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田村を連れて城下に視察に行った帰り道。
馬車の窓から外を見ていたら、1ヶ月前に1羽の傷ついた鶴を見つけた場所に差し掛かった。


「……そう言えばあの鶴どうなったんだろうね」
「あぁ、この辺りでございましたね」

「そろそろ北に帰る頃じゃないの?」
「鶴という鳥は2月頃から帰り支度を初めて、遅くても3月には飛び立つそうでございますから」

「だよね……まだこの辺りにいたら夏はどうするんだろう」
「つくし様が保護されるのでは?」


「……やめてよ!!想像しちゃうじゃない!」
「申し訳ございませんッ💦」

でもホントにどうしたんだろう。
あれ以来起こる怪奇現象の事もあるし、つくしも心配してるんだよね。

もう1回でいいから無事な姿を見たら安心するのにな……。
そんな事を考えながら馬車は城の中に入って行った。



~1ヶ月前・視察の帰り道~


「類様、城下の街々は穏やかでございましたな。これも国王であらせられる類様のおかげ。
国民も満足そうでございましたねぇ。相変わらず類様の人気も高くてわたくし、安心致しました」

「そお?まぁ…城内は大変な事になってるけどね」
「そ、それはつくし様が愛情深い故の事。賑やかで良いと思われたらいかがでございましょう?」

「……八子と潤も居るしね」
「あの子達は大人しゅうございます!あれから夜のお邪魔もしておりませんし!」


ハムスターの事となると必死だよね?田村……。
なんて笑いながら馬車に揺られていたら、窓の外に白い物体が倒れているのを見つけた。

「……馬車を止めて!」
「類様?如何なさいましたか?」

「何か居る……なんだろ?見てくる!」
「お供致します!」


何故かこの瞬間、自分がつくしに似てる気がしたんだけど。

急いで馬車を降りて道端に倒れている物に近づいてみたら……鶴?!
羽に少し血がついてる……何かで怪我して飛べなくなったのか?

この時期は鶴が北に帰り始める頃だし、もしかしたら仲間はもう飛び立ったのかもしれない。
1羽はぐれてここに舞い降りてきたのか……?

でも、このままにしておくと野生動物にやられるかもしれない。

これ、無視しちゃ絶対につくしに怒られるよね?
田村も従者も見てるから、放置したらバレる可能性はあるよね?


ど、どうしよう……。

クワァーークワァーー……


「随分と弱っておりますな。類様……ここはやはり……」
「見なかったことにする?」
「いえ、誰もそのような事は申しておりません!手当をしなくては、と言う意味です!」

「だよね……」

田村と2人掛かりで鶴を抱えて馬車に乗せ、その子に膝枕させてやって城に向かった。



「類!!どうしたの、その子!」
「城下から帰る途中で怪我してるのを見つけてね。
放っておけないからすぐに馬車に運んだんだよ。

ねぇ、田村」


「……さようでございます。類様は少しも悩まれずに馬車にお乗せになりました」

「流石だわ!類……うんうん、ホントに類って優しいよね!
こうしちゃいられないわ!すぐに手当しなくちゃ!」


俺を出迎えてくれたつくしは、案の定馬車の中の鶴の方が気になったみたい。

少し後ろで睨んでる田村の事は無視。
俺も急いでつくしの後を追って城の中に入った。


***


「骨折箇所は無し、怪我は自然界にいれば何があるか判りませんから…、ただ人間に傷付けられたものではありません」
「大丈夫、直ぐ良くなりますよ」

「良かった……」

身体を固くして、保護した鶴の診察の様子を見ていたつくしの肩の力が抜けたのが判った。

─本当に、優しいんだよね…

「つくしちゃん、大丈夫よ」
「ありがとうございます。出水(いずみ)先生」
「自然に近い状態で様子をみましょうね」

花沢の獣医師 出水 孝子。
この城に琥珀、桃太郎、菊次郎の三匹が揃った時に、専属 獣医師として来て貰った人物だ。
今では、隣国からの訪問者達の主治医にもなっている。

その後保護した鶴は、3日目、4日目と次第に元気を取り戻した様子だった。
事件が起きたのは、鶴を保護してから一週間経った早朝。
「盛んに羽ばたきの練習をしてるのよ」と、
嬉しそうつくしが話してくれた、
翌日だった。

たった一枚の羽を残して、居なくなっていた。

野犬か何かに襲われたのでは?と取り乱すつくしに、襲われた痕跡は一つも無い、と伝えてくれた出水先生。

つくしの悲しそうな顔は見たく無かったけど、自力で仲間達の所へ帰って行ったのなら、喜ばしい事だ。


「ねぇ、つくし。あの鶴が元気になったのなら、何よりじゃない?」
「……うん…」
「仲間達の所に帰れるくらい回復したって事だよ?」
「そう…なのかな……」

「大丈夫、きっとまた会えるよ」
「……そうだね、今頃 家族に『ただいま』って言ってるかもね」

「だね」
「うん♪」


そして不思議な事が起こり始めたのは、
『あの鶴 元気にしてるのかな?』
『皆と飛んで、遅れたりしてないかな?』

そんな呟きと共に、まだまだ寒さが残る空を見上げるのが日課になりつつある頃だった。


執務室での会議も終わってつくしが待つリビングに向かった。部屋に入ると案の定つくしはソファーに座ってて、その両隣、足元には珀、桃、菊が寛いでた。

「あっ、類!お疲れ様~」

そう言って近づいてくるつくしの表情がどこか変……。どこがって聞かれると説明出来ないんだけど…とにかく変!

「つくし?何かあった?」

聞かなくてもきっとつくしは話してくれるのに待ちきれずにそう口にしてた。

「えっ…あっ…うん……。あのね…」


つくしが言うには城の至る所(主にバルコニー)にタニシがいるらしい。その中でも多いのが俺達の寝室とリビング。
いつの間に置かれたのかリビングの片隅には水槽があってその中にはタニシが蠢いていた。


バルコニーにタニシ?
そんなバカな……。
だってこれって水辺に居るもんじゃないの?


「あっ…あとね、聞こうと思ってたんだけど、お城の池に鯉っていたっけ?」

「静司郎とラスカルが来る池?
あそこに鯉は放してないけど?」


「………そうよね。でもね……あのね」

言うよりも見た方が早いとばかりに俺の手を取ったつくしは歩きだした。


池にはいつも通り静司郎とラスカルがいた。
そう、いつも通り……のはずだった…。

「私もね、今日気付いたの…」


ピチャン…
ピチャン……


水面を跳ねる魚。
池を覗き込めば颯爽と泳ぐ魚達。

何…これ………?
なんで鯉?
しかもこんなにたくさん?

その光景に呆然とつくしを見れば、つくしも同じように俺を見てた。

「………」
「………」

「何か…変だよね?」
「……だね」


バルコニーにタニシ。
離した覚えもないのに池に鯉。

狐につままれたようなこの状況に俺達は言葉もなく、ただそれを見ていた……時だった。


「わん!」
「「わんわん!」」


その声に引き戻されるように振り返ると、珀、桃、菊が尻尾をぶんぶん降りながら近づいてくる。
先頭を意気揚々と走る珀。

あれ?
何か咥えてる?


「珀、何咥えてるの?持ってきて」

「わん!」

珀が咥えていたのは……白い羽。しかもこの羽は最近見たような……?
つくしにも見せると「羽?」って首を捻った。
そして後ろから来た桃と菊は口から何かを吐き出した。今度は…タニシ?


白い羽とタニシ……?


「ねぇ、類。この羽、千ちゃんのじゃない?」
「せんちゃんって誰?」

「この前助けた鶴よ!」
「……名前あったの?」

「うん!鶴は千年って言うから千ちゃん。今付けたの♪」


…………センスがいいのか悪いのかはこの際無視しよう。


兎に角タニシは池に入れて羽はつくしが持って部屋に戻った。
そして田村をリビングに呼んだ。


「何か御用で御座いますか?類様、つくし様」

「あのさ…俺達の部屋のバルコニーに水槽置いたのって田村なの?」
「水槽?いいえ、私はそのようなものは勝手に置いたり致しませんが?」

「え?田村さんじゃないの?ここにね、水槽があってタニシが沢山居るの!」
「タニシ…で、御座いますか?どちらも私は存じ上げませんが?」

「ホントに?」
「嘘では御座いませんっ!流石にタニシは飼ったり致しません!」

「じゃあ……なんで?」
「「………………」」

絶対田村だと思ったのに。
必死に違うと訴えるから、それは信じるとして……また振り出しに戻った。
何でタニシや鯉がこの城の中に居るんだろう?


「タニシと鯉と言えば……鶴の好物では御座いませんか?」
「鶴の?」

「はい。確か鶴はそのようなものを食すはずで御座いますよ?」
「そう言えば千ちゃんに出水先生が小さなお魚あげてたわ」


まさか…………?
助けたお礼に「タニシと鯉」って事じゃないよね?

流石にそれは考えすぎだよね?だってあれは物語だもん。実際に鶴が恩返しなんて……。
そんな馬鹿なこと誰も考えるわけないよね!

「わかった!!」
「どうした、つくし!」

「千ちゃんの恩返しなのよっ!千ちゃん、嬉しかったから自分で水槽持ってきてここに大好きなタニシを置いてったのよ!
そしていつでも自分がここに帰って来られるように池に鯉を入れたんじゃない?

きっと千ちゃん、また来てくれるんだわっ!」



「…………そ、そうかも」
「誠に純真なお方で御座いますね、つくし様」

「でも、それって恩返しなの?俺達タニシ食べないけど」
「きっと自分の好きなものは私達も好きだと思ったんじゃないかしら」

「水槽、背負って来たって言うの?」
「きっと大変だったでしょうね……」


………………そうかな。

田村と目を合わせて「そういう事にしておこうか」って頷いた。



ところがそれだけじゃ終らなかった。
その数日後、今度は田村が慌てて俺達のリビングに駆け込んできた。

「類様!大変で御座います!」
「……どうしたの?闘司郎でも来たの?」

「いえ!今度は門前にLAWSONのゲンコツコロッケがっ!!」
「はぁ?!今度はLAWSONのゲンコツコロッケ?!」

田村が差し出したものを見たら……ホカホカのゲンコツコロッケが10個。
多分揚げたて。

それをつくしと見てキョトンとしてしまった。


「あっ!類……これ!」

つくしが指さしたのはそれが入れてある袋に付いてるタニシ……。
タニシ付きのゲンコツコロッケ?!


「い、如何致しましょう、類様!」
「兎に角これ持ってLAWSONに行かなきゃ。支払わないといけないよね?」

「さようですな。それでは私が行って参りましょう」
「いや、自分で行く」
「私も一緒に行くわ!」

「では3人で参りましょうか」


こうして俺達は城を出て馬車で5分の所にあるLAWSONに向かった。
手にはまだ温かいコロッケ持って。

そして店に着いたら……3人でとあるものを見つけて固まってしまった。


入り口に水槽に入ったタニシと鯉が居る……しかもそれを見て店長らしき人間が頭を抱えていた。
「なんでこんなものがあるんだ?それにコロッケ、何処に行ったんだろう?」なんて声が聞こえた。


「…………」
「…………」
「…………」

「帰ろうか。何も見なかったことにして」
「そうね……千ちゃん、タニシをお金の代わりに置いてったのね」
「それを説明するのに疲れそうですな」


帰りの馬車の中でつくしが思い出したように言った。

「そう言えば出水先生、千ちゃんが怪我したときにLAWSONのゲンコツコロッケ、美味しそうに食べてたわ。
大好物なんだって」


「それでか……」
「納得ですな」



そして俺達が再び城の中に入ろうとした時、窓の向こうに真っ白な鶴が1羽飛んでった。

俺達は「きっと千ちゃんだね」ってニコニコ笑って見送った。


来年は怪我なんかするなよ?
そしてつくしに会いに城においで。

その時にはLAWSONのゲンコツコロッケはタニシじゃ買えないことを教えてあげなきゃ……ね。




おしまい♪


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皆様、こんにちは~!plumeriaでございます。
はい、今日は「日本昔話」の中から「鶴の恩返し」でございました~♡え?違う?

実はこれ、お二人に内緒で書いてまして、前回お話ししたように「花沢城物語・更新日程表」が作られた時に、隠してる物を出せ!と言われてバレた物です(笑)

G 「プルちゃん!書きたい物があったら書き出して!」
P 「・・・はーい」

S 「はっ・・・!」
G 「どうした?」
S 「なに?この鶴って・・・」
G 「はっ?!」

P 「・・・ごめん、書いちゃった💦
出来たら笠地蔵風にアレンジしたらどうかなっ?ははは!」


S 「決して見ないでくださいね、じゃなくて?」
G 「気が付いたら玄関にお届け物がってヤツ?」

まぁ、そこはね(笑)
私よりも大先輩ですから書いたら必ず続けてくださるんですけどね!
そして問題は飛び立った鶴が何を花沢城に持って来るか・・・です。確かに在り来たりのものではつまらない・・・。
なんにする~って話が結構長かった(笑)

P 「ねぇ、鶴がこっそり持って来るものって何がいいと思う?」

私は極普通に野菜とか木の実とか、そういう物を聞いたつもりだったのに

G 「小魚とかじゃない?自分の食べるものが自然だと思うけど」
P 「そっかぁ!」

S 「ゲンコツコロッケ!」
P 「はっ?」
G 「・・・・・・」
S 「ゲンコツコロッケ!!」

こうしてラストにはゲンコツコロッケが登場することになりました。
S様、自分で言っておきながら大爆笑してましたが・・・。


で、これ以外にも3人で盛り上がる盛り上がる💦

「ねぇねぇ、タニシってそのまま置いて行くの?」
「水槽持ってこようか?」
「鶴が水槽まで用意するの?」
「鶴が背負ってくるのよっ!」
「花沢国にはローソンあるんだ!」
「類はローソンで現金かなぁ」
「カードじゃない?花沢カード!」
「カードでゲンコツコロッケ買うの?」

「「「なんでもありよねっ!!」」」

いや~!楽しかったです♡


ではでは、本日のお遊びコーナー!

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タニシって真面目に見たことなかったんですが、可愛いもんですね♡

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って事は、今回ゲンコツコロッケ、10個なので・・・タニシ150個でしょうか。こ、困るわ~💦


それでは、また来週~!!
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2019/03/07 (Thu) 12:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

タニシ女様(だから長いって!!)、 こんにちは。

コメント、ありがとうございました♡

いやね・・・そんな事するから気持ち悪くなるんだと思いますよ?
それにね、その話は3人の間でも出たのよ。

「おかしくない?タニシがバルコニーにそのまま居るの?」
「だよね・・・水槽持って来る?」
「誰が?」
「田村」

初めは田村さんがそこに(何故か)水槽置いたことにしようかと思ったんだけど、それも不自然だからって話になって、
もっと不自然な「鶴に水槽も準備させよう!」ってなったの。

だからね、タニシは水槽に入ってるんです。
そこら辺を動き回ってる訳じゃないの(笑)

勿論、水槽背負ってくる発想もS様ですけど。

今度から検索しちゃダメですよ?(笑)

あっ!あの緑色のタニシは可愛いでしょ?画像もそれにすれば良かったかしら♡


来週も宜しく~!!(爆)

2019/03/07 (Thu) 16:43 | EDIT | REPLY |   

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