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数秒間の無言だと思うけど、私にはすごく長く感していた。
この綺麗な人の前で「類の恋人」だと紹介され、それをこの人は驚きすぎて声も出ないのだろうと・・・。

だけど、それは違っていたみたい。


「クスッ、うふふ!ヤだわ、なんの冗談?加代さんったら、私がそんなの信じるとでも思ってるの?」
「藤堂様!冗談ではございませんわ!」

「だって、見てごらんなさい?この人の何処を見たら類と釣り合うの?まだ子供でしょ?高校生?」

また・・・!でも、この人に言われたら言い返せない。そのぐらい威圧的な態度だった。
コツコツとヒールの音を響かせて私の前まで来ると、腕組みをしたまま見下ろされ、私が少し後ろに下がったら顔を覗き込まれた。

「あぁ!やっぱり・・・あなた、昨日花沢の受付の前を歩いていたでしょ?」

「え?覚えてるんですか?」

「顔までは覚えないわ。でも、あの会社の中にみっともない格好の女の子がいたから可笑しくて覚えてたの。
どうしてこんな所に子供がいるんだろうって・・・それにその上着、昨日と同じでしょ?信じられないわ、同じ物を連日着るだなんて。それで類の恋人って言われても誰も信じないでしょ?」

みっともない格好・・・そう言われて悲しかったけど、これはお母様が用意してくださった洋服で、スーツじゃないだけでみっともなくなんかない!私が気に入って通勤着にしてるだけで、確かに普段着みたいな格好だけど、だからって・・・!


「牧野様は花沢物産の関連会社で働いておられるのです。そこは営業でも事務でもない特別な場所で、このような服装での出勤を言われているからですの。それに揃えられたのは奥様ですが、何か可笑しなところでもございましたか?」

加代さんが少し厳しい口調でそう言うと、静さんはプイッと横を向いて知らん顔した。

本当はお客様にそんな事を言わないんだろうに、私のために頑張ってくれたんだろう。チラッと加代さんを見たら「堂々となさいませ!」と、私にも厳しい顔をしていた。


「まぁ、いいわ。類のお部屋で待ってもいいわよね?失礼するわ」
「えっ?!」

「先ほど申し上げました通り類様のお部屋は牧野様のお部屋でもあります!勝手にお入りになられては困ります!」


流石に階段を上がろうとした静さんが止まって、今度は怖い顔で私を睨んだ。


「本当に一緒に?あなたが類の部屋に?」
「え、えぇ、そうです。同じ・・・お部屋です」

「藤堂様、お茶をお持ちしますのでリビングでお待ち下さいませ」

「・・・わかったわ。でも、この人にも一緒にいてもらうわ。類が帰ってきたら彼に決めてもらいましょう?」



**



カチャカチャと加代さんが紅茶を準備してる時、私と静さんは向かい合ってリビングのソファーに座っていた。
聞けばお父様とお母様は昨日の喧嘩の仲直りのために外食して帰るから遅いみたい。類が帰ってくるまでこの状態が続くのかと思うとうんざりだった。

私は視線を少し落としていたけど、静さんはモデルのような長い脚を組んで腕も相変わらず胸の前で組まれてる。そして鋭い瞳は私をずっと見てる・・・それは痛いほど感じていた。


「牧野さんって言ったわね。あなたの家はどんな会社なの?聞いたことがないのよ・・・牧野なんて企業。まさか一般家庭とは言わないわよね?」

「・・・いえ、会社経営ですけど、それはちゃんと類に説明しています。あ、あなたに言わなくてもいいと思います」


またクスッと笑う・・・そのわざと私をイラッとさせる笑い方に、身体中の血が熱くなるみたい。
だからそれを見抜かれないように紅茶に手を伸ばしたけど、緊張してカチャカチャと音をさせてしまった。


「藤堂商事って私の父の会社の事は知ってるでしょう?藤堂はね、花沢に引けを取らないほどの大企業で、うちも日本の他だとヨーロッパが中心なの。そのうち花沢物産と藤堂商事が手を組めば凄い規模の世界的大企業になるのよ?
そういうこと、あなたはちゃんと理解してるの?私と同じぐらいの物を類に与えてあげられるの?」

「あなたと・・・同じぐらいのものってなんですか?」

「経済力や広告塔としての役目、揺るぎない企業地盤と世界中に広げられる新事業展開への参入・・・他にも色々あるわよ。こんな世界じゃ一番大事な物でしょ?それをあなたは与えられるの?」


「・・・私にはよくわからないですけど、類に必要な物はそれじゃないような気がします。そんなものは他の誰かから与えてもらわなくても自分で頑張ると思うし、それよりも仕事以外の時間に類を笑顔にさせてあげた方がいいって思います。
そうじゃないと楽しくないし、幸せって思えなかったら何も頑張れないでしょ?私は・・・そのための居場所になりたいって思っています」

「・・・なんですって?!」

「類には温かい場所の方が必要なんです。楽しい思い出や、笑ってご飯食べられること、そんな簡単なことで人って幸せなんだと思うから」


それまで私を見下していたような冷めた顔だったのに急に頬を赤くして、腕を組んでる指先がスーツに食い込みそこに大きな皺を作った。
何故だろう・・・この時、私は静さんが怖くはなかった。


自分の言ってることに自信があったから?
自分が類にそんな場所を与えてあげてるって、そう思っていたから?それは思い上がりかもしれないけど。


また沈黙が続く・・・私はもう部屋に帰りたくて小さく溜息をついてしまった。

その時に静さんが出した言葉は・・・


「あなた・・・もう類の身体を知ってるの?」

「・・・は?」

「類と一緒の部屋って言ったわね?それってベッドも同じなの?それならもう類の身体を知ってるのね?」


あまりにも露骨な質問に驚いて固まってしまった。
自慢じゃないけどその手の話には疎いんだもん・・・意味はわかるけど返事が出来ない。

ここでそうだと言うのが普通なのか、正直に違うと言えば、それは嘘の恋人だとバラしてるようなものなのか・・・判断が出来なくて返事を躊躇っていたら、またクスッと笑われた。

もしやこの態度でバレちゃった?私達の間に何もないって?


「奥手な類だからそうじゃないかと思ったわ。あの子はなかなか自分からは言わないの・・・君が欲しいって言葉をね。
まだ私にしか言ったことがないのね?ふふふ、嬉しい・・・」

「え?それって・・・どういう意味ですか?」

「わからない?私と類はもう随分前にそういう関係になってるの。静の総てが欲しいってね・・・勿論、私も・・・」
「もういいです!!」


その先は聞きたくなかった・・・それ以上聞いたら想像しちゃう。
だからこの人の言葉を遮って、私はリビングを飛び出して自分の部屋に駆け込んだ。


信じない・・・信じない・・・信じない。
私は類の言葉しか信じない!


何度も心の中で叫んでベッドの中に飛び込んで、バクバク言ってる自分の心臓を抱き締めるように丸まった。





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Comments 8

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2018/12/19 (Wed) 06:34 | EDIT | REPLY |   
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2018/12/19 (Wed) 08:20 | EDIT | REPLY |   
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2018/12/19 (Wed) 14:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

ははは!大変不愉快なシーンで申し訳ございません💦
(こんなキャラにしてしまってごめんなさい、S嬢!!)

流石のつくしちゃんも類君との関係を聞かれたら辛かったんでしょうね・・・

さぁっ!類君、君は何処で何をしてるんだい?!
早く帰っておいで~!!

2018/12/19 (Wed) 16:54 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんにちは!

あはは!ホントにねぇ・・・申し訳ございません。
うんうん、類君が今から頑張ると思います!(遅いけど)

学校の行事がある頃ですか・・・思い出すなぁ(笑)
うちは行けるような距離じゃないので楽ちんです!

でも成績表はしっかり自宅に届くんですよ(笑)
子供にしたら迷惑な話のようです。

忘年会のシーズンでもあるんですねぇ・・・うちは新年会だけなので年末はありません。
でも、新年会も太りに行くような気がして嫌だ💦

年末年始はブログを進められないのでストレスが溜まります・・・休めるけどね(笑)

2018/12/19 (Wed) 16:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様っ!!(爆)

お怒りが半端ないのですね?ひえ~~~💦

えっと、えっと・・・もうここだけですので気を鎮めて下さいね!
そんな読み返しちゃダメっ!(笑)

何処か類君の甘々シーンを探して、そこを読んで下さい💦
それか他のお部屋の類君のイチャイチャシーンとか?(我が家は少ないので)
それを読んでムフフっとご機嫌を直しましょう!!

次回は少し・・・気分が変わるかも?(笑)

2018/12/19 (Wed) 17:02 | EDIT | REPLY |   
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2018/12/19 (Wed) 21:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz** 様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは・・・申し訳ない!間に合いませんでした💦
つくしちゃんには可哀想なことをしました・・・

でもっ!この先のお話で類君もやっと・・・!(笑)

起爆剤、なかなかいい仕事をしてくれました。(イラッとさせるのは得意です!(笑))
本物の恋が始まるかな?

2018/12/19 (Wed) 23:07 | EDIT | REPLY |   

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