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plumeria

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「ここ・・・?」
「そう、ここなの。驚いたでしょ?部屋に入ろうだなんて思わないでしょ?だから帰れば?」

暫く歩いて着いた私の住むアパート。
今時こんな古い物件があるのかってぐらいの見た目で、築何年よ?って感じの薄暗いアパート。こんなに暗くなっても階段の上がり口に防犯灯が1つあるだけのお粗末な設備で剥き出しの階段・・・西門さんは暫くポカンと口を開けて見上げていた。


「ね?判った?なんでタクシー降りたのよ!・・・見せたくなかったのに・・・」
「ま、いいじゃん。入ろうぜ?寒くて死にそうだし」

「そんなわけないでしょ!上等なコート着てぬくぬくしてるんだから!」
「・・・あぁ、死にそうなのはお前か!」

「五月蠅いわね・・・私は慣れてるわよ」


仕方なく西門さんの前を歩いて2階の自分の部屋の前に行き、「はぁっ・・・」って溜息つきながら鍵を開けた。そして1人しか靴が脱げない玄関でブーツを脱いで部屋に入り、西門さんがすぐ後に入って来た。


兎に角急いだのが洗濯物!
部屋干しだから見られちゃマズいモノがその辺にぶら下がってて、大慌てで生乾きの洗濯物を一気に外して彼に見られないところに隠した。
それと少し乱れたベッドの布団。私以外が使うわけもないんだけど、ここが乱れてたら変な想像されそうで怖いんだもの。

男性の存在を感じさせるものは全然無いから心配ないけど、女の子らしい可愛らしさも感じない・・・まぁ、これも仕方ないかって、自分の貧乏を今更ながら恨んでしまった。


「えっと・・・何か飲む?って言ってもいいものはないわよ?珈琲だってインスタントしかないし」
「その前に暖房は?エアコンないのかよ」

「そんなものありません!いや、あるけどこのぐらいじゃつけません!コート着たままにしといてよ」
「このくらいって・・・外は雪だぞ?」

「1回つけたらクセになるでしょ?炬燵で我慢して」
「炬燵・・・これに入るのか?」

「そうよ。あのさ・・・茶道家の西門さんに煎れるのは嫌だけどお茶なら少しはいいのがあるから・・・」

「じゃ俺が煎れてやる」
「ホント?」


何故かお茶だけは良いものを買ってるのよね・・・そんなに飲まないくせに。
それを彼が煎れてくれるって言うから急いでキッチンでお湯を沸かした。西門さんは小さな食器棚から湯呑みを出して「茶葉は?」って言うから、ちょっと綺麗な細工がしてある茶筒を出したら「へぇ、こんなのに入れてるんだ?」って笑った。

だって・・・お茶の道具見たら欲しくなったんだもん。流石にお抹茶は買わないけどさ。


「西門さん、お湯が沸いたよ」
「んじゃお前は座ってな。後は俺がするから」

「はーい!」


・・・たとえお抹茶じゃなくても彼が煎れたら味が違う気がする。
西門さんが煎れてくれたお茶を炬燵まで持ってきてくれて、向かい合わせじゃなくて隣に座った。その距離・・・50センチぐらい?小さな1人用の炬燵だから中で足が触れてしまう。
それにドキドキして足を避けてもすぐにまた・・・もしかして?

「ねぇ、さっきからわざと足、くっつけてない?」
「・・・別に。俺の足の長さじゃね?」

「可愛くないわね・・・どうせ私は足が短いわよっ!」

これ以上避けたら私が炬燵から出ちゃうじゃない!そう思いながら湯呑みを口に運んでいたら西門さんが何かをジッと見てる。その視線の先に何があるんだろうって辿ってみたら・・・ローボードの上?
色んな小物や数少ない化粧品が並んでる場所にあるものって・・・!


ヤバいっ!!思いっきり1番前で、この人の写真が私達を見て笑ってるじゃないのーっ!!


急いで炬燵から飛び出てその写真立てを倒して背中で隠したけど、西門さんのニヤリとした顔はまるで獲物を見付けた野生動物みたいになってる!右手で頬杖突いて少しナナメに傾けた得意角度、こんな所で披露しなくても良いのにっ!


「痛ってぇな・・・なんで俺を倒すんだよ!」
「痛いわけないじゃん!しゃ、写真なんだからっ!」

「で、なんでそんなものがあるわけ?」
「・・・それは、その・・・ただの思い出?他の人のがなくてたまたま西門さんの写真だけがあったのよ」

「へぇ、そんな理由で奥にも回されずに1番手前で毎日牧野に見られてたんだ?俺」
「だから!!見てないってば!目に入る時はあるけどわざわざ見ないわよ!自惚れ屋!」


だけど誤魔化されるわけがない・・・西門さんは炬燵から出てきて私が立ってる窓際まで来ると、そこのカーテンが掛かってるところに静かに手を置いて私との距離を縮めてきた。
その距離、今度は30センチ・・・炬燵の隣よりも凄く近いんだけどっ!!

「背中に回した写真、出しな?」
「な・・・なんで?嫌だ!」

「だって写ってんの俺だろ?本人が写真写り確かめたいって言ってんの。ほら、早く」
「・・・凄くいい写真写りだから気にしなくていいと思うよ。西門さんの変な写真とか存在しないでしょうが!」

「いいから!何年前の俺か見てみたいんだって」
「・・・ナルシスト!仕方ないなぁ・・・はい!」

隠していた写真を彼の前に出したらそれを手に取って、少しだけ見たらさっきの場所にコトンと戻した。
それでも私を動けないようにしてる手はそのまま・・・今度は真正面から私の顔をジッと見つめてきた。


ドキドキドキドキ・・・マズい・・・心臓が爆発して止まりそうっ!
そんな綺麗な瞳をこんな至近距離で見せないでよ・・・封印したはずの想いがまた身体中から溢れてきちゃうんだって!


「こんな写真より実物の方が良くね?あんなもん見て満足してんの?」
「・・・は?満足って・・・満足ってなによ!そんなんじゃ・・・ないもん」

「正直に言えよ・・・牧野、さっき店でも言ってただろ?俺に近づいてくる女を見て泣いた・・・って」
「・・・忘れた」

「忘れんなっ!俺は忘れなかったんだから!」

「・・・えっ?」


「俺はこの2年間、お前の事を忘れたことはねぇよ。てっきり英徳に来ると思って待ってたのに違う所に行きやがって・・・この馬鹿野郎!」

その言葉と同時に西門さんの胸に引き寄せられた身体・・・カーテンを掴んでた彼の手は私の背中に回って凄い力で抱き締められていた。それに驚いて身動きが取れないまま、私の両手は行き場がなくなって宙に浮いてた!
寒いからってまだ脱いでなかったコートが冷たいはずなのに、そこにあたってる私の顔が火照ってる。

この手はどうしたらいいんだろう・・・って悩んでる間にも西門さんの息が私の耳に掛かってゾクゾクする。


「この馬鹿・・・早く素直になれよ」


その低くて甘い声を聞いた後・・・私の両手は西門さんの身体を抱き締めてた。




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2019/01/24 (Thu) 11:12 | EDIT | REPLY |   
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2019/01/24 (Thu) 14:20 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは!

あっはは!総ちゃんにまでありがとう御座います~♡

類君とは違う暴走ぶり(笑)総ちゃん、押しが強いので・・・💦
少しは癒やされました?それなら良かったわ~!

あっちの話でつくしちゃんと離れてるから、書きにくくて仕方ないんですよね(誰のせいだ!)
だからこっちでイチャイチャしてもらってます♡

やっぱり離れると面白くないんですよね・・・(だから、誰のせいだ!)
半分ぐらい「あきつく」だし(笑)

この後は・・・もう総ちゃんなのでお判りでしょうが、ラブラブしてる2人を楽しんでいただければと思います♡

2019/01/24 (Thu) 20:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!

爆笑っ!!そう?気に入ってもらえた?

良かったわ~♥♡サイレント炬燵(爆)
総ちゃんのこんな短編ってあんまり書かないからめっちゃ難しかったのよ。
いつも番外編ばっかりだったから。


でもね・・・次はリハーサルみたいなものです。本番はその次で。
2回に別けてお届けって感じです♡


あっ!私の~に拍手コメ、ありがとうございました!めっちゃ笑えた(爆)
どうしてそんなに叫んだ?って思ったら・・・熱い釜を当てたから?(笑)

総ちゃんがバイク事故した時も叫び声だったもんね💦
ホント、総ちゃんが怪我するの、イヤなのね(笑)

そんなパール様が大好きです♥

2019/01/24 (Thu) 20:33 | EDIT | REPLY |   

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