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大晦日・・・午後になったら牧野を迎えにアパートに向かった。

たった1日だから荷物なんて無くて、真っ白なコートにロングブーツの牧野がマフラーをグルグル巻きにして降りてきた。
まるで雪だるまみたい・・・モコモコした牧野を見てクスッと笑うとぷぅっ!と頬を膨らました。


「今から何処に行くの?」
「花沢のヘリポート」

「ヘリポート・・・って、ヘリで行くの?!」
「そう。車が入れないところだから。大丈夫、ちゃんと帰りもヘリが来るから。吹雪じゃなかったらね」

「ふ、吹雪いたら?」
「1泊追加?でも、管理人さんに食料頼んでるから大丈夫だと思うよ」

「えっ?!そんな問題じゃなくて!」
「なんでも揃ってるから1週間吹雪いても問題ないと思うんだけど?」

「1週間・・・」


凄く不安そうな顔したあんたを先に後部座席に座らせて俺が後から車に乗り込み、そのまま花沢のヘリポートに向かった。
そこで降りたらもう機体は準備されててすぐにヘリに乗り変えた。今度は俺が先に乗って、牧野が怖々してるから手を差し出して「おいで」って言うと冷たくなってる手を伸ばしてきた。
その手を掴んで引っ張り上げると勢い余って俺の胸に体当たり・・・慌てて抱き留めたら真っ赤になって飛び退いた。

「ごっ、ごめん!!勢いつけすぎた!」
「大丈夫、このぐらい受け止められるよ。ほら、こう見えて男だし?」

「・・・ぷっ!変なの、花沢類」
「そお?くすっ、もう怖くない?」

「・・・うん、もう平気」


そしてほんの少し俺と距離を開けて座り、まだ飛び立っていないのに窓に指をあてて外を見ていた。その時に窓硝子に映ったあんたの目・・・それは何処を見てるの?

もしかしたら・・・これから飛び立つ空の遙か彼方向こうの国・・・あいつの姿を見てるの?


「それではこれよりテイクオフ致します。宜しいですか?」


操縦士の声で機体は上昇し、俺達の初めての小旅行がスタートした。


**


数時間のフライトの後着いたのは花沢が持ってるコテージだけど、雪が深いところにあって冬に使ったことなんてなかった。
夏に何度か来たことがあるだけで、俺も何年ぶりかでこの土地にやってきた。

夏に利用していたヘリポートなんて一面真っ白で見えなくて、積雪も50センチ程度はあると操縦士から言われた。
そうなるとヘリは着陸出来てもエンジンを切ることは出来ない。しかも下手をすればひっくり返るかもしれないと言われたから着陸を諦めて俺が先に飛び降りた。

ヘリまでの高さなんて僅かに2メートルぐらい・・・しかも雪の上だから危険と言うほどでもなかった。


「牧野!早く降りておいで、俺が受け止めるから!」
「えっ!ここから?でも、でも・・・!」

「大丈夫だよ。抱き留めてあげるからおいで!」
「・・・うん!」

ホントに僅かな高さなのに、怖がった牧野は泣きそうな顔してる。
何度か目を閉じて大きく息を吸ったら、次の瞬間両手を広げて俺の腕の中に飛び込んで来た。白いコートがふわっと舞ったのも一瞬の事で、すぐに俺達は2人同時に雪の上に倒れ込んだ!


「大丈夫ですか?類様ーっ!」
「あぁ!問題ないよ。悪いけど明日のこの時間に迎えに来てくれる?」

「畏まりました。気象条件次第ですが明日は大丈夫でしょう!」


凄い轟音と突風を拭き散らかしてヘリは東京に戻っていった。
この白い世界に2人だけ・・・ヘリが残した風で舞い上がった雪が俺達の上に降ってきた。



少し離れた所に見えるコテージを指さして「あそこだよ」って言うと「可愛い!」って今度は凄く嬉しそうな顔をした。

ギュッギュッと雪を踏み固めながら歩いてく・・・足を大きく上げないと進めなくて2人で何度も転けそうになりながら、その度に手を取り合ってコテージに向かった。
その距離僅か500メートルぐらいなのにハァハァと息を吐きながら、額にほんのり汗まで浮かべて。

やっとドアまでついたらそこは雪掻きがしてあった。


「あれ?花沢類・・・何で?」
「あぁ、昨日管理人さんに電話して頼んでおいたから。きっと料理も作ってくれてるはずだよ」

「え?そうなんだ・・・大晦日なのに申し訳なかったね」


インターホンを鳴らしてドアを開けると、俺が言ったとおり部屋の中は温められていて夕食の支度も出来ていた。
今晩だけって言っていたからホントに少しだけ・・・美味しそうなビーフシチューの香りが部屋中に広がってて、小さなテーブルには可愛らしく並べられた食器とサラダやオードブルが既に並べられていた。

「ワインはご用意しておりますわ。あと少しですけどデザートも冷蔵庫に入ってます。ごゆっくりお過ごし下さいね」

「ありがとうございます!」
「どうもありがとう・・・助かったよ」

管理人の女性は俺達が来ると「後片付けはまた今度」と言って帰っていった。



「あ・・・花沢類、雪が降り始めたよ?」

夕方遅くなって食事の準備をしていた牧野が窓から外を見てそう呟いた。
結露で濡れてる窓硝子を乱暴に掌で拭き取って、2人で顔を並べて外を見たら・・・チラチラと白い物が上から降ってる。

思わず2人で顔を見合わせて・・・今度は大急ぎでドアを開けて外に飛び出した。


「うわあっ・・・綺麗!花沢類、見て!綺麗だね・・・」
「うん、綺麗。今だけだね・・・もうすぐ太陽が沈むから」

「・・・・・・ずっと降るのかな」
「どうだろう・・・雲はそんなにないからわかんないね」


空の低い位置にオレンジ色の光が横に延びてて、真上は既に漆黒に近い深い青に変わっていた。その見事なグラデーションの中を白い雪の花が咲く。


眺めているのは視界の中では2人だけ・・・雪の花は全部俺達に舞い落ちてきてるように思えた。


「何かメッセージでも届けてるみたいだよね。雪の声が聞こえてきそうじゃない?」
「・・・牧野なら誰になんてメッセージ送るの?」

「私?そうだなぁ・・・誰に送ろうかな」


雪がメッセージを運んでくれるなら俺はあんたに送るよ・・・Je t'aime à la folie・・・多分わかってもらえないだろうけど。


あんたは俺の質問に答えることもなく、舞い落ちる雪に手を伸ばして捕まえようとしてた。
そして捕まえては溶けてしまうから次から次へと・・・最後には手を伸ばすのを止めてしまった。


もうすぐ全部が闇に包まれる。
今年最後のあんたの夜を俺は独り占めできる。


ねぇ、牧野・・・そんな事だけでも最高に幸せだと思う俺を・・・あんたはどう思うだろうね。






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2019/01/03 (Thu) 08:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは!

あはは!おこたでも良かったかしら?(笑)
おこたならつくしちゃんのアパートでホッコリ出来ましたね・・・。

書きたかったシーンが雪の中に2人で倒れる・・・ここだったので(笑)
それだけのために生まれた作品です。はははっ!

それでは最終話・・・お楽しみに~♥

2019/01/03 (Thu) 18:33 | EDIT | REPLY |   

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