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「あぁ、そう言えば牧野、明日から仕事には行かないから」
「あら?どうして?」

もう部屋を出ようとした両親に牧野の仕事についての話をした。
行かないと言えばキョトンとした顔・・・裸足の牧野は俺の背中から申し訳なさそうにチョコンと頭を下げてた。


「言い忘れてたけど牧野をうちの本社前で保護したの、キュイジーヌの上司、笹本なんだよね。牧野の事情を簡単に説明したら雇えないってさ」

「・・・そりゃそうでしょうね。まぁ丁度いいじゃない。違う意味で忙しくなるんだから」
「それなら加代さんや執事に頼んで花沢の勉強でもしてもらいなさい。資料室もあるし、おぉ!語学の勉強もした方がいいな!今からだと大変だとは思うがせめてフランス語と英語だけでも」

「・・・・・・」
「語学・・・それなら問題無さそうだよ」


花沢についての勉強と語学・・・ただし、語学については数カ国語出来ると言えば凄く驚いていた。
「なんで秘書課にしなかったの?!」って母さんなんかは怒鳴っていたけど、俺だってクリスマスまでロシア語ペラペラなんて知らなかったし。
会社をクビになったことは特に怒るわけでもなく、むしろ賛成だったから牧野はホッと胸を撫で下ろした。


「それじゃあ私達は今日、ここに泊まるわね。あなた達は好きなようにしなさいな」
「類、明日は午後から予定している新年の役員総会に間に合うように出社しなさい。秘書室にはそれで話をしてあるから」

「ん、判った。おやすみ」
「お父様、お母様、おやすみなさい・・・」


「つくしちゃん、おやすみ~!」って母さんはわざと明るく牧野に手を振って自分達の部屋に戻っていった。そして目を合わせる俺達・・・同時に呟いたのは「家に帰ろうか!」だった。
自分たちのいつものベッドで眠りたい・・・ホントにそれだけで、ここは落ち着かなかったから。


父さん達に付いてきていた使用人に牧野のドレスや荷物を持たせて、俺は牧野を抱きかかえてエレベーターに向かった。
もう随分遅かったから誰も乗ってこない。エレベーター内の鏡に映る姿にキャアキャア言いながら、素足を恥ずかしがって俺の腕の中で暴れてた。

「そんなに暴れたら落っこちるよ?また逆立ちの時みたいにパンツ披露する気?俺、今はもう許さないけど?」
「うわっ!まだ覚えてるの?忘れなさいよ!」

「・・・忘れられないでしょ、白いフリルの・・・」
「馬鹿っ!!」

「あれ?黄色のフリルだっけ?」
「それはベッドでブラを見せた時で・・・はっ!何言わせるのっ!」

「自分で言ったんじゃん」
「だって、類が・・・んっ」

あんまり五月蠅いから余計な言葉を出しちゃう唇は塞いでしまおう・・・誰も居ないホテルのエレベーターの中で、ドアが開く寸前まで牧野とキスしてた。

ロビーに出ても殆ど歩いてる人も居ないし、うちのパーティー出席者らしき人間も、当然五十嵐浩司の姿もなかった。それだけは確認しながらエントランスに出て、既に待機していた花沢の車に乗り込んだ。

牧野も浩司が怖かったんだろう。
あれだけエレベーターでは暴れていたのにロビーを歩いてる時には俺のコートの中に顔を突っ込んで隠していたから、漸く息が出来たみたいに深呼吸していた。
ホッとしたら座席から滑り落ちそうなほど身体がナナメになってる。それを両手でシートを押しながら這い上がってきて座り直した。


「・・・ごめんね、類。今日は私を抱え過ぎて腕が痛いんじゃないの?」
「あはは!このぐらい大丈夫だよ。牧野、凄く軽いから」

「えぇっ?!そんな事ないと思うんだけど・・・い、一応大人だし!」
「抱きかかえてる時が嬉しいから重く感じないのかもね」

「・・・男の人って単純!」
「くすっ、そんなもんだよ」


もう車は走り出していて、牧野は相当疲れたのか俺に凭れ掛かって居眠りを始めた。

少し揺れる度に首がコクンと倒れてる。一応大人だし、なんて言うけどやっぱり子供みたいで可愛かった。
そのうち膝の上に置いてた手がポトンと落ちたからそっと持ち上げたら・・・・・・熱い?

「・・・・・・牧野、もしかして熱があるんじゃない?」
「・・・ん?熱・・・ないよ、そんなの・・・」

「うそ!あんた、手が熱い・・・!」
「・・・え?」

今度は牧野の手全体を握ってみたら・・・凄く熱い!
額に手を当てたけどそこはそれほど熱く感じなかった。今度はコートの襟元をずらして首を触ったら・・・ここはもう凄い熱だった!

こんな寒い夜に薄いドレス1枚で汗が出るほど走って逃げて、次は車の中で1時間近く・・・汗をかいた身体にコート1枚だけ羽織ってたんだから風邪を引いても無理はない。
そう言えば会場に行く前もくしゃみしてなかったっけ?

その時からすこし風邪気味だったんだろうか・・・精神的にも体力的にも限界だったのかもしれないのに、屋敷でもホテルでもあんな無茶をしたのは俺だ・・・!


すぐに運転手に「急げ!」と命じてスピードを上げさせた。


「牧野・・・そんなに時間は掛からないから頑張れ!」
「・・・ん、類・・・大丈夫・・・だよ」

「熱、どのぐらいあるんだろう。まだこれから上がるのかな。ごめん、気が付くのが遅かった」
「類は・・・悪くないよ?ははっ・・・だい・・・じょ・・・ぶ」


**


車内から加代に電話を入れておいたから、車が屋敷に着いたらすぐにドアが開けられ加代が血相変えて飛び出してきた。
アプローチの横には見慣れない車がある。おそらくうちの主治医がもう呼ばれていて部屋で待機してるんだろうと、急いで牧野を抱きかかえて階段を駆け上がった。

「類様、牧野様はどのぐらいのお熱なのです?」
「判らない・・・でもかなり上がってきたみたい。少しトラブルがあったから牧野、ドレスだけで外に出てたんだ」

「え?!こんな寒い夜にですか?!」
「事情はまた明日話す!加代にも色々知っててもらわないと困るから!」

牧野はもう俺の首に腕を回す力も無くなってて、片方の腕はダラリと下に落とされたまま。
少し開けてる口からは苦しそうな息を吐いて、その目は閉じられたままだった。たまに小さく俺の事を呼ぶから返事をして、急いで自分の部屋に向かった。


部屋の前では白衣を着た主治医が看護師を伴って待っていた。
牧野を抱えた俺を見るなりドアを開け、先に入った俺の後を診察道具を持ってついてきて、大急ぎでベッドの横で点滴の準備を始めた。

「類様、いつ頃から症状が?」
「判らないけど1時間前までは普通にしてたと思う。でもドレス1枚でホテルの外に1時間半ぐらい出ていたから」

「この時期にですか?元々風邪気味でしたか?」
「・・・少しくしゃみしてた程度。特には何も聞いてない」


・・・パーティーの前にも無茶して、身体を冷やした後にも無茶したなんて言えない。
これはわざわざ言わなくても・・・いいよね?


熱はこの時で38度5分。その他の症状は特になく、インフルエンザの簡易検査でもまだ反応は出ないから省かれた。
明日になって関節痛が始まり、熱が引かなければ改めて検査をする事にして、今晩は解熱剤の投与だけで点滴も準備だけしたけど使わなかった。


「それでは我々は本日だけこちらで待機させていただきます。何かありましたらすぐにお知らせ下さい」
「新年早々、しかも夜なのに悪かったね」

「いえ、お気になさらずに。それより日頃から随分仲が宜しいそうですが本日はベッドはご一緒になさいませんように。万が一インフルエンザでしたら類様にもうつる可能性がありますからね」

「・・・・・・」

「お返事が無いようですが判りましたね?」
「・・・判った」


絶対に信用してないよね。
そして俺もそんなこと聞かない。

主治医が部屋を出ていった後、すぐに牧野の傍に行って熱い手を握りしめた。
そして真っ赤になってる頬を撫でて、乾いてる唇にキスを・・・


「・・・ん、梅・・・三郎?」
「・・・違うし!」




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Comments 6

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2019/01/24 (Thu) 06:29 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/24 (Thu) 16:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 こんばんは。

お気遣いありがとうございます。
まだイマイチ良くならないんですよね💦これはもう歳のせい(笑)
今日、1つ増えちゃいましたから💦

ふふふ、インフルエンザ・・・さて、ここでしょうか?

どちらにしても類君に災難がやって来そうでしょ?(笑)
いやいや、ちょっと暴走した罰です。しばらく類君にはお仕置きしようと思います♡

2019/01/24 (Thu) 20:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様 こんばんは!

油断・・・油断したんだ(笑)

いやいや、そこまでがっつり書かなかったけど注意書きはした方がいいのかなと。
類君にしてはこのプチバージョンが結構あるでしょ?頑張ってるのよ、私♡


お気遣いいただいてありがとうございます~!
実は大風邪引いてるのよ💦多分、私の所は暖冬でそこまで寒くないから逆に油断するんだと思います。
(はっ!ここでも油断?)

兎に角薄着なのよね・・・重ね着が嫌いだから。

で、娘も大風邪引いてて電話掛かってきたけど「あんた、誰?」って声していました(笑)
あっちは若いからすぐに治るんだろうなぁ・・・。

パール様も忙しいって言ってたから気をつけて下さいね。

2019/01/24 (Thu) 20:24 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/26 (Sat) 12:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは!

あっはは!そこですか?(爆)
ごめんなさいねぇ、このお話は結構巫山戯ていますので、私の好きなように書いてしまって💦

似てたんでしょうかね?
この類君、恋人になってからはずっとこんな感じなので(笑)

このお巫山戯モードもそろそろ終わり・・・ちょっと真面目になってくるのでお許しくださいね♡

2019/01/26 (Sat) 20:22 | EDIT | REPLY |   

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