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駐車場から裏側のエレベーターに向かう牧野を見送った。

あんなに身体が曲がっちゃって・・・凄く腰が痛そう。
凄く悪い事した気分だけど、俺の方は至って元気で申し訳ないぐらい。
今日はバスで帰らないように伝えたから会えるのは夕方5時過ぎ。それまで頑張れよ・・・って、その可哀想な後ろ姿に声を掛けて、自分は足取り軽くロビーに向かった。


どうしたんだろう・・・社内までが明るく見える。
気分ってこんなにも人を変えるんだ?って思いながら自分の会社の天井を見上げて歩いてた。


「・・・専務?おはようございます・・・」
「あっ!藤本、おはよう!」

「・・・どうしたんですか?楽しそうですけど」
「そお?そうでもないよ。気分が凄く良いだけ」

「昨日お休みしてクリスマスパーティーに行かれたからですか?そんなに美作商事のパーティーは楽しかったですか?」
「うん!そりゃあもう楽しかったよ。なんたって幼馴染みが勢揃いしたんだから」

「・・・・・・あの方達と会って楽しかったと報告を受けたことは1度もありませんが?」
「まぁ、いいじゃん。そういう時もあるんだって!」

本当の事を藤本に言うわけないじゃん。牧野と・・・だなんて。

ヤバっ・・・考えたら顔がニヤける。藤本にそんな顔を見られないように口元を手で覆ってから歩くけど、やっぱり目が笑ってるみたい。すれ違う社員達がみんな凄く不思議そうな顔して俺から遠ざかっていく。


いや!こんな事じゃいけないよね。
もっとしっかりして牧野の問題を解決しないといけないし、それこそ解決した後に婚約って事になったら2人で挨拶回りもしなきゃいけない。
牧野を守っていかなきゃいけないのに、こんなにニヤけていたら・・・ニヤけてたら・・・。

「専務、マジで止めてもらえませんか?気持ち悪いんですけど」
「えっ?!まだ笑ってた?俺!」

「信じられないほどニヤけておいでですが、はっきり申し上げて不気味です」

「・・・・・・凄く気分良かったのになんて言い方すんのさ」


この後、専務執務室で藤本が1日のスケジュールを読み上げてくれて、それをハイテンションで片付けていった。

普段は1行ぐらいしか書かない事業計画書の上長所見も5行ほど書いて不思議がられ、オブザーバーとして参加した会議では意見を述べて藤本に叱られ、サインは枠内にキチンと書いて感心され、確認印も1枚も逆さまになって無くて喜ばれた。
何件も来てる社内メールにも全部返信完了、ついでに保留されてる案件を取引先に1本電話を入れるだけで成立させた。

「やれば出来るじゃないですか!」の藤本のひと言が少し腹立つけど、それにも不機嫌な顔をしないもんだから病気を疑われたぐらいだ。


「もうすぐ仕事納めで決済書類も多いんですがこれなら問題なさそうですね!」

「えっ?!書類が多いの?1分だって残業しないから早く持ってきて!早く!!」

「・・・そこですか?」
「当たり前じゃん!」


その時、スマホのメッセージ音が鳴った。
急いで確認したら・・・牧野?



****************



朝の準備時間、ただでさえ動かないといけない新人なのに思うように動けなくて今日も先輩達にイヤミを言われた。
昨日類とパーティーに行った事なんてすっかりバレてて、そのせいで「遊びすぎなのよ」「何様のつもり?」とか、そんな言葉がどこからともなく聞こえてくる・・・。

それだけじゃなくて今日は私を見て何かをコソコソ話してる・・・たまに聞こえる奇声はなんだろう?って思うけど知らん顔して黙々と仕事をした。

これが「花沢類」と言う恋人を持ったせいなら仕方ないと諦めはしてるんだけど、今はそれどころじゃない。


ハジメテの翌日は身体が痛いとは聞いていたけど、まさかこんなにも酷いとは・・・!
これは私が運動不足なのか、それとも不慣れなせいなのか、いやいや類が激しかったのか・・・誰とも比べられないから彼の事はわからないんだけど、朝の起きたてからお風呂であんなことをっ・・・!


「せっかく身体を温めて痛みを取ろうと思ったのに・・・ホント、類ったら・・・」
「・・・牧野さん?そのお名前は職場では禁止だと言いましたよね?」

「・・・あっ!すみませんっ!」

テーブルを拭いていたら後ろから聞こえた笹本さんの声。
笹本さんまでがご機嫌が悪いの?あんまりそんな怖い顔は見たことがないんだけど、今日の彼は少し眉間に皺が入ってる・・・そしてコホンと咳払いをしたら片手で手招きをされた。

「・・・何かあったんでしょうか?」
「牧野さん・・・申し上げにくいんですがポニーテールを解いていただけませんか?今日は降ろしたほうがいいと思うんですが?」

「は?私の髪で皆さんが何か言ってるんですか?」
「いえ、髪ではありませんが・・・そのように自慢気に見せられると他の社員が気になるようです」

「自慢?私が?」
「・・・昨日は楽しかったんですね?それはいいと思うんですが、やはりここは仕事場ですので気をつけていただかないと」

「は?はぁ・・・」


よく意味がわからなかったけど笹本さんの言う通り、更衣室に戻って髪を解いた。
何がいけなかったんだろう?って鏡で自分の髪を手であげて、首筋を見たら・・・何故か赤い部分がある。

「あっ!まさかこれって?!・・・うそっ!」

慌ててシャツの襟元をグイッと自分で捲って見たら、今まで全然気にしてなかったけどあちこちに薄いものから濃いものまで!

これなのねっ?!朝からみんなが私を指さしてたのはっ!
もうっ、類ったら・・・!なんでこんなになるまでっ!


恥ずかしいのと腹が立つのと、でもまた昨日の事を思い出してどうしていいのかわかんなくなって、思わず類にメッセージを送った。


『類の馬鹿!!何考えてんの?今日からまた1人で寝るからね!!』


**


それからお昼時・・・いつものように大忙しだから周りの言葉なんて気にもせずに仕事をして、お昼休憩はみんなの反応が怖くて隅っこで1人で食べた。
髪の毛を降ろしたからもう見えないはずなのに、誰かがジッと見てる気がして仕方ない・・・そんな事を考えていたら顔が赤くなって耳が火照る。

この痕をどんな風に想像されてるんだろう・・・って、また思い出して今度は心臓が五月蠅くなって胸を押さえた。


「あら、牧野さん、風邪でも引いたの?顔が赤いけど熱でもあるの?」
「えっ?!いえ、大丈夫ですっ!何でもないです!」

こういう部分には無関心なおばちゃんの先輩にはそんな事を言われ、それを聞いた年の近い人達はジロッと睨む・・・。
その向こうには相変わらずムスッとした笹本さん・・・。

なんで私がこんな思いをしなきゃいけないのっ!もうっ・・・!!



やっと筋肉痛にも慣れてきた頃に仕事か終わって、今日は約束していたから駐車場で待っていた。
あんなメッセージ送ったから気不味かったけど流石に今日はバス停に行く自信がない。

そして定時を10分過ぎた頃、類が走ってやってきた。


「牧野、お待たせ!ね、何があったの?どうしてあんなメッセージ?」

「・・・類のせいだからね!もうっ・・・すっごく恥ずかしかったんだから!」
「何が恥ずかしかったの?自分で何か喋ったの?」

「喋るわけ無いでしょうっ!これよ、これっ!!」
「これ?」

私が髪を少し掻き上げて首の後ろ側を見せたら「あっ・・・」って小さな声が聞こえた。
そしてクスクス笑いながら「ごめんね!」って・・・その「ごめんね」に全然反省を感じないんだけど?!


「あんまり夢中だったから気をつけなかったかも!今度から見えない所にする・・・だから許して?」
「そう言う意味じゃないもん!知らないっ!」




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Comments 4

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2019/01/08 (Tue) 00:21 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/08 (Tue) 06:46 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

いつもコメントありがとうございます。

ははは!朝のお風呂で気付いてあげたらいいのに、きっとそれどころではなかったんでしょうね♥
つくしちゃんも火照ってるから全身ピンク色だったかも(笑)

今度から気をつけるなんてこと、この類君には出来そうにないですもんね!


そうですねぇ・・・もうすぐこちらにも嵐が吹き荒れるでしょうから。

それまでもう少し、この可愛い2人を楽しんでくださいね♥

2019/01/08 (Tue) 18:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: No title

meimei様 こんばんは。

コメントありがとうございます。
あれ?(笑)本当ですか?可笑しいなぁ・・・そんなはずはないんだけど。

でも、実際には見たことはないんですが「そうかなぁ?」って言うのならあります。
会社の先輩でしたけど耳の下ですね(笑)

で、私がまだ若いときでしたので「赤くなってますよ?」って言ったら怒られました。


そういう事・・・ですかね?
まぁまぁ、夢中にならないと付かないんでしょうからいいじゃないですか!!


そちらの情報も教えてくださいね!

2019/01/08 (Tue) 20:11 | EDIT | REPLY |   

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