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ホテルの控え室・・・もう随分長いこと話し合っていて、牧野が何処に居るのかも判らないのに焦りもしない五十嵐浩司。

父さんの険しい表情は初めの頃より酷くなってるし、母さんは窓の外にチラつく雪を見てハラハラしてる。
この付近をうちの連中が捜しているとは言え、いまだに見付かったの一報もなくて俺はベッド脇に座ったままイライラしていた。


「浩司君、私達の質問に答えてちょうだい!あなたは五十嵐物産に瀧野瀬という会社を取り込むつもりなの?でもそんな事を瀧野瀬会長が判ってて婚約なんてさせないわよね?まさか・・・あなた、瀧野瀬も騙してるとか言わないわよね?」

「伯母さん、落ち着いてください。確かに常識では考えられないのですが、つくしさんと俺が婚約したのは14年前の子供の時です。そんな事を中学生の俺が考えますか?婚約は瀧野瀬会長とうちの父さんが決めたことです。
そして可愛らしかったつくしさんですから大人になってからの美しさも想像が出来てね・・・その年の俺も抵抗なんてしなかったんですよ。むしろ恋人を捜さなくて済む、そのぐらい助かる話でしたからね」

「たとえご両親の意向でも、どうしてそんな年の頃から婚約を?失礼だけど企業の規模を見ても婚姻で結びつくことを考えるのには早いんじゃなくて?」

「ははっ!それこそ会長と父さんに聞かないと判りませんよ。俺はある日突然父さんに連れられて瀧野瀬家に行き、そこでつくしさんに会い、お互いに婚約者だと告げられただけ。そしてこの年になったので実行しようとしているだけですよ」


いや、違う・・・そうじゃない。
牧野の「天才的な先読み能力」と言っていた例の為替取引、それを瀧野瀬コーポレーションと五十嵐物産が利用するために何かの約束、もしくは取引を交わしてるんだ。
それを外部に知られないために牧野を孤独にさせ、一生口止めするために結婚相手をこいつに決めた。

すぐにこれは判ったけど、両親にこの場所で話すことは躊躇した。
相手が俺の従兄弟だと言うことだけで想定外・・・とにかく牧野を捜して今度こそ全部話を聞かなきゃ・・・。


「まぁ、話すと言ってもこのぐらいでしょう。俺としては捜していた婚約者がまさか類君のところに居るとは思いもしなかったし、どうやら想いを交わしているようですが、それを白紙にして九州に帰していただきたい。
すぐに瀧野瀬会長にも伝えなくてはなりません。ここまで迎えに、とご実家は言いそうですが俺が居るんですから一緒に宮崎に帰ることにしましょうか」

「・・・それはあんた1人が決めることじゃないんじゃない?牧野の気持ちが1番でしょ」

「君にそんな事を言われるのは心外だな。なんならこの話をマスコミにリークしても良いんだよ?花沢物産の御曹司が親戚の婚約者を奪い取って自宅に住まわせてるって・・・結構食いついて来るんじゃないかな。
ねぇ、伯父さん。そんな事になったら社長として困るでしょ?」


「浩司君・・・!私達を脅す気かね?」
「マスコミですって?うちのクリーンなイメージに傷を付けようと言うの?」

「はははっ!確かに花沢物産のイメージはクリーンですよね?無謀な取引もないし、危ない橋も渡らない・・・固められている関連企業にも不祥事なんて起きたこともない。海外事業でも同じ・・・今時珍しいほど裏のない企業だと思いますよ」


真面目であることが馬鹿だとも言いたそうな口調と態度で、わざとうちの両親を怒らせて楽しんでいるとしか思えなかった。
反社会的団体との取引、計画性のない契約、文書偽装に豪遊・・・ ギャンブル的要素にスリルを求めて、花沢というネームブランドは利用するもの。
お情けで花沢グループに名を連ねていることぐらい知っているだろうに、今年から五十嵐物産ホームページの会社概要には主要取引先の筆頭は「花沢物産」・・・現時点で本社との関係なんて皆無に等しいのに、ここに招待されたからって付け加えたんだ。


「この件はつくしちゃんが見付かってからじゃないとどちらにしても進まないだろう。だが浩司君・・・類の話を聞いても君たちの婚約には無理がありすぎる。本人の意思に反してと言う時代ではないのだし、瀧野瀬の力が無いと五十嵐がやっていけないわけではないだろう?ここはつくしちゃんの気持ちを優先してあげるのが1番ではないのかな?」

「そうよ!愛情もないのに結婚してどうする気なの?楽しい訳がないじゃない!つくしちゃんの幸せを願うならすぐに解消するべきだわ」

「愛情がないだなんて・・・たとえ14年間会ってなくても婚約者として想ってきたって言ったでしょう?その想いを強くするのはこれから先で充分です。それにさっき彼女を見て惚れ直しましたよ。本当に美しくなっていたなぁ・・・」


それは俺の横に居たからであってお前の横だとあんな表情にはならない。
自分を放置した婚約者の本当の目的を想像して怯えてる・・・あの明るい表情の下でいつも不安を抱えてるんだ。


その時、俺のスマホが鳴った。
牧野が何処かから掛けてきたのかと思って慌てて画面を見たら・・・こんな時なのに藤本っ?!


何でこんな時にこいつから掛かってくるの?!
無視して通話を切ったら、すぐにもう1回コール音が響いた。

「誰なの?類」
「藤本・・・ごめん、急用かもしれないから出るね」


3人から少し離れた場所で通話をタップしたら凄く不機嫌な藤本が電話口で叫んだ!

『なんで電話を切るんですかっ!1回出てから切ったでしょ!』
「そっちこそ何考えてんの!今は花沢の新年パーティーの最中だって知ってるだろう!それが判ってて何の用なのさ!」

『専務が今、1番困ってる事でこっちに連絡があったんですよっ!私は妻の実家で食事中だったんですよ?こんな時にも仕事なの?って怒られたんですからね!』

「・・・え?俺が困ってる事って・・・まさか・・・」

確かに電話の後ろでは歌声に話し声で藤本の声が聞き取りにくいぐらい。真横で「あんた!」って怒鳴ったの、もしかして藤本の奥さん?しかもカラオケ始まった?!


「藤本っ!大きな声で話して!良く聞こえない!」

『事情は知りませんがキュイジーヌの笹本さんからすぐにコートを持って本社の地下駐車場に来てくださいと!これで判るんですか?!専務が今1番困ってる事だから言えば判るって言ってましたよーっ!』

「・・・うちの?あぁ、判った!ありがとう、藤本!楽しんでね!」

『何言ってるんで・・・』ブチッ!


電話を終えて振り向いたら3人がキョトンとしていたけど、それを無視して牧野のコートを手に持った。
「見付かったの?」って言う母さんの声に無言で頷いたけど、そこでも浩司は動かなかった。


「・・・あんた!もう牧野の居場所は花沢だって判ったんだからパーティーが終ったら大人しく宮崎に帰りな!牧野は俺の傍から離れたりしないから1番安心だろ?話はまた落ち着いてからだ、瀧野瀬って言う爺さんにもそう言っといて!」

浩司の返事も表情も確かめることなんてしなかった。


早く牧野を迎えに行かなきゃ・・・!
廊下に出ると凄い勢いでエレベーターに向かい、ロビーに着いたら再び外に出てうちの本社ビルまで全力で走った。



******************



「お待たせ。ごめんね」
「いえ、私こそごめんなさい・・・もう帰る所なのに」

笹本さんが車に戻って来て、手に持ってたスマホをポケットにしまった。事務所に行ってたんじゃなかったのかな?って不思議な顔をしたら私を見てニコッと・・・そんな明るい話題じゃなかったのにどうしたんだろう?


「さて・・・牧野さん。明日からの事なんだけどね」
「明日から?お仕事のことですか?」

次に出てきた言葉はいきなり仕事の話。さっきまでの私の悩み事は何処に行ったんだろう?って、ここでも笹本さんの変わりようについていけなくて戸惑った。


「そう。牧野さん、悪いけど明日から出勤しなくていいよ。こう言っちゃなんだけどクビ・・・かな?」
「・・・は?クビって・・・辞めさせられるって事ですか?!」


突然のクビ発言に驚いて、あれだけショックを受けていたのに今度は違う意味で頭が真っ白になった。

何で?どうして私がいきなりクビになるの?
私が何をしたって言うの?・・・何が何だか判らなくて質問も出来ない。自分でも痛くなるほど目を見開いて笹本さんを見てたら、クスクス笑いながら窓側に凭れ掛かって言葉を続けた。


「なっ、何が可笑しいんですか?どうして辞めないといけないんですか・・・理由は?」

「牧野さん、うちで働くより解決しないといけない問題があるでしょう?それに現時点では花沢家の親戚かもしれない人の婚約者なんでしょ?でもそれを阻止しようとしているのが後継者の専務・・・そうなったらもう社員食堂で働ける人ではないってことだよ」

「そんな!職場に優劣はないって思ってます!プライベートとお仕事は切り離したいです!」

「そうはいかないのがトップの人達って事だよ。何も社員食堂が悪い環境だって言うんじゃないよ?
俺達は凄くプライドを持って仕事してるし、社員にリフレッシュできる場所と健康で元気よく仕事に向かえるような食事を提供してるって思ってるんだから」

「・・・はい。判ります」

「それに九州の実家を家出したんなら尚更でしょ?働きたい気持ちは判るけど、それだけ大きな問題抱えていたらぼーっとしてまたミスするかもしれないよ?それは俺が困る・・・そういう事だね」


・・・確かに解決しないといけない問題があまりにも大変な事だった。
このまま明日笑って仕事が出来るかというと、その自信はなかった・・・笹本さんの言う通り、役に立つどころか全然動けないかも。

それでも花沢家の信用を失ったばかりなのに今度は職場まで・・・そう思うとガックリきて、笹本さんのコートの襟を持っていた手もパタンと膝の上に落ちてしまった。


その時、チョンチョンと肩を突かれて少しだけ顔を上げた。


「ほら・・・お迎えだよ?」

「・・・え?」


笹本さんが車の窓硝子の向こうを指さしたら・・・こっちに向かって走ってくる類の姿があった。




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2019/01/20 (Sun) 10:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

コメント、いつもありがとうございます♡
今日は久しぶりに日曜にお休みがもらえたのでのんびりしてます♡

そうですね・・・花沢家はつくしちゃんの味方なので何かが起きれば庇ってくれるんでしょうけど、浩司君が一癖あるヤツなので(笑)
ここはパパママは援護射撃、類君が中心になって闘ってくれると思います!


ただですね・・・(笑)
私はシリアスに闘うのは比較的書けるんですが(いや、適当だけど)コメディタッチの闘いってよく判らないんですよ💦
なんだ?これ!ってなったらごめんなさいっ!!

言えるのは類君を格好良く書きたいな!って事だけで・・・どうなるんだろう💦

2019/01/20 (Sun) 11:30 | EDIT | REPLY |   

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