に回されただけです。初日なんですからまだ牧野さんに出来ることが限られてるので仕方ないでしょう?本当ならまだ見学させるべきところです!」


そのまま自分の順番が来てトレイを持って受け渡しのところに行ったら、牧野と交代したヤツが揃えてくれた。
でも俺の目は何処かに消えた牧野を探していて後ろが渋滞・・・ここでも藤本に怒られながら、昨日作られた特別席に向かった。


牧野・・・落ち込んでないよね?

そんなことを考えながら昼食を食べようとしたら・・・バイン・セオ(ベトナム風お好み焼き)とゴイ・クオン(生春巻き)が目の前にあって驚いた。
こんなものまであるの?って言うか、会社のお昼にベトナム料理?


藤本を見たら普通に和食のセット・・・昨日と違って刺身までついてるヤツだった。


**


定時になって急いでキュイジーヌの事務所前に行ったら、牧野がちょうど出てくるところで笹本がそれを見送っていた。
迎えに来た俺にすぐに気がついたようで、真剣な表情で近寄って来た。


「花沢専務、本日はうちの社員が大声など出してしまい、申し訳ありませんでした。ご迷惑にはなりませんでしたか?」

「うちの・・・?うん、別にあのぐらいじゃ何も起きないよ。心配しなくてもいい。もう終業時間だよね・・・牧野、帰ろう?」
「うん!笹本さん、色々ありがとうございました。明日からも宜しくお願いします!」

「はい、頑張りましょうね。お疲れ様でした」

「お疲れ様でした!」


うちの社員って言い方にちょっとムカついて、そのあと俺にも挨拶があったけど無視してしまった。チラッと横を見たら流石に疲れてるのか、ほんの少し目がとろんとして歩く速さもちょっとだけ遅い。
小さなバッグとは別に紙袋を持ってて、中には貸与された制服のエプロンが何枚か入ってる。

まるで宝物みたいに抱きかかえているのに笑ってしまった。


「え?どうしたの?何かおかしい?」
「いや・・・疲れてるなって思って。どうだった?初出勤」

「あはは!大変だったよぉ!ちょっとだけ挨拶したんだけど、みんないい人達みたいだったし、頑張らなきゃって思ったよ」


「いい人達?笹本も?」
「うん!いい人だよ?」


なんだろう・・・そのひと言がムカムカするんだけど。




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Comments 4

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2018/12/04 (Tue) 06:50 | EDIT | REPLY |   
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2018/12/04 (Tue) 08:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

怒られましたね💦
入社1日目から怒られたら結構ショックかも~、ですが、つくしちゃんはそこまで落ち込んではないかも?

確かにこれから沢山新しい事を知っていくんでしょうね。
類君のヒヤヒヤが止まらないかも(笑)
ジェラシーもね・・・ふふふ、つくしちゃんの周りの男性にイライラが(笑)

今日は気温が高くて、実は私は今、半袖です。
12月じゃないみたい・・・でも、週末は雪が降るかも?なんて言ってました。

ビオラ様もお風邪など引かれませんように。
お気遣い、ありがとうございます。

2018/12/04 (Tue) 11:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんにちは。

あっはは!イライラ類君(笑)
それは恋だよ?ヤキモチだよ?って教えてあげなきゃ!

藤本さん、楽しいですか?(笑)ふふふ、嬉しいです。
激辛中華セットと言いながら、目の前にベトナム料理(笑)

流石、藤本ですねっ!私の好きなキャラですのでこれからも頑張っていただきます!

2018/12/04 (Tue) 11:59 | EDIT | REPLY |   

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