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<宮崎・瀧野瀬邸 瀧野瀬会長>

「お父様!いくら何でも年末ですわ。これ以上つくしの行方がわからないままでは安心して新年も迎えられません。お願いです、警察に届け出る事をお許しください!養子に出したとはいえ私達の娘です。お父様が動かないなら私達で・・・!」

「・・・わかった。確かにもう家を出て随分になるからの。1度きりの連絡じゃが、それ以降何もないというのはつくしが安全に暮らしているからなのか、将又連絡出来る状況ではないのか・・・儂でも判断は出来ん」


千恵子の心配もわからんではないが・・・警察、か。
しかしこれ以上つくしが居ないというのも確かに困る。すべてあの子に任せておったから、今現在何処の通貨がどのように動いておるのか・・・既に儂ではさっぱりじゃ!

五十嵐の倅に言わせれば大きく目減りした取引もあるとかないとか・・・。


千恵子には警察への相談を儂からすると伝え離れに戻したが、さてどうしたものかと自室で頭を抱え込んでいた。こんな事になるならつくし1人に任せるのではなかったわ・・・かと言って外国のサイトとやらを儂が見ても読むことも出来んし・・・。


「はぁ・・・困ったものだ」

「如何されましたか?会長」
「おぉ・・・噂をすれば浩司君か。いやなに、つくしの事じゃよ。あれの両親が警察に届けて捜索させるようにと五月蠅くてな」

いつの間に入って来たのか、儂の後ろから声を掛けてきたのは五十嵐の倅・・・この瀧野瀬の屋敷に自由に出入りさせておるから勝手に儂の部屋まで来おって。

つくしのおかげで五十嵐も潤っておるからそのように機嫌も良かろうがな。しかし、本人が行方不明では祝言も挙げられんから内心は焦っているのだろう。

今までこんなに屋敷に来なかったくせに。
たまにはつくしに会って行けと言えば「そのうちに・・・」で興味も示さんからこのような事になったのじゃ!もっと早めにつくしの元に通わせて、此奴に手を付けさせれば良かったのかもしれん。
頭はいいがそっちはなんと情けない・・・飄々として居るのは父親にそっくりじゃな。

儂が睨んでも知らん顔・・・不貞不貞しいヤツめ・・・!


「確かにお嬢さんの家出にしては少々長いですね。私も婚約者としてとても心配ですが、警察への届け出は年が明けてからでもいいのでは?私はちょうど正月に東京に行くのですが、そこから戻って来たら一緒に捜索に参加させていただきましょう」

「・・・親は年内に届けよ、と言っておるが?」

「年末に警察がウロウロするのも鬱陶しいでしょう、と申し上げたら如何です?子供ではないので何とか上手く生活しておいでだと思いますよ?とても良い頭をお持ちなんですから」

「頭は良いが世間知らず・・・そう知っておるだろうに」


まぁ、いい・・・確かに年の瀬が押し迫ってから面倒な輩が来るのは気が滅入る。ここは年が明けてからにするか。
そして見付かったら本当に祝言を挙げさせるかもう1度考えねばな・・・。

五十嵐の力は欲しいがのぅ・・・。


「それでは会長、良いお年を。東京で土産でも買ってきますよ」
「はっ!こんな老い耄れに気を遣わんでも良いわ。何をしに行くかは知らんがまた来年な・・・」

「はい。それにはつくしさんが必要ですね・・・それでは失礼致します」




******************




命名 梅三郎。

毎度、牧野のネーミングのセンスってものがよくわからない。
どうやら太郎、次郎と来たから三郎らしい。そして桃、菊と来たから梅らしい。

来たばかりの豆柴「梅三郎」は元気よく先輩の大型犬の後を走りまくっていた。


「あっはは!桃太郎っ、待ってぇ~!菊次郎、こっちこっち!梅三郎、頑張れ~!!」
「「ワンワン!!」」 「ワンっ!」


年末休暇に入った日、自分の部屋から窓の外を見ていた。
牧野は今日も北風の中、3匹と一緒に庭の芝生を走り回ってる。ホントに子供みたいな笑顔で、足の速さなんて敵うわけがないのに桃太郎も菊次郎も手加減しちゃって。梅三郎なんて軽くイジメに見えるのは俺だけ?

牧野が転んで大笑いしたらすぐに駆け寄るのが菊次郎。面白そうにその上をジャンプしてまだ遊ぼうと仕掛けるのは桃太郎、そうなってもまだ追いつけない梅三郎。それを眺めながらここに来る前の彼女の事を考えていた。

婚約者・・・一体どんな男だろう。


その時ノックする音が聞こえて、返事をする前に母さんが入って来た。

「類、居るんでしょ?ちょっといいかしら」
「・・・何かあったの?」

「つくしちゃんが庭に居るからちょうどいいと思って」

いつも巫山戯た感じで話しかけてくるのに、まるで社内で上長として質問してるみたいな表情。この家で母さんがそんな顔を見せるなんて珍しかった。
それに牧野が居ないことを確認してって事は彼女に関する事・・・流石に気になってきたのか、と両親の遅い反応に軽く溜息をついた。
それも無理はない・・・家にまで住まわせてるくせに詳しい説明なんてしていないんだから。

窓から視線を外して母さんが座った椅子の前、いつも牧野と座るようにラグの上に直接胡座をかいて座った。


「今度の新年のパーティーにつくしちゃんを同席させるって事なんだけど」
「・・・うん、言いたいことはわかってるよ。牧野の事情ってヤツだよね」

「私達は全然反対じゃないの。見てわかってるでしょうけどつくしちゃんなら楽しくやっていけると思うし、類に欠けている部分を補ってくれてる気がするからね。あなたは私達がどんなに楽しそうに振る舞っても乗ってこなかったけど、つくしちゃんが現れてから変わったわ。その変化には本当に驚いてるのよ」

「・・・ん、自分でもわかってる。不思議と牧野の前では心が弾むから・・・」

背中側から聞こえてくる楽しそうな声・・・それに耳だけ傾けて母さんの言葉の続きを聞いた。


「つくしちゃんの事情ってなんなの?私は彼女が一般家庭のお嬢さんでこんな世界に入ることに躊躇いがあるのかと思っていたけど、そうじゃないわね?食事の仕方や立ち居振る舞いを見てると、完璧じゃないけどちゃんと教育を受けてる部分が見られるわ。それなりの家庭のお嬢さん・・・そうじゃないの?それならちゃんとご両親様にお会いして今後のお話をするべきじゃないかしら。類はそのつもりでここで一緒に暮らしてるんでしょう?」

「牧野の事は真剣だし、将来をキチンと考えてる。母さんの言う通り牧野はある会社の令嬢だよ。だけどその家が複雑で逃げ出してきてるんだ。家出・・・って事になるかな」

「家出?!つくしちゃん、ご両親に黙ってここに住んでるって言うの?」

「・・・そうなるよね。彼女、自分の祖父の家に養子に出されてるんだよ。そのお爺さんが会長らしいけど実際は会社経営者、両親も弟も同じ会社で働いてはいるらしいけど、牧野はそこで特殊な仕事をさせられていて、それが嫌で逃げたんだって。
俺と出会ったのも家出したあと。東京をよく知らなかった彼女を街で助けてからだから」

「よ、よくわからないけど、私達ってご両親から逃げてるお嬢さんを匿ってるのね?」

「・・・そんな感じ?」


まだ不確かな事は母さんには言えなかった。勿論牧野に婚約者がいるって事も。
牧野が家出した時期も、出会ってから初めの頃は嘘をついて恋人のフリをしたことも、話すと一晩中掛かりそうだから全部省いた。それでも複雑でよくわからない牧野の素性と行動に、母さんは眉間に皺を寄せまくって悩んでた。
「それ以上皺が増えると父さんが泣くよ?」って言うと、慌てて眉を元に戻してたけど。


「それじゃあ新年のパーティーではどのように説明したらいいかしら。あなたの横に立ってるだけで注目の的だと思うのよね。そこには花沢の関係者しか来ないでしょう?それこそ花沢グループの後継者の妻になる人だと思われるでしょうから色々と聞かれると思うわ」

「うん・・・わかってる。正式に公表するまではシークレットに出来ないかな。花沢に迎えるためにはそっちの家の問題も解決しないとって牧野にも話してるんだ。俺としてはどんな難問を突きつけられても勝つ自信があるって伝えてるんだけど」

「きゃああぁーっ!類ったらそんな格好いいこと言ったの!?パパだって言ったことないわよ?!」


「・・・言うでしょ、本気なんだから」


やっぱり俺で遊んでるよね?って母さんを見たら心配はしてるようだが確かに嬉しそうだった。
俺と同じように窓の外から聞こえる声にクスクス笑って「この家が賑やかになったわね」、だって。


「牧野も自分の家の事でまだ悩んでいることがあって、心の準備が出来たら俺に相談するって言ってくれてるんだ。それに年が明けたら1度実家で話し合いたいって考えてるみたい。
それが終わるまでもう少し待ってやって?ああやって笑ってるけど、苦しんでる部分もあるみたいだからさ」

「わかったわ。じゃ、パーティーでは何を聞かれても『そのうちに』って事で濁しておきましょう。それでもあなた達が本気なら、うちの規模も肌で感じて欲しいから出席にはしましょうね。ドレスの準備、類がしなさいよ?」

「・・・・・・忘れてた」
「馬鹿じゃないの?ホントに本気なの?」


そうして母さんが俺の部屋から出て行こうとした時、タイミングがいいのか悪いのか泥だらけの牧野が汗までかいて戻って来た。そして母さんに驚いて、汚れたスカートを捲り上げて飛び跳ねながらバスルームへと走って行った・・・。


「類、ホントに何か悩んでるの?つくしちゃん・・・」
「う、うん・・・悩んでるんだよ、きっと」






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2019/01/11 (Fri) 06:56 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/11 (Fri) 08:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

あっはは!そうなんです・・・洋風な名前じゃなかった(笑)
花沢桃太郎、花沢菊次郎、牧野梅三郎・・・フルネームで書いたらすっごいお爺さんみたい💦

もうすぐ嵐は始まる予感・・・でも、こっちは事件も比較的明るく処理していきますのでいきなりシリアスにはなりません。
と・・・思う(笑)


えへへ!お気遣いいただきましてありがとうございます。
真夜中に明るく、昼間にド暗く・・・なんか変な気もしますが、両方可愛い作品ですので頑張ります♡
どうもありがとうございました。とても嬉しかったです♥

2019/01/11 (Fri) 11:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様 こんにちは!

あっはは!ダメ?可愛いでしょ?
桜はねぇ・・・付けにくかったので色々考えたら梅しかなかったんです。
順番は四郎じゃないですか?

いやいや、もう出ないって!動物は「花沢城」だけで充分です・・・(笑)

そうそう!実は浩司君がいたんですよ。
まぁこっちはチャッチャッと片付けて・・・あれ?そしたら終わりじゃないですか?
久しぶりの100話未満ですかねっ!!


って事は・・・また考えなきゃ(笑)

2019/01/11 (Fri) 12:03 | EDIT | REPLY |   

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