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plumeria

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「花沢類~!シチューが温まったよ~!」

あんたの嬉しそうな声が部屋に響いて、俺は暖炉の薪の補充を止めてテーブルに向かった。
綺麗な彩りのサラダとオードブルもちょうど2人で食べきれるぐらいの量が準備されていたけど、そこに温め直したビーフシチューが出されて湯気を放っている。
赤ワインは俺が選んでテーブルに並べて、2人同時に席についた。

「ねぇ、これって大晦日じゃなくてクリスマスみたいじゃない?」
「あはは!ホントだね。でもいいんじゃない?誰もいないし」

「うん!誰も来ないしね」
「美味しそう・・・いただきます」


夢にまで見た食卓・・・2人だけの食卓。

向かい側にあんたが座って、今日は牧野の手料理じゃないけど、いつもはあんたの作ってくれたものが並んでテレビも見ないし、スマホにも触らない。小さな音で音楽が鳴ってて1日の出来事を話すんだ。

くすっ、それは今日は無理だね。
だってずっと一緒だったから・・・あんたの見たものは俺も見てるし、俺の見たものはあんたも見てる。

だからホントに些細な話とか昔話とか、何が好きとか嫌いとか、あれがしたいとかこれが見たいとかって希望を俺が黙って聞いてるだけ。
「何か言ってよ!」なんて口を尖らせるから、その時にはあんたの口にミニトマトを突っ込んだ。
そしたら怒りながらも美味しそうに食べるんだ。俺はまたそれを見てクスクス笑うだけ。

あんたと居ると何もかもが美味しくて、何もかもが輝いて・・・今、そんなあんたを見てるのが俺だけって贅沢に酔いしれてる。



「あー!お腹いっぱいになった!ご馳走様~!」
「うん、美味しかったね」

「新年まであとどのくらい?」
「ん?あと・・・3時間半だね」

「そっか・・・」

その時初めてスマホで何かを確認した。そしてすぐにパタンとカバーを閉じた。
・・・アメリカからのメッセージ?でも、あんたの表情は曇りもしないし明るくもならなかった。


帰って来て欲しいと思ってるの?
帰って来なかったら・・・あんたは諦めがつくの?それとも追いかけたいの?


雪はあれからも降り続いてる。俺達は小さな声で昔話を続けながら時間が来るのを待っている。
そしてもうすぐ12時って頃になって、またスマホを確認していた。すぐにパタンと閉じたからメッセージは何も来なかったんだろうけど。


「あっ、花沢類・・・11時59分!もうすぐ新年だよ?」
「くすっ、何にも変わらないけどね」

「あはは、そうだけどさ。でも記念の時間だよ?」
「うん、あ・・・12時になった」


新しい年の0時ちょうどを牧野と2人で迎えてシャンパンで乾杯をした。
「明けましておめでとう!花沢類」「うん、おめでとう・・・良い年になるといね」・・・俺達の目の前では暖炉の火が赤々としてた。


その後は暖炉の前のソファーに並んで座って1つの毛布に包まって、お互いに肩を寄せ合って眠った。
時々火の様子を見ながら隣を見ると、すぅーっと寝息をたてて丸くなってる牧野が居る。

カタンと薪が崩れる音がしても目も開けない。俺の左肩に温かい重みが伝わってきて、幸せだと思う反面胸が締め付けられそうな想いも湧き上がる。

このままで良いと思う自分と総てを欲しがる自分が交差する。
また目を閉じて夢を見る・・・そこではいつも笑顔のあんたが俺に向かって走ってくるんだ。




ピピピピピピ・・・

小さなアラーム音で目を覚ましたのは6時半。暖炉の火は燃え尽きて少しだけ肌寒かった。

「牧野・・・朝だよ。もうすぐ日が昇るよ?」
「・・・ん?あふっ・・・あれ?もう朝・・・花沢類、ずっと起きてたの?」

「ううん、ちゃんと寝たよ。牧野、身体大丈夫?ソファーで寝たから痛くない?」
「あ、ちょっと腰が痛いかも。でも大丈夫・・・起きる」

うーん、と背伸びをしたら毛布が身体から落ちて、ついでにスマホも音を立てて落ちた。
それを拾ってもう1度画面を見て・・・その後にクスッ、って笑った。


もしかしてアメリカから何かの連絡があったんだろうか・・・今度はそれにドキドキしながらコートを羽織った。


一晩中降り続いた雪のせいで別荘の外は一面の銀世界。
昨日の雪の上に新しい雪が被さって、夕方俺達がつけた足跡さえ消していた。

そこにまた新しく足跡をつけて、牧野の手を握って日の出が見える所まで出ていった。


「白んで来たね・・・もうすぐだよ」
「うん、こんな所で見るの初めて。雲が切れて良かったね」

「・・・そうだね」

どんどん空に色が付いていき、やがて遠くに見える山が白く光り出した。
そこにオレンジ色の光がほんの少し見えた時、両手で口元を覆った。俺はその光を浴びるあんたの横顔を見てた。


「花沢類、初日の出!ねぇ、初日の出見られたね・・・凄く綺麗・・・」
「うん、綺麗だね」


どんどん明るくなってくる太陽の光でその上の雲が薄いオレンジに染まり、やがて完全に山から朝日が昇った。
青白く光っていた雪も穏やかな白に変わり、俺達はその中で真横に並んで立っていた。


「実はね、あいつからの連絡・・・待ってたの」
「・・・うん、知ってる」

「でもね、来なかったの」
「・・・え?」


「約束してたの。もしも私達の事がこのまま続けられそうだったら新しい年がくるまでに連絡するって。そうしたらアメリカに来いって・・・もし何もなかったらその時は・・・判ってくれって」


ほんの少しだけ目を細めて、そこに光るものを必死で堪えてる。1度指で目頭を拭いて、グッと唇を噛み締めた後ですぐに笑顔に戻ったあんたはくるっと俺の方を向いてニコッと笑った。

「ありがとう!花沢類・・・1人でその時間を迎えなくて良かった。ホントは凄く怖かったの」
「無理しないで泣きたかったら泣いたらいいのに・・・ここには俺しか居ないよ?」

「・・・うん!でも大丈夫なの。半分はわかってたし・・・半分はホッとしてる」
「ホッとしてるの?」


「うん、ホッとしてる。もう・・・これからは1人だけを見ることが出来るから」


「・・・え?」


拭いたはずの目からまた1つ涙が溢れた。
それを拭こうとはせずにポケットの中に手を突っ込んで、少しだけ震えながら話してくれた。


「自分でも気が付いてたの。もう1人の人が心の中に居るって・・・でもそんなの許されないでしょ?どっちを選べって言われたら選べないほど迷ったの。でね・・・強さに惹かれてあいつを選んだの。だけどハラハラしてばかりで怖くなって、その時にはいつも花沢類が救ってくれた。こんなの卑怯だって・・・思うよね?」

「・・・卑怯?」

「卑怯だよ。こっちがダメならあっちにしようって・・・恋ってそんなもんじゃないでしょ?それも判ってる・・・それでもホッとしてその人だけを見ようとしてるの。こんな私なんだよ?」

「・・・・・・」

「どう・・・したらいいかな。花沢類」


真っ赤になった鼻の頭を1度擦って、俺の返事を待ってる。
その目は足元の真っ白な雪を見てる・・・そしたらまた雪が降り始めた。

俺の髪と牧野の髪と、同じように白い雪がくっついて「これからだよ」って囁いたような気がした。
雪から俺への『メッセージ』・・・「寒そうだよ・・・抱き締めてあげなきゃ」って。


「牧野・・・じゃあさ、誓いを立ててくれる?」

「誓い?」

「そう。今日からあんたは俺の傍から離れない・・・って。余所見しないで俺だけを見て迷わないって。もう俺だけの牧野になってくれる?」


そんなに大きな目をして驚かなくても良くない?
ほら・・・また涙が溢れ始めた。今度はほっぺたが真っ赤になってるよ?


「どう・・・かな。牧野」

「・・・うん、誓う。花沢類・・・誓うよ」


「じゃあ誓いのキス・・・しようか?」







それから一年後・・・


何が欲しいって聞かれたら、迷わず牧野との未来が欲しいって答える
何を見たいって聞かれたら、牧野の見てる風景を見たいって答える。

明日何をしたいかって聞かれたら、牧野の隣で笑いたいって答える。


数年後の自分の姿を聞かれたら、牧野によく似た子供を肩車してるって答える。
数十年後の自分の姿を聞かれたら、同じように年を重ねた牧野と手を繋いでるって答える。


数時間後の自分の姿を聞かれたら・・・真っ白なウエディングドレスを纏った牧野を抱き締めるって答える。



Je t'aime à la folie・・・ほら、あんたが真っ直ぐ走ってくる。





fin、




rui13.jpg

明日から「嘘つきは恋の始まり」を再開します♥
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2019/01/04 (Fri) 10:51 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/04 (Fri) 11:45 | EDIT | REPLY |   
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Re: おはようございます

水香様 こんばんは。

明けましておめでとうございます。

そう言われてみればそうかも?(笑)
そこはほら・・・みんないい男揃いですから仕方ないですわ!

私としては1番初めからって感じで書きましたけどねぇ💦
ははは!申し訳ございません。

まぁまぁ・・・類君が嬉しそうだから許してください(笑)
今年もどうぞ宜しくお願い致します♥

2019/01/04 (Fri) 19:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 こんばんは。

おおっ!渋滞・・・お疲れ様でした💦
私は帰省と言うものがない人間なのでその苦労はニュースでしか判らないのですが・・・。

もう帰られたのかしら・・・?ゆっくり休んでくださいね💦

ふふふ、総ちゃんのお話と同じ背景なのですが、雰囲気だけはガラリと変えたつもりです。
NEWYEAR STORY、最後までお付き合いいただきましてありがとうございます。

2019/01/04 (Fri) 19:38 | EDIT | REPLY |   

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