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「それじゃあ、私達も帰るわ。どうもありがとう、ルイ、ツクシ。またいつか会いましょう。ハシモトさん、素敵な演奏会だったわね!」
「とても楽しかったよ。またね!」

マリアさん達が着替えて教室を出て行ってから、類と私、それにお父様とお母様になった。
橋本さんは控え室の片付けで奥に入ってしまって出てこない。多分気を利かせて隠れてるんだろうけど。


類はお父様を見てるけど何も言わない。お父様も類を見てるけど何も言わない。

たった一言でいいのに・・・「ごめんなさい」「ありがとう」・・・この言葉だけでいいのにこの2人にはそれが凄く難しいみたい。
お母様も半分呆れたように少し後ろから見てるけど口を出さなかった。


「・・・あの、類が言わないから私が言います!お父様、今日は忙しいのに来てくださってありがとうございました。本当に嬉しかったです。それで、どうでしたか?類のヴァイオリン、素敵だったでしょ?」

「牧野・・・!」
「・・・ん、うん・・・まぁ、その・・・まぁまぁ、良かったんじゃないのか?」

類もお父様も今度は私を見て困った顔して、でも「まぁまぁ」って言われた類は少しムッとしてお父様に言い返した。

「まぁまぁ・・・で申し訳ありませんでしたね。これが本業では無いと思っていますから、このぐらいでいいかと思うんですが」
「人に聴かせようと思うならもっと真面目に練習したら良かろう。2人で弾いたから良かったものの、お前だけなら物足りなかったのでは無いかな!」

「・・・止めろと言ったり真面目にと言ったり、ご自分の言ってることに矛盾があるんじゃないですか?」
「止めろと言っても止めなかったヤツに言われたくない。そんなことでは入社しても音楽に未練を残して使い物にならんかもしれんな」

「それなりの覚悟を持って入社する気ですよ。でも音楽は俺の一部でもある・・・止めることはありませんから未練なんて残しませんよ」
「そうか。それなら明日の我が社のパーティーに出席するんだな。後継者として2人とも皆に良く覚えてもらうがいい」


「・・・え?」
「お父様?」

「2人とも」って、はっきり聞こえた。
そして照れてしまったのか私達に背中を向け、ほんの少し顔だけ横を向けて類に言葉をくれた。


「・・・今日は招待してくれてありがとう。いいコンサートだった」


そして次は私にも。

「牧野さん・・・私の負けだな。あの時は申し訳なかったね。明日は類と一緒に顔を出しなさい。紹介するつもりだからその覚悟があればだがね」

「・・・はい!ありがとうございます、お父様!」


この後、お母様が私達を同時に抱き締めて「良かったわね・・・」って涙を浮かべて喜んでくれた。
その時お父様は既に下に降りていて、お母様も私達に手を振りながら急いで教室を出ていって・・・類は呆然とその場に立ち竦んでいた。


「何してんの!早く行かなきゃ車が行っちゃうよ?」

私の声にハッとして、類は部屋を飛び出して階段を凄い速さで駆け下りて行った。
ビルの前の通りでは花沢家の車が待機していて、2人は車に乗り込むところ・・・運転手さんがドアを持っていてお母様の姿はなく、お父様が腰を屈めた時だった。
私も急いで後を追いかけて・・・でも、ビルから出ることは出来なかった。少し離れて彼の後ろ姿を見ていた。


「父さん!・・・父さん、今日はありがとうございました!あの・・・!」

類の滅多に出さない大声が、車のドアを閉めようとした運転手さんの手を止めた。
もう1度お父様が車から顔を出して振り向くと、ビルの前で立ち竦む類を見て・・・あの厳しかった顔が少しだけ笑った。


「父さん、色々と生意気言いました・・・!これからは・・・」
「もういい。いい年して喚くんじゃ無い!明日、ちゃんと彼女の支度をしてやりなさい、いいな!」


ふわっと私の肩に置かれた手は橋本さん・・・ニッコリ笑って「良かったね」って。


やっとほんの少し近づけたんだろうと思う。
まだまだ・・・これからだろうけど。


車が走り去ってもそこから動かない類の髪の毛に・・・小さな雪が優しく舞い降りていた。



***************



25日の朝、昨日の興奮から寝るのが随分遅かった俺達は昼までベッドから降りられず、目が覚めても布団の中で微睡んでいた。俺よりも牧野の方が嬉しそうに何度も昨日の話を繰り返す・・・「良かったね、良かったね」って。

あんまり言われるから恥ずかしくなって牧野の唇を塞いだら、今度は真っ赤になって怒ってた。

「いい加減に起きようか」って言ったのはもう昼を回った頃・・・散らかしたままの昨日の荷物を片付けていたら、総二郎達がくれたプレゼントを見つけた。

「あっ!これ、昨日教室で見ちゃダメって言われたから開けてなかった!なんだろう~♡」
「・・・期待しない方がいいと思うよ?」

「美作さんの方から開けてみよっ・・・えっ!!」
「何?また変なもの贈ってきたんでしょ?」

あきらがくれたのは真っ赤なレースの下着。しかも上下セットでベビードールまで入ってた。
それを大きな口開けて牧野が持ってる姿・・・俺がそれを見たら慌てて袋の中に投げ入れていた。ホント、好きだよね・・・。

「・・・だから言ったじゃん。総二郎のも似たようなもんじゃない?」
「えーっ!!嘘だぁ!・・・ん?なんだろ・・・箱に入ってるけど何も説明がない・・・これ、何に使うものなの?」

「え、どれ・・・?」

牧野が手に持ってる箱の中身を見せてくれたら・・・!!


「牧野、これは必要ないから処分するよ」
「え?もらったのに?」

「いいから俺に渡して。総二郎にはよく言っておくから」
「・・・ふ~ん。わかった」


このあと雪が降ってるのにベランダに出て総二郎に電話した。


「・・・どういうつもり?牧野にあんなもの贈って!必要ないから処分するよ・・・それともお前が使う?返却しようか?」
『あっはは!使えよ~!たまには違う刺激があった方が面白いだろ?』

「俺達、自然派だから。総二郎、暫く出禁ね、牧野に会わないで!」
『おっ?そこまで言う?おい、怒んなよ~、洒落だろ?な、る・・・』ブチッ!


**


気を取り直して牧野と一緒に花沢家のクリスマスパーティーに出掛けるために支度をしていた。

俺が用意していたミルキーホワイトのドレス、それを抱えて母さんがいつも利用してるサロンに出向いた。牧野は別室でメイクや髪のセットをしてもらい、俺もそこでタキシードに着替えて牧野のドレスとお揃いのチーフをつけた。

昨日のコンサートが始まる直前まで、俺は2人きりのクリスマスを想像していたからホントは今でも信じられない。
今から牧野を正式に紹介出来るだなんて・・・。


「類様、お嬢様のお支度が出来ましたわ。ご確認くださいませ」

「・・・ありがとう」


ドアを開けると正面に真っ赤な顔した牧野が立ってて、チラッと俺を見たら恥ずかしそうにドレスの胸元を手で隠した。

いつもと違う華やかなメイクはほんの少しラメの入ったアイシャドーに濃いめのピンクのルージュ。
髪はふんわりと巻いて肩のラインに揃え、ドレスと同じ色のリボンを編み込んでもらっていた。そして鏡に映った自分を見て嬉しそうに微笑んでる・・・いつもと違うエレガントな牧野が天使のように俺の前に姿を見せた。

「えへへ、私じゃないみたいだよね」
「ううん、可愛いよ。誰にも見せずにこのままどっかに閉じ込めたいぐらい」

「・・・もうっ、そんな事言って!」
「ホントだもん。花嫁みたいだね」


用意していたネックレスとピアスをつけてあげるのは俺の役目。
「鏡、見ておいて」、そう言った後に後ろに回って首に手を回してダイヤのネックレスをつけて、耳にも同じデザインのピアスを挿して出来上がり。

「こっちを向いて」・・・そう言って俺の方に身体を向けさせたら、これも用意していた指輪を・・・。


「類・・・?」
「ん、なに?」

「これって・・・もしかして・・・」
「そうだよ。婚約指輪。ちゃんと牧野の名前が彫ってあるよ」


「・・・・・・」
「MerryChristmas、牧野・・・愛してる」



目を潤ませながら指に輝く「約束の印」を眺める牧野をそっと抱き締めた。

真っ白な雪が降り続くクリスマスの夜・・・今日は今までの人生で1番嬉しい記念日。


だけどきっとまた新しい記念日が増えるね。
牧野・・・あんたと居れば沢山の夢が叶えられるから。







fin



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類君のクリスマスストーリー、終了です♥
お付き合いいただきましてありがとうございました。

年末のお話ですが、31日まで「嘘つきは恋の始まり」をお届けし、1月1日から4日まではNEWYEAR STORYをお届けします。
1月5日から連載の続きを予定しております。
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2018/12/26 (Wed) 13:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

はい♥今までの事を考えたらこれが精一杯でした(笑)
でもまぁ、話が出来てお互いに謝ることが出来れば万々歳と言う事で!

これからもっと打ち解けていってくれると思います♥

えっ?!・・・それはどうかしら(笑)
思いつくかしら?(笑)

思いついたら書きますね♥


あはは!総ちゃん(爆)
何を贈ったんでしょうねぇっ💦
つくしちゃんには一目見てわからなかったので、露骨な形はしてなかったんでしょうね💦

それを類君がわかったところを褒めてあげましょう!!はははっ!

2018/12/26 (Wed) 15:14 | EDIT | REPLY |   
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2018/12/26 (Wed) 15:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様 おはようございます。

はい♥少しだけ歩み寄っていい感じになりました~!
つくしちゃんが居るのでこれからはもっと仲良くなって明るい花沢家になると思います。

でもやっぱり大学は類君卒業まで寮生活(笑)
類君が卒業したら花沢家での生活かな?なんて自分では思っております。

続編の予定はないんですけどね💦
今は何も思いつかないので・・・。

年末ですねぇ・・・主婦にとっては面倒な事ばかりですよね💦
旦那が張り切る人なので少しうんざりしてます・・・。

それに寒波が来るんでしょ?雪は好きだけど風は嫌いです・・・。
穏やかな年末年始になればいいけどなぁ・・・。

まりぽん様もお身体には気をつけてくださいねぇ~!

2018/12/27 (Thu) 08:13 | EDIT | REPLY |   

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