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plumeria

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翌日、いつも通りに目が覚めたけど、昨日の出来事であまり寝られなかったせいなのか少しだけ頭痛があった。
でもお腹の張りが治まっていたから朝の掃除に行こうと思い、また従業員が集まってる場所に行って昨日の事をお詫びした。

「昨日も同じ事聞いたわよ。仕方ないよ、こればっかりは。今日も動くなら気をつけるのよ?」
「でももうそろそろ仕事は無理なんじゃない?」

旅館中のみんなが心配してくれる。
私が動けばそれだけで「怖い」なんて冗談で言われたけど「あともう少しだけ頑張ります!」って無理矢理作った笑顔で返事をした。


「あっ!つくしちゃん、居た!」
「はい?」

旅館の入り口を掃除するために掃除道具を乗せたカートを押して外に出ようとしたら、少し離れた通路を横切った先輩が私を見掛けて顔だけひょいっと覗かせて声を掛けてきた。

「あのね、特別室のお客さんがお呼びだったわよ?あのすっごく格好良い人!」
「あ・・・はーい」

「掃除が終ってからでいいと思うから後で顔だけ出してあげてね~」
「わかりましたぁ!」


特別室のお客さん・・・美作さんがこんな朝から私を呼んでるなんて。
昨日の続きで説得されるんだろうなって、美作さんの話を思い出しながら箒を出して、早く掃除を済ませてしまおうと1度玄関前を掃いた時に、私の後ろで誰かの足音がした。

こんなに朝早くにお客さんが来る予定でもあったのかな・・・でも、今車なんて来なかったし?
不思議に思って振り向いたら私服の吉本さんだった。

私服・・・どうしてスーツじゃないの?だって今日は美作さんと打ち合わせがあるんじゃなかったの?


「おはよう・・・ございます。吉本さん、どうしたんですか?その格好・・・」

「おはよう、牧野さん。実は今日、休みをもらったんだ。美作部長との打ち合わせは僕の先輩に替わってもらってね」

「はぁ・・・そうなんですか。それで、なんでここに来たんですか?美作さんは今からお食事だと思うんですけど・・・?」

「いや、僕が話しをしたいのは牧野さん、あなたなんだ。ごめん・・・急にこんな事言い出すつもりじゃ無かったんだけど、女将さんには後で説明するから僕の車に乗ってもらえないかな」

「え?車に?」


吉本さんの後ろにはいつもの役場の軽自動車じゃなくて少し大きなワンボックスカーがあった。
それが多分この人の自家用車なんだろうけど、掃除中の私がそれに乗って旅館から離れることは出来ない。そんな事はわかりきってるのに彼は何を言ってるんだろう?って、驚きのあまり箒を持ったまま身体が固まった。

でも吉本さんの顔は真剣そのもの・・・本気で私に持ち場を離れろと言ってるの?


「でも、あの・・・吉本さんはお休みでも私は勤務中です。見たらわかるでしょ?誰にも言わずにここを離れることは出来ません」

「だからそれは僕が責任をとるから!なんならこのまま旅館を辞めてもいいじゃない。どうせあと少しで働けなくなるんだから」
「そんなっ!たとえそうだとしても、それまではちゃんと働きたいって言ってるじゃないですか!」

「僕の気持ちをもう1度話したいんだ!でも美作部長がいたら話しすらさせてもらえない・・・僕は本気だって言ったでしょう?!」
「それもお断りしたはずです!お気持ちは・・・嬉しいけど、私には出来ないんです!」

「もっと将来の事を考えたら気持ちも変わるって!そのための話合いなんだから!」
「無茶言わないで!気持ちは変わらないって・・・きゃあっ!」

「ごめん、牧野さん!」

吉本さんは私の手から箒を取り上げてその辺に投げ捨てて、背中を強引に押して自分の車まで私を連れて行った。
急な動きには対応なんて出来なくてお腹を庇うようにして抵抗したけど、いくら小柄でも吉本さんは男性だもの、力で敵う訳はない!

驚きすぎて声も出なかったけど、車のドアが開けられてそこに押し込められそうになった時、先輩の美紀さんの姿が見えた!


「えっ・・・ちょっと、牧野さん?」

「み、美紀さんっ、助けてっ・・・!!」
「心配しないでください!少し話したらお返しします!女将さんにそう伝えてください!」

「はぁ?、ちょ、ちょっと!誰か、誰かぁーっ!!」


慌てて美紀さんは旅館の中に向かって大声を出したけど、その時にはもう吉本さんの車は発進して、旅館の前を猛スピードで出ていった!
何が起きたのか全然わからない・・・!
どうして私はこんな車に乗せられて旅館から離れていくの?・・・もし、もし今具合が悪くなったら・・・!!


「いやあぁーっ!吉本さん、帰してください!困ります!」
「2人だけで話しがしたいんだ!誰にも邪魔されないところで!」

「そんな事しても私の気持ちは変わりません!吉本さん、お願いだから旅館に戻って!」
「美作部長は本当は牧野さんの事が好きなんじゃないの?だからあんなに必死になってるんだろう?!」


「・・・はっ?なんでそんな事・・・そんな事あるわけないじゃないですか!あの人には奥さんが居るんだから!」


今まで見たこともない吉本さんの怖い顔・・・そして考えたこともないそのひと言。
それまでバクバクと音を立てていた私の心臓が急にシーンと静かになった。



****************



<sideあきら>

牧野ともう1度話そうと思って部屋に呼んだけれど、もしかしたら話しをすることを恐れて来ないかもしれない。そんな気がして、自分から行ってみようかと身支度を整えていたら廊下からドタバタと足音が聞こえた。
牧野があんなに走れる訳がない・・・何事かと思って部屋の入り口に顔を向けたら、女将が「失礼します!」と大声をあげて飛び込んで来た。

「何があったんだ?女将さん、何をそんなに慌てて・・・牧野に何かあったのか?!」
「おきゃ、お客様、申し訳ございません!!あの、つくし・・・牧野さんが・・・牧野さんが!」

「落ち着いて!牧野がどうしたんだ?まさか出産が始まったのか?」
「いえ!そうではありません・・・あの、あの・・・や、役場の吉本さんが牧野さんをっ・・・」

「吉本・・・?彼がどうしたの?」
「吉本さんが牧野さんを自分の車に乗せて何処かに連れて行ってしまったんですっ!!」


女将の言葉に驚いて、俺にしがみつくように崩れ落ちた彼女の背中を支えた。

吉本が牧野を車で・・・?
牧野にプロポーズして断わられたあいつが・・・あんな腹を抱えてる牧野を何処かに連れて行っただと?!

「女将!それはいつだ!」
「た、たった今です!牧野さんは朝早くに入り口の掃除をするのが日課なんです!それを吉本さんも知ってます・・・だから、その時間を狙ったんだと思います。こんな時間に役場は開いてないんですもの、それに見た者が吉本さんは私服だったと言っておりましたから・・・」

「俺が頼んだ伝言は牧野に伝えなかったのか?」
「いえ!それを伝えて掃除が終わったらこちらに来る予定だったと思いますわ!」

「・・・くそっ!!」


これが東京なら美作のシステムを使っての捜索も可能なのに、こんな地方では動かせるものが何1つ無かった。
唐津に待機させているのは美作商事の社の人間だけで、ここにボディガードなんて連れて来ていない。女将から牧野のスマホの番号は聞いたが勤務中で手元に持っていないだろうと言われた。

案の定コール音は牧野の部屋から。
吉本から連絡があるまで待つしか無い。


この時点でも俺は迷った。
総二郎にこの事を伝えるべきなのか、そうじゃないのか。

スマホで総二郎の名前だけ表示させてはいたが、そこを押すことが出来ずに旅館のロビーで立ち竦んでいた。




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2019/01/09 (Wed) 15:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様 こんにちは!

急に現れたと思ったら!!(爆)
あっはは!大事件発生ーーっ!!

あきらーーーっ!!考え込むなーーっ!!って感じですか?(笑)


やっぱ、あきつくに変えちゃう?(笑)

2019/01/09 (Wed) 17:09 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/09 (Wed) 21:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様 こんにちは。

お久しぶりです。ご訪問&コメントありがとうございます。

ややこしくて申し訳ありません。
なかなか厳しいご意見💦そう言われるとちょっと残念ではありますが・・・。

受け取り方は読者様にお任せしますが、私としてはそのようなつもりで書いてはおりません。
ごめんなさい、うまくお返事できませんが、今回のお話は凄くシリアスだと申し上げております。
故に読者様のイメージの総二郎でもあきらでもつくしでもないかもしれません。

それを納得いただいた上でお読みいただき、合わないと思われましたらスルーして下さい。

宜しくお願い致します。

2019/01/10 (Thu) 10:10 | EDIT | REPLY |   

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