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「大変申し訳ございません!私は何も見ておりませんっ!本当でございます、類様、お許しくださいませ!」

「・・・・・・くすん」
「いや、いいよ。いや、良くないけどいいよ。俺も悪かったんだ・・・男性が入ってくると思わなかったから油断してた」


牧野は頭から布団を被って大泣き。
それを宥めながら執事が平謝りするのを聞いていた。その後ろには加代に母さんに父さん・・・みんな牧野の悲鳴を聞いて飛び込んで来た。

そしていつもの通り俺が叱られた。


「類!昨日まで寝てたんじゃ無かったの?熱も下がったくせに食欲が無いって!いきなり狼になるってどういう事?」
「ママ、それは言い過ぎじゃないかな・・・類も嬉しかったんだよ、つくしちゃんが戻ってきて」

「それにしても朝まで何も身に付けないなんて。・・・せめて、その・・・お済みになられたら着るものは着ていただかないとお風邪を引きますよ?」
「そうよ!いくら素肌が温かいからって、そんなの10分ぐらいで終らせなさい!!」


「・・・・・・そこまで言う?」
「・・・くすん」

出勤前なのに大声で怒鳴られ牧野はいまだにベッドの中。
朝食すら食べられずに母さんのお小言を聞いていて、そろそろ行かないとマズいからって皆に部屋から出てもらった。

そして誰も居なくなったら真っ赤になった鼻を啜りながら顔を出して、ベッドの下に落ちてるバスローブを拾って羽織ってた。


「・・・大丈夫?朝から怖かったね」
「誰のせいなの?ホント・・・恥ずかしくてもう執事さんに会えないよ・・・」

「気にしなくても大丈夫だよ。向こうの方が知らん顔してくれるし一瞬だったから記憶にも残らないって」
「・・・そりゃ記憶にも残らない程度の胸だけどさ・・・」

「くすっ、そんな事ないよ。俺は好きだから」


牧野に手を差し出してベッドから降ろしてテーブルの前の椅子に座らせた。
綺麗に並べられた朝食を見たら気分が変わったのか「いただきま~す!」の声が小さく聞こえて、俺は珈琲だけ飲んだらネクタイを締めて支度は完了。

ホントだ、何となくスーツが緩い気がする。
短期集中ダイエット・・・加代もインフルエンザになったらいいのに。


「それじゃ行ってくるね。今日は見送りしなくてもいいよ。でも明日からは下まで宜しく」
「あっ、そうか・・・ごめん。忘れてた」

「これから少しずつ慣れていけばいいから。でも、これだけは忘れないで欲しいんだけど」

ニコッと笑って自分の唇に指を当てたら、真っ赤な顔して傍まで来て・・・ほっぺたにキスされた!
「そこ?!」って言うと「今日はそこ!罰だから!」・・・だって。



**



ある意味今年になってから初めての出勤。ロビーを歩いていたら痩けた顔に驚かれて誰も声を掛けてこなかった。

確かに自分でも車のバックミラーに映った顔を見たら怖かった。
人間ってストレス溜めるとこうなるんだ・・・恋煩いで痩せるなんて絶対嘘だと思ってたけどホントにあるんだ・・・って。


「おはよう・・・ございます、専務。まだ具合が悪いのでは?お顔の色が・・・」
「・・・いや、平気だから」

受付の女子社員がそう声をかけた時、その後ろの方にあの姿を見付けた・・・!
今日は一段と背中丸めてるように見えるのは気のせいじゃないよね・・・一応反省してるんだ?


「お、おはようございます」
「・・・おはよ、藤本。元気そうだね」

「はぁ・・・予防接種のお陰で軽く済みました」
「へぇ、俺が予防接種を逃げたから酷かったって言いたいの?でも、毎年逃げてるけど罹かったの今年だけだから」

「・・・申し訳ございません」
「いいよ。インフルエンザ菌に藤本って名前があったわけじゃないし」

「・・・めっちゃ棘がありますよね」
「そお?結構優しく言ってるつもりだけど」


早速出迎えに来た藤本に攻撃。でも当たり前だよね?
潜伏期間から医者の許可が出るまで牧野と引き離されて8日間・・・俺、1人だったんだから。牧野と一緒に寝るようになったクリスマスからの11日間、1度も部屋を別けてなかったのに!

牧野欠乏症で命が危なかったんだから、それを考えたらこのぐらいの嫌みで済ませる俺を褒めて欲しいぐらいだ!


エレベーターに乗っても俺から最大限離れてる藤本・・・いつも草臥れてるスーツがブカブカに見えるって事は此奴もインフルエンザで痩せたのかな?

「藤本、もしかして痩せた?」
「判ります?熱が下がった途端、『いつまで寝てるの!』って妻に怒鳴られ、ふらふらしながら家の掃除をしましたから・・・」

「・・・あ、そうなんだ。使用人は・・・」
「普通の家にはそんなもの居ませんよ、専務」

「・・・ごめん」
「いえ、いいです。私も辛かったんです。早く出勤したかった・・・」

ちょっと可哀想になったから攻撃はここで止めてやった。


執務室に入ったらいつものように藤本が今日のスケジュールを読み上げたけど、新年だから逆に急ぐような用件は少なく、挨拶に来たいという依頼ばかり。
それには体調を整えてからと断りを入れるように伝え、どうしてもと言う急用のみ受けることにした。

ここでもメールの確認をしながら休み中の業務連絡を聞き、急いで報告しないといけないものだけ片付けた。
そして病み上がりの2人は既に10時半で1度息切れ・・・珈琲を飲みながら昼まで必死に頑張った。


「藤本、悪いんだけどお昼は向かいの通りのサンドイッチショップのテイクアウトが食べたい。買ってきてくれる?藤本のも買っていいからさ」
「え?この寒いのに外に買い出しに行くんですか?」

「・・・断わるの?」
「・・・行ってきます」

古びたコートを着てマフラー巻いた藤本が渋々執務室を出て行ってから、俺はさっそくパソコンで宮崎の瀧野瀬を調べた。
あれだけ時間があったのに「牧野欠乏症」で何もする気が起きなかったから。



瀧野瀬コーポレーション・・・会長は瀧野瀬孝三。
取締役社長は牧野晴男となっているからこの人が牧野の父親だろう。そして同じく取締役に牧野千恵子と牧野進。
驚いたことに役員に瀧野瀬つくしの名前もあった。おそらく牧野本人は知らないんだろうけど。

会社概要には『建築工事の請負及び施工・建築物の設計・不動産の売買、貸借並びにこれらの仲介・不動産の管理・土地の測量及び地質調査 ・第二種金融商品取引業 ・コンピューターソフトウェア及び情報処理システムの開発・有価証券の保有、売買及び運用 ・・・』

従業員数も資本金も発行済株式総数 もそこまでの規模ではないし、地方にしたらこんなものか、という感じ。
主な取引先には「五十嵐物産」が明記してあった。
ただし随分下のほう・・・わざと目立たないように書かれているような気がする。念のため上位に名前を連ねている企業を調べたけど、五十嵐に比べたら小さな会社ばかりだった。

各支店も九州が殆どで1番離れている場所でも大阪に関西支店があるだけ。
ネット検索で調べたけど悪どい書き込みは無い・・・表面上は問題の無い地方企業、それしか画面上では読み取れなかった。


ただ経営者としてホームページに顔を出してるのは何故か会長であって牧野晴男じゃない。
会長職になっても表舞台からは消えたくないのか・・・?それとも牧野の父親をそのうち誰かと交代させるのか。

そこに映し出されている瀧野瀬孝三の顔を眺めてた。


この爺さんが牧野を利用したんだね・・・いくら血の繋がりがあったとしても許せないな。



「専務ーっ!買ってきましたよ~・・・ハックシュ!!」
「今度は風邪?!マスクして、マスク!!」

「・・・買いに行かせたくせに」
「いいから早くマスクして!」




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2019/01/31 (Thu) 08:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 こんにちは。

そうですよね~💦
お母さんってのは熱があっても子供の事したり、ご飯作ったり・・・ですもんね!
私はアキレス腱切ったときも松葉杖で家事をしましたよ(笑)
台所に椅子を置いて、キャベツを切ったらひと休み!みたいな!あはは、懐かしいなぁ💦


しかし、このお話の類君はめっちゃ困った甘えんぼですね♥
お昼のお話しの反動でこうなってるんだと思います・・・初めはここまで甘えんぼの設定じゃなかったから・・・。

さて!気合いを入れ直しましょうかねっ!!

2019/01/31 (Thu) 13:12 | EDIT | REPLY |   
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2019/02/02 (Sat) 12:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

miz**様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あはは💦実は私もマスク苦手派なんですよ・・・何故か息苦しくなって。
それに痒くなるし・・・だから必死に咳を我慢します。

あ!でももしかしたら、いつも鼻風邪の方かも・・・。
咳って夜だけ出るかな?お布団に入ったら急に咳き込むって事はあります。

ははは、藤本さん、反省してください!

2019/02/02 (Sat) 21:14 | EDIT | REPLY |   

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