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大晦日の夜、類とM神宮に初詣に行くことにした。
振袖を着てみたかったけど加代さんにも執事さんにも止められた。「東京の初詣を甘くみてはいけません!」・・・どうやら凄い参拝者の数らしくて、迷子にならないかとそればかりを心配してる。

「子供じゃないんですから大丈夫ですよ。類がいれば目印になりますから」
「どういう意味さ・・・」

「だって類が目立つでしょ?少しぐらい人が多くても類なら見つけられるもん」

「それだと宜しいのですが類様を頼ってはいけません。そのような人混みに慣れていらっしゃらないのであまりお役には立たないと思います。それより勝手に動いておみくじなど引かれませんように。屋台も多く出ておりますけどお腹が空いたからって1人で行ってはいけません。とにかく類様とはぐれないように無事にお戻りくださいね?」

「加代・・・役に立たないって酷くない?」
「私、そんなに自由な人間に見えます?」


それでも2人揃って不安顔・・・仕方なく目立つようにって髪をポニーテールにして赤いリボンをつけられた。この方が子供に見えるんじゃないの?って思ったけど探せなくなると困るからって。
重ね着した上にコートとマフラー、ブーツにカイロにと装備も万全にして夜の11時、目的地に向かった。



**



「・・・・・・・・・なに、これ」
「だから初詣の参拝客。牧野、想像してたのと違うんでしょ?」

渋滞が酷かったから神宮から少し離れた所で車を降りて歩いてきたのに、そこに近づくにつれゾロゾロと人が集まってきて全然進まなくなった。
前も後ろも右も左も人だらけ・・・背の高い類はまだ息が出来そうだけど、私は既に人の頭や背中に押されて息苦しいんだけど!

「うそっ!社員食堂の12時半より凄くない?こんなに人が来るの?!」
「何と比べてたのさ。ネットであれだけ見てたのにどのぐらいの人が集まるかの数字は見なかったの?今から午前3時ぐらいまでにもっと集まってくるんだよ。諦めて帰る?」

「・・・やだっ!」
「はぁ・・・」


私達が歩いているのは1番混むと予想されてる正門。
他の入り口の方が空いてるからって運転手さんにも言われたけど、ここはやっぱり正門からでしょ!って言ったのは私。
そのせいでとんでもない人混みに邪魔されて、進んでいるのか足踏みしてるのかさっぱりわかんなかった。

類はそんな中でも私と手を繋いでくれてるから迷子になる気はしない。それよりも色んな人が類を見て立ち止まる方が流れを止めてる原因では?って事が気になった。
「えっ!芸能人?モデル?」なんて声が聞こえる。本人はそんな事言われてるなんて思わないから眠たそうに目を擦ってたけど。


本当に凄いなぁって・・・宮崎の八幡宮なんて参道を走っても誰ともぶつからずに行けたのに、って自分の田舎の事を思い出していた。

とうとうお爺様やお父様達に何も連絡せずにお正月になっちゃった。
これってやっぱりイケナイよね・・・いくら何でもこの現状を話して、私を本当の意味で解放してもらわなきゃ・・・。

そして婚約も解消してもらって類の事を話して、彼を宮崎に連れて行かなきゃ・・・だよね。

それまでにお爺様に私の疑問をぶつけて、不正を行っていたなら止めさせて、類には気が付かれないようにしなくちゃ。
お正月の行事が落ち着いたら1度思い切って宮崎に帰ろう・・・会社には少しだけ休暇をもらって。


「牧野、なにブツブツ言ってんの?気を緩めないでよ?迷子になるから」
「・・・うん」

「まさかお腹空いたとか言わないよね?向こうに屋台が見えるけど行くんなら帰りだからね?」
「・・・わかった」

「ねぇ、歩きながら寝てないよね?俺、こんな中でおんぶとか出来ないよ?・・・牧野?」
「・・・うん、知ってる」

類が何かを話しかけてるけど、私の頭の中は今後のスケジュールでいっぱいになってしまった。
いつのタイミングで何から初めて、誰にどう言えばいいのか・・・歩きながらでザワザワした人混みだから考えが纏まらない。類が言ってたみたいに自分の手の力が無くなって、スルリと彼の手から外れた時、後ろの方から凄い声が聞こえてきた!

「そっちが押してきやがったんだろうが!痛ぇっつってんだよっ!!」
「馬鹿言うな!そっちの足が俺の靴を踏んだんだよっ!酒くせぇな、酔っ払いは帰れ!!」
「きゃああぁーっ!ちょっと押さないでっ!」
「止めてよ、子供が居るんだからっ!」

「喧しいっ!汚ぇ手で触んなっ!!」
「なんだと、コラァ!!」


こんな場所なのに喧嘩?そう思った時に類と私の間にドーッと人が傾れ込んできて、声を出す間もなく私達は離れてしまった!
類の髪の毛だと思う色が見えたかと思うと消え、後ろから引っ張られたり横から押されたりして、自分の意思とは関係なく人混みに流されて参道の端っこに行ってしまった。

「類ーっ!類、何処に行ったの?るーいーっ!!」

大声で叫んだけど近くで殴り合いを始めた人とそれを止めようとする人の声で私の声なんて掻き消されてしまう。
その時誰かに腕をガシッと掴まれて、びっくりしてひっくり返りそうになりながらその人の顔を見上げたら・・・笹本さん?!


「うわっ!びっくりした、笹本さん?ここに来てたんですか?」

「うん、専務が居るなってのは気が付いてたんだけど、牧野さんは一緒に居るとは思ったけど小っさいから見えなくて。
ホント驚くよね、こんな所で喧嘩なんて初めて見たよ。で、この騒ぎで俺も流されちゃって、気が付いたら今度は牧野さんが目の前に居たって訳。専務は?」

「それが、類の手を離してしまったからわかんなくなって・・・反対側に行ったと思うんだけど・・・」

「とにかくこの騒動が収まらないと動くと逆に流されちゃうから。少し外れた所で専務が見つけてくれるのを待とうか」

「・・・はい」


さっきまで類が繋いでくれていた手を今は笹本さんが持ってる・・・それに驚いてパッと手を離したら、笹本さんの方が驚いて顔が真っ赤になってる。
ほんの少し人の流れから外れて参道の端、こんな場所で立ち止まるのは良くないんだろうけど、進みたい人に道を譲って2人で立っていた。


「専務、何処に行ったんだろうね」
「はぁ、また怒られちゃう・・・私がぼんやりして手を離したから」

「ぼんやり?何か考え事してたの?」
「・・・こんな時に考えることじゃないんですけど、つい・・・」

「難しいことなの?」
「・・・えぇ、自分の家のこと。私の両親にも類の話をしてないし、花沢家にも自分の実家の事を詳しく話せてないんです。
色々複雑な家だからこれから先、何をどうしたらいいんだろうって考えていたらぼーっとしちゃって。新しい年になるんだし解決させたいんだけど・・・なんて!あはは!」

つい、笹本さんだからそんな風に話したけど、それ以上は言えなくて誤魔化した。
この人も瀧野瀬の事なんて知らないし、誰にも相談できないし・・・笑ってこの場をやり過ごそうとしたけど、笹本さんの方が真面目な顔をしていた。


「専務にも相談しないの?」

「類には簡単に話してますけど詳しいことまでは・・・自分でどうにかしなくちゃいけないって思うから」

「そうかな・・・全部話して解決に力を貸してもらえばいいのに。牧野さんのご実家の問題は知らないけど、花沢家に任せて説得・・・になるのかな?そうしてもらえば逆らう家なんてないと思うけどな。それだけの力がある企業でしょ?」

「花沢家の・・・力?利用するの?」

「正しく利用するのなら専務は反対しないと思うんだけどな。仮に牧野さんの実家が困っているなら助けてもらえるだろうし、道を外した行為があるならそれを止めてくれると思うよ。それも世間にはバレない方法でね。
甘えてみたら?専務、多分そうして欲しいって思ってるんじゃない?恋人の抱えてる問題なら自分の事より必死になってくれるよ。きっとね・・・」


自分1人で解決しなくていいって事?
もし・・・私が法に触れる行為をしていたとしても類はそれを許してくれる?

そしてお爺様を諫めてくれる?瀧野瀬が不法行為の上で経営を維持していたらアドバイスしてくれる?


参道で喧嘩をしていた人達は係員が駆けつけて何処かに連れて行かれて騒ぎは収まった。
また人は神殿に向かって流れ出し、その中からあの髪の色が見えた!

「類・・・類!!こっちーっ!」

ぴょんぴょん跳びはねたら赤いリボンが見えたみたい!私を見つけると怖い顔して突進してきた!
いや、そんなに突っ込んできたら歩いてる人を薙ぎ倒しちゃうんじゃないの?ってヒヤヒヤしながらその光景を見ていた。笹本さんも「怒られるね・・・」なんてニヤリ。


「牧野!もうっ、何処に行っちゃったのさ!すっごく探したんだから!」

「ごめんなさい、あんまり人が凄いから酔ったみたいになって・・・手が緩んじゃった」
「はぁ、怖かった・・・あんたが攫われたのかと思って」

「うわっ、類ったら・・・あの!」
「ダメ、許さない・・・あれだけ離れないでって言ったのに」


いや、抱き締められるのはいいんだけど、そこに笹本さんが居るんだけど?
目だけチラッと横を見たら笹本さんがさっきより赤い顔して私達を見てる。しかも周りの人達からも軽く悲鳴のような溜息のような声も・・・恥ずかしくて類のコートに顔を埋めたら今度は私達の周りに人集りが出来て渋滞させてしまった。


「・・・あれ?なんで笹本がいるの?」
「私を助けてくれたのが笹本さんなの・・・」

「・・・申し訳ありません。こんな所にまで現れて・・・」





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2019/01/13 (Sun) 00:15 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/13 (Sun) 09:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様 こんにちは。

えっ!そんな・・・ちゃんとお口を拭いて下さいね(笑)
イケメンの旦那さんが見てますよ?(笑)

あはは!類君、居ませんでした?おかしいなぁ・・・行ったらしいですけどねぇ💦

私は喪中だったので今年は初詣に行かなかったのですが、行っても若い人なんて居ませんし混雑もありません(笑)
お宮に行って出るまでに10分あれば大丈夫!!
ついでに毎年鶏卵焼買ってました♥←意外と好き。正月しか食べないし♡

類君とだったら・・・混雑して時間が掛かった方がいいですねっ♡

2019/01/13 (Sun) 15:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

お邪魔虫笹本!はい、今から再び類君のモヤモヤが始まるかも?(笑)
でも、良い人の設定なんですよ、笹本さん(笑)

ま、笹本さんはつくしちゃんが好きなんでしょうけど♡無茶はしない人ですのでご安心を!
あんまり類君にヤキモチ焼かせると、初詣後が怖いですよね・・・💦

初詣、後半、お楽しみに♡

2019/01/13 (Sun) 15:30 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/13 (Sun) 19:34 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/13 (Sun) 20:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは!

ホントによく行きましたよね~(笑)私には想像できないんだけどすごい人なんでしょうね!
私は絶対に行けません・・・人混み、ダメなんですよね💦

人に酔うって言うか、息がしにくくて。
だからテレビで観て「凄いなぁ」って感心します(笑)

笹本さん・・・自覚してますよね(笑)
してるんですけど・・・って感じです、ふふふ、イライラ類君で楽しんでください♡

2019/01/13 (Sun) 22:24 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さゆ様、こんばんは!

あっはは!忘れませんよっ♡
いいじゃないですか!

うちの兄と一緒ですね(笑)うちの兄は12月に船を譲ってもらって、今度から船で沖に行くらしいです(笑)
釣った魚は実家に放置するのに・・・。

12月には(船ではありませんが)小アジを200匹ぐらい釣って帰って母が泣いてました。あはは!

あっ!喪中の件は判りませんよ?こっちの風習かもしれません。お気になさらずに♡
それと、うちの類君ね?ちょっと待ってくださいね♡


『さゆ、風邪大丈夫?色々あったの?そっか・・・うん、俺も色々あるよ。でも寝たら忘れるから。
それとおみくじよりさ・・・俺のキスの方が良くない?今度こっそりうちにおいで?牧野に見付からないように・・・ね?
いつものお礼・・・待ってるからね』 by類

2019/01/13 (Sun) 22:35 | EDIT | REPLY |   

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