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西門さんのプレゼントを持つ手に力が入った。
こんなアパートにこんな高級車なんてくるはずがない・・・来るとしたらそれは・・・。


いや、確かに1番可能性は高いけどそうだと決まったわけじゃない。もしかしたら私の取り越し苦労で関係ない車かもしれないじゃん。
そう思ってドキドキしながらその車の横を通り過ぎた。


わざと中を見ないように反対側を向いて・・・わざと歩幅を大きくして急いで帰ろうとして。

でも、通り過ぎた途端、ガチャっと車のドアが開き、誰かが降りて私の後ろに立った。
それを感じたら足がピタッと止まってしまった。


「お待ちしていました。牧野つくしさんですね?西門家の者です」
「西門の・・・な、何かご用ですか?」

「ここではお話が出来ません。お車にお乗りいただけますか?」
「え?車の中で話すんですか?」

「はい、お車の中で・・・人目がございますのでお急ぎを」


やっぱり西門だった・・・そして話があると言われてすぐに彼とのことだと思った。だって、それしか考えられないから・・・。
私と西門さんが付き合ってることを調べて忠告されるんだろうと思って、仕方なく開けられた車のドアの前に行き「お入り下さい」と、もう1度言われたからそこに乗り込んだ。

でも、そこには既に1人の男性が座っていた。
上等な着物にがっしりとした体つき・・・ゆっくり視線を上げていった先に見えたお顔は・・・西門さんのお父様、お家元だった。


「・・・えっ?あの、お家元・・・?」

「・・・ドアを閉めなさい。話はそれからだ」

「は、はい!」

もの凄い威圧感・・・遠目で何回かしか見たことないし、直接話した事もない。
同じお部屋に同席したこともない私が、こんな狭い車内でお家元の隣に?・・・足も手も震えながら急いで入ってドアを閉めた。


「急に悪かったね。牧野つくしさん・・・総二郎が世話になってるようだが」

「・・・いえ、私はなにも・・・」

「ははは・・・まぁ、それもそろそろ終わらせていただこうかと思ってね。君は本気で総二郎と一緒になれるだなんて思ってないだろう?あれも火遊びの酷い子だからその気にさせるような事を言ったかもしれないがね。
確か総二郎の稽古を受けていたと思うが、今後はそれも遠慮していただこうか。これからはうちに総二郎の妻となるべき人が花嫁修業として来ることになっているからね・・・変な噂が立つのも困るのだよ」


「・・・妻?西門さんの・・・ですか?」


聞き間違いかと思った・・・西門さんからはそんなこと、ひと言も聞いてはいなかったから。

私のことは本気だと、いつかは家に呼ぶつもりだと・・・何度もそう言われていたから、勿論不安はあったけど自分の将来はあの人と共にあると信じていた。
それに私のことは”火遊び”じゃない・・・その場限りの関係じゃなく、彼は私を愛してくれた。


その証拠に今私のお腹の中には彼の子供がいるはず・・・それを、今言うべきかどうか迷った。
でも病院で確かめてもないのに話をしてしまって、万が一そうじゃなかったらそれだけで西門家に入り込むために嘘をついたと言われるかもしれない。

だから不確かな事は言わずにおこうと口を閉ざした。


「言ってる意味はわかるだろうね?もう総二郎には会わないでもらいたい。会っても辛い思いをするのは君で、総二郎は家の命令には背けないからこの話を受けるだろう。
婚約発表の日取りがいつかはまだ決まっていないがそう遅い時期でもない。傷が深くなる前に自分から身を引くことだ」

「いえ、でも・・・西門さんがそのお話を受けるとは思えません。私たちは真面目に・・・」

「真面目に?真面目に付き合ってるというのかね?そういうのは簡単だがそれだけで西門に嫁げるというものではない。君が考えているような甘い家ではないのだよ。受け継いでいかねばならぬものの重さなど君には理解出来ないだろう?
総二郎の荷を半分持つことなど君の力では無理だ。身の程を弁えなさい」


身の程を弁えろ・・・それは私が1番聞きたくない言葉だった。


住む世界の違いなんて解りきって付き合っていたつもりだったから。
それでも西門さんの事を信じていれば幸せになれると思っていたから。

でも、今私の横にいる「高すぎる壁」は簡単には崩せない・・・崩す前に倒れてしまうかもしれない、そう思う自分もいる。


「実はね、明後日の総二郎の誕生日に2人は対面するのだよ。ははは、美しい人でねぇ・・・総二郎は間違いなく気に入るだろうよ。あれは女性には煩い男だがね・・・そうそう見つけられないほどの才女でね。私も家内も喜んでいるのだよ」

「え?西門さんの誕生日に・・・初めて会うんですか?」

「そう。だからその日は1日中忙しくてねぇ。京都から先代の家元もやってくるし、分家筋の長老も祝いの席だからと揃うことになっていて大変だよ。とても外出など出来ないだろうよ」


遠回しに私とは会えないと言ってるの?
でも・・・それって西門さんが承知してるの?そんなわけ・・・ないよね?



車から降りてその場に立ち尽くしてると、家元達はさっさと私の前から走り去っていった。

今、何を言われたのか、思い出せるような出せないようなフワフワした感じで身体の向きを変え階段を上がる・・・1歩前に足を出すのがこんなに辛かったっけ?って思うぐらい重かった。


気が付いたら自分の部屋の真ん中にいた。
いつ鞄から鍵を出したのか、いつそれをノブに差し込んだのか、いつブーツを脱いでここまで入ったのか・・・全然記憶がなかった。そのぐらい私の頭は混乱していて真っ白だった。

買ってきたプレゼントの袋が手から落ちて床に転がり、それが幾重にも歪んで見えて・・・私の目からは大粒の涙が一気に溢れだした。


「うっ、・・・気持ちわる・・・!」

キッチンまで行ってそこで込み上げてくるものを出そうと思ったけど何も出ない。
ただムカムカして吐き気が凄い・・・水を飲んでは吐いてを繰り返して数分後、少し落ち着いた。


これがつわりだろうか。
本当にそうなら・・・この子はどうしたらいいんだろう。


でも妊娠しているのなら父親は西門さんだ・・・その子供を諦めることは出来なかった。



*************



「お家元のお帰りでございます」


若弟子の言葉を聞いてすぐに家元の所に向かった。

ムカついているから廊下ですれ違う使用人に話しかけられても全部無視。
俺の表情を見て怯えて端に避けるヤツもいたが、お構いなしに廊下を乱暴な足取りで進み家元の執務室に急いだ。


執務室の前の廊下に跪き、中に人のいる気配がしたから声をかけた。

「失礼します、総二郎です。家元、お話がございます。お時間をいただけますか?」


「・・・いいだろう。お入り」

低い家元の声が聞こえて、ここでもいつもより乱暴に襖を開けた。
その正面で外出用の羽織を脱ぎながら厳つい顔で俺を見る家元・・・俺も家元を睨み返して中に入った。

茶を点てる時のように居ずまいを正して家元と向き合う・・・家元は俺が何を言いたいかわかっているようだった。
俺が怒った顔をしているのを驚いた風でもなく、慌てた風でもなく、逆にこの人も鋭い目で俺の目を見ている。


「・・・話を聞いたのか」

「はい。先ほど家元夫人から宝生家の話を聞かされました。大変申し訳ありませんがお断り致します。それをお伝えに参りました」

「そうだろうとは思ったが、これは両家で決まったこと。取止めなどする事は出来ん」

「それはまた乱暴な・・・。見たこともない女性と結婚など今の時代にあり得ませんよ。それが西門家の繁栄に繋がると本気でお思いですか?」

「今の時代がどうだろうが関係はない。西門流にとって有益な婚姻であることが最重要なのだよ。そして次期家元であるお前はそれを拒否することなど出来ん。全て家元である私が決めた事に従うことだな」


ギリ・・・と奥歯を噛み締めた。
いつかはこんな話が来るとは思っていたがまさかこんなに早く持って来るとは・・・!


「わかりました。それでは私が次期家元を辞し、孝三郎に譲りたいと思います。それでこの話はなかったことにしていただきたい」




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2018/12/04 (Tue) 14:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは🎵

meimei様 こんばんは!

あはは!始まったばかりですよ?今からそれを考えたら・・・ヤバくないですか?
多分長くなりますから、のんびり読んで下さい。

ちょっと重たいですけどね💦

だからって悲しい終わりにはならないように頑張ります。応援して下さいね!

2018/12/04 (Tue) 23:45 | EDIT | REPLY |   

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