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plumeria

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「え、えーっと、それじゃこの辺でゲームでも始めましょうか!」

俺を誘った後輩がそう言った時、そんなもんに付き合ってる場合じゃねぇ!とばかりに席を立った。急に立ち上がった俺を全員が見てる中、同じようにポカンとしてる牧野の腕を掴んだ。


「悪い。俺達先に帰るわ」

「はぁっ?!俺達って・・・私っ?!」
「西門先輩?!そりゃないでしょ!」
「きゃああぁーっ!なんでつくしがそんな事にっ?!」

「この後こいつに話があんだわ。ここの飯代、俺が全部払っておくから好きに飲んで食って帰ってくれよ。んじゃな!」
「あっ!そういう事ならご馳走様です~、先輩!」

「ちょっとー!」なんて色気のねぇ声を出してる牧野の腕を引っ張って、まるで何処かに連行するみたいに店を出た。



店の外は雪・・・都心にしては珍しく小さな雪が降っていた。
それを見るなり今までの怒りは何処に行ったやら、すぐにガキみたいにはしゃぎだした牧野は、手袋もしていない細い指で空から舞い落ちる雪に手を伸ばした。

「うわっ!珍しいよね~!最近じゃあんまり雪も見ないもん!」
「・・・子供か!それより手先が冷えるぞ?雪なんて取っても溶けるだけだろ?」

「そうだけど!いいじゃん・・・あんまり会えないんだから」
「雪に会うって言葉出すの、お前だけじゃね?それでも年に1回は会ってるだろう。俺なんか2年間放ったらかしにされてるんだけど?」

「・・・は?」
「いいから帰るぞ」


こいつが目の高さまで上げていた手を掴んで歩き出した。
それに驚いたのか「何すんの!」なんて大声出して通行人が振り返る。それを無視して牧野の冷たくなった手を握って適当に歩いていた。

帰るだなんて言っておきながら車を呼んだわけでもない。
ただ、あの中に居たくなかっただけ・・・邪魔な声なんて聞こえない場所にこいつを連れて行きたかっただけだ。


俺に手を引かれながら困ったように眉をひん曲げて付いてくる牧野・・・高校の時から全然変わってねぇし。
変わった部分を探せって言ったっけ?その前に変わる努力なんてしたのかよって言いたくなっちまう。いや、こいつはこのままでいいんだって・・・下手にオトナのフリされたらこんな気分にはならなかったかもしれない。

こいつをこの先変えるとしたら、そりゃ・・・アレしかねぇもんな。


逸る気持ちがそうさせるのか、足の長さの違いなのかどうしても俺の半歩後ろを転がるようについてくる。それを横目で見ながらクスクス笑うと、怒って握った手のまま俺を殴りやがった!

「痛っ!何すんだよ、乱暴なヤツだな・・・」
「だって!意味もなく笑うんだもん!どうして笑ったのか言いなさいよ!」

「それじゃお前は今の質問をする前に人を殴るのか?それも可笑しいだろうよ!」
「・・・そっ、そうかもだけど、でも笑うから腹が立つんだもん!それに何処に行ってんの?これ、家に帰ってるの?」

「さぁ・・・どうかな」
「はぁ?!ちょっと!離しなさいよっ!」

「ヤだね」
「・・・えっ?」


マジむかつく・・・2年経っても鈍感はそのままか!




****************



もうどのぐらい歩いたんだろう。

ずっと西門さんと片手を繋いだまま大きな通りを歩いてて、何人かの女の子に声を掛けられていたけど全部無視してる。
私みたいなのを連れてるからだろうけど、それならこの手を離せばいいのに・・・背中から「似合わないのよ!」なんて嫌がらせを受けるの、私なんだけど?!って斜め後ろから睨んだけど気にもしていなかった。


「あのさ・・・目立つと思うんだけど。離した方が歩きやすくない?」
「・・・気にすんな」

「いや、気にするとかじゃなくて安全面の話だよ。人が多いからぶつかりそうになるし!」


「・・・判った」なんて返事したら、今度は人通りの少ない道に入った?!
いや、そういう意味でもないんだけど?


雪もさっきより酷くなって私達の髪の毛には白いものが付いてる・・・それも気にしないでこの人は私の半歩前をズンズン歩いて行った。繋がれた手が熱い・・・いつの間にか身体も火照ってて冷たいのは安物のブーツの指先だけ。

そのうち道路に薄らと積もった雪で足を滑らせて、驚いて西門さんに縋り付いた!

「うわあっ!あっ、ごめんっ!!」
「・・・ドジなヤツだな。雪になんて遊ばれてんじゃねぇよ。なんだ、疲れたのか?」

「いや、足が・・・足が冷たくて痛くて・・・感覚が無くなっちゃったのよ」
「ブーツ履いてんのに?」

「悪かったわね、安物でっ!」
「ははっ!そういう事か。仕方ねぇ、タクシー拾うか」

「・・・初めからその気があるならそうしなさいよ!」


全く意味が判んない!
西門さんはまた大通りの方に向かって、今度はあっさりタクシーを拾って「牧野のアパートまで」・・・その言い方で伝わるほど私は有名人じゃないわよ?慌てて運転手さんに自分のアパートの場所を伝えた。


知られたくないんだけどなぁ・・・今の私のアパート。
前の家よりも古くてボロいんだもん・・・きっと西門さんが見たら驚くから少し手前で降りちゃおうかな。この時間なら歩いても怖くないし。

うん、そうしよう。
この楽しい雰囲気のまま別れちゃおう・・・それがいい。


タクシーに乗り込んだら取り敢えず手は離されて、私は自分の手を自分で握ってた。
西門さんに繋がれてた左手が熱い・・・だからそれを右手で覆って自分の熱を自分で冷ました。顔だってまだ赤いはず・・・だから首に巻いたマフラーに鼻まで埋めて隠した。

横を見ると何処を見てるんだか判んない彼は、ぼーっと窓の外を眺めてひと言も喋らない。お店での愛想笑いが嘘みたいに静かだった。
なんなの?この変わりよう・・・私だけなら愛想すら勿体ないっての?


「あ・・・ここでいいです」
「え?もう少し先でしょ?」

「ううん、ここで大丈夫です。停めてください」

自分のアパートまで近づいてきた時、その2つ手前の道でもう運転手さんに声を掛けた。そうじゃないと私の歩いて行く先を見られたらアパートがバレちゃうから。
そして彼に「タクシー代・・・」って言ったら睨まれた。あぁ、そうでしょうね・・・私に払わせるわけがないって無言で教えたのね?


「送ってくれてありがと。じゃあね・・・」

「会えて嬉しかった」とも「また連絡する」とも言わずにタクシーを降りて、そのまま独りで暗い道を歩き出した。
彼が乗ったタクシーを見送るのは少し淋しかったから・・・だから先に自分から消えてしまおうと思って振り向かずに歩いてた。

また左手を自分で握ってる。そこに西門さんの手の感触が残ってるから。



「はぁ・・・帰って手を洗ったら全部消えちゃうよね。熱も匂いも・・・ま、仕方ないか!」


「何が消えるんだ?」
「はぁ?そりゃ西門さんの香りと・・・・・・はっ?!」


タクシーを降りた場所から歩いて100メートル。
そこで声を掛けられて振り向いたら・・・西門さんがついて来てた!!


「どうして後ろに居るのよっ!驚くじゃないの!!」
「声がデカくないか?近所に響いてんぞ?」

「ハッ!だから、なんでタクシー降りたのよ・・・そのまま帰らなかったの?」
「今からお前のアパートに帰るからいいじゃん?」

「・・・えっ?!」
「行こうぜ?流石に俺も寒い」


またそこで私の左手を彼の右手が強引に奪って握って歩き出す。
今でも降ってる雪で白くなった道を、私のオンボロアパートに向かって・・・。

この現実に頭が真っ白になって、自分の部屋に帰るのに心臓が爆発しそうだった。







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2019/01/22 (Tue) 18:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんばんは

meimei様 こんばんは。

コメントありがとうございます。
えへへっ!こうなっちゃうとねぇ・・・この後はもうねぇ(笑)

いやいや、総ちゃんの気分転換ですのでこのぐらいはいいかなっと!
ダメですか?(笑)

そもそも総ちゃんの合コン参加から変なんだから💦

あはは!楽しいですねぇ、こういうのは!


東京ってそんなに降りましたっけ?
私の住んでる所は本当に雪が少ないので・・・あら、困ったな💦

このお話の年は降らなかったんですよ、きっと!・・・そういう事にしてくださいね!

2019/01/22 (Tue) 19:45 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/22 (Tue) 21:27 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは(笑)

落ち着いて💦次、まだ来ないから💦

全然違うものが来るよ?
ある意味パール様が待ってたヤツ(笑)

でもね、喋らないけど。エロ要素もないけど💦
わかったかなぁ~?

で、ソレなんだけど・・・次の次、その次・・・。

レベルはラストが本気、1つ前がリハーサルかな?
そんな感じです♡


宜しくね~♡

2019/01/22 (Tue) 23:12 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/23 (Wed) 00:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、正解ーーっ!!

あっはは!ごめんねーっ💦
登場するだけだからっ(笑)

2019/01/23 (Wed) 01:12 | EDIT | REPLY |   

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