FC2ブログ

plumeria

plumeria

もしかしたら入れ違いで部屋に戻ったかもしれない、そう思って息を切らしながらホテルに戻り、パーティー会場には行かずに部屋に向かった。

そこには父さんと母さん、それに浩司が居て戻って来た俺に3人が同時に顔を向けた。


「類、つくしちゃんは?つくしちゃんは一緒じゃないの?」
「フロントに聞いたら外に飛び出たって言うから捜したけど何処にも居ないんだ。ここにも戻ってないの?」

「戻って来てはおらんな。あれからすぐに私達はここに来たが、彼女らしき姿は見掛けなかったが・・・」
「何処に行ったのかしら。この寒いのにあんなドレス姿でしょ?目立つと思うんだけど・・・」


両親がこれだけ心配していても浩司は何も言わなかった。
自分が婚約者だと言ったクセに、捜しに行くとも、何故もっと捜さなかったのかとも・・・まるで無関心のように思えて腹が立った。

すぐにうちのボディガートを総動員して牧野を捜すことにして、今度は父さんと母さんからの質問攻め・・・これも仕方がないことだった。まだ何も話していなかったのだから。


「類、それでつくしちゃんが牧野じゃないってどういう事?」
「瀧野瀬コーポレーションの令嬢だそうだがそれは何処の会社で、どうやってお前達は知り合ったんだ?私達はつくしちゃんの家のことは拘らないつもりだったから口出ししなかったが、事情というのは婚約者が居たってことなのか?」

「あなたは他の人から・・・浩司君から恋人を奪ったの?そんな男性に育てた覚えはなくてよ?類!」
「話が合わなくないか?お前達はいつからの恋人なんだ?!」


両親の言葉にクスッと笑ったのは浩司・・・その笑い声を聞いて両親も彼の方に向き直った。


「何が可笑しいの?あんた・・・牧野の事、なんとも思ってないのに婚約者面してるんだろ?」

「類君、穏やかじゃないねぇ。それが俺の婚約者を勝手にエスコートした人の言葉?まずは謝ったらどうかな・・・そして彼女を宮崎に帰して欲しいんだけど。会長も随分捜してるんだよ?行き先も言わずに黙って飛び出たんだから」

「そうしないと生きてる意味がないぐらい息苦しかったって牧野は言ってたよ。恋もしてないのに婚約者って人間が居て、そいつと次の春には結婚させられるから逃げたってね。それでもあんた、牧野の婚約者だって威張って言えるの?」


俺達の言葉にまずは詳しく説明を、という両親は俺と浩司に座れと促した。
この部屋にあったソファーには両親、その向かいには浩司が座り、俺は少し離れたベッドの端に座った。

横を見たら牧野のコートがある。これを羽織らずに0度近い気温の中、何処に居るのかと思うと心配で堪らなかった。



「2人のどちらでもいいわ。つくしちゃんの事を話しなさい」

母さんの言葉から始まって、俺と浩司は目を合わせた。だが彼は言葉を出そうとしない・・・だから俺が先に牧野が東京に来てからの話を始めた。

「牧野はまだ俺にも全部話してないんだ。余程言いにくいことがあったみたいで少し待ってくれって言われたばかりだった。
婚約者が居るって事は聞いていたけど名前までは聞いてなかった・・・牧野がなんとも思っていない婚約者なら聞かなくてもいいだろうって思ったから。瀧野瀬って言う名前は俺も今日初めて知ったよ」

「知らなかったの?つくしちゃんが隠していたの?」

「出会った時から牧野だって名乗られたから。確かに九州から運賃しか持たずに出てきたって信じられないことを言ってたよ。それで東京では1日だけ公園で寝たって・・・そしてヤバいバイト話に乗っかって、知らない男から逃げてたところを助けたのが俺。自宅に連れて帰った日・・・あれが牧野との初対面の日だよ」

「じゃあ、恋人だって言って住まわせると言った時には・・・」
「恋人じゃなくて人助けだったの?」


あまり会話のない親子だったけど嘘をついた事なんてなかった。
それはお互いに判っていたから、この「嘘」を告白するのには心が痛んだ。決して悪意があったわけでも欺し続ける気だった訳でもないけど。


「そうなるんだけど、多分すぐに恋が始まってたと思う・・・お互いに確認したのは少し後だけどね」

「後から?じゃ、初めに一緒のお部屋で寝てた時って・・・」

「ホントに何もなかったよ。牧野は自分が落ち着いたら花沢を出ていくって言ってたし、俺もそれまでは恋人のフリして安全を確保してあげようとしただけ。喜んでくれていたみたいだけど父さん達にはそのうち別れたって報告をするだろうって思ってた」

「今はどうなんだ、類!そんな中途半端な気持ちで女性を同室に住まわせるとは!」

「今はそうじゃない。ちゃんと話し合って同じ気持ちだって確かめてる。牧野は花沢に入る決心をしてくれたよ」


大雑把にしか説明してなかったし、妊娠説まで想像してハイテンションだったんだから驚きようも半端なかった。だけど、そのあとに気持ちを確かめ合ったと聞いて2人は顔を見合わせていた。

何よりも俺の変化が2人を恋人だと確信させていたらしい。それに牧野を凄く気に入っていたから嬉しかったのに・・・と、まるで恋が終ったかのように嘆かれた。


「婚約者がこいつだって事は知らなかったけど、教えてくれれば解決のために動く予定だったんだ。俺、別れる気はないから」

「そうなの?でも五十嵐家はその・・・瀧野瀬家とどんな関係なの?浩司君、もし、つくしちゃんとの間に気持ちがないのなら婚約破棄に応じて下さるの?」


母さんが自分の正面に座っている浩司にそう言った。
その時の浩司の顔・・・やっと自分の番かと言いたそうな表情で俺の方をチラッと見た。そしてソファーに凭れ掛かった横柄な態度で脚を組み、何も知らなかった俺達家族を嘲笑うかのように言葉を出した。

「気持ちが無いなんて失礼だなぁ、伯母さん。俺は彼女の事をもう14年間、婚約者として想っていましたよ?ただ忙しいのと人見知りだと聞いていたので遠慮していただけでね」

「・・・人見知り?」
「つくしちゃんが?」

「・・・いや、どうやらそれは大人になって改善されたようですけどね。だからもうそろそろ話を前に進めようとしたらこんな事になったんですよ。まぁ、瀧野瀬の会長が巫山戯て話した事を世間知らずのつくしさんが真に受けたって事でしょうけどね」

「そ、それで・・・五十嵐家とは?」


父さんは黙ったまま・・・流石に自分の弟の家だ。胸中穏やかではないだろう。
それにグループ本社の社長の前でのこの態度には、流石に腹を立てているようだった。かつての弟と姿がダブるのか・・・質問は総て母さんからだった。


「何もご存じないようですからお話ししましょう。瀧野瀬家との事ですが」

勿体振ったような台詞で浩司の話が始まった。


瀧野瀬孝三というのが瀧野瀬コーポレーションの代表者で、牧野の祖父でありながら養父にあたる人物。
その瀧野瀬コーポレーションという会社は西日本を中心に・・・と、言っても関西圏にもまだそこまで進出していない南九州を中心とした建築関係の会社で、その地方では有名らしい。
花沢とは当然取引などはなく、俺達にはその会社の情報なんてものは無かった。

そこの1人娘が瀧野瀬千恵子・・・結婚して牧野千恵子が牧野の母親。
父親は牧野晴男と言い、瀧野瀬の取締役の中には名前と連ねている。姓を除けばここまでは牧野から聞いた話と一致する。


「その千恵子さんと俺の母が同級生なんです。お互いに地元では大きな会社の娘って事で行き来があったようです。それで父が瀧野瀬に出入りするようになって会長と意気投合したわけです。2人共儲け話が好きでしたからね。
年で言えば晴男さんの方が当然近いのですが、決断力も無ければ判断力も無い。大きな商談を纏めるはずが何度も失敗して膨大な損益を出しても、また同じ事を繰り返すような・・・ははっ、こう言っては失礼ですが出来の悪い人なんですよ」

「その方がつくしちゃんのお父様なのね?」

「そうです。で、千恵子さんも取締役に入っておられますが、この人は全く会社経営に携わっていません。元気の良い人ですがこちらも決して頭脳派ではありません。息子の進君を溺愛してましてね、彼が瀧野瀬の跡取りになればと思っているようですが、彼もまた父親似ですから」


「だから牧野と婚約したあんたが瀧野瀬ごと自分のものにしようって訳?」

俺の言葉に再びクスッと笑い、足を組み替えた。
こいつの焦れったい話し方にイライラする。牧野が飛び出てからもうすぐ1時間が経とうとしてるのに!

そんな焦る俺の顔が面白いのか、質問にすぐには答えず両親の表情もどんどん険しくなっていった。




f6881b8d8883b6fc8a9174871b5ec266_t.jpg
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/01/19 (Sat) 09:17 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/01/19 (Sat) 17:14 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/01/19 (Sat) 17:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

ほんとにねぇ💦
このお話では千恵子さんも晴男さんもイマイチなご両親です。

そもそもご両親が真面ならつくしちゃんは家でしませんからね(笑)
そういう意味ではなんと可哀想な環境に育ったのに、明るいつくしちゃんでしょう💦

ははは!これは天性のものでしょうかね?

千恵子さんにも晴男さんにも反省していただかないといけませんね!

2019/01/19 (Sat) 20:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ぱーる様、こんばんは♡

あっはは!纏めたの?そりゃまたご苦労様です!

意外とプチバージョン入れてるでしょ?頑張ってるのよっ!(爆)
たこ焼き・・・あれ?またこれも歴史?
類君の食道火傷事件・・・おかしいなぁ、誰も食べさせてないの?

でもね、このお話はシリアスにはならないから安心して下され。
総ちゃんとダブルでシリアスにしたら、ブログの前に私が倒れる(笑)


そうそう!!よくわかってる~!!
ガンガン打つわよ!ガンガンガンガン!止まらなくてこういう時には仕上がりが超早い!

打ち終わったら「ふぅ~、今日は頑張ったわ♡寝よ」って感じ?



あら・・・どうしたんですか?大丈夫・・・じゃないのね?
よくわからないけど私の最近の好きな言葉を教えてあげよう。

『死ぬこと以外はかすり傷』・・・ダメ?G様もS様も喜んでくれたけど。

正月早々泣くこともあったけど、今日も何とか生きてます。
一緒に頑張ろうね!!


はっ!そうだわ・・・2年目が終る(笑)
ヤバいっ!!総ちゃんのHoldの話を書くので夢中になって忘れていた💦

覚えててくれてありがとう~♡(そろそろ隠居かな💦)

2019/01/19 (Sat) 20:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは!

とうとう出てきた浩司君(笑)
これまた嫌われております(笑)そりゃそうですよね💦

こんな男の勢いは初めだけ、と思いたいですがどうでしょう・・・類君、頑張ってくれるかな?

ほんのちょっとのお笑いを交えながら、そろそろラストに向かいます。
最後までどうぞ応援宜しくお願いします♡

(と言っても2月の中半ぐらいまで?かな)

2019/01/19 (Sat) 21:21 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply