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plumeria

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あの日から順調にあったかい夜を過ごしての3日目・・・まだ薄暗い部屋の中で小さくアラーム音が鳴って目を覚ました。
すぐに牧野の額にキスして起こすのが俺の新しい仕事・・・。


「・・・おはよう、牧野。朝だよ」
「・・・ん、今日何日?」

「今日?今日は28日だけど何かあった?」
「・・・28日なんだ、あ~あ、やだなぁ」

まだ目も開けてないのにベッドの中で面白くなさそうに呟いた。やだなぁって・・・何がそんなに嫌なんだろう?
会社で何かあったのかな・・・昨日の夜、そんな事言わなかったけど。

今度は閉じたままの瞼にキスしたら擽ったそうに肩を竦めて、その後ようやく目を開けた。
そしてやっぱりちょっとだけ口を尖らせて身体を起こし、落ちてるバスローブを拾って自分の部屋にスタスタ入っていった・・・。


あれ?もしかして・・・昨日満足出来なかったとか?

嫌がる事も変わった事はしてないはず・・・順番も飛ばしてないし、小道具も使ってないし、牧野の『いやだ』の声は別の意味だったよね?すっごく甘い夜だったよね?


「類、いつまでベッドに入ってるの?もう時間だよ?」
「えっ?!あっ、マジで?早く言ってよ!」

「・・・何言ってるのよ、類の方が早く起きてたじゃないの」

悶々と考えてたら牧野が身支度調えて俺の前に立っていた。
慌ててベッドから飛び降りて服を着て、ボタンを留めながら入り口で待ってる彼女の元に行ったけど、いつもの笑顔じゃなくてしょんぼりしてる。
もしかして運動し過ぎてお腹が空いたのかな・・・?
ダイニングに向かう途中、少し前を歩く牧野の顔を見ながら首を傾げてた。



「・・・どうかしたの?つくしちゃん。具合でも悪いの?」
「今日はあんまり食べないんだねぇ?類と喧嘩でもしてるのかい?」

「・・・何でもないです。はぁ・・・」
「喧嘩なんてする訳ないじゃん。昨日だってずっと一緒だったけど1度もそんな雰囲気になってないし。ね、牧野」

「・・・・・・」
「ねっ!牧野」


ここで母さんがいつもの如く父さんの腕を引き寄せて耳打ちしてる。
ホントにそういうの、いい加減止めなよね?全部聞こえてるんだから!


「類が浮気でもしたんじゃないかしら。クリスマスだってパーティー早く切り上げたんでしょ?」
「そんな!類は私の息子なんだから一途なはずだよ?そりゃ可愛い子は沢山居るだろうけど、この人!って決めたんなら気移りなんて簡単にしないと思うが?」

「はっ!もしかしたら・・・今度こそ?」
「えっ!あのベッドが役に立つときが来たのかい?」

「そういう時はやたら眠たくなったりブルーになったりするのよ!私もそうだったでしょ?」
「そんな昔の事は覚えてないけど君は毎日元気だったよ?」



「・・・・・・」

だから浮気も妊娠もしてないって!
でも、確かに牧野はパンを2つしか食べてない・・・俺のオムレツにも手を出さないし、フルーツだってまだ残ってるのに。
それに俺のパンにもジャムを塗ってくれない。わざとサラダにドレッシング掛けずに待ってるんだけど無視。
そのうえ「はぁ・・・」ってもう1回溜息つくから、両親の前だけど理由を聞いてみた。


「牧野、今日は一体どうしたのさ。なんでそんなに溜息ついてんの?みんなが心配するから話してくれない?」

「・・・え?私、溜息なんてついてる?」
「思いっきりついてるよ。すっごく気になる・・・俺、何かしたっけ?」

「ううん、類には関係ないのよ。ただね、今日・・・1つ歳とっちゃったから嫌だなって思って」
「なんだ、歳とっただけなの?そりゃ・・・えぇっ!!今日誕生日なの?!」

「そうなのよ・・・」


父さんも母さんも「なんで類が知らないの?」って顔して睨んでる。
確かにここでこの発言はヤバかった・・・急に両親から視線を外して珈琲を飲んだ。

そう言えばあんな出会い方だから誕生日なんて聞いたことがなかった。その時は聞く必要もなかったから・・・でも、知ってしまったら今日は記念日じゃない!


どうしよう・・・当然だけど何も考えてない。
初めて出来た彼女の、付き合いだしてから初めての誕生日がこんなに早く来るなんて思いもしなかった。

今度は俺までがブルーになって食事が進まない・・・これまでにないどんよりした空気が朝のダイニングに流れていた。


**


「そんなに嫌なの?自分の誕生日」

会社に行く途中の車の中で、窓の外を眺めてる牧野に声を掛けたらコクンと小さく頷いた。
そこそこの屋敷の娘なら盛大に祝ってもらっただろうに・・・そう思ってたけど実は違うらしい。何度も俺が聞くからやっと口を開いてくれた。


「12月28日ってね、毎年年末の仕事納めかその前日で忙しかったの。お爺様が家族の祝い事より会社を優先させる方だから私のお誕生日なんて忘れられることが多くてね。いつもお正月に組み込まれてしまって『明けましておめでとう、つくしちゃんもね』みたいな感じだったから。それに学校に行ってた時も28日って冬休みだから誰からもお祝いなんてされたことないもん。みんなは楽しそうにお誕生日会の話とかしてたけど・・・私にはそんな記憶がないの」

「・・・お父さんとお母さんは?」

「プレゼントくれたよ。でも一緒のお屋敷じゃなかったし、お手伝いさんが届けてくれてた。運良く出会えたら『おめでとう』って言われたけどね・・・だから、大人になってからは自分の誕生日も普通の日だと思って過ごしてきたんだよね。
まぁ、だからって両親を嫌いになったりとかはないけど・・・そういう家だったの」


窓硝子に映った顔・・・それが小さな子供の拗ねた顔に見えて胸が痛くなった。


「じゃあ今日の夕方、予定をメッセージで送ってね!」
「うん、多分残業なんてないから一緒に帰れると思うよ」

「はーい!行ってきまーす!」


俺に全部話したらすっきりしたのかもしれない。
牧野は会社に着いて駐車場で別れる時にはいつもの笑顔に戻っていた。


でも今度は俺の方が超不機嫌な顔になってる。

牧野の力を利用だけしておいて、そういう日には何もしないだなんて。
そりゃ確かに二十歳を過ぎてもホテルの大広間を使ってまで盛大な誕生日パーティーをするうちもどうかと思うけど、せめて家族では祝うよね?24時間営業じゃないんだから、夕食を一緒に食べて「おめでとう」って言うだけじゃない。


2日前は浮かれまくって歩いたロビーを、今日は顰めっ面で5メートル先の床を睨みながらズンズン歩いた。

受付嬢は「おはようござ・・・」までで言葉を止めるし、警備員は毎朝の敬礼すら忘れてる。
すれ違う社員に挨拶されても今日は返事すら出来ない・・・そこら辺に居る奴等が何事かと驚いてるみたいだけど無視してエレベーターに向かった。

見えてきたのは黒縁眼鏡・・・なんで今日もそんなに間が抜けた顔してるんだろう、こいつ!!


「・・・せ、専務?今日はどうしたんですか?」
「何が?何もないけど」

「・・・お顔が歪んでますけど?」
「そう?機嫌が悪いからかな」

「えっ!ご機嫌が悪いんですか?昨日までは超ご機嫌だったのに?」
「五月蠅いよ、藤本。朝の挨拶もないなら降りてくるんじゃないよ」


「・・・・・・おはようございます」
「遅いっ!!」




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2019/01/09 (Wed) 06:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。


そうですねぇ💦年末は大変ですよね~!
どうせなら正月とかの方がまだお祝いしてもらえそう(笑)

瀧野瀬家の事ではないですが、12月28日って結構お金が要るときじゃないですか?
帰省する人も自宅で料理する人も。

私も毎年お正月用の食材に2万円は掛かりますもん。それにお寿司頼んだりお酒買ったりでしょ?
確かに我が家だと「お正月前だからごめんね!」って言って簡単に済ませそう(笑)

うちの子は昨日が誕生日・・・正月疲れで何もしてあげられません(笑)


そう言えば、私の子供の頃って父のお給料が25日の現金手渡しだったんですよ。
それなのに私が24日産まれで、兄が25日産まれ・・・家が1番苦しいときで、兄も父が帰らないと家計が潤わないので毎年お誕生日会なんてしてもらえませんでした💦

因みに私はお給料が銀行振り込みに変わっても前日なので保留されていました💦
懐かしいなぁ・・・今となっては誕生日を消したいぐらいですけどね。

2019/01/09 (Wed) 17:06 | EDIT | REPLY |   

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