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「専務、ご機嫌の悪いところ申し訳ないのですが本日のご予定を申し上げても宜しいでしょうか?」
「・・・そんな事より聞きたいことがあるんだけど」

「そんな事?お仕事ですけど?」

執務室に入っても頭の中に浮かぶのは今日のこと・・・牧野に何も渡さないで終わらせることは出来ない。
何をしたら1番喜ぶんだろうってそればっかり考えて、目の前の会議資料がただの文字の羅列にしか見えなかった。

藤本が横で何か言ってるけど耳が反応しない。
早くこれを解決しないとマジで仕事にならない・・・とうとう藤本も諦めて俺の前に予定表を裏返しにして置いた。


「判りました。先にお悩みの事を聞きましょう。今朝から何を怒っていらっしゃるのですか?ご家庭内のご機嫌を会社に持ち込むのは副社長だけでいいと思うんですけど?」

「・・・今日、牧野の誕生日なんだって・・・」
「お待ち下さい!」


急に片手をバンッ!と出して俺の言葉を遮った藤本・・・ムッとして見上げたら今朝の両親と同じ顔をしていた。秘書なのに俺の言葉をそんな風に止めるなんていい度胸だよね?
ジロッと睨んだら慌てて手を引っ込めたけど、また黒縁眼鏡の縁を直しながら冷たい目を向けてきた。

「なんだって・・・と、言うのはどういう事でしょう?まさかと思いますが恋人の誕生日を言われるまで知らなかったって言うんじゃありませんよね?」
「・・・ダメなの?世間では付き合い始めたらいきなり誕生日の確認でもするの?そこ重要なことなの?」

「最重要かと言われればわかりませんが、少なくともお誕生日は恋人の中ではバレンタイン、クリスマスに並ぶイベントです。まず付き合い始めたら・・・と言うか、その前に気になる段階で要チェック項目ですよね?」

「どうして?」

「そこで素敵なプレゼントを用意して相手の喜ぶ顔を見たいでしょ?そういうサプライズでグッと距離を縮めたがるのが普通です。間違っても『今日、誕生日なんだよね』だなんて女性に言わせるのは男の恥です!」

「・・・・・・」


男の恥・・・まさか藤本に言われるとは思わなかった。
いや、ここで腹を立てても時間は待ってくれない・・・とにかくこんな藤本からでも何かヒントをもらって牧野に素敵な思い出を作ってあげなきゃ。

どう考えても牧野がドレスや食事やアクセサリーで目を輝かせるとは思えない。
そんなんじゃなくて彼女が心から喜ぶもの・・・それをあと8時間で見つけないと!


「・・・藤本、俺が牧野の誕生日を何故今日知ったのかは置いといて」
「置いとくんですか?」

「そう、置いといて何がいいだろう・・・服やアクセサリーや食事じゃないと思うんだよね。女性はそれ以外だと何がいいと思う?」
「そうですね・・・自分の好きなものをもらうのが1番嬉しいようですが、基本、恋人からの贈り物ならなんでもいいんじゃないでしょうか?」

「なんでもいいじゃ困るんだよね。だって今日じゃん?今から準備なんだよ?今から悩むんじゃなくてあと8時間後にはそれを持って帰らないといけないんだよ?」
「・・・仕事する気がないんですか?」

「あるよ!だから急ぐんじゃん!早く決めないと仕事に支障が出るよ?」
「もう出てます。そうですねぇ・・・牧野さんは何が好きなんですか?」

「牧野が好きなのは俺でしょ」
「・・・・・・」


何となく藤本の心の声が聞こえた。『それなら自分にリボン掛けとけよ!』・・・そんな目で俺を睨んでるよね?
ひと呼吸置いて藤本が言い出したのは「物」ではなく「事」。

牧野は何をするのが好きかって・・・ここで俺との時間って言えばまた睨まれる。
それ以外で何をしてる時が1番楽しそうかって思い描くと・・・桃太郎達と遊んでいるところ?それかこの前行ったテーマパークも嬉しそうだったけど、あれは俺がイヤだ。

「動物が好きみたい。うちのボルゾイとレトリバーは牧野の方に馴れてるし、そいつらを連れてドッグランに行った時は嬉しそうだったっけ・・・そんなところに夜行けないし」

「その犬は専務の飼い犬でしょう?牧野さんにも買ってあげたら如何ですか?」
「えっ!動物をプレゼントするの?」

「専務にリボン掛けるのと大差ないですよ」
「・・・・・・」



*****************



「牧野さん、少しいいですか?」
「・・・はい?」

勤務時間が終わってから笹本さんに声を掛けられた。
今日一日どんよりしていたからまた怒られるのかな?って思ったら手には小さな箱を持っていた。しかも赤いリボン付き。
なんだろうって思ったら少し赤い顔してそれを渡された。

「今日はお誕生日でしょう?おめでとう・・・専務がいらっしゃるからお気を悪くされたら困ると思って普通の物だけど」
「え?!」

「あはは!形として残ると専務が嫌がるだろうしケーキは花沢家が用意すると思うからさ。ただのクッキーだけど」
「・・・どうして知ってるんですか?」

「だって履歴書に書いてたでしょ?ごめん、近かったから覚えてたんだよね」


可愛らしい包装紙に綺麗に掛けられたリボン・・・お誕生日としてもらったことが久しぶりだったから驚いて声も出なかった。
それを受け取って大事に抱えたら笹本さんも「そんなに大事にしなくても」って困ってるけど、本当に嬉しかった。

「ありがとうございます。働いたことがなかったからこんな風に職場の方にお祝いしてもらえるだなんて思っていませんでした。すっごく嬉しいです!」

「いやいや、ホントにつまんない物だけど良かったら専務と食べてよ」
「つまらなくなんかないですよ。私のために選んでくれたんでしょ?素敵な誕生日になりました!」


何度もお礼を言って駐車場に向かった。
今日はすぐに帰れるってメッセージがあったから。

駐車場に行くともう類が車の前で立っていて「遅かったね!」って・・・でも、すっごい笑顔。
その腕の中に飛び込んだら両手で抱き締めてくれて、急いで車に乗るように言われた。


「今から行く所があるんだよね。少しだけ遠回りするけどいい?」
「うん、いいよ。何処に行くの?」

「行ったらわかるよ。牧野の好きそうな場所だから」
「・・・・・・?」


そして類が連れて行ってくれたのはペットショップ。
そこに入ると沢山の犬やネコが綺麗な硝子張りの部屋に入ってて、どの子にもおもちゃや毛布が用意されてて賑やかな鳴き声で溢れていた。

「きゃああぁーっ!こんなに沢山の子犬見たの、初めてーっ!可愛いっ!」
「くすっ、ね、牧野好きでしょ?」

「うん、動物は大好き!でも、こんな狭い場所に入ってるのを見るのは少し辛いなぁ。ちょっと可哀想かも」
「まぁそれは仕方ないかもね。でもみんな大事にしてくれる飼い主を待ってるんだよ?そして今日はその1人に牧野が選ばれたんだよ?」

「は?どういう事?」


類が店員さんに声を掛けたら、奥から小さなバスケットが持ってこられた。
それにも可愛いリボンが付いてて小さな窓がある・・・そこから見える小さくて真っ黒な瞳を見つけてしまった。

店員さんはそのバスケットを私に手渡して「可愛がってくださいね」って・・・窓の中を覗いてみたら小さな顔と目が合った!


「類・・・何か居る」
「開けてみて?」

類が嬉しそうに言うから開けてみたら・・・中には彼の髪の色と同じ茶色の豆柴が私の事を見上げていた。
驚いて類を見たら「牧野の豆柴ね」って。

性別は男の子で、もう赤い首輪もつけてる。店員さんに聞いたら躾もほぼ終わってるらしい。
これが類からの贈り物だって言われて、私はバスケットからその子を出して抱きかかえた。


「・・・ワン?」
「・・・初めまして。私が今日からあなたのお友達になったつくしって言います。宜しくね!」

「ワン!」



帰りの車の中でもその子を抱いたまま、私はすっごく嬉しくてずっと話しかけていた。勿論類にじゃなくて豆柴に。

そしてお屋敷に帰ったら、桃太郎、菊次郎と同じようにこの子のお部屋も既に準備されていた。
淋しくならないように近くには庭師さんのお部屋があって、時間がある時には遊んでくれるらしい。大きさは随分違うけど桃太郎も菊次郎もきっと可愛がってくれるよって類は言ってた。

「明日の朝、早く来るから遊ぼうね?」
「わん!」

「淋しくなったら庭師のおじちゃんに遊んでもらってね?でも私のことも忘れないでね?」
「わん!」

「お名前は今晩考えるから待っててね?可愛いお名前つけてあげるからね?」
「わんわん!」

「牧野・・・キリがないから。みんな待ってるよ?」



少し遅めに始まった夕食はいつもより豪華でバースデーケーキまで準備してもらった。
お父様もお母様も早く帰ってきてくれて、プレゼントもいただいた。

「はい!つくしちゃん。これ中々手に入らないのよ~!シルバーフォックスのコート!」
「つくしちゃん、私からはこれなんだが使うかな・・・腕時計なんだけどエレガントなデザインだろ?」

「私に・・・ですか?本当に?」

「勿論よ~!類ったらホントに抜けてるんだから!時間があれば色々考えたのにねぇ!」
「そうだよ。雪のカナダでお祝いしても良かったし、南の島でパーティーしても良かったのになぁ!」

そんな事を言いながらケーキに立ってる25本のろうそくを吹き消せってみんなが催促する。だから思いっきり息を吸って・・・

「ふーーーっ!!!」

って吹いたら、ケーキの上の苺がろうそくと一緒に全部吹き飛んだ。
その直後に3人共が大笑い!私は「えへへ・・・」って頭を搔きながら苦笑いした。


部屋に戻ってから笹本さんにもらったクッキーを出して嫌がる類にも1枚、私も一緒に1枚食べた。
そして「笹本さんからのプレゼントなの」って言うと思いっきり変な顔!

その後は当然類の腕の中・・・今日も凄く優しく私を抱き締めて、何度も「愛してる」って言葉をくれた。
25回目のお誕生日、私はすごく幸せだった。





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2019/01/10 (Thu) 06:37 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/10 (Thu) 09:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 こんにちは。

いつもコメントありがとうございます。
ふふふ、きっと塗り替えられたと思いますよ♥楽しいお誕生日で良かったです~!
ってこれを12月28日にするはずが今・・・💦めっちゃズレまくって違和感半端ない!!(笑)

花沢城(爆)!!
そうそう!元々はここから花沢城にスカウトされた二匹のわんちゃんなのに豆柴まで来ちゃった💦
ちょっとここは私の「お遊び」です♡

名前・・・明日判りますよ♡

2019/01/10 (Thu) 10:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様(笑)さっきのお返事に書いちゃった💦

つくしちゃんのセンスですからねぇ・・・類君、再び唖然としてますよ(笑)
お楽しみに~!

2019/01/10 (Thu) 10:17 | EDIT | REPLY |   

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