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plumeria

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「つくしちゃん、見て見てぇ!こっちが男の子用のベビー服でこっちが女の子用だけど、もしも両方男の子でも大丈夫だと思うのよ?クリーム色だし可愛いでしょ?で、こっちがつくしちゃんの手術後の服ね!
暫くマタニティばっかりだったから可愛いの着たいでしょ?あっ、それとこっちがね・・・」

「お袋!いい加減にしろって!そこまでやると牧野の方が気にするから止めろって言っただろ?まずは自分で勝手に進めないで牧牧に聞いてからにしろってあれだけ言ったのに、もうそんなに買い込んだのかよ!」

「だってぇ・・・」
「あはは!おば様、ありがとうございます!」


手に2枚の色違いの服を持った夢子おば様が美作さんに怒られてる。
それは確かに親子喧嘩なんだけど微笑ましい・・・美作さんがそこまでキツく言わない人だから、怒られても夢子おば様は一瞬しょんぼりするだけですぐにまたはしゃぎだした。

だからその後は彼も呆れ顔で笑うだけ。
私の前には何枚もの可愛らしいベビー服が並んだ。


1人の性別がはっきりしないから・・・おそらく女の子だろうって言われているけど、並んだ服はブルー系とイエロー系。
男の子用なのに大きなリボンが付いてるものや豪華なレースがついてるもの、縁取りに白いフリルが何段も付けられてる夢子おば様の趣味がそのままだった。

「こんな感じのベビー服を美作さんも着たんですか?」
「そうよ!あきら君の時にはこんなもんじゃ無かったわ!ヨーロッパで特別に作らせてね、毎日お姫さまみたいに飾ったの!楽しかったわぁ・・・今じゃこんなにおじさんになったけど」

「誰がおじさんだよっ!それ、牧野に見せるなよ?俺のガキん時の写真は彼奴らにだって見せられないんだから!」
「クスクスっ、そうなの?」

「あぁ!絶対に男だって思えないの!中には女装させられた物もあるんだぜ?双子が産まれたからやっとお袋のおもちゃを卒業できたんだから!」

「・・・あきら君、酷い言い方ね!愛情じゃないの・・・」

「どこがだよっ!」って嫌そうな顔してるけど、やっぱりそれも可愛い親子喧嘩に見えた。


このあと私は手術前検査をする事になって、美作さん達は「また来るからな!」って言葉を残して病室を出て行った。
検査と言っても鎌倉の病院でも何度もやっていたし、今回も血液検査、胸部X線写真、心電図ぐらい・・・あとはお腹の赤ちゃんの様子を見てもらって、また病室に戻った。

特に異常なし・・・だけど少しだけあるむくみのせいで、ここでも車椅子だった。


入り口には近藤さんがいる・・・入院中も昼間は警護すると言われ申し訳なくて頭を下げるしかなかった。
ここでは吉本さんの事じゃなくて、私を知ってる誰かが来ちゃいけないから。完全看護で面会謝絶にしているのに美作さんの心配ぶりは相変わらずだ。

西門さんが私の両親に会いに行ってることも聞いたから病院に呼ぶことも出来ない。
だから余計に美作さんは私の世話を焼いてるんだろう・・・自分だけしか知らないからって。ホント、お人好しなんだから・・・。


病室に戻って夢子おば様の持ってきてくれた服を片付けていたら担当看護師さんが入ってきた。
そして私の持ってる服を見てびっくり!またその服やベビードレスをベッドに並べて「見た事ないわ!」って大笑いしていた。

うん、そうだよね・・・まるで外国の王子様かお姫さまが着るようなベビードレスだもん。テレビで観た外国王室の赤ちゃんでさえもっと控えめだったと思うし。
「流石、美作の奥様だわ!」って、私はそこのお嫁さんじゃないんだけどね。


そしてやっと本題に入った。

「それじゃ牧野さん、麻酔なんだけど全身麻酔と腰椎麻酔、硬膜外麻酔があるんだけど希望はあるかしら」
「全身麻酔だと赤ちゃんの声は?」

「それは無理かな。赤ちゃんも眠っちゃう可能性もあるし産声は聞けないわね。殆どの場合は腰椎麻酔を選ばれるけど、もし緊急手術になったら全身麻酔にする可能性が高いの。腰椎麻酔にしましょうか?」

「・・・はい。声は聞きたいです」
「ふふふ、そうよね!」


あぁ・・・本当に近づいてきたんだなぁってドキドキする。
この日は簡単な手術の説明だけ聞いて後はお部屋で1人きり・・・だから自分のお腹の写真を撮って美紀さんに送った。

『7日に帝王切開で産みます。もうすぐでドキドキ。お腹、こんなになりました』

そうしたらすぐに電話が来て暫く話していた。丁度休憩中だったらしい・・・少しアクセントが違う九州の喋り方が懐かしかった。


『あぁ、そうそう!女将さんもね、あん後(あの後)具合を悪うして少しだけ入院したの。でも今は元気で旅館に居るわ』

「え?なんの病気だったんですか?もう大丈夫なんですか?」

『ふふふ、あんなに元気が良さそうに見えて実は心臓に持病を抱えとる人なの。でもそれももう長か付き合いの病気らしいわ。だから問題無いと思うよ?つくしちゃんの事は毎日神棚に手を合わせて安産祈願してるわ。だけん(だから)頑張ってね!』

「はい。頑張ります。でも頑張るのお医者様だけど・・・私、寝てるだけだから」

『あ、そうか!あっはは!じゃ、産んだ後頑張って!』


私の写真は女将さんにも見せるからねって言われて電話を切った。




***************



その日の夕飯を牢部屋まで持ってきたのは紫だった。

こうなった経緯ぐらい聞いているだろうに、まるで他人事のような顔して膳をそこに置き、「それでは後でまた」とだけ言葉を出して立ち去ろうとした。


「あんた・・・俺がここに入れられた原因をもう聞いてんだろ?」
「はい。あれだけ騒がれれば嫌でも耳に入りますわ」

「・・・あんたを受け入れないって言ってんのに何故出ていかない?ここまでされたら流石にあんたのプライドも傷つくだろう。それでも家の力まで使って何故居座ろうとする?家から命じられた以外に西門に嫁ぐ目的でもあんのかよ」

「目的・・・そんなものは特にございませんわ。私は家元夫人となりあなた様を生涯支えよと言われているだけです。宝生の力がそのためにお役に立てたのなら両親も喜んでおりましょう」


「・・・もう1度言うが俺は絶対にあんたのことを愛せない。それに一生耐えられるのか?」


胡座をかき腕を組んだまま、睨み付けるように紫を見上げた。
此奴はそんな俺を無表情に見下ろした・・・馬鹿にしているわけでもなく、怒りを表しているわけでもなく、何も感情が読み取れない。ゾッとして汗が流れてるのは俺の方・・・ここまで自分を押し殺す人間に出会ったことがなかった。


「総二郎様、私はお家元にも申し上げておりますのよ?あなたの妻という立場・・・次期家元夫人として西門がお守りくださるのなら多少の事は目を瞑りますと・・・。ですからその方を何処かであなたが愛されても問題ないのです。
ふふっ・・・今はどちらにいらっしゃるのか知りませんが、出てこられたら宜しいのに。私は全然構いませんよ?むしろそれを恐れているのは西門宗家ではございませんの?」

「なんだと?俺がそんな事は出来ねぇんだよ!」


「だから総二郎様がお考えを変えればいいのです。婚約をし、籍も入れ、跡取りを儲けた上で、別に他の女性を愛しますと・・・なかなかこれを許す婚約者など居りませんよ?うふふ・・・」


薄暗くなった部屋で紫が笑った。
僅かな夕陽の中でこいつの目が細く妖しく光った・・・この女、何考えてんだ?





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<お知らせ>
「私が帰る場所」は諸事情により30日、31日はお休みします。
2月1日から再開しますので宜しくお願いします♥
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