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plumeria

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弓弦が産まれて3ヶ月、つくしはすっかり西門の仕事に復帰して、今は年末行事で大忙しだった。

ふっくらしていた身体も元に戻って俺としては少々寂しかったりする。
この時ばかりはちょっとだけ大きくなった胸も弓弦が先だと言われて、俺は息子の後回し・・・まぁ、それでも構わねぇけど。

敏感なこの時期は反応もいつもより面白いしな・・・って茶室で道具の手入れをしながらニヤついていた・・・らしい。

「・・・父ちゃま、何がそんなにおかしいんでしゅか?」
「えっ?!・・・・・・あぁ、陽葵か、驚いた」

「すっごく笑っていまちたよ?ほっぺたがこんな風にあがってまちたもん!」
「・・・陽葵、誰にも言うなよ?お父様が茶碗見ながら笑ってたって」

「あい!ひま、だれにもいいましぇん!」
「言いませんだろ?」

「い・い・ま・しぇ・ん!」
「・・・ぷっ!」

お姉ちゃんになったって言っても、その舌っ足らずはなかなか治んねぇなって笑いが出る。
だけどこれもこの時期だけの可愛らしいものだから無理矢理矯正しようなんて思わない。そのうち言えるようになるんだし、そうなったらもう聞けないんだから。


「それはそうとどうしたんだ?陽葵は今、習字の練習だっただろ?平仮名全部書けるようになったか?」
「あい!ひらがな、ぜんぶ書けましゅよ。お習字はね・・・えっと、もう終わりまちた」

・・・逃げてきたな?こいつ、ジッとすることが出来ねぇからな。


「そんなことより父ちゃま!今日はなんの日か知ってましゅよね?」

「あぁ、勿論。母様の誕生日だけど?夜には誕生会をしてやろうな、陽葵」
「それだけじゃダメでちょ!プレゼントがないといけましぇん!父ちゃま、何をあげるんでしゅか?」

「俺か?俺は・・・」

最高に熱い夜を贈るつもりだけど、それを言ったら陽葵のことだから家に火をつけると言い出すかもしれねぇし。迂闊に変な事を話して親父達に言い触らされても困る。
どうしようかと悩んでいたら・・・どうせ取りに行くんだからいいかと思ってケーキの話を持ち出した。


「父様は特別なケーキを頼んでるんだ。後で取りに行かなきゃいけないんだけど、陽葵も一緒に行くか?」
「ケーキでしゅか?」

「そう、母様の名前を入れてもらったケーキで、そろそろ出来てるはずだけど」
「それ!ひまが取りに行く!」

「はっ?お前が?」


陽葵はどうしても今から1人で取りに行くと言い張り俺を困らせた。
つくしは年末の家の事と弓弦の世話で大忙し・・・今も何処で何してるんだからさっぱりわかんねぇ。
それに俺はもう少ししたら来客の予定があって動けない。誰かについて行ってもらえと言えば「もうお姉ちゃんでしゅから!」を繰り返すし。

ここは志乃さんに頼むか、と呼んでもらったけどそれも断固拒否。
この頑固な部分と自信過剰なのは誰に似たんだ?つくし・・・いや、俺か?


「陽葵、いくらお前の頼みでも1人じゃ屋敷から出せないぞ?」
「行けましゅ!ケーキ屋さんはひま、知ってるもん!」

「陽葵様、そういう問題じゃございませんのよ?途中で何があるかわかりませんからお1人でのお出掛けはまだ無理ですよ?」
「そんなことないでしゅ!ひまは母ちゃまのケーキを取りに1人で行きましゅ!」

「我儘言うなって!それにお前が1人で持てるような大きさじゃねぇぞ?丸いヤツじゃなくて四角くてデカいんだ。もう少ししたら父様も手が空くから」
「いやでしゅ!今から行くんでしゅ!」

子供相手に腕組みする俺。そんな俺と同じポーズで仁王立ちする陽葵・・・そしてハラハラする志乃さん。

「どうしても行きたいのか?」
「ひまは行きましゅよ」

「父様は怒ってるんだぞ?」
「ひまも怒ってましゅ」

「・・・なんで陽葵が怒るんだ?」
「父ちゃまが怒るからでしゅ」

「・・・・・・」
「そんなお顔にはひま、負けましぇんよ」


・・・仕方ねぇ。これも子供の成長ってヤツ?母親のために何でもいいから1人でしたいって事か?
ちょっとズレてるとは思うんだけど。
志乃さんに目配せして軽く頷いたら「はぁっ・・・」と大きな溜息1つ。

陽葵と目線を同じにするために俺は跪いた。
そして陽葵の小さな肩に手を置いて頑張って笑顔を作り、その目を見ながら話をした。


「わかった。じゃあ陽葵にその役目、頼むよ。でもな、よく聞けよ?外に出たら知らない人でも知ってる人でも声を掛けられたら挨拶以外はしちゃダメだぞ?一緒に行こうって言われても断わるんだ。何が起きるかわからないから絶対について行かない。
お金はもう払ってるから受け取るだけでいいんだ。でも重たくて持てなかったら諦めろ。その時はすぐに戻ってこい。出来るか?」

「あい!できましゅ!」

「よし、じゃあ玄関まで一緒に行こうか」
「総二郎様!それは余りにも危険ですわ・・・!」

俺を止める志乃さんに小さい声で「大丈夫だ」って言うと、何か気が付いたように口を押さえた。


勿論、こんな可愛い子をたった1人で使いになんか出せる訳がない。俺がこっそりついて行くに決まってんだろう。
陽葵が靴を履いて準備してる時、志乃さんを手招きして頼み事をした。


「もう少ししたら高田の爺さんが掛け軸の事で俺を訪ねてくるはずだから、古弟子の本田さんにその相手を頼んでくれるか?もしダメなら明日俺が出向くからって伝えてくれ。そしてつくしには何があってもこの事がバレないようにして欲しい。
万が一つくしが陽葵を探したら適当ないいわけ作って気を逸らしてくれる?で、ケーキ屋にもこの件を知らせておいてくれ」

「か、畏まりました。でも、私に出来るかしら・・・」

「玄関回りに近づかなきゃいいだろうから奥の間の掃除とかいいんじゃね?」

「そうですわね・・・陽葵様のためですものね。総二郎様も目を離さないようになさいませ。ケーキ屋さんは近いとは言え大通りまで行くのですからね」

「あぁ、こんなこと誰にも任せられねぇしな。じゃ、行ってくるわ」


陽葵は靴が履けたと意気揚々として門を出て行く。
まずはそれを門の前の守衛が引き止めるが「おちゅかいでしゅ!」のひと言でそこを突破。すぐに俺が来たもんだから慌てて事情を聞いてきた。

「心配すんな。俺が後ろからバレねぇようについて行くから。お前は陽葵が帰ってきた時、姿を見たらすぐに護衛しろ。いいな」

「はっ!畏まりました」


たったこれだけの会話の間も陽葵はズンズン歩いて屋敷の前の道をケーキ屋に向かって行った。
俺は足音を立てないように電柱や民家の壁に隠れながら陽葵を尾行・・・着物姿でこんな事してるのってめっちゃ不審人物だが、そんな事は構っていられない。

見失わないようにバレないように、息をするのも緊張しながら後をついていった。


げっ!正面からドデカい犬っ!どーすんだ、陽葵!

って思ったけど、陽葵はそんな犬が来ても無視して両手を振って前だけ見ていた。
すげぇ度胸・・・子犬すらダメな司に見せてやりたい。

今度はバイクに乗った男が近づいてきて、陽葵に何かを聞いた!マズい・・・もしかして誘拐か!

って思ったけど、お互いに「バイバイ!」って手を振って通り過ぎた。
誰だ?このバイクの男・・・4歳の女に手を出すんじゃねぇよ!と、通り過ぎる時に睨み付けた。

おっ?!次は陽葵の好きなパン屋の前?立ち止まるな、陽葵っ!

って思ったけど、口に指だけ入れて我慢してるらしい。
この店の前だけめっちゃ足が遅い・・・パンの誘惑に負けるな!って心ん中で叫んだら首を振りながら通り過ぎた。

今度は立ち止まって左右を確認・・・ヤバい、右に曲がったらケーキ屋から遠のく!

って思ったけど、出会ったおばさんに何かを聞いて左を指さした。そして両手を前で合わせてお礼を言っていた。
流石俺の子・・・礼儀正しいじゃん。って思ってる間に陽葵は嬉しそうに走り出した!


その先にはケーキ屋がある!
ここまでで俺は既にドキドキし過ぎて疲れまくった・・・。


「いらっしゃいませ~!あら、西門のお嬢様、こんにちは~!」

「あい!母ちゃまのケーキを取りにきまちた!」
「あらぁ!お利口ですこと。少しお待ち下さいねぇ~!」


・・・やれやれ。
でもこれからどうすんだ?陽葵。






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後編は明日の11時です♥
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2018/12/28 (Fri) 17:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは🎵

meimei様 こんばんは!

あはは!ありがとうございます!
総ちゃん、カメラマンさんですか?いやいや、何も持っておりません(笑)

しかも変装もしてないのにねぇ💦
陽葵ちゃん、もう前しか見てないんだと思います。

うちの子・・・確か4歳の時にキャベツ買いに行きました(笑)
心配だったけど「いけるもん!」って確かに言うんですよ。

で、うちの子はビビりじゃなかったのでガンガン走って行ってましたね~。

でも不審者って言葉がニュースで良く出る時代だったので怖くて止めましたが、大きくなってから1度知らない人に声かけられたって言ってましたよ。
それを聞いたときは怖かったですね・・・。

さて、陽葵ちゃんのお帰りは?なにか事件が起きそうですね♥

2018/12/28 (Fri) 18:32 | EDIT | REPLY |   

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