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「きゃあ❤︎ 見てみて!
ヨーロッパみたいなお庭と建物が、あちこちに!
あれ?ドレス着て歩いている人がいるよ!
なんか中世にタイムスリップしたみたい!
あっ!!凄い!富士山が綺麗だよ!!
お天気良いから、良く見えるね~!」

泊まる予定だった別荘をドタバタと逃げ出してから、全くのノープランで河口湖オルゴールの森美術館に来て、そのままの勢いにまかせて園内に入ってしまった。

この河口湖オルゴールの森美術館には貴重なオルゴールが展示されていて、演奏等のミニコンサートが常に行われている。
あのタイタニック号に備え付けられる筈だった、貴重なオルゴールもあるとか。園内をぐるっと見渡すとそれなりに敷地は広く、庭も綺麗に整備されている。時期的にクリスマスが間近ということもあるのか、園内の装飾は赤と緑で派手に装飾され、ヨーロッパに滞在しているかの様な雰囲気を醸し出している。
…まあ、とはいっても広場から雄大にそびえる富士山が臨めるから、日本であるのは間違いない。

しかし…。
つくしと二人で出掛けようとすると、なぜか必ず何かが起こって、結果的に珍道中になっちまうんだよな…。
昔なら行き当たりばったりなんてとんでもなかったけど、なんか慣れてきちまっているし。
しかもどこかでこんな状況を楽しんでいる自分が…。

「総…、お腹空いたかも…。」
「くくっ。そう言えばなんも食ってねぇな。
あそこにレストランがあるみてーだから、行ってみっか。」
色気より食い気なつくしのお腹の虫が、ぐぅぅぅ~と派手な音を鳴らす。
真っ赤な顔で上目遣いで可愛く俺のことを睨むけど、怯むどころか逆に煽っていることに全く気がついてない。
こりゃあ、今夜はいじめがいがあるな…。


そんなことを考えながらレストランに向かっていると、白いドレスを着た女が突然俺たちの前でうずくまってしまった。
助けようかと思ったが、なぜかこの女に嫌なものを感じた。
きっとなんかしらに巻き込まれる。
かかわり合いをさけようと思ってさりげなくつくしの背中を押そうとした瞬間、するりとつくしは反転し、白いドレスの女の元に駆け寄って行ってしまった。
「大丈夫ですか?!」
まじか…。
仕方なく白いドレスの女に近寄ると、女は俺の顔をみた瞬間、顔を真っ赤にして震えはじめた。
なんだこの女…、びっくりしちまうほどへのへのもへじにそっくりなんだけど!!


「どうしたんですか?!何かあったんですか?!」
つくしが女の顔をのぞきこむと、女はしゃくりあげながら、何故か俺の足にしがみついてきた。
「わ…わたし…、好きでもない男と…!
好きでもない男と、このままだと結婚させられちゃうんです!!
…だから…だから…逃げてきてしまいました。」
「「えええええっ?!?!」」

この河口湖オルゴールの森美術館の園内には結婚式場がある。
女の話では、父親の会社を買収したその会社のどら息子に結婚を迫られ、式の直前で逃げ出してきたのだと言う。

「ひっく…。
私…、恋愛したことないんです。
少女マンガみたいな恋愛に憧れていたのに、
ちっともそんな出会いにめぐまれないんです。
私たちの理想は凛々しい殿方。
なのに、よりにもよってあんなチンチクリンで、
ハゲデブブサイクなどら息子と結婚なんて!
あんな醜男と結婚できるわけがない…!
ひっく…。
でも…、やっと…。
やっと神様は私の願いを叶えてくれたわ…!
私、この麗しい殿方に一目惚れしました!!
私と結婚して下さい!!!」
「「はあああ?!」」


白いドレスの女は素早く立ち上がると、俺に抱きついてきた。慌てて女を振り払い、つくしの手を引いて立ち去ろうとすると、遠く彼方からタキシード着た太ったハゲデブブサイクと、式服を着た数人の男たちがこちらに走ってきた。

「茂辺子さん!おらとの結婚、何で逃げるンだべや?!」
ハゲデブブサイクが茂辺子と呼ばれた女に詰め寄った。
「だーれがおめーみたいなハゲデブブサイクと結婚するべ?!
アタスは、この殿方と結婚するんだべさ!
けえれ!けえれ!」
「なすてだべ?!あんなにおらとの結婚を喜んでくれたでねぇか!
…さてはこの顔だけのエロそうな男に、誑かされたべ?
よくもよくも、おらの純真な茂辺子さんを弄んだべな~!!」
..…..…おいおいおい。
なんで、通りかかっただけなのに、俺がへのへのもへじ女を弄んだことになるんだよ?!
「ゆるせん!」
ハゲデブブサイクがわけわからぬ雄叫びをあげると、周りにいた式服の男たちが一斉に俺とつくしに襲い掛かってきた。
「つくし、逃げるぞ!」
「うん!」

男女のカップルが白いドレスの女に追いかけられ、更にその後ろにタキシードと式服の男どもが追いかけるという構図が、園内の特別イベントだと思われたらしい。
大勢の観光客らにもみくちゃにされながら園内をぐるぐると逃げ回るはめとなり、やっとの思いで河口湖オルゴールの森美術館を出て車のキーをまわすことができたのは、なんと15時を過ぎたころだった..…。




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