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牧野と本当の恋人になってから数日間、穏やかに楽しく毎日が過ぎていった。

毎朝一緒に会社に向かい、帰りはメッセージで俺の予定を確認。
牧野には残業なんて無いけど、俺に予定が入れば牧野はバスで帰り、何もなければ駐車場で待ち合わせて一緒に帰る。俺が外で食事をせずに遅くなる時には牧野も食べずに待っていて、2人で部屋で食べることもあった。

俺の社員食堂の利用は2人で話し合った結果これからも行かないことにした。俺が行くだけで軽くパニックになるのと、出来るだけ牧野が働きやすい環境にしてあげたかったから。
「専務」という立場を利用すれば、牧野の休憩時間を俺と一緒にって事も可能だけど、特別扱いは嫌だっていう牧野の気持ちを考えて・・・俺が全部我慢することになった。残念だけど・・・。


ある日、同僚から意地悪なことをされないのか聞いてみた。

「うーん・・・どうなんだろ。たまに通り過ぎるときに体当たりされたり、私の目の前でいきなりお醤油溢されたりした事はあるよ?その時も『牧野さんがボケッとしてるからでしょ!』って言われたりね。それから話しかけても返事が無かったり、挨拶されても無視されたり。みんな結構耳が悪いみたい」

「・・・それ、虐められてない?」

「えっ?!そうなの?」

「ごめんね」って言ってみたけど「なんで類が謝るのぉ?」ってケラケラ笑ってた。
こういう時には鈍感って素晴らしい・・・ある意味才能だなって思った。


静はあれから何も言ってこなかった。

花沢にも会社にも姿を見せず、噂でフランスに帰ったと聞いた。
しばらくは向こうで仕事に専念すると言ってたそうだけど・・・その真意も確かめる気はなかった。

俺が隣に立つことはもうないけれど、どうか自分の手で幸せを見つけて・・・そう願うしかなかった。

それを牧野にも伝えたら小さな声で「そっか・・・」って言って俺の腕にしがみついてる。その時に「今日も類の匂いだ~」って笑ってるから「あんたと同じ匂いだよ」って言うと頬を赤らめた。


くすっ・・・静の香りが強烈だったんだね。


**


今日は日曜日・・・12月になって寒いのに、元気よく桃太郎達と庭を走り回ってるのを俺は部屋の窓から見ていた。

「あっはは!菊次郎、ちょっと待ってーっ!」
「ワンワン!」

「桃太郎、ボールが向こうまで行っちゃったわ、取ってきてぇ!」
「ワン!」


元気いいよね、ホントに・・・って思った瞬間、芝生の中で転んだ。またそれを2匹が喜んでじゃれて覆い被さって、牧野の顔を舐めまくってる。はぁ、ホントにムカつく!
まだ俺はそんな風に牧野に覆い被さってないんだけど!犬に負けるってどうなの?

何となく頬杖ついて見てしまう・・・俺もそんな風にしてみたい。その時、牧野はどんな顔するんだろう・・・。


その時に加代が手に招待状を持って部屋に入ってきた。

「類様、美作様からですわ。クリスマスパーティーの招待状のようですよ・・・あら?お顔が赤いようですけどお熱でも?」
「・・・いや、そんな事ないよ、暖房の効き過ぎかも。えっと、招待状・・・そうだったね。忘れてた」

「今年はお2人で行かれるのでしょう?牧野様のお支度はもう出来ているのですか?」
「何かあるんじゃない?ここに来たときに沢山用意してもらったから」

「あら!パーティー用のドレスなどはございませんわよ?もしかしてまだ何も?」
「・・・全然、何も・・・」

この俺のひと言で加代は部屋を飛び出して行き、30分後には母さん専属のデザイナーが来て、庭で遊んでいた泥だらけの牧野の衣装合わせが始まった。



****************



「牧野様っ、牧野様!そんなところで遊んでないでちょっとお部屋にお戻りくださいませ!」

「はい?」
「「ワン?」」

桃太郎と菊次郎を連れて庭の芝で転げ回って遊んでいたら、加代さんに大声で呼ばれた。私、何かしたっけ?って思ったけど2匹を犬舎に戻して、洋服の汚れをパンパン叩いてから玄関に向かった。
ゆっくり歩いてたら痺れを切らした加代さんの方が私に近づいてきて、片方の手首を掴まれて連行・・・じゃなかった、お屋敷の中に引っ張って行かれた。

「加代さん、どうかしたんですか?」
「急いでくださいませ、結構気難しい先生ですから!」

「は?先生?何の先生ですか?」
「いいからお急ぎをっ!」

「ちょ、ちょっと、加代さんっ?!」
「あぁっ、泥だらけだわ!お会いになる前に簡単でいいですからシャワーで身体を洗わなきゃ!」

「はあぁ?!」


何が起きたのかよくわからないまま類の部屋に戻って、そのままバスルームへ放り込まれた。
その時に類は面白そうにベッドに寝転んでパソコン触っていたけど「類様もご一緒にお見立てを!」って言われて渋々起き上がってた。

お見立て?お見立てって・・・なに?

急いで身体を洗ったら簡単な服装でいいからって、今度は類と一緒に1階の奥にある客間のような部屋に連れて行かれた。
まだ髪がホカホカなのに・・・お団子みたいにして纏めてる髪を類がクンクンして「いい匂い!」って・・・。
その背中をバシン!と叩いたらコホン!と加代さんに咳払いされた。

「遅くなりました。それでは宜しくお願い致しますわ」

加代さんがそう言ってドアを開けたら、そこは一般家庭とは思えないアトリエのような、ファッションショーの舞台裏のようなとんでもない世界に変わっていた!


「うわぁ!なに、これっ!」
「・・・牧野のドレス選びだって」

「ドレス?なんでドレス?」
「俺とクリスマスパーティーに行くから」

「・・・・・・」

今、私の目の前には何体ものマネキンが色んな色のドレス着て優雅なポーズを取っている。
真っ白こそ無かったけど、クリーム色や薄いピンクに水色のパステルカラーのドレスの数々、その向こうには深紅や濃紺、エメラルドグリーンといった濃いめの色のドレス、紫やワインカラー、ブラックのシックでセクシー系・・・流石にそこは専門外だなって自分でも思った。


「お久しぶりですわ、類様。本日ドレスをお選びになるのはこちらのお嬢様ですの?」

このマネキンの中からヌッと現れたのはタイトなワンピースを着熟してるアラフォーぐらいのおば様。類の返事を待たずに私の前に来ると片手を顎に当てて、全身を舐めるように見られた後で真顔で言われた。

「お嬢様、おいくつ?」
「24歳ですけど、なにか?」

「・・・失礼しました」

プッ!と噴き出した類の声、それにムッとして振り向いたら慌てて視線を足元に逸らせた。


この後はおば様に着せ替え人形のように色んなドレスを取っかえ引っかえされて、目が回るようだった。

「こちらの方が今の流行ですけど、如何かしら?」
「でも牧野のイメージじゃ無い。胸の開き方が俺の好みじゃないし、牧野には谷間が無いし」

「こちらはどうかしら・・・これだけスレンダーでしたらストレートラインは逆に可哀想ですわ」
「でもそれだと小学生じゃない?一応大人だから」

「こちらはイタリアの新進デザイナーのドレスですけど細身のタイプですわ。大胆な花柄でインパクト大ですわよ?」
「ドレスにインパクトが有り過ぎない?牧野の顔よりこの花に目が行きそう」

「お色はお年を考えたらこのぐらいの明るめの方がいいと思うんですけど。黒でもレースのフレアでしたらお似合いかも」
「黒だと全身真っ黒で怖くなるから薄めの明るい方がいいな。あっ、これなんか好きかも」

「じゃあそうしましょうか。それでは補正しなくては。かなり詰めないとぶかぶかでしょうからねぇ」


「・・・・・・」


口は出さなかったけど結構酷い言われよう・・・谷間が無くてスレンダーで可哀想で花に負けてて小学生で真っ黒?
出会った時は高校生だったのに随分若くなってない?

最終的に決まったのは類の好みでペパーミントのドレス。
足元までストレートラインのドレスだけど、腰のリボンの所から数段ほどフワフワのオーガンジーでミニスカートが付いててぺったんこのお尻を隠してくれるらしい。

胸のラインはVカットだけどそこから首のチョーカーまでオーガンジーが1枚付いてて谷間の無いのを隠してくれる、ホルターネックってヤツね。

類は「可愛い!牧野」って目を細くした満面の笑みで喜んでるけど、素直に喜べないのは何故かしら・・・。





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2018/12/27 (Thu) 08:28 | EDIT | REPLY |   
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2018/12/27 (Thu) 08:43 | EDIT | REPLY |   
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Re: おはようございます

水香様、こんにちは!

お久しぶりです♥お元気でしたか?
ふふふ、私は大丈夫ですよ。そっちは心配ですが、何とか乗り切ろうと思っています。

考える時間があまりなくて困ってはいますけど・・・これから年末ですから仕事は終わったんですが家のことがね💦
えっと・・・もう後半に入ってるかな?

そんなに長くはないと思います。
って言って延びるから何も言いません(笑)五十嵐君が出てきますからね。

LOVE度が低いままでごめんなさいっ!

2018/12/27 (Thu) 17:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

もう大っぴらになってるようなもんですけどね(笑)
それをイジメと思わないのは幸せです・・・でも、鈍感すぎてエスカレートしたら大変だけど💦

そうなったら類君が辞めさせるんでしょうね(笑)
誰が何と言っても専務秘書になって藤本が追い出されるかも・・・なーんて!


あっはは!ドレス選び・・・ここでは敏感でしたが類君の言葉だからではないでしょうか?
これから素敵なレディになっていただきましょう!
因みに私の友人は22歳ぐらいの時に小学生に間違えられていました(笑)

2018/12/27 (Thu) 17:11 | EDIT | REPLY |   

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