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ひまはやっとお店まで来たでしゅ!ほらね?大丈夫だったでしょ?
もうお姉ちゃんでしゅからこのぐらいは平気なんでしゅ!

お店に入ったらおばちゃんが「ケーキ出来てますよ」って奥に行っちゃった・・・ひまはおばちゃんが来るのをケースの中のかわいいケーキを見ながら待ってまちた。

「はい!お嬢様、これですけど持てるかな?」
「・・・これでしゅか?」

「そうですよ。お嬢様のお父上様のご依頼のケーキです。ここにお母様のお名前があるでしょ?」
「・・・これ、誰が書いたんでしゅか?」

「え?えっと・・・うちの職人さんが書いたんだけど・・・違ったかしら?つくし様よね?」
「あい!母ちゃまはつくしちゃんでしゅ!」

「じゃあ間違いないですよ。でも重たいからねぇ・・・どうしましょ」
「おばちゃん・・・お願いがありましゅ!」


「・・・はい?」


***************



ケーキ屋の表の窓硝子から中を覗く俺・・・店の人間が気が付いて慌ててるけど口に指を立てて「黙っとけ!」と合図した。
それに頷いて陽葵には何も言ってないようだが・・・むしろ陽葵が何かを店の人間に話しかけてる。

そして店の人間は慌てて首を振ってるけど陽葵がなにか無理を言ってるようだ・・・こりゃ完全に店が負けるな、って思っていたら陽葵はその女性と店の奥に入って行った。


「・・・は?何やってんだ?陽葵のヤツ・・・またなんで店の中に?」

硝子窓にへばり付いて中を覗く俺を通行人が変な顔して見て行く。
そして店員は時々奥の方から顔を出して俺の事を気にしてる・・・その時、後ろから背中を叩くヤツがいた。

「・・・西門の若旦那様ですよね?」

そう言われて振り向いたら、この店の主人が裏口から出てきたのか申し訳なさそうな顔をして立っていた。


「・・・そうだが、うちの陽葵はどうしたんだ?なんで奥に入ったんだ?」
「はぁ、それがですね、お嬢様が・・・」

ここで主人から陽葵の頼み事を聞いて、俺はすげぇ笑った。
そういう事か!最近覚えたからな、やってみたかったのか?

そしてその作業中だからもう少し時間が掛かると言われ、俺は「申し訳ないが宜しく頼む」と言って外で待つことにした。
子供の考えることは面白れぇな・・・ちゃんと出来ればいいけどなってニヤけながら向かいのビルの下に隠れて陽葵が出てくるのを待っていた。


で、待つこと30分。すげぇ寒かったけどこの待ち時間も苦にならねぇって、俺も相当親馬鹿だなって思っていたら、店のドアが開いて何かが出てきた。


「お嬢様、本当に大丈夫ですか?」
「あい!これだったらひまでも大丈夫でしゅ。ありがとうでしゅ!」

「車には充分気をつけてくださいね?おうちの人を呼ばなくてもいいの?」
「うん!ひまはお姉ちゃんでしゅからこのぐらいできましゅよ」

「・・・転けないようにね?怖くなったら引き返してね?」
「あい!」


・・・なんだ、あれ?

店から出てきたのは小さめの台車。それにデカいケーキの箱を乗っけて陽葵が押しながら出てきた。
店員は俺に向けて両手を合わせて謝ってるが、陽葵が持てないから仕方なかったんだろう。これもあいつが無理を言ったんだって思うから「わかった」と合図をして来た時と同じように陽葵の後をつけた。


ガタゴトガタゴト・・・ガタゴトガタゴト・・・

台車の音を響かせながら陽葵がすげぇ真剣に屋敷に向かっている。
それを少しだけ離れて気がつかれねぇように見てるけど、本人はケーキの箱に夢中だから周りなんて見やしない。
来た時に間違えなかった道だけど帰る時は右左が反対だが、悩みながらもそれもクリアして順調に屋敷に向かった。

いつも追いかけ回すネコが飛び出てきても無視。
近所の犬が台車の音に反応して吠えても無視。
ケーキの箱が少し動いて落ちそうになっても無視・・・いや、そこは無視しねぇで戻せ!って思ったら慌てて元に戻していた。

無心で台車を押して、屋敷の門が近づいたら守衛が陽葵を見つけて走り寄って来た。


やれやれ・・・これで事故もなく戻ったか。
って思った瞬間、俺は猛ダッシュで違う道から自分の屋敷の裏口に向かった。

陽葵を出迎えてやらなきゃいけねぇ!俺が屋敷に居なかったらつくしにバレるかもしれない!
着物の裾を捲り上げて路地を走り、裏門に着いたら履き物も揃えず放り投げて、すげぇ足音立てて玄関に向かって走った!

「総二郎様!早く早く!!」
「志乃さん、つくしにはバレてない?」

「つくし様はずっと家元夫人と奥の間でお片付け中ですわ!バレていません!」
「ありがとうっ!」

こんなにも自分の家が広かったことを忌々しいと思った事はない!
何度も滑りそうになりながら玄関まで行ったら、陽葵があのケーキの箱を両手で抱えて玉砂利の道を歩いているところだった!

そうか、台車じゃこの道は歩けねぇもんな・・・それならなんで守衛が持ってやらない?!って思ったが、それは陽葵が頑なに断わったんだろう。
はぁはぁと息が上がったのを整えて玄関を開け、上がり框で待っていたら陽葵が俺を見てニコッと笑った・・・その時、気持ちが緩んだのか手が緩んだのかケーキの箱をボトッ!と落とした・・・。


「・・・ふぇっ、ケーキが・・・」
「陽葵、大丈夫だ。真下に落ちたからそこまで形は崩れてないだろう。心配すんな」

「ふぇっ・・・えっ、えっ・・・あぁ~~ん!!」
「陽葵、泣くな。よく頑張ったな・・・来い、抱っこしてやるから」

「・・・うわぁ~~ん!!父ちゃまーっ!!」
「ははっ!食っちまえば形なんて気にならねぇよ!よしよし・・・流石俺の子、いい度胸してんな!」


落とした箱は俺が拾って、陽葵は泣きながら部屋に戻った。
緊張しすぎて疲れたのか、その後は涙の痕を拭きもせず、弓弦と並んで夕方まで寝ていた。



**



夕飯が終わってからのつくしの誕生日会。
陽葵はドキドキしながらケーキの出番を待っていた。

「じゃあ、ケーキをお持ちしましょうね。陽葵様、一緒に行きますか?」

志乃さんの合図で陽葵が真っ赤な顔して後をついていき、つくしはそれを不思議そうに見ていた。

「・・・なんで陽葵が一緒に行くの?」
「見てりゃわかるって。あいつ、頑張ったんだぞ?絶対、お前、泣くだろうなぁ・・・」

「私が泣くの?どうして?ケーキって私の好きなお店で頼んでくれたんでしょ?」
「まぁな。黙って見てろ」


そのうちガラガラとケーキの箱を乗せたワゴンを陽葵が押してきて、親父やお袋もヒヤヒヤしながら見ていた。流石にテーブルの上には志乃さんが乗せたけど蓋を開けるのはつくしの役目。
陽葵は自慢気に椅子の上に立ったら、つくしに向かって挨拶をした。

「母ちゃま、これね、ひまが1人でケーキ屋さんに取りに行ってきまちた!食べてくだしゃい!」

「えぇ?!陽葵が取りに行ってくれたの?1人で?」
「あい!そうでしゅ!あのね・・・ちょっと落としたから・・・あの・・・えへへ!」

「少し玄関前で落としたけどそんなに崩れてねぇと思うぜ?つくし、お前が開けてみな?」


もうここで目が赤くなったつくしがケーキの箱の蓋をそっと開けると、オーダーしていたケーキがほんの少しだけ形を歪ませていたけどほぼ無傷で現れた。
そして全員で驚いたのはそこにあったチョコに書かれた文字。

本当は山ほどのフルーツで埋め尽くされてたはずなのに、それが全部退けられて苺が一周乗っけてあるだけ。
真ん中を占めていたのは数枚のチョコのメッセージプレートで、そこに陽葵がホワイトチョコでつくし宛のメッセージを書いてるんだ。

4歳児が覚えたての平仮名で、しかも大きくしか書けないから1枚のプレートに2文字だけ。
それをみんなで目を大きくして読んだ。勿論俺も初めて見るんだけど、なんて書いてあるのか既に暗号みたいだった。

「・・・えっと、平仮名だよね?」
「そ、そうね。これは『か』かしら?」
「これは『た』?・・・こっちから読むのよね?」
「これは日本語か?」
「親父・・・そりゃないだろう・・・」

「みなしゃん!ここがはじめで、ここがおわりでしゅ!」

いや、陽葵・・・お前が溢したホワイトチョコで濁点が多すぎんだよ・・・とは言えねぇが、みんなで真剣に読んだら1つの文章が現れた。


「おか」「あち」「ゃま」「おた」「んじ」「ょう」「びあ」「りが」「とう」


「あ、ありがとう?!おめでとうじゃなくて?」
「あい!母ちゃまがいないとひまがいなかったでしゅ。だからありがとうでしゅ!」

「あはは!そうなんだ?でもお父様もいないと陽葵はいなかったのよ?」
「いいんでしゅ!ひまはありがとうって言いたかったんだもん!」

「陽葵の気持ちなんだ?ありがとう~!!母様、すっごく嬉しいよ~!」
「あい!ひまもうれしいでしゅ!おめでとうでしゅ、母ちゃま!」


つくしは椅子の上の陽葵を抱き締めて大泣きだった。
それを見て志乃さんも親父もお袋も大泣き。みんなが泣き止むまで誕生日会が出来ないほどだった。

そしてケーキカットして陽葵の字のプレートもみんなに1つずつ・・・俺に来たのは「とう」だった。
店からは避けたフルーツを小さなケーキの上に全部乗っけた物が夕方届いてて、そいつは明日、つくしの腹ん中に入るらしい。



その日の夜、当然つくしは俺の腕の中。俺からの特別なプレゼントでも陽葵には勝てなかったようだ。
意識を飛ばしたくせに譫言のように言ったのは・・・


「陽葵・・・ありがと・・・」











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2018/12/29 (Sat) 15:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは🎵

meimei様 こんばんは!

コメントありがとうございます。
意外とお好きなのね?ははは!私が苦手なので上手く書けませんけどね💦

「お誕生日ありがとう」は私の子供の実話です。
中学になるまでずっと「ありがとう」で手紙をもらいました(笑)

今話すと本人は覚えてないそうですけどね・・・。
それを思い出したので書いてみました。


今度はどんな陽葵ちゃんに会えるかしら?待っててくださいね~!

2018/12/29 (Sat) 22:42 | EDIT | REPLY |   

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