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あの司が変わった・・・あんたって言う恋人を手に入れてから。

刃物のような目で人を見ていたのに穏やかな時間が増えた。
誰にでも辛く酷く当たっていたのに、それを諫める人間が出来たら素直に言うことを聞くようになった。
何でも金で解決しようとしていたのに自分で動くようになった・・・それは総てあんたの影響だって周りには全部わかってた。


あんたも少し変わった・・・非常階段に来なくなったもんね。

いつも大きな口開けて笑ってたのに恥ずかしそうに顔を赤らめる時が多くなった。
制服以外なんてあんまり見たことはないけど、司が準備したドレスなんか着て俺達の前に出ると見違えるほど綺麗になった。
時々ハッとするほど大人っぽい目で窓の外を見る・・・その視線の先には彼奴がいた。

開けてなかったピアスホールに驚いた。首には見慣れないチェーンが光った。
自然なままの唇に色がほんのり付いて、働き者だった指先が綺麗になった。


それでもたまに振り向いて俺に笑いかけてくれる時は・・・あんた、その時は何にも変わらなかったね。


夏・・・みんなで海に行った時。
三条と大河原とあんたの友達も誘って、丁度4人ずつ居るからって・・・あんたと彼奴以外はどういう組み合わせ?ってムッとした。

ビーチに行ったら惜しげもなく晒した素肌にドキッとしたのは俺達全員で、そんな事を気にもせず、ビーチバレー用のボールを抱えてきて叫んだんだ。

「ビーチバレーしようよ!人数丁度いいし!」
「あぁ?こんな日差しの中でボール追いかけるのかよ!」

「いいじゃん!ここでしか出来ないんだからさ。ほら、ガタガタ言わずにじゃんけんしよ?」

あんたのひと言で反対するヤツの方が多かったのに始まったビーチバレー。組み分けで俺とあんたが一緒で司は相手チームだった。そしてポジションは俺と牧野は後ろで総二郎と大河原が前・・・面相だなって思いながら、それでも始まったら必死でボールを追いかけた。

ボールは相手チーム・・・三条があげたトスを司がアタックしようとした時、その手の動きで牧野の正面に行く!と思った。
手加減無しの馬鹿力で振り下ろされたボールは真面に当たると怪我をするぐらいなのに、その時の司は少し調子に乗っていたんだ。だから凄い音で叩き落とされたボールが牧野の方に!!俺は横から飛び込んでそのボールをレシーブしたけど、当然の如くそれは海の中に飛んでいった。

ホントに馬鹿力・・・!俺の手首でも痛いのにこんなの牧野に向かって・・・!

おかげで初めて砂ってものを噛んでしまった。

「は、花沢類!大丈夫?」
「・・・ん、平気。あんたに当たっていたら怪我してたよ」

「え?あぁ・・・うん、ホントに加減を知らないからね!もうっ・・・道明寺、謝りなよ!」
「いいよ、別に。牧野が無事だったんだから」


司は自分がした事なのに俺を見て凄く驚いていたけど、謝るだなんて事はしなかった。むしろあんたの方が「あいつもわざとじゃないのよ」って庇うから・・・それも面白くなくて先にゲームから逃げたのは俺だったんだ。

その後は楽しそうに2人で海で遊んでた。
司のボールを受けた俺の手首だけが赤く腫れて・・・それなのに痛かったのは胸だった。


その数週間後、同じメンバーで花火大会に誘われた時は流石に行けなかった。
だからせっかく俺の家まで迎えに来てくれた浴衣のあんたに嘘をついて出掛けなかった。

その時祭り会場から送ってくれた動画・・・「花沢類、見える~?今ね、綺麗なのが上がったんだよ~!」ってあんたが叫んでる。


画面なんて見ないで何度も牧野の声を再生した。
目を閉じてあんたの声だけを・・・それだけで凄く胸が熱くなったんだ。




だけど道明寺家だけはそんなあんたの力も通用しなかった。
司も必死になって自分の家と闘って、俺達はその援護に回った。本当はそんな事したくなかったけど・・・司って言うよりあんたの笑った顔が見たかったから。


俺に向けられなくてもいい・・・太陽のようなあんたの笑顔を見たかったんだ。


イジメで悲しんだ時は俺が助けてあげられたけど、今はあんたを助けるのは俺の腕じゃない。
俺の胸で抱いてやれない・・・俺の言葉は友人としてのものでしかない。
倒れた時に差し出されるのは俺の手じゃない。

あんたが何かで傷ついた時、泣きながら司の手を取るのを何回見ただろう・・・凄い痛みと共に。
それでも最後に笑ってくれるのなら、それを応援することが出来た。

自分でも・・・馬鹿だなって思ったりもしたけどね。



出会ってから1年後の12月・・・その日で年内の学校が終わりって日だったっけ。春には俺達が卒業する年だった。
いつものように式なんて出なくて非常階段で寝てた時、久しぶりにあんたがやってきた。

その時は勿論寝たフリなんてしなかった。


「・・・花沢類、やっぱりサボってた!」
「くすっ、牧野もサボり?仲間じゃん」

「あははっ・・・そうだね。だって・・・つまんないんだもん」
「そんな言い方珍しいね。何かあったの?」

「ん~・・・別に~」

踊り場の手摺りに両腕を重ねて、そこに顎を乗っけて外を見てる。
顔は笑ってるけど目が泣いてる・・・俺にそれがわからないと思ったの?

俺は手摺りに背中で凭れ掛かるようにして牧野の横に立って、何も言わずに付き合った。牧野が何かを喋るまで、質問もしないで黙ってそこに居た・・・多分、それだけでいいんだって思えたから。


「あのね・・・今日、あいつ来なかったのよ」
「司?そうだっけ?会ってないからわかんないや」

「・・・少し早いけど会社のクリスマスパーティーらしいの。それにね・・・行ってるの」
「あんたは一緒じゃないの?誘われなかったの?」

「・・・・・・うん」
「そう・・・淋しい?」

「ううん、そうじゃない・・・行ってもさ・・・」



ここで牧野は黙ってしまった。
少し空を見上げて目を細めた・・・「眩しいねぇ」って言いながら。

眩しくなんてないよ、もうすぐ雪が降るって予報が出てるぐらい雲が広がってるんだから。
あんたの目の中に溢れるものがあるからだよ・・・それを誤魔化そうとしてるから視界が歪んでるんだよ。馬鹿・・・だね。


「でもさ、クリスマスはダメでももうすぐお正月だよ?何か予定はないの?」
「なーんにも無いの。あはは!聞かないでよ」

「・・・何処にも行かないの?あいつ、何だって?」
「あいつはね、アメリカで新年を迎えるんだって。今日のパーティーが終わったらそのまま行くらしいよ」

「そのまま行く?聞いてないや・・・で、いつ帰って来るの?」
「・・・知らない。決まってないんだって」


今度は大きく背伸びをして俺の方を見てニッコリ笑った。
その時に溢れたものは見なかったことにしてあげる・・・慌てて拭き取る時には俺の方が床に視線を落とした。


「ねぇ・・・じゃあさ、新年を俺と迎えない?誰も居ない処でさ・・・2人だけで迎えない?」
「・・・え?花沢類と・・・私が?」

「そう、俺とあんたで。ダメ?」
「ダメじゃないけど・・・でも、もしそんな事がバレたら・・・」

「だから誰も居ない処って言ってるでしょ?それとも俺が狼になるとでも思ってる?」
「あはは!そんな・・・花沢類はそんな人じゃないって知ってるよ」


ズキン・・・と、胸の奥が痛む。
俺はあんたが思ってるような男じゃないかもしれないよ?本当の気持ちを胸の奥の奥に閉じ込めて、欲で溢れた男かもしれないよ?それを見せないように微笑んでる・・・あんたの幸せを願いながら実は自分が幸せになりたいって思ってる。

あんたと幸せになりたいって思ってる。
あいつじゃなくて、この俺があんたを守りたいって思ってる。
あんたを連れて行った場所で、そのまま攫って行けたらどんなにいいだろう・・・って心の何処かで囁く俺がいる。


・・・そんな気持ちも少しはあるけど、やっぱりあんたに笑ってて欲しいから。


俺達は大晦日の午後から雪の深い場所にあるコテージに行くことにした。
2人で新年を迎えて、2人で来年初めての太陽を見るんだって約束した。



司のことはこの後総二郎達に聞いた。
牧野を誘えなかったクリスマスパーティーでアメリカの企業の令嬢を用意され、そのまま彼女を連れてアメリカに戻ったのだと。
それはあいつの希望ではなく社長命令で、司の抵抗も虚しく事は進んでいるのだと・・・。


きっとあんたは知っていたんだろうね。

大きくて高すぎる壁を、初めての恋は打ち破ることが出来なかったんだ。




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2019/01/02 (Wed) 09:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 おはようございます。

あはは!申し訳ない・・・でもこの先は2人ですからね・・・あと2話で頑張って甘々な方向にグイッと!!
・・・ってか、贅沢ですよねぇ!類君と2人で年越しですよ?

本当は民宿の掘り炬燵でミカン食べながら紅白見せようかと思ったんですが・・・止めました(笑)
新年早々コメディになっちゃう💦
どんなお正月になるのかお楽しみに♥

2019/01/02 (Wed) 10:03 | EDIT | REPLY |   

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