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plumeria

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本来保育器に入ってる間は抱っこが出来ないのに「少しだけね」って言われて抱かせてもらった。女の子の方も大人しく寝てたのに抱かせてもらって、この子は本当に小さかったから怖かった。
2人を足しても5㎏にも満たないのに凄く重く感じる命・・・この先、この子達が自分の足で歩いて行けるようになるまで頑張らなきゃって、怖さの中にも強くなろうって気持ちも湧いてきた。

そして写真を撮ったらすぐに保育器に戻された。

出た時には一瞬包まれた毛布を取ってまたおむつだけ・・・どうしても寒そうに見えて泣きそうになった。


「お母さん、大丈夫ですよ。この様子だと今週末にはGCU(回復治療室)に移りますよ。そこだとベッドに寝てるから、お母さんには抱っこしてもらって、おむつ交換も授乳も、それに沐浴の指導も入りますからね」

「そうなんですか?おむつ交換も私、出来るんですか?」

「そうよ。だから今日はここまでにしましょうね。まだお腹が凄く痛いでしょう?ゆっくりしてて下さいね」


もう1度保育器の横で「またね」って2人に声をかけてNICUを出た。


出たらすぐに美作さんがスマホを揺らしながら笑ってる。
「可愛く撮れた?」って聞くと「確かめれば?」のひと言・・・それを見たら確かに私の顔は疲れ切ってて悲惨だった!

「うわっ・・・これ、送ったら驚かれるんじゃないの?」
「だから言っただろ?化粧の力を侮ってどうすんだよ、牧野一応女だろ?」

「・・・意地悪、美作さん」


それでも見せたいのは私の顔じゃなくて子供だからって事で、美作さんに撮ってもらった写真をすぐに美紀さんに送り、それを女将さんにも見せてあげてと頼んだ。
そうしたらすぐにきた返事は「おめでとう!!可愛いねぇ!」だった。
そして添付されていたのは号泣してる女将さんの顔。

「あらあら!ただでさえシワシワなのにそんなに泣いたら余計皺が・・・」
「あはは!ホントだ。いつか子供が大きくなったら直接会いに行ってやれよ。喜ぶぞ」

「うん・・・そうだよね」



**



手術後4日目、積極的に歩きなさいと言われても痛みがまだ酷くて部屋の外まで歩いて出られなかった。幸いトイレも特別室の中だからそこまでは何とか行けても、それがやっと・・・それでも身体のためにはその方がいいと言われて無駄に室内を歩き回った。

一昨日は美作さんが来てくれて今日は夢子おば様。またご自分で焼いたケーキを持ってお見舞いに来てくれた。
痛みの話は誰よりも判ってくれるから安心して話すと涙が出てくる。それも全部受け止めてくれて「大丈夫よ」って背中を摩ってくれた。

その時に看護師さんが病室にやってきて、赤ちゃんが回復治療室に移ったと教えてくれた。
それで今から授乳してみないかって・・・。
いきなりの言葉に舞い上がって、急に立ち上がったらズキン!とお腹が痛んでベッドに倒れ込んでしまった。それを見た夢子おば様が悲鳴をあげて、ドタバタと特別室に看護師さんが飛び込んで来た。

流石、美作の社長夫人・・・痛がってるのは私なのにみんなが夢子おば様を取り囲んで「大丈夫ですか!」って叫んでた。


赤ちゃんはまだ回復治療室からは出られないから私が行くしかなかった。
それも後数日様子を見て、問題なかったら新生児室に移るらしい。そうなったらお昼はこの特別室で一緒に過ごすことも出来るそうだ。

「だから、今は頑張ってお母さんの方が行きましょうか。エレベーターはすぐそこだけど辛いなら車椅子でもいいわよ?」
「大丈夫です。歩いて行きます」

「つくしちゃん、無理をしないで。GCUはここから離れてるんですもの、車椅子に座りなさい。私が押してあげるから」
「はい、おば様・・・じゃ、甘えちゃおうかな?」

「ふふっ、そうそう!」

夢子おば様の言うことを聞いて車椅子に座り、特別室を出てGCUに向かった。
この時も車椅子の私にはひと言もなく、それを押してるおば様に「代わりますから!」って皆が声を掛けるのに笑ってしまった。おば様は「私がしたいんだから邪魔しないで!」なんて最後には怒ってるみたい。

おば様の怒ってる顔・・・美作さんがおば様に話しかけてる時に似てる。いつ見ても親子そっくり・・・。

親子そっくり・・・それは私には少しだけ怖い言葉。



GCUはNICUのすぐ隣にあって医療機械は随分少なくなってるからホッとする。室内も可愛くされてるし看護師さんはピンク色のお揃いのエプロン付けて、赤ちゃんは普通のベッドに寝ていた。
元々そこまで低体重ではなかったし、男の子の方はこの2日間で2300グラムを超えたらしい。女の子の方も2100グラムまで増えて状態が安定しているので2人一緒にNICUを出たんだって説明された。

それでももう少し体重が増えるまでGCUで過ごすから、私の病室に来るのは4~5日先みたい。それまでは頑張ってここに来てお世話することになった。


「きゃああぁーっ!可愛いっ!この前は硝子越しだったでしょ?抱かせて、抱かせて~!」
「お、おば様!大丈夫ですか?お洋服が・・・」

「そんなの平気よ~!まだ涎なんて少ないでしょ?うわっ、軽いわねぇ・・・この感じ、懐かしいわぁ!」
「軽い・・・そうですか?」

まだお腹が痛む私にはこの重さでも怖いのに。
流石、経験者・・・男の子を抱き上げて、まるでご自分の孫みたいにキスしまくりで看護師さんも苦笑いだった。赤ちゃんも抱き方が上手で安心できるのか大人しくしてる。
私は女の子を抱っこしていたけど、抱き方が怖々してるのか嫌そうな顔を見せられてちょっとショックだった。

看護師さんに言わせると「まだそこまでの感情はないだろうからたまたまよ」なんて言われたけど。



「じゃあお母さん、飲ませてみようか?」
「は、はい!えっと・・・」

「こう抱いてね、で、咥えやすいように・・・そうそう。お腹が空いてたら自分から吸い始めると思うんだけど・・・どうかな?」
「よく・・・判りませんけど・・・あっ、でも・・・」

「ふふっ、吸ってるみたいね。暫くそうやって飲ませててね。どのぐらい飲んだか赤ちゃんの体重も量るから」
「そうなんですか?あんまり出なかったらどうしよう・・・」

「それでもいいのよ。初めから母乳の出の良い人と悪い人は居るし、出が悪いからって赤ちゃんが大きくならないわけじゃないわ。逆に出ない事を悩んでストレスに思う方が良くないと思ってね」

「・・・はい」


やっと自分が母親になった気分がした。そして女の子が終わったら男の子にも・・・この子の方が吸う力が強くて驚いた。
お乳をあげた後は自分の胸がしょんぼりしてる感じ、そう夢子おば様に話したら大笑いされた。

「いいこと?こんな姿をあきら君には見せちゃダメよ?あの子、変に知識があるから自分で確認したがるかもしれないわ。ちゃんと赤ちゃんが飲んでるかどうかってね!まぁ、気遣いの子だからしないと思うけど」

「えっ!まさかそれは・・・いや、美作さんならするかもしれませんね!怖いなぁ・・・どうやって確認するんだろ?」
「いやぁねぇ、何を想像してるの?赤ちゃんの重さを確かめるのよ?」

「はっ?あぁ、そうですよね~!はは・・・びっくりした!私の方を調べるのかと・・・」
「いくら何でも既婚者がそんな事しないでしょ!いや・・・どうかしら。判んないわ」

「えぇっ?!いや、勿論赤ちゃんの心配でしょ?」

「そうね・・・だってつくしちゃんの子供ですものね・・・」


その時のおば様の表情は少しだけ寂しそうだった。
私の子供だから・・・ってどういう意味だろう。それを言葉にして聞くことは出来なかった。



**



私が出産して2回目の土曜日、赤ちゃんがGCUを出て、私の居る特別室に来ることになった。
その日は美作さんもお休みだからって病室に来てくれて、不思議な感じだったけど2人で赤ちゃんが来るのを待っていた。


「牧野さーん!お待たせしました。赤ちゃん、来ましたよ~!」

「ありがとうございます!わぁっ・・・可愛い服着てる!」
「これは美作の奥様からいただいたベビーウエアですよ」

薄いブルーとピンクのベビードレス・・・足の指先まですっぽり包まれて、その中でスヤスヤ眠ってる。その子達を乗せた色違いの小さなベッドが私のベッドの真横にやってきた。
美作さんも指でチョンチョンと鼻先を触りながら目を細めて笑ってる。


「抱いてみる?美作さん」、そう言うと「いや、俺はいいよ」ってその笑顔のまま答えた。


きっとこの人は西門さんが抱けないのに自分が抱く訳にはいかないって思ってるんだろうな。
それが痛いほど伝わるから私もそれ以上は言わなかった。


「あっ、目を開けた・・・!」
「ホントだ。まだよく見えてないだろうけどな」

「ここ・・・ちょっとカサカサしてる・・・」
「問題ないさ、牧野よりは綺麗な肌だし」

「・・・もうっ!ひと言余計だよ!」
「ははっ、本当の事だろ?」


まるでこの4人が親子のように・・・柔らかい日差しの中で過ごしていた。





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