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特に行くあてもなく車を流していた。

車を走らせてる間、聞こえてくるのはつくしの腹の虫の声だけ。
つくしは恥ずかしそうに苦笑いでその場を誤魔化しつつ、窓の外をきょろきょろと眺めてた。

笑いを堪えながらも運転してる俺だってそれなりに腹は減ってる。
別荘じゃ結局何も食ってねぇから朝食べたきりだ。
そう考えりゃ仕方ねぇってか?


「あっ、総!あそこ!!
あそこ入ろっ!」

「あぁ」

つくしが指差した先には飲食店の看板があった。

正直…味の保証すらない得体の知れない店になんか入りたくもねぇ。
けど、腹を空かせてるこいつほど怒らせちゃいけねぇってのはよく分かってたから、二つ返事をして車を駐車場へと停めた。

改めて店を見ると古ぼけたログハウス風のレストランのようだった。

つくしは先を急ぐように店へと歩いていく。その後ろをゆっくり歩きながらスマホを操作し、一件のメールを送信した。


店内に入ると湖側は全面ガラス張りで、その景色は圧巻だった。
なのに…そんな景色には目もくれずにつくしは早々に席に着き、メニューを広げてる。

これもいつもの事と流して向かいに座った所で、スマホがメールの着信を告げた。

「ここの売りはハンバーグみたいだよ!
すっごく美味しそう♪
あー、でもピラフも美味しそうだし、パスタも捨てがたいなぁ………どうしよう……」

楽しそうにそう言ってるつくしの手からメニューを抜き取って、それにざっと目を通してからスタッフを呼び、ミックスサンドと珈琲、紅茶を頼んでメニューを返した。

視線をつくしに戻せば恨めしそうに俺を見てやがる。

おいおい、ちょっと待て!!
こんな事態になったのは俺のせいじゃねぇだろ!

なんて言葉はもちろん飲み込んだ。

「今食ったら夕飯食えねぇだろ!
もう少し我慢しろ。

今……15時半だろ…。
これを食って少しのんびりしたら16時半か?
夕飯は確か…18時からだったから、移動もあるしちょうどいいんじゃねぇ?」

「えっ?夕飯?」

顰めっ面をしてたかと思えば、今度は鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔で俺をまじまじと見返してきた。

「くくっ。
この辺で茶会がある時に使うホテルがあるんだよ。たった今そこ押さえた。
純和風で家の延長みたいだけど、部屋に露天風呂も付いてるしのんびり出来るだろ。

つーか普通、飯よりそっち探す方が先じゃね?
ま、つくしらしいけどよ」

「ち、違うもん!!
食べたらちゃんと探そうと思ってたんだもんっ!」

「ふーん?そうか?
ま、とりあえず宿も取れたし、よしとしとけよ。

今日の夕飯は会席料理な。
しゃぶしゃぶとステーキ、両方頼んどいたぞ。
つくし、好きだろ?」

「………ありがと」

俺に先を越されたのは気にいらないけど、コースは嬉しい。そんな複雑そうな表情をしている所にオーダーが届けられた。

するとさっきまでの顔は何処へやら。

「いただきます」と発すると満面の笑みを浮かべてサンドイッチに手を伸ばす。
そんなつくしが可笑しくて笑いを堪えながら眺めてた。


サンドイッチを二切れ程口にした後の事だった。

「うわぁーっ。
総、見て見て!
すっごく綺麗だね~!!」

くくっ!
今頃かよ?

つくしに言われて外を眺めると、さっきとは違い日が沈んで辺りは夕焼けに包まれている。

このタイミングで入らなきゃ見れなかったこの景色に、何が起きるか分からないつくしとの旅はやっぱり面白いな…と改めて感じていた。



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