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plumeria

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「もうっ!類ったらそんなに恥ずかしいこと言わないでよ!」
「なんで恥ずかしいの?俺、もっと自慢したいけど・・・だってこんなに可愛いのに」

お父様もお母様もそんな私達の会話を聞きながらクスクス笑って、私の事を色んな人に聞かれるから「楽しいわぁ~!」って喜んでいた。

「だってね、類ったらこんなパーティーに出てもニコリとも笑ったことがないし、何処かのお嬢様が近づいてきたら露骨に背中向けて出ていくの。何処かに敵討ちにでも行くの?って顔して話しかけにくいったらなかったのに。
それで毎回喧嘩になっていたんだもの、それが今年は・・・ふふふ、親としては嬉しいわよぉ!」

「確かに言えるな。『専務さんは今日もご機嫌斜めですか?』って、それしか言われたことはないからなぁ」

「はぁ・・・そんなものですか?」
「俺、そんなに嫌な態度出してた?」


出会った頃の類なら想像できるかも。
確かに無表情無感情でどうしようかと思ったもん。人間らしい反応出来ないの?って何度思ったやら。

ちらって類を見上げたら自分の事を指さして「そお?」って聞くから「うん!」って頷いたら眉をハの字に曲げてた。



「伯父さん、伯母さん、お久しぶりです」

そんな会話をしている時にお母様達の後ろから話しかけてきた男性がいた。
2人はその声で振り向いたけど私にはそれが誰か判らなかった。類の横に居たし、丁度お父様に隠れて顔が見えなかったから。

社長じゃなくて「おじさん」って呼んだけど、そんな呼び方をする人って今日の招待客の中にいるのかしら。
それが凄く不思議だったけど、紹介もされないのに覗いて見るのは失礼だろうと思ってわざわざ見なかった。類もその人を見てるみたいだけど反応が薄い・・・誰だろう?って考え込んでるみたいだった。

「あぁ・・・君か。久しぶりだな」
「あら、本当に。ご立派になったわね。類より少し上だから・・・おいくつになったの?」

「ははっ、お忘れになっても仕方ないですよね、今年で28歳になりました」

「随分と業績が良かったようだね。詳しくは知らないが営業部からそのように聞いてるよ」
「ご両親はお元気かしら?もう何年もお会いしてないわね」

「そうですね・・・伯父さん達が九州に来た時が最後ですから20年は経ってますかね?」


九州?今・・・九州って言ったよね?

その言葉にビクッとしたけど九州って言っても広い・・・福岡の可能性が高いし、まさか宮崎だなんて事はないだろう。そうは思っても類の腕を掴む手に力が入った。
「どうした?」って類が言うけど「何でもない・・・」って答えるだけ。その人を見ないようにすればいいかと視線を外した時、その男の人が類に話しかけてきた。


「類君、覚えてるかな?」
「・・・何となく?子供の時だからあんまり覚えてないけど」

お父様とお母様がスッと前を開けたから、その人が私達の真正面に・・・すぐ近くまで歩いてきたみたい。すらっとした足元が私の視界に入ってきた。

「彼女かな?先ほどから遠目で見ていたけど美しい方だね。是非、紹介して欲しいな」
「えぇ。おいで、牧野」

「・・・牧野?」


紹介して欲しいだなんて・・・私はあんまり紹介なんてして欲しくないっての!
なんて言葉は出せるわけもなく、類に言われて1歩前に出てドレスの前で手を合わせて丁寧にお辞儀をした。

「初めまして、牧野つくしと申します」

まだ顔は俯せたまま、名前だけ名乗って頭を下げたら、その人の声が私の名前を呼んだ。



「つくしちゃん、ここで何してるの?」



・・・・・・え?つくしちゃん?
今、つくしちゃんって言った?私の事をつくしちゃんって・・・?


ハッと顔を上げたけど、私はその人の事がよくわからない・・・でも、確かに前に会ったことがあるような・・・?
この人をもっと・・・もっと子供にした感じ?

その人の声でお父様もお母様も類も驚いたように動きが止まった。


「どうして知ってるんだね?浩司君」
「浩司・・・君?」

「まさかお知り合いなの?つくしちゃん、浩司君と何処かでお会いしたことがあるの?」
「知り合いって・・・あの、この人・・・」

「牧野・・・まさか」


小さな声でお父様もお母様も私に質問してきたけど、類は何かに気が付いたみたい。私の顔を見た後で正面に立っている男性に視線を向けた。
その人はニヤリと笑った・・・よく見たら目元が類と似てる?

まさか・・・まさかこの人?
おじさんって何?おばさんって・・・類君、覚えてるかなって何?どうしてそんな会話してるの?


「何処に行ったのかと思ったらこんな所にいたんだね?お爺様もお父様達もとても心配していたよ?それにつくしちゃん、ここでは牧野を名乗ってるの?君の名前は瀧野瀬つくし・・・牧野は昔の姓だろ?」

「・・・瀧野瀬つくし?牧野・・・どういう事?」
「・・・・・・」


「あれ、そう言えば可笑しいよね。なんで類君の隣に居るわけ?君にはちゃんと『五十嵐浩司』って言う婚約者がいるのに。
そうだよね、つくしちゃん・・・君の婚約者は俺だよ?」



*****************



五十嵐浩司が現れて俺達に挨拶をした時、牧野を見て浩司が言った「瀧野瀬」と言う名前。
それを聞いた瞬間、牧野の顔が真っ青になり目を見開いて浩司のことを見ていた。

俺の腕を掴んでいた手の力が抜けてダラリと下に落ち、そこでガタガタと震えてる・・・ドレスで見えないけど支えてる背中からも身体の震えが判るほどだった。
小さく動く唇は「どうして・・・」を繰り返し、逆に浩司の方は嬉しそうな笑顔を牧野に向けていた。


今まで気にもしなかったけど五十嵐物産も本社は宮崎・・・まさか牧野のお爺さんが経営してる会社と取引でもあったのか?


ここに来る前に頻りに名乗るのかって聞いていたのはこのためか?
本当の名前が「瀧野瀬つくし」だから?


「牧野、落ち着いて。詳しく聞きたいからここを出ようか」

「類君、それはないだろう?彼女を連れて行くのなら婚約者の俺を置いて行かないで欲しいな。それに聞きたいのは俺の方だ。どうして類君は人の婚約者をこんな場所でエスコートしてるのかな?ねぇ、伯父さん?」

「いや、それは・・・私達にも何が起きたのかよくわからないが・・・」
「どちらにしてもこの会場での騒ぎは良くないわ。1度ここを出ましょう。類、つくしちゃんを連れて上の部屋に行きなさい」

「伯母さん、だからそれがおかしいんですよ。瀧野瀬つくしは俺の婚約者だって言ってるでしょ?なんならここで大っぴらに発表してもいいんですけど?」


周囲にいる奴等が何事かとザワザワし始めた。
これ以上ここで騒ぎが大きくなってはいけない。だから浩司も含めて上の部屋に移動しようと話した時、牧野が俺の手を振りきって会場の外に逃げ出した!


「牧野・・・?待って、牧野!」
「だめ!・・・来ないで!」

牧野は人混みの中をすり抜けて廊下に向かって走って行った。それを追いかけようとして俺も向きを変えたその時、ワインを運んでいたコンパニオンにぶつかって其処らに居た人達のドレスやスーツを汚してしまった!
「悪い!」とひと言だけ叫んでその場を通り抜けようとしたが、目の前にはあっという間に人集りが出来てしまい真っ直ぐ前に進めない!

「類、お待ちなさい!」と言う母さんの声に1度は振り向いたけど、ニヤッと笑った浩司の顔にムカついてすぐに会場を飛び出た。


廊下に出ても牧野の姿はない。
逃げるとしたら最上階の部屋?それとも・・・まさか外に?

急いでエレベーターに向かったらランプがロビーに着いたことを知らせていた。
ここは3階・・・階段で降りればヒールの牧野には追いつく!そう思って階段を駆け下りてロビーに出たけど牧野の姿は何処にもなかった。

エレベーターを確認したけどもう誰も乗ってはいない。慌ててフロントに聞いたらピンク色のドレスの女性が凄い勢いでエントランスに出て行ったと言われた。


「おい!今ここを出ていったピンク色のドレスの女の子、どっちに行った!」
「は?!あの、その方でしたら出て右側の道に向かって走って行かれました!」

ドアマンの男が言ったようにホテルを出てから右側を見たけど、もうドレスの女性なんて何処にもいなかった。

それでも捜すしかない・・・!


こんな冷え込んだ夜の街にドレスだけで飛び出てどうする気なんだ!
それに俺の元を離れて1人で何処に行く?!あんた、この街の何処にも行き場なんてないんだから!


「牧野ーっ!何処だーっ!・・・戻ってこい、牧野ーっ!!」


タキシードの男が大声出してこんな大通りを走ってる、それを不思議がって誰もが振り返ったり立ち止まったり・・・そいつらにドレスの女性を見なかったかと聞きながら当てもなく走り回っていた。


「くそっ・・・何処まで行ったんだ?こんなに走ってきて居ないなんて・・・もしかして道が違うのか?」


牧野の慣れないヒールに俺が追いつかないはずはない。もうこれ以上先を行っても牧野は居ない。
そう思って振り返ったら、会場のホテルが見えない所まで来ていた。


まさか牧野の婚約者が五十嵐浩司だっただなんて・・・!
もっと早くに問い詰めていればこんな事にはならなかったんだろうかと、大通りの街灯だけが輝く通りを見つめていた。





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2019/01/17 (Thu) 07:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

いつもコメントありがとうございます♥
あはは・・・バレてしまいました💦流石14年も会わないとすぐにはピンときませんよね。

お父様もお母様もキョトン状態だし・・・ヤバいですね💦
つくしちゃんが素直に戻ってくるかどうか。

類君の長い脚でも追いつけなかったつくしちゃん(笑)
さて、何処に行ったやら・・・またまた誰かさんに助けられちゃう?

2019/01/17 (Thu) 16:27 | EDIT | REPLY |   

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